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親を出し抜く情報強者
遊び場はネット空間(上) 安全確保へ対話深めて
パソコンやインターネットに囲まれて育った今の子どもは、ネット空間も現実と同様に身近な遊び場だ。ただトラブルも増えている。閲覧や利用時間の制限に躍起な親の目をかいくぐってネットにアクセスし、問題になることも多い。親はどう対処すべきか。
「一度ネットを許可すると、親に止める手立てはない。もっと慎重にすべきだった」。神奈川県内の女性会社員(45)はそう振り返る。5年前、当時中学生だった次男(18)がネットゲームにはまり、不登校にまで発展したからだ。
アイテム代盗む
次男から「クラスのみんながやっている無料のネットゲームをやりたい」と申し出があった時は軽い気持ちでOKし、保護者の承認ボタンを押した。しかし、アイテムを買うために親の財布から金を盗んでいたことが発覚。パスワードの変更、アカウントの削除、家のパソコンの会社持参など様々な対応を取った。
それでも「今度は友人宅に行く、他人のIDを借りる、最後には『学校に行かない』と不登校になった」。その後、次男は専門家のカウンセリングを受け、ゲームをやめて学校に通うようになったが「単なる取り上げや禁止だけでは止められなかった。親はネットに対する情報が不足している」。
最近はパソコンだけでなく、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)なども登場。接続手段が多様になり、子どものネット利用でのトラブルは、どの家庭にも起こりうる問題だ。
「パソコンにパスワードをかけて、1日の利用時間も決めている」(東京都内の44歳男性会社員)など利用を制限している親も多い。しかしこうした対策は必ずしも万能ではない。子どもはあらゆる手段を使って親の目をくぐり抜ける。
有害サイトなどの閲覧を自動的に制限するフィルタリング事業を手がけるネットスター(東京都港区)によると、子どもが親を出し抜く「手口」は主に2つあるという。1つ目がスマホから電車や飲食店内でWiFi(ワイファイ)などの公衆無線LAN(構内情報通信網)を使いネットに接続する方法。携帯電話回線をフィルタリングしても、無線LANなどを使えば有害サイトやゲームに簡単にアクセスできる。
もう1つがスマホなどのアプリケーションを利用すること。不特定多数とチャットができるアプリやゲームアプリの中には有害な画像などを閲覧できるものがあり、こちらも単純なフィルタリング機能では制限できない。「使ってみないと安全なアプリか分かりにくいものが多い」(同社)。千葉県内の主婦(49)は「フィルタリングをかけていたので安全と思っていたら、無料通話のアプリをダウンロードしてネット上の『見知らぬ人』と交流していた」と危機感を訴える。
親も勉強が必要
一般社団法人東京都小学校PTA協議会の新谷珠恵会長は「ネット上の書き込みなどで、自分の子どもが被害者にも加害者にもなる可能性がある。親は知らなかったではすまされない」と強調。「子どもの方がこうした仕組みを理解している情報強者。スマホなどを安易に買い与える前に、親も勉強して安全を強化する必要がある」と訴える。
今は学校や社会でもネット活用は常識。利用を禁止するだけでは解決にならない。「閲覧制限をかけたいが、どのタイミングでどの程度制限すべきか。ネットやアプリ、端末の機能の進化の速さに追いつけない」(名古屋市の38歳主婦)という声もある。
「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」(子どもネット研)は能力に合わせた段階的な利用モデルを提唱する。同研究会は学校関係者や企業、専門家が集まり2008年に設立。ネットの危険性などを分析・研究してセキュリティー対策などの教材を作製、横浜や札幌など全国の自治体や小学校で講習会を開いている。
同研究会は(1)保護者が隣で見守りながらサイトなどの閲覧を認める「体験期」(2)同じ条件のもと特定の相手を対象にメールの利用を認める「初歩的利用期」(3)保護者の目の届くところでサイトの閲覧やブログなどの書き込みを認める「利用開始期」(4)フィルタリングをかけてネットの利用を認める「習熟期」――の4段階を設定。親が子どもの能力やモラルを見極めて、少しずつ利用範囲を広げることを提唱している。
同研究会事務局の高橋大洋さんは「端末の機能や仕組みというハード面の規制だけでは解決しない」と指摘。「子どものネットトラブルを防ぐポイントは、親と子どもの関係。常にコミュニケーションを取るよう心がけておけば、ネット上のトラブルや悩みなど、ちょっとした子どもの様子の変化に気づくことができるはず」と強調する。
「問題あり」中学で4割
子どものネット利用を親はどこまで把握できているのだろうか。内閣府が昨年6月に実施した「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、子どものネット利用の実態と親の認識に大きな違いがあることが明らかになった。
