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子育て社員 甘やかさず
長引く不況、企業も変化?
長引く不況を背景に子育て中の社員への企業の風向きが変わりつつある。制度整備が進み、子どもを育てながら働く社員が増え、職場での特別扱いが難しくなってきたからだ。子育て中だからといって甘やかしはしない。企業の試行錯誤が始まった。
「子育ては大変です。仕事も大変です。その両方を選んだのはあなたです」。三井住友銀行は今秋、社内研修用の映像プログラム「ママキャリストーリー」を制作した。プログラムは冒頭のこんなメッセージから始まる。
本編は14分。社内の3人のワーキングマザーとその上司の計6人へのインタビューを中心に進む。子育ての喜びや両立の難しさを女性社員が語り、育児休業中などに残った人員で業務分担を迫られる職場の苦境を上司がもらす。そして「働く覚悟はできていますか」と自覚を促すメッセージが流れて締めくくられる。
貢献を求める
産前産後休業を控えた妊娠中の社員に研修で見せる予定だ。ダイバーシティ推進室長の田口紀子さんは「制作段階で『内容が厳しすぎる』『反感を招く』など批判もあった」と明かす。だがあえて辛口にこだわった。子育て支援策を随時拡充し、今や法定を上回る制度がそろう。出産退社が減った半面、必要以上に制度をフル活用しようとするなど働く意欲に欠けるのではと疑いたくなるケースも出てきた。「制度を使う以上、見返りとして仕事での貢献が求められる。働く基本を改めて訴えたかった」
企業の子育て支援の整備が進む。2005年4月に次世代育成支援対策推進法が施行し、子育て支援計画づくりを企業に義務付けたのがきっかけだ。雇用保険事業年報によると11年度の育児休業取得者(休業給付受給者)は約22万5千人。04年度に比べ倍増した。
制度利用は働く側の権利で妨げられない。ただ利用者の予想以上の広がりが職場に重くのしかかる。まして08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災などで、企業は余力を失った。
「使って当然という態度で周囲の雰囲気が悪くなった」「子どもを2人続けて出産し、制度利用が長引くとカバーしきれない」。テンダーラビングケアサービス(東京都中央区)は10月下旬、セミナー「ちょっと変だよ日本の両立支援」を開いた。参加者は大手企業の人事担当者ら18人。グループ討論で現場の悩みが噴出した。
講師を務めたコンサルタントのパク・スックチャさんは「米国やアジア諸国と比べて、日本の支援策は手厚い。グローバル化している状況で国際競争力を維持できるのか。企業の子育て支援は少子高齢化対策に欠かせないが、現状の修正も必要だ」と説明する。
オリックスは10月、子育て中の社員などを対象にキャリアセレクト制度を導入した。現在の職種・等級に見合う責任を果たせないと本人が判断し、申し出たら役割と成果目標を軽くする。管理職の役職返上もありうる。「主任なら主任なりの、課長なら課長なりの結果を会社は求める。育児中も例外ではない。ただ現実には時間の制約などがあり、責任を全うできない場合はある」(人事部)
責任が軽くなった分、給与は減る。ただ本人が申告すればいつでも元職に復帰でき、キャリア形成の取り戻しも容易だ。「等級に見合う働きをしていない」といった周囲の批判も回避できると人事部はみている。
プロ意識促す
21世紀職業財団(東京都文京区)は今秋「産休・育休者セミナー」を始めた。出産を経て職場復帰を控える社員が各社から集まる。復職後の働き方に関する講義では「子育て支援策は必要な期間に限って使う」「家族の支援など別のサポート体制も検討する」などと助言する。
育児期と重なる30代前半は仕事で前線に立って活躍する時期だ。ここでの仕事の経験は将来のキャリアを左右する。事業開発部の菅原千枝部長は「厳しいと思うかもしれないが、10年、20年先を考えれば、制度に頼りすぎないのが本人のためだ」と強調する。
女性が職場に進出して以来、子育てと仕事の両立は長年の懸案だ。不況になると締め付ける傾向は以前もあった。ただ日本は生産年齢人口が減っており、以前と状況は違う。子育て社員に厳しく臨む企業も、労働市場からの女性の退場を望んではいない。
三井住友銀行の国部毅頭取は「結婚退社が当たり前だった時代と違い、女性も長期的な戦力になってもらわないと困る。子育て支援策を整え、男性上司の意識改革など組織風土の変革も進めている。両立は大変だと思うが、甘えを払拭し、プロ意識を持って働き続けてほしい」と強調する。
(編集委員 石塚由紀夫)
[日経新聞11月14日夕刊P.9]
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