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http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1212/11/news018.html
警察庁によると、自殺者数が15年ぶりに「3万人」を下回る可能性が強まったという。このニュースを聞いて「よかった。よかった」と思う人もいるだろうが、実は“裏の数字”がある。その数字を加えると、自殺者は増えているかもしれないのだ。
この週末、前原誠司国家戦略担当相が滋賀県に応援演説にかけつけ、集まった聴衆にこんなことを言った。
「民主党政権の3年3カ月で有効求人倍率が上がって失業が減り、GDPも増え、倒産件数が減り、自殺者も減少傾向になった」
つまり、我々は一定の成果を挙げたではないかというわけだ。この言葉をどうとるかは有権者個々の判断だから何も言うことはないが、個人的に引っかかったのは「自殺者の減少傾向」というくだりだ。
もちろん、大臣がデマを言うわけがなく、これにはちゃんとした根拠がある。先日、警察庁が年間の自殺者が1997年以来、15年ぶりに3万人を下回る可能性が強まったと発表したのだ。
自殺者数の推移(2011年まで)。警察庁の発表によると、2012年の自殺者数は15年ぶりに3万人を下回るという 今年1〜11月の全国の自殺者は前年同期比9.8%減の2万5754人(男性1万7840人、女性7914人)で、月別にみると、2〜3月が前年同期に比べるとわずかに多かった以外は9カ月間ですべて下回り、5月は25.5%、6月は24.1%という大幅減となったのである。
確かに、事実として民主党政権は自殺者対策で一定の「功績」がある。自殺を考えている人に気づき、声をかける支援者を「ゲートキーパー」というのだが、こういう人たちをもっと増やそうと、内閣府が知恵をしぼってひねくりだしたキャッチフレーズがあった。
「GKB47」――。
ご記憶にある人も多いだろう。これは「ゲートキーパー・ベーシック」の頭文字をつなげたもので、それに某アイドルグループを真似た数字を加えたものだ。なんとも安直すぎるパクリと「ゲートキーパー・ベーシック」を47都道府県で増やそうというなんとも苦しい後づけ的な意味で、全方向から批判が集中。支援団体などから「自殺問題をバカにしているのか」などと抗議が殺到して取り下げられた幻のキャッチフレーズだ。
今年2月に勃発したこのGKB騒動のおかげで、それまで見向きもされなかった「ゲートキーパー」という言葉に注目が集まった。この概念を知り、身近な人に声をかけたことで自殺が防げたというケースがないとも限らない。そういう意味では、これは間違いなく民主党政権の手柄だろう。
だが、これだけで9カ月間も自殺者が減っていくというのは疑問である。実は、たまたまGKBが注目されたので、民主党は自殺対策のイメージが強いが、自民党だってやっていないわけではない。
代表的なのが2008年の麻生政権時代、地域自殺対策緊急強化基金だ。これは3年間で予算100億円を投入するという分かりやすいバラまきで、実際にそれを活用した対策事業が全国で展開されるようになったのである。
どんな支援の現場でもそうだが、そこで戦う人にとってまず欲しいのは人とカネだ。石の上にも3年ではないが、この100億円が3年を経過してようやく身を結んだという見方だってできなくもない。
なんて話を聞くと、「じゃあ自民も民主もそれなりにいいことしているじゃないか」と思うことだろう。確かにそのあたりに異論はないのだが、「自殺者が減少傾向」と言いきってしまうことに抵抗がある。正確には、そうとも言えないからだ。
**** 「変死体」が増えている
自殺者の数は警察庁が発表するのだが、実は彼らはもうひとつ「死」にまつわる統計を発表している。それは「死体取扱状況」だ。最新の平成23年のデータでは、全国の警察で17万3735体(交通事故、東日本大震災関係除く)の死体が扱われている。この数は年々増加していて過去10年間で最も多い。その中で同様に年々右肩上がりなのが、「変死体」だ。2011年には2万701体もある(警察における死因究明等の推進・平成24年11月16日)。
「変死体」というのは、殺害なのか病死なの分からない死体のことだが、実はここにかなりの「自殺者」も含まれており、半数ぐらいはそうではないかという指摘がある。
これはなにも勘やあてずっぽうではなく、WHO(世界保健機構)がそう言っていて、総務省が出した「自殺予防に関する調査結果報告書」(平成17年12月)でも、「変死の原因の約半分は自殺」と引用されている。
このWHO理論で言えば、日本の場合1万人ぐらい自殺者数が上乗せされる。自殺者数が減少傾向にあっても変死体が増えているのだからなにも変わらないというわけだ。もちろん、そんなもんいい加減だという批判もある。ただ、孤独死や自殺の現場を取材した経験から言わせてもらうと、半分まではいかずとも3割ぐらいは「自殺者」ではないかと思っている。
遺書もなく崖から転落し、数日後に水ぶくれした遺体であがった若者。ワンルームマンションで半月以上放置され遺体が腐敗してしまったOL。誰に助けも求めずに寝たまま亡くなった老婦人……もしかしたら自殺なのかもしれないが、彼らの多くは「変死」扱いで2万人の1人としてカウントされる。
尼崎の事件で、沖縄の海に転落死した男性が、角田被告たちから飛び降りを強要されたのか、保険金目的で自ら死を選んだのか、さまざまな憶測が飛んでいるが、「限りなく殺人に近い自殺」も確かに存在している(関連記事)。
次の政権には、自殺を減らす取り組みはもちろんこれまでどおり進めて欲しいが、「変死」も減らす取り組みも期待したい。
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