携帯電話を持つ子どもと保護者にネット利用を聞いたところ、小学生の75%が「携帯からネットを利用している」と回答する一方、子どもが携帯からネットを利用していると認識している親は39%。中学生では親の認識が65%なのに対し、96%の子どもは携帯でネットを利用していると回答した。認識の差は30ポイント以上あった。
さらにパソコンや携帯でネットにアクセスしている子どもに、トラブル経験の有無を尋ねたところ、小学生の9%、中学生の39%が「ある」と回答。高校生では6割に達した。
[日経新聞11月12日夕刊P.9]
仮想社会で友達づくり
遊び場はネット空間(下) SNSに熱中、交流浅く広く
いつの時代にも子どもたちは最新のコミュニケーションの道具をいとも簡単に使いこなす。今ならそれは、インターネット上で友人や見知らぬ人と交流できるソーシャルメディアだ。「デジタルネーティブ」から一歩進んだ「ソーシャルネーティブ」が生まれている。
東京都練馬区の松田道代さん(仮名、51)に、小学5年の長男が通う水泳教室から「もう2カ月も来ていない」との連絡が来たのは今年の夏休み前。驚いて調べると、帰宅後に図書館の共用パソコンで、ソーシャルゲームに興じていた。ソーシャルゲームはネット上で仲間と協力するなどしてゲームを進める仕組みだ。
一緒に戦う面白さ
夏休みには自転車で繁華街の家電量販店まで出かけ、店頭展示用のタブレット型端末などでゲームに熱中。携帯電話は持たせず、家のパソコンも触らせなかった。それでもソーシャルの世界に引き込まれた。
長男は「ゲーム内の仲間と一緒に戦うことが面白かった」との答え。結局、タブレットを買い与え、週末に1時間だけというルールを設定。二学期になり習い事が忙しく、ゲームの時間は減ったが「冬休みが来るのが怖い」(松田さん)。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は、すでに小中学生にも浸透している。博報堂生活総合研究所が今春、首都圏の小学4年〜中学2年生1200人に聞いた調査で「携帯電話やパソコンでメールのやりとりをする友人がいる」割合は5年前に比べて12ポイントも下がり48.3%に。メル友の数も平均24.5人から20.2人に減った。
その代わり増えたのが「SNSへ参加している」「参加したい」割合だ。ネット上の自分の分身である「アバター」を利用するSNSへの参加率は18.5%、それ以外のSNSへの参加率は10.7%と、それぞれ5年前に比べて4ポイント以上上がった。「参加したい」という割合も8〜9ポイント増えて2割前後に達した。
同研究所の山本泰士主任研究員は、同じ調査で友達よりも家族を大切にする子どもが増えたことを指摘。震災に加え不安定な経済や社会の状況を敏感に感じた子どもが家族に回帰して「深い友達づきあいよりも浅く広くを志向し、そうした付き合いができるSNSを選んでいる」と分析する。
さらに、少子化で子ども同士の付き合いが減り「リアルな世界で友人関係を維持することが難しくなってきたので、付き合いが楽なSNSに走るのでは」との仮説を立てる。その証左となりそうなのが、アメーバピグで起こった子どもたちの“反乱”だ。
サイバーエージェントが運営するピグは、アバター同士のチャットが主な機能。大人中心の利用を想定していたが、2010年末から10代が急増。今年3月末の段階で会員約1200万人のうち、15%が15歳以下という状況になった。
小学校で基礎学ぶ
同社の高橋佑介ゼネラルマネジャーは「クラスのみんなが使うから僕も使う、となってブームになった。同級生とのリアルなコミュニケーションの道具として使われた」と見る。だが、他人のIDを小中学生が盗むなどの不正アクセスが続出したため、今年4月、15歳以下は一切他人と交流できない制限をかけた。
反響はすさまじく、ピグ管理人のブログには子どもたちの批判が殺到。書き込みは5万9千件を超えた。4月以降、16歳以上と年齢を偽って登録して発覚した例も数千件にのぼる。この結果、15歳以下の利用者は数%にまで減った。
SNSは簡単に他人と交流できるがゆえに、個人情報を巡るトラブルや、ネット上で知り合った人に会いにいき事件に巻き込まれるといったことが起きがちだ。ただ一度魅力を知るとやめるのも難しい。そこで、逆にSNSを積極的に使おうという学校が出てきた。教師が常に書き込みを監視できるSNSを使って「SNSリテラシー」を早いうちから育てようという狙いだ。
鳥取県倉吉市立社小学校のパソコン・デジカメクラブの生徒が、小学校専用SNS「ぐーぱ」を始めたのは2カ月前。学校行事の様子や身近に起きたことを自由に書き込み、他校や管理人と交流する。5年生の女子は「自分のコメントに他の人がコメントしてくれてうれしかった」と笑顔。やってはいけないことを尋ねると「住所や電話番号は教えちゃいけない」「人が嫌な気持ちになることは書かない」という答えが次々と返ってきた。
クラブを指導する田中靖浩教諭は「こういう場合はどうだろうと、頭で考えさせることが大事。中学でスマートフォン(高機能携帯電話)を持つ子も出てくる。今からSNSの基礎を学べばうまくいく」と話す。
[日経新聞11月13日夕刊P.9]
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