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データ消去、キーボードに水…職場いじめは学校より幼稚
西川あゆみ・ピースマインド・イープ副会長に聞く
2012年11月15日(木) 鈴木 信行
2011年、滋賀県大津市で中学2年の男子生徒が自殺した事件が発覚して以来、教育現場でのいじめが改めてクローズアップされている。だが、陰湿ないじめは決して子供の世界だけではない。「企業でもそれと変わらない幼稚で悪質ないじめが繰り広げられている」。こう警鐘を鳴らすのは、コンサルティング会社ピースマインド・イープの西川あゆみ副会長だ。職場いじめの現状と対処法を西川副会長に聞いた。
(聞き手は鈴木 信行)
実際にどんないじめが起きているのか。
西川:特定の人間を標的にして仲間外れにするといった古典的なものから、「作成中のデータを消去する」「キーボードに水をかける」など陰湿なものまで、様々ないじめが起きている。「昼食を買いに行かせて代金を払わない」「罰金と称して些細なミスをする度に500円を徴収する」「オフィスで歩いている時に足を出して転ばせる」といった子供じみた事例もある。
「小さな企業=アットホーム」は間違い
「足を出して転ばせる」など今や学園ドラマの不良でもやらない。いい年をした大の大人がそんなことをするなど信じ難い。
西川あゆみ(にしかわ・あゆみ)氏
EAPコンサルタント(CEAP)として企業のメンタルヘルス対策などのコンサルティング業務に従事。「ハラスメント防止」「海外赴任者向け」などの企業研修講師として活動するほか、職場のクライシスケア専門家としての出動も多数。外資系通信機メーカー人事部にて国内初の内部EAP立ち上げに従事した後、2002年、イープ設立。2011年4月より経営統合により現職
(写真:鈴木愛子)
西川:人事異動や転勤で人間関係が固定化されない大企業では、それが安全弁となっている部分があり、いじめがあっても自然と解消されるチャンスがある。だが、人のローテーションが少ない硬直化した小さな組織の中では、想像以上に、いじめが横行・長期化しやすい。
大企業に比べ小さな企業はアットホームで、社員の仲がいいというのは幻想というわけか。それにしても、最近はいじめに関する相談窓口を設置する企業も多い。いじめている側は、発覚した際のリスクを考え、自重しようと思わないのか。
西川:例えば、上司が部下を長時間叱責したり、人格を否定する発言を繰り返したりするパワーハラスメント型のいじめなどは、いじめる側も精神的に病んでいるケースがある。自分でも分かっていながら改善できない人もおり、そうした“ハラッサー”自身から「いじめを止めたい」との相談も増えている。経営陣から期待されている中間管理職のハイパフォーマーにこのタイプが多い。相応のポジションにいるので、日頃から強いストレスにさらされている。厳しい経営環境の中、現場の人員は減らされているが、一方で何が何でも事業目標は達成しないといけない。明らかにストレス過多の状態だ。
しかし、そのストレスをぶつけられる側は、たまったものじゃない。
西川:部下の方も、今は不況で次の職場が見つけにくいので、当局へ通報せずに我慢する人が増えている。長期化すると当然、不眠や食欲不振に陥っていく。また、パワハラ型のいじめは末期になると、いじめられている側もすっかり自責の念にかられ、それがいじめであるとの認識すら薄くなっている。このため、周囲が介入しない限り事態が泥沼化していく可能性が高い。
いじめる側も心の病?
職場いじめの裁判例(1)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121112/239326/zu01s.jpg
(編集部調べ)
パワハラ型でなく、集団で1人を標的にするタイプのいじめはどうか。
西川:集団で1人を標的にするモビング型(職場の集団的虐待)のいじめの場合は、大抵、いじめをしている側に加害者意識はある。ただし、群れをなして、排除するというのは人間のみならず野生動物の本能なだけに、モビングの状態に入るといじめは長期化する傾向が強い。群れから離れると今度は自分がいじめのターゲットになる、と恐れる人もいる。
構造的には、学校のいじめと変わらない、というわけか。そもそも職場のいじめの発端はどのようなものなのか。
西川:職場いじめという現象自体は新しいものではなく、それこそ江戸時代からある。ただ、かつての職場いじめは、派閥争いや会社の中の覇権を争う中で敵を追い落とすために相手を貶めるというものが多かった。今は、むしろ個人対個人の些細な対立がSNSなどを通じて、いじめ化していくケースが増えている。
法律などにより職場のいじめを未然に防ごうとする動きも出てきている。
西川:法律によっていじめを減らすことはできない。いじめの被害を訴えやすい環境になったというだけのこと。国や当局はいじめを「起きてはいけないもの」と捉え、対策を立てようとしているが、それでは解は見つからない。「いじめは起きて当たり前、未然に防げるものではない」という前提で、対処を考えるべきだ。
米国の小学校をお手本に
具体的にはどうすればいいのか。
西川:職場でいきなりモビング型のいじめが発生することはない。必ず最初は個人対個人の対立があって、それが時間と共に集団的いじめに“進化”していく。この個人間の対立がモビングに発展しない段階で芽を摘むのが、職場のいじめを減らす最も有効な対策。例えば、ミディエーションというスキルがある。これは「調停」「仲裁」という意味で、職場のコミュニケーションスキルの一環として誰にでもできる簡単な対処法だ。米国では30年ぐらい前から用いられている。対立関係にある当事者間に中立的立場の第三者(ミディエーター)が介入して話し合わせ、解決に導く。
職場のコミュニケーションを深めよ、ということか。
西川:米国の小学校ではこの手法を取り入れているところもある。日直のように今日のミディエーターというのが決められていて、何か問題があったら報告をする。例えば「今日、○○さんに髪の毛を引っ張られたんです」と言いに行く。するとミディエーターは髪を引っ張った側、引っ張られた側の2人を集めて事情を聞き、その顛末を文書にまとめて校長先生に提出する。こうして小さないじめの芽を摘む努力をしている。
職場いじめの裁判例(2)
依然続くセクハラ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121112/239326/zu02s.jpg
(編集部調べ)
鈴木 信行(すずき・のぶゆき)
日経ビジネス副編集長。
キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121112/239326/?ST=print
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