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2012年09月25日(火) 週刊現代
異色座談会 年収3億円×年収300万円 開成→東大 同じ学歴でもこんなに違う生活と考え方
座談会登場人物(年齢は全員アラフォー)
外資系証券会社トレーダーA氏
東大工学部を卒業後、外資系証券会社にトレーダーとして入社。年収は倍々ゲームで増えていき、リーマンショック前には3億円を達成。都心に億ション、軽井沢に別荘あり
地方公務員B氏
東大法学部を卒業後、外資系メーカーに入社するも1年で辞め、父方の故郷である関西の政令指定都市の職員に。現在の年収は700万円。よほどのことがない限り定時に帰宅
負け組弁護士C氏
東大文学部を卒業後、ロースクールに特待生として進学するも司法試験になかなか受からず、30歳を過ぎてから弁護士に。現在は首都圏の弁護士事務所に勤務。年収300万円
弁護士なのにカネがない
B 高校時代には、お前らの年収に100倍の差がつくなんて想像もできなかったな。
A 3億円は全盛期の話ですが、たしかにCの300万円はキツイですね。
C キツイとかお前に言われたくない。でも俺も、自分が30過ぎて家賃4万円の風呂なしアパートに住むとは思ってなかった。
B Aくんはどんな生活をしているの?
A 結婚するまでは家賃50万円の六本木のマンションに住んでいましたが、一昨年に結婚して、赤坂の億ションを買いました。軽井沢に別荘もあります。車はベンツのSクラス。昨年出産した奥さんは主婦で、生活費として月に100万円渡しています。
C なんで月に100万円もかかるんだよ!
A 奥さんが六本木のミッドタウンでママ仲間とランチするし、家族3人で寿司屋にも行くし。とにかく奥さんが浪費家だからね。
B ちょっと待てよ。俺は回転寿司にすら最近行ってねえよ。吉牛(吉野家の牛丼)とコンビニ弁当のローテーションだよ。
A 吉牛は悪くないが、回転寿司は興味ないな。それにしても、東大出て弁護士になって年収300万円って、何かおかしいんじゃないの?
C 大学4年生の時に私立のロースクールが生徒を集めてて「入学金、授業料免除」って言われたんだ。飛びついたんだが、なかなか試験に受からなくて。30歳過ぎた新人弁護士に、いまろくな就職先はないよ。
B いわゆる「イソ弁(居候弁護士)」か。
C 給料が額面で月30万円、年収は手取りでちょうど300万円。服を買い替えるカネもデートするカネもないから、弁護士になった2年前から女性と付き合ったこともないですよ。最近、「弁護士童貞」という言葉が流行ってるんですが、僕もそれです。
B たしか高校時代の成績はCのほうが良かったんじゃない?
A そうです。特に俺は英語なんて赤点寸前ですよ。
C 外資系証券のトレーダーって英語できなくてもいいの?
A 「マイン(買う)「ユアーズ(売る)」「ダン(取引完了)」、この三つがあればとりあえず大丈夫かな。
B・C ホントかよ!
A トレーダーに必要なものは「運」と、あとは説得力だから。
B どういうこと?
A ものすごく簡単に言うと、株とか債券の売買はゲームだから、同じルールだったら「持ち時間が長い」ほうが勝つ。つまり、上司を「あと3日だけ待ってほしい」と説得できるかどうかで、ゲームの勝敗がまるで変わってくる。
C 俺でもできるかな。
A うん、できるんじゃないかな。ウチの高校から東大に行った奴で、オタクっぽくなければ、できると思うよ。3億円までいくかどうかは別として。
「俺は権威が欲しかった」
B しかし、アメリカでは公的資金が入ったこともあって、「証券会社が諸悪の根源」みたいな世論があるでしょ。日本にも外資系証券への嫌悪感みたいなのは存在する。そういうのは気にならないの?
A ならないですね。理由は明確で、僕はおカネを手に入れて自由を買いたい。10億円貯まったらセミリタイアするつもりです。自由というのは、そういった「世間の偏見」からも自由ということです。
C 実は、人生の最終的目標が「労働からの解放」である点では、俺も同じ考え方なんだよ。父親は民間企業の窓際族で、寝言で「○○(上司の名前)ぶっ殺すぞ!」とか叫びながら定年までしがみついてた。あんな生き方はしたくないってずっと思ってきた。
B しかし、年収300万円では一生解放はされないな。「働くことが美しい」という考えはないの?
C それ、僕は日本の洗脳教育だと思いますよ。マルクスを読めって感じです。基本的に、労働とは搾取されることですから。『経済学・哲学草稿』に〈人間の供給が需要よりはるかに大きいとき、労働者の一部は乞食の状態か餓死に陥る〉と書いてあります。
A そう思ってるのになんで300万円?
