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http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1210/04/news004.html
9月初旬、東京都庁に警視庁の捜査員が汚職事件の関連で家宅捜索に入った。メディアが大きく扱わなかったため、事件を知らない読者も多いはず。だが、この家宅捜索には重大な理由があるのだ。それは……。
■1回当たり1万6000円でなぜ?
先月、新聞記事を読んだ友人からこんなメールが届いた。
「1回当たり1万6000円で逮捕されちゃうの?」
事件とは、次の一件を指す。
首都直下地震に備えるため、東京都水道局が民間企業に倉庫の建設工事を発注した。この際、建設会社が入札を担当する都の交通局係長を接待した。係長側は建設会社に対して入札情報を漏洩するなど便宜を図った。
一連の行為が贈収賄容疑の対象となり、贈賄側と収賄側が同時に警視庁捜査二課に立件されたというのが大まかな構図だ。各種報道によれば、係長は都内の飲食店で計68回、計約110万円の接待を受けたという。
メールを送った私の友人が反応したのはこの部分だ。110万円を68回で割った1回当たりの接待料金は単純平均で約1万6000円。この程度であれば、民間企業同士の間ではさほど多くない金額だ。
入札情報を事前に漏らすのは明確な犯罪行為であり、金額の多寡が問題ではない。警視庁捜査二課が厳正に捜査した結果だ、そう考える読者も多いはず。
ただ、捜査二課は警視庁内でも多忙を極めるセクションとして知られる。「担当分野である詐欺や横領、贈収賄でも金額や社会的インパクトの小さいネタはやらない」(関係筋)との事情もある。
ではなぜ、都庁を舞台にした贈収賄が立件されたのか。何度も触れるが、贈収賄の容疑事実の1つとなった金額は110万円にすぎない。
以下は9月4日に配信された時事通信社の記事だ。
東京都水道局の発注事業をめぐる汚職事件で、警視庁の捜査員約30人が4日午前10時すぎ、新宿区西新宿の都庁第二本庁舎に家宅捜索に入った。
黒いかばんや紙袋などを手にした捜査員らは、硬い表情のまま、収賄容疑で逮捕された大機基宏容疑者(49)が3月まで係長を務めていた同局営繕課に入っていった。
〜(略)〜
■家宅捜索の意味合い
現役の通信社記者時代、私は何度か東京地検特捜部の家宅捜索を取材した。捜査対象となった企業や個人宅に対し、数十人の検察官や事務官が“行進”するお決まりの構図だ。
一方、捜査対象となった当事者はこの“行進”を極端に嫌がる。企業や組織の信認が著しく低下する上に、従業員や職員の士気がガタ落ちになるためだ。
「捜査対象者のプライドを粉々にするのが派手な家宅捜索の本当の意味合い」(ベテラン弁護士)との声もある。
日頃ほとんど表に出てこない警視庁捜査二課が、都庁の担当部局を心理的に追い詰めるために派手な家宅捜索をやったのか。半分正解であり、残りには別の事情が潜んでいるのだ。
今年6月、私は『ナンバー』(双葉社)という短編集を上梓した。ナンバーというタイトルは、捜査二課の別名から取ったものだ。
二課の中には、第一から第五まで知能犯捜査係が存在する。警視庁内では“ナンバー知能”と呼ばれる。
この短編集の中で、私は都庁を舞台にした贈収賄事件のストーリーを紡いだ。数年前、捜査関係者に取材した際、「都庁はおいしい」との言葉を聞いたからだ。
なぜおいしいのか。取材に協力してくれた数名の関係者の返答は概ねこうだった。
「警視庁は地方警察の1つであり、予算権は東京都庁が握っている。都庁のスキャンダルを炙り出せば、警視庁の存在感が増し、予算獲得時に優位になる」――。
また、こんな声も聞いた。
「立件までいかなくとも、都庁に“貸し”を作ることになるので、担当した捜査員は高く評価される」――。
残念ながら、先に明らかになった実際の都庁の贈収賄事件の詳細は取材していない。ただ『ナンバー』の著者としては、事件の背後にこうした思惑があったのではないかと想像している次第だ。
地味な扱いの記事の背後に、こうした事情が潜んでいると分かった上で読み解いていくと、ニュースはなかなか面白いのだ。
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