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定年後は「晴耕雨読」「悠々自適」……。そんな夢を打ち砕くのが「リストラ」だ。現在、リストラは実際どのように行われているのか。そしてリストラに遭ったら、老後をどう過ごせばいいのだろうか。
「老後のことを考えるよりも、目の前の生活をどうするか――。中高年にとってはそのくらいに厳しく、深刻な状況になっている」
ファイナンシャルプランナーの藤川太氏はこう切り出した。代表を務める生活デザイン株式会社は、リストラなどに直面する40〜50代の会社員にとって「駆け込み寺」となりつつある。その多くが中堅・大企業に勤務し、リストラや賃金の慢性的な伸び悩みにより、住宅や車のローン、子どもの養育費などのやりくりに苦しむ。
「40代半ば〜50代の社員は新卒で入社してから30代半ばまでくらいの間に、年功序列型賃金制度の影響を受けてきた。だから、賃金が全般的に高い。リストラになり、転職をする際にその賃金のままで受け入れる会社は少ない」(藤川氏)
賃金が高いことが皮肉にも、生活を苦しくする引き金となるのだ。相談を受けたケースでは、転職後、年収で少なくとも3割前後は減ることが多いという。この現実を知るだけに“できるかぎり現在の職場にしがみついたほうがいい”とアドバイスをしている。
それでもリストラに遭い、退職せざるをえないこともある。その場合、「早期退職優遇制度」などを利用できるならば、割増退職金で住宅ローンなどの支払いができ、老後は退職金を“財産”に生きていくこともできる。最近、相談に訪れた、大企業に勤務する40代の男性は、2000万円以上をもらって辞めた。しかし、これは相当に恵まれたケースだという。
「早期退職優遇制度」は、通常は退職金に加算金(割増額)が加えられた額が支給される。かつては、50歳で辞める社員に月額給与の30〜40カ月分の加算金を退職金に上乗せした企業もあった。しかし、この割増額は特にリーマン・ショック以降、全般的に減る傾向にある。
***** 会社が倒産しなくても退職金はアテにならず
もっとも深刻なのは、勤務していた会社が倒産になったケースだ。状況次第では、退職金が支給されないことすらある。
「これでは、生活がボロボロになる。相談を受けた40〜50代で、首都圏に住む人たちの住宅や車のローンの支払いは、月に平均13万円前後。これだけの出費がありながら、退職金が出ないようでは生活が成り立たない。とりあえずは“背水の陣”で働き、老後はなんとかなると思うしかないのではないか」(藤川氏)
この状況に陥った場合は、生活が苦しいために不利な労働条件とわかっていてもそこで働く傾向がある。最近は、非正社員になるケースも目立つ。年収は400万円台が多く、手取りにすると、300万円前後になることすらある。50代で転職し、正社員になれる人は非常に少ない。
藤川氏は倒産の憂き目に遭わずとも、退職金の認識を変えたほうがいいという。現在、大企業の60歳定年の際の退職金の相場は、2000万〜2500万円といわれている。2009年に、日本経済団体連合会が発表した調査結果では、「標準的に進学し、学校卒業後直ちに入社し、その後標準的に昇進・昇格した者」が60歳で定年退職した場合の退職金は、総合職・大学卒で2417万円だった。(「『2008年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』の概況」)
この額が今後、3分の2くらいの額にまで落ち込むことがありうると見ている。「今、60歳の定年退職時に3000万円をもらえる会社も、10年後には2000万円になる可能性がある。このくらいに下げないと、積み立て不足の問題を解決できない」(藤川氏)。
多くの大企業が長引く不況と膨れ上がる人件費のために退職金の積み立てが足りない。この十数年の間にポイント制や前払い制度の導入などで改革を行ってきたが、依然として解決していない。