C 俺は権威が欲しかっただけで、弁護士の仕事がやりたかったわけじゃない。このままじゃヤバいと思ってるよ。Bさんは、なりたくて地方公務員になったんですよね?
B うん、メーカーに勤務したけど性に合わず、親父の故郷で役所に転職した。
A 中央の官僚ならともかく、地方公務員って抵抗なかったですか。
B ないね。だって何の不満もないから。不自由しないカネをもらい、転勤もなく、倒産の心配もない。そうすると、人生設計がとても立てやすい。
C 結婚・子育てとか。
B もっと先の、老後の暮らしとか。それこそ自分の葬式まで計算できる。地方だけど敷地面積200坪の自宅は豪邸と呼べるし、クルマも自分のベンツと奥さんの国産車がある。
A ・・・・・・失礼ですが、それって嬉しいんですか。
B 嬉しいよ。そこには安心と安全がある。奥さんも地元のそこそこの資産家の娘だし、二人の子供たちの将来も安泰だろう。
A 自分の能力がもったいないとか思わないですか。
B まったく思わんね。俺に言わせれば、東京で3億円稼ぐトレーダーなんて、巨人の選手と一緒だよ。現実味がないから、憧れる対象にもならない。
C 俺が言うのもなんですけど、スケールの小さい人生を選びましたよね。
B スケール?俺は自分の家族が大事だし、親も大事。両親も呼び寄せて近くに暮らしてる。地元ではステータスがあるから、飲み屋でも大きな顔ができる。この「ローカルな無敵感」って、けっこうスケールでかいと思うぜ。
A たとえばマンハッタンの金持ちは、子供の幼稚園に年間400万円のコストをかけるそうです。カネを使って最高の教育、最高の衣食住を手に入れる。そんな人生に憧れません?
B 俺に言わせると、それは「エントリーコストが高いだけのバカな人生」ということになる。もっと安いコストで、マンハッタン以上の幸せは手に入るよ。
A 世間を知らない田舎っぺ大将、という気もしますが。向上心がない。
B 知らない世界への興味を閉ざすことによって楽になる人生もあるよ。
C 地方の役所だと、東大出身は珍しいでしょう。
B ほとんどいないね。
C 自分より無能な上司が「キミは東大出てるのにこんなことも知らんのか」とか言ってきません?
B 言ってくる。
C そんな人たちと給料が同じ、ということに違和感を持たないんですか。
B その点はもう諦めているよ。公務員だから。
A こういう場だからハッキリ言いますけど、やはり僕はそういう考え方には共感できない。たとえば原始時代だって、マンモスがどこにいるか必死で探して、殺して獲ってきた人間が偉いわけでしょう。でも役所の仕事っていうのは、誰かが獲ってきたマンモスの肉をどう分配するかを決めるだけ。
B それは上は財務省から下は町村役場まで、役所ってのはそういうもんだ。
A ハッキリ言って所得税が高すぎてムカつきます。一生懸命稼いでいる人間から高い税金巻き上げて、しかもそれをヘボい差配でバラ撒くんだから、成功した投資家がシンガポールに移住するのも理解できる。
B 人間社会にはマンモスを積極的に獲る人と、自分は働かないけどもらうものはもらう、という人が共存している。そこには調整弁が必要で、それを担っているのが役人だから。
プライドだけは高い
C でもそもそも、証券会社のトレーダーがマンモスを獲ってきたってたとえには無理がないか?
A どうして?
C お前らは他人のカネを預かってポーカーしてるようなもんでしょ?それで勝った時は莫大な報酬を得て、負けた時は国に救済してもらう。どう考えても、汗かいてマンモス獲りに行く仕事とは違うだろ。
A そこに日本の高等教育の問題があると思う。東大的発想の限界と言ってもいい。結局、いまだに「衆愚政治」なんですよ、日本は。「第一次産業が国の礎、金融はうさんくさい」なんて価値観を国民に植えつけておきながら、将来の国のビジョンがまったくない。シンガポールのように金融立国になる道だってあるはずなのに。
C たしかに「国の進むべき姿」も教わっていないし「ノブレス・オブリージュ」も教わっていない。だからAみたいな、カネを稼いで自分だけ幸せだったらそれでいい、という人間が出てくるんだ。
A それは資本主義経済の一つの帰結にすぎない。
C だから嫌なんだ。俺がさっき「労働からの解放」と言ったのは、資本主義からできるだけ距離を置きたい、という意味でもある。
B まあまあ。つまりCくんは、単純労働者にはなりたくない、かといってAくんのような資本主義の権化のような人間にもなりたくない。でも権威は欲しい。それで『山月記』の虎みたいな、世間に順応できない人間になってしまった、というわけだ。
A お前の長期的な人生のビジョンはどうなってるんだよ。
C 一つだけわかってるのは、このままイソ弁やっててもジリ貧だってこと。知り合いにソーシャルアプリでメチャクチャ儲かっている奴がいて、ああいうことを始めようかと。
A 現状維持よりはよっぽどいいな。ビジネスマンの常識だけど、一度下がり始めた給料が、同じ仕事をしていて再び上がることは絶対にない。儲かるビジネスは、業績のいい時にジョイン(参加)するか、新しいことを始めるか、二つに一つしかない。
B Cくんは家族はどうするつもりなの。
C もちろんこのままの給料で東京で結婚・子育てをするのは不可能です。だからいま考えているのは、フェイスブックとかのソーシャルメディアを使って、「東大卒の弁護士」ブランドに飛びつく金持ちのお嬢さんを捕まえることです。
A 年収300万円で?
