http://www.asyura2.com/12/social9/msg/273.html
Tweet |
(Japan crime: Why do innocent people confess?: BBC NEWS MAGAZINE)
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-20810572
2013年1月2日最終更新23:19GMT
日本の犯罪:なぜ無実の人々が自供するのか
大井真理子
BBCワールドサービス、東京
日本の有罪率は99%以上だ。しかし、この数カ月、数々の誤認逮捕により無実の人々が犯罪を自供していることに、悲鳴を上げる一般国民が出ている。
それは、7月下旬、横浜市ウェブサイトに投稿された脅迫文から始まった。「私は夏になる前に、小学校を襲って子どもたちを皆殺しにするつもりだ。」
その後、数カ月の間に、同じような投稿文がいくつかインターネットに投稿された−その中には、天皇の孫など、有名人を脅迫したものもあった。
警察が捜査した結果、4人の人が逮捕された。2人が拘留中に自供したが、その中に19歳の学生もいた。
しかし、10月9日、本当の犯人が弁護士・落合洋二氏と地元メディアにeメールを送り、ウイルスを使って無実のインターネット・ユーザーの端末を乗っ取り、このような脅迫を行ったいきさつを説明した。
落合氏へのeメールで述べられていたが、犯人の目的は「警察や検察の醜態を暴くこと」だった。
ある意味、それは成功した。そして、これは疑問を引き起こした−なぜ、自分が犯していない犯罪を、無実の人は自供するのか?彼らにかけられる圧力はどのようなものか?
「私はeメールをもらったことには驚いたが、無実の人々が自供することには驚かなかった」と、落合氏は語る。
過去、誤認による有罪が数々あったと、同氏は語る。
「しかし、他の事例とは違い、インターネットを使っているだけの普通人がネット空間での脅迫事件に巻き込まれたという事実は、このようなことが誰にでも起こり得るという恐怖をかき立てた」と、同氏は付け加えた。
逮捕に関する権利 「日本の法律では、犯罪を犯したとの疑いを受けた場合、48時間の保釈が認められることなく、逮捕、または、勾留される場合がある。この期間、警察は被疑者にかけられた犯罪容疑や、被疑者の黙秘権、被疑者が自己の費用で弁護士を雇う権利について、被疑者に説明する必要がある。…警察は通常、被疑者が弁護士に会う機会を持つ前に、最初の取り調べを始める。」 出典:在日米国大使館 |
落合氏が自分のツイッター・アカウントとブログにこのeメールを投稿すると、数百の反応が一般市民から返ってきた。その大部分が、真犯人よりも警察に対して批判的だった。
サクライ・ショウジ氏は、自分が犯していない強盗殺人の罪のために、刑務所で29年間を過ごした。去年、再審で無罪判決を得たが、それまでさらに15年かかった。
「私は若かった頃少し不良で、日本の警察は前科者を追跡していた。それで、友人のスギヤマと私はその殺人事件で主犯の容疑をかけられた。」
まだ20歳だったが、逮捕されると、実際に罪を犯したの刑事犯のように扱われたと、サクライ氏は語る。
「彼らは昼も夜も私を尋問し、自供を迫った。5日後、私は精神的な力がなくなり、諦めて、自供した。」
「理解してもらうのは難しいかも知れないが、繰り返し責め立てられるのは、人が思うよりしんどい」と、彼は付け加えた。
自分への尋問は攻撃的ではなかったが、警察や検察が容疑者に酷い扱いをすることは続いていると、サクライ氏は語る。
市川寛氏は検事を13年間やっていた−尋問中に容疑者を脅迫して自殺に追い込んだために、職を失うまで。
「他の人も同じことをしていたからといって、自分がしたことの言い訳にならないが、被疑者を脅して自殺に追いやったからといって、自分が怪物のような存在だったとは思わない」と市川氏は語る。
「他の検事が被疑者を怒鳴りつけたり、上司の1人が机の下で被疑者のすねを蹴りつけた様子を誇らしげに話したりしたのを、私は耳にしている。」
被疑者を脅して自殺させたことの他に、市川氏が後悔するもう1つのことは、真実に対応していない自供調書を作成したことだ。
「被疑者を8時間締め上げた後、彼が容疑について一言も言わなかったのに、私は調書に署名をさせた」と、市川氏は語った。
「上司が私に自供させろと圧力をかけたため、自供させなければ私は家に帰れないと思った。」
市川氏にすれば、自供さえさせれば、それが真実が虚偽かは問題でなかった。
被疑者を脅迫して自殺に追い込んだ結果、市川氏は職を失ったという事実から、尋問について定められた規則が機能していることは分かる。
かつて捜査官だった小林良樹氏は、日本の警察の権限は他国に比べて限定されていると語る。
日本の警察・検察は、拷問のような、より攻撃的な形の尋問を用いているという非難を、多くの人々から受けているわけではない。しかし、その一方で、中で何が起きているかを本当に知る人が、狭い取調室の外には誰もいない。なぜなら、被疑者への尋問は、弁護士が同伴することなく、閉ざされた扉の向こうで行われるからだ。
それでは、なぜ日本の司法制度は、これほどまでに自供を重視するのか?