大きな理由は、現在の退職金制度や年功序列型の賃金制度が、企業の売り上げが年を追うごとに増えることを前提として出来上がったものであるからだ。いまのままの制度を維持して今後を乗り越えることはもはやできない、ということだろう。
***** 「資格はとったけれど」高齢難民が急増する
藤川氏は、会社員の意識のあり方にも問題があるととらえる。リストラに遭い、相談にくる人の大半が「自分は大丈夫」と思い込んでいたという。「会社の危機を他人事として見ていた。考え方が甘く、キャリアの棚卸しもできていない。だから、転職はなかなかできない」(藤川氏)。
資格の取得などに活路を見つけようとする人もいる。しかし、「こういう人は資格を取っても転職がスムーズに進まないのではないか」と藤川氏は指摘する。「自信がないから、資格に逃げるのだろう。50代でリストラになった人がファイナンシャルプランナーの資格を取った。だが、受け入れる会社はなかった。資格をとっただけでは、即戦力といえないことすら認識できていない」(藤川氏)。
結局、リストラに遭ったときのダメージを極力少なくするためには「お金を貯めるしかない。少なくとも半年間の生活費は確保しておくこと」(藤川氏)。民間の保険商品は、入院時はともかく失業時には頼りにならない。収入は唯一、雇用保険の失業給付によるものだけとなるが、その期間や額に制限がある。
失業中に住宅ローンなどを返済することができない人は、やはり増えているようだ。「すぐに金融機関に行き、返済期間や金利について相談をしたほうがいい。前提として日ごろから滞納をしないことが大切」(藤川氏)。
老後については、“高齢難民”が現れると藤川氏は予測する。収入はもちろんなく、退職金もさほどない。蓄えは長い失業期間で消える。受け取ることができる公的年金は当然、少ない。この状況で離婚をしたり、相手を失ったりするとひとりで生きていかざるをえない。病気になることも十分考えられる。
たとえ夫婦で健康に老後を送ったとしても、厳しい生活であることに変わりはない。総務省の家計調査(08年)では、高齢者世帯で世帯主が無職の場合、生活費が足りないために、月平均で4万1000円ほどを預貯金から崩し、使っていることが明らかになった。このペースでいくと年間で50万円近くなり、20年で1000万円が消えていく。生活費にこれだけの額が上乗せされると、まかなうことができる人は一層、少なくなる。困ったことに、平均寿命がさらに延びることが考えられる。厳しすぎる老後になるのだ。
これで公的年金が救いになればいいのだが、それもまた期待ができない。
「大企業に長く勤務し、運よく定年を迎えたとしても、受け取る年金(この場合は厚生年金)の額は年間で200万円台が多い。これに企業年金が100万円ほど加算されて、年間300万円台の額を受給できれば相当に恵まれた身。だが、今後はその数も確実に減っていく。特に40代は減額が予想される」
例えば、60歳の定年まで勤務した人と、45歳でリストラになり、退職金(600万円)を受け取り退職した人の老後も含めたシミュレーションである。
前者は定年まで年収800万円をなんとか維持し、2000万円の退職金を受け取る。老後は、年金が年間225万円。一方で、後者は非正社員として年収450万円で60歳まで働く。その場合の老後は、年金は年間で192万円となる。双方とも決して生活は安泰といえないが、とりわけ40代でリストラになると、生活が苦しくなるのがわかるだろう。
多少は景気が良くなりつつあるようだが、今後、企業も国も低成長が長く続くことには変わりない。悪条件がこれだけそろうと、どうやら、“高齢難民”になる人が増えるのは避けられそうにない。少なくとも物価などが高い首都圏で生活を続けることは難しく、地方に行かざるをえない人は増えるだろう。それでも生活が苦しいことに変わりない。
とはいえ、生活保護を受けることは様々な制約があり、簡単ではない。財政難もあり、今後、そのハードルは高くなる。藤川氏は締めくくった。「いまの40〜50代で、死ぬまで働かざるをえない人は間違いなく増えてくるだろう」。
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