「自供が最良の証拠だ。誰かに罪を自供させることが出来れば、法廷はその人の有罪認定へと動く」と、東京・テンプル大学のジェフ・キングストン氏は語った。
日本の有罪率は99%で、その大部分は、自供の裏打ちによって保証されている。
「自供はまた、被疑者にとって罪の重荷を下ろし、犯罪を懺悔するチャンスを与えるものと見なされている。」
尋問の過程の中で被疑者が懺悔をすれば、検察は求刑を軽くするとも、キングストン教授は語っている。
小林良樹氏は警察庁で25年間捜査官をしていたが、自供偏重の原因は捜査官の権限が限定されていることにもあると、同氏は考える。
日本では、なぜ自供が最良なのか 英米の法廷では事実の証明のみが必要とされるが、日本の法廷は違っており、動機が非常に重要と考えられる。犯罪へと至った理由と衝動が法廷で証明されなければならず、これが被告の量刑を決める大切な要因となる。「誰が」「何を」「いつ」「どこで」では十分でなく、日本の裁判官は「なぜ」を知ることが求められている。そのため、捜査官は被疑者の頭の中にあるものを手に入れなければならない−それができなかった捜査官は、仕事をしたと見なされない。現実には、自供を勝ちとることがその唯一の手段だ。 事例によっては、警察は自供を勝ちとってから初めて物的な捜査を行うことを望む。捜査官の知らない有罪にできるような情報を、被疑者が開示することを期待し、その情報を後の捜査で確認する−こうして、自供の信憑性が格段に強まり、自供が脅迫によって得られたものかも知れないという疑念が和らぐのだ。 リチャード・ロイド・パリー著 『闇を食べる人々』より抜粋 |
「他国の警察は司法取引・おとり捜査・盗聴行為が許されるので、捜査官はそうした手法に頼っている。日本では、こうした権限が捜査官に認められていないので、捜査官は自供に頼るしかない。」
捜査官の権限が限られているのは歴史的な理由による。小林氏の話では、第2次世界大戦前に警察が権力を濫用したために、戦後それを全て取り上げるよう国民が求めたのだ。
「米国などの国々では、捜査は駆け引きだと見なされているが、私たちの文化では、真実 も見いださねばならないと求められる。まさしくそれが、自供を通じて為されることなのだ。」
しかし、なぜ、日本人被疑者は進んで自供するのか−自分が犯していない犯罪さえ?
落合洋二弁護士は、それは日本人の心理と関係があると考えている。
「人々は伝統的に、権威に対抗してはいけないと考えているので、犯罪者はいとも簡単に自供した」と、落合氏は語る。
「しかし21世紀になり、犯罪を犯していようがいまいが、権利を主張する人が増え、簡単には従ったり自供したりしなくなっている。」
「当局はいまだに同じ手法を用いて自供を引き出そうとしているが、そのために、結果として、真実に相違する自供と認定されるかもしれない供述を行うよう、被疑者を圧迫している」と、落合氏は付け加える。
恥を重んじ家族のことをよく考えるという、日本社会の特徴もまた、これに1つの役割を果たしている。
サクライ氏は、母親が自供を勧めていると伝えられた。サクライ氏はこれを疑っているが、自由の身になる前に母親は死んでしまい、聞けずじまいになった。
サクライ・ショウジ氏−夫人と共に撮影−は、自分が犯していないある犯罪のために、29年間刑務所で過ごした。
6月に発生したネット空間での脅迫事件で、自供した19歳の学生の父親は、息子が「間違った事実を示して自供」した動機は、家族のことを考えたからだと、マスコミに向けた声明で述べた。
誤認から有罪判決を受けた人が、後に無実を証明できたとしても、公的な謝罪を受けることはほとんど不可能だ。
実際、サクライ氏は、身柄を拘束されていた期間について、1日あたり12,500円(148ドル)を受け取った。同氏は現在、それ以上の補償を求めて国を訴える裁判を起こしている。
「お金に困っているわけじゃないし、お詫びが欲しいわけでさえない。ただ、警察・検察・裁判官に、無実の人を刑務所に送り、自分は言い逃れるのを許すシステムを変えたいのだ。」
いくつかの点で、システムの変化は既に起き始めている。−7月から、被疑者の取り調べの一部は録画されるようになったが、批判的な立場の人は、全ての取り調べの全体を録画するよう求めている。
数十年の間、日本の刑事裁判制度は、ほぼ非の打ち所がないというイメージを保っている。99%を超える有罪率と同様、経済協力開発機構が発表した最新の年次統計によれば、暴力行為の被害に遭った人は、たった1.4%と報告されている。OECDの平均は4%で、それより低い。
日本の刑務所は、厳しい訓練を課すことで知られる。
法務省の話では、自供の大部分は真実で、刑事犯を有罪にするのに重要な役割を果たしている。街頭で人々に尋ねると、平均10人に7人の割合で、警察をまだ信頼していると答える。
しかし、ネット空間での脅迫事件で誤認逮捕された学生の父親は、声明の中で、このシステムは最低だと強く非難している。
「警察は一般市民を守るものとされている。自己の怠惰な捜査のために、無実の市民、それもまだ若い少年を逮捕し、間違った容疑をかけたことは許し難い」と、父親は述べた。
「[自供したとき]子どもの心によぎったものを考えると、耐えるに余りある−自分は無実の証拠を待ち望んだのに、諦めなければならない心境がどのようなものか。」
「最も哀しかったことは、親である私でさえ、子どもの無実を疑ったことだ。」
一方で、このネット空間での脅迫事件の真犯人はまだ捕まっていない。
大井真理子のワールドサービス・課題の究明は、1月3日放送です。iプレーヤーでお聴きになるか、ポッドキャストをダウンロードしてください。
----------------------------------------
(投稿者より)
BBCサイトに掲載された記事です。「」の中は、英語に直されたテキストを、さらに日本語に直しています。誤訳があるかもしれません。ご容赦ください。
「お上は無謬」、言ってしまえばそれまでですが、極端な例として、日米地位協定の改訂を米国が頑として拒む背景の1つに、米国本国並みの被疑者の権利保護が日本では到底適わない、という事情があるとどこかで聞きました。弊害は各所に出ています。
DNA鑑定に基づき、被告人が死刑判決を受けた事例がありました。その鑑定について、信頼性が不十分という指摘がありましたが、司法当局は、順番を無視してその死刑囚に迅速な死刑を執行しました。このことについて、「お上は無謬」のイメージを守るために口を塞いだのだ、という批判が出ました。法治国家なのですから、このようなことは、疑われるだけもアウトです。この国の恥ずかしい実情です。
仏教の影響が強い文化にあるので、「因果応報」の一言で済ませられることがあるかもしれません。しかし、その一方で、社会正義は国民の1人1人が、いま生きているその場所で、実現しなければならないものです。また、「人権」という価値は、市民社会が闘いの中で獲得したものであり、日本も例外ではありません。
死刑や冤罪など、司法制度の闇については日本のタブーの一つだと思うのですが、記事は様々な角度から光を当て、実像を浮かび上がらせようとしています。力の入ったレポートになりました。
テキストは大学入学程度の英語力なら理解できる内容です。ラジオのレポートは25分間。投稿日現在、どちらもリンクからアクセスできます。原典に当たってみるのもいいかも知れません。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/
since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
▲このページのTOPへ
★阿修羅♪ > 社会問題9掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。