C 世の中には「ウチのダンナは東大卒の弁護士なんです」と一生言い続けたいだけの人種が絶対いる。もちろん、容姿などにはいっさい条件はつけない。
B だったらそれこそ、地方で弁護士やればいいんじゃない? 開成→東大の弁護士なんて見たことない、という田舎の金持ちを捕まえればいい。
C いや、僕は東京に残りたいですね。いつかは天下国家を論じるような立場の人間になりたいですから。
A 本当にプライドばっかり高い奴だな。
日本はどこで間違えたのか
C Bさんに訊きたいんですけど、地方公務員やってて、いまの国会のアホさ加減はどう思うんですか?
B 国政? 正直言ってどうでもいいなあ。
C どうでもいいって、行政マンでしょう? 国政に無関心でいいんですか?
B 橋下大阪市長を見てそう思うのかもしれないけど、基本的に市役所のやってることなんて、明治時代から変わってないよ。俺たちの仕事において重要なのはこれまでの蓄積であって、新しい政策ではない。そもそも国から下りてくる政策に反抗するのは不可能だし、そんなことしたいと考えている役所の職員はいない。
A 俺たちと真逆の発想ですね、それは。俺たちは国とか自治体なんて信用してないから、できるだけ「生きていくスキル」を身につけたいと思っている。生きていくスキルとは、すなわち儲けるスキルです。それが社会を生きる上での「武器」になるわけです。
B 何度も言うが、俺はそんなスキルに興味はない。俺たち自治体職員が守り育てるべきスキルはある。それは、地方ならではの企業だったり職人さんが持っている、「ものづくり」のスキル。皆に尊敬されるような技術だ。
A 完全に文部科学省に洗脳されてますね。陶芸家は陶器に詳しいし、電器屋さんは電化製品に詳しい。それで言うなら、俺たちはカネに詳しいんです。カネにかかわることなら、他の業界の人には負けない。
C そんなこと威張って言うなよ、恥ずかしい。
A 恥ずかしいことは何もない。世の中はファイナンスの流動性が担保されていないと発展しないんだ。田舎のお年寄りみたいに、銀行預金に数千万円預けていても、国民全体には何もいいことはない。俺たちのことを虚業とか呼ぶけど、実業を支えているのは俺たちだという自負がある。
C 思ったんだけど、AもBさんも、自分の人生こそが幸せで正しいと思っているでしょう。
A・B うん。
C 年収300万円の俺に言わせてもらえば、どっちも別に幸せじゃないよ。債券が売れた売れないで震える生活も、ローカルな無敵感を味わう生活も。
A じゃあ、お前が思う幸せな生活は何なんだ。
C それがわからないから困っている。
A 少なくとも、Cは小学校4年生から塾に行って、5000万円くらいの教育費がかかっているはず。そんな人間が年収300万円では、どう考えても効率が悪い。非効率なことをなくして最適解を求めることが社会全体の幸せにつながっていくんじゃないかな。
B さっきAくんが言った「この国の教育が間違っている」という意見には部分的には賛成する。CくんがAくんの人生も私の人生も否定するのは、戦後この国が「国家の芯」のようなものを一切提示せずにやってきたからだと思う。
A 同感です。
B 家族を最小単位とした共同体社会に戻るのか、それとも個人主義の金融立国を目指すのか。
A いまの日本はあまりにも中途半端ですよ。金儲けしすぎる若者が潰されたりする一方で、東京の共同体なんて完全に崩壊してるじゃないですか。
B そんな中途半端な状況だから、Cくんのように曲がりなりにも優秀な頭脳を持った人間が、進むべき道を間違えて路頭に迷ったりする。
C いや、路頭に迷ったは言い過ぎでは・・・・・・。
A しいて言うと、30年前の「官僚が偉い」という時代よりは、多様性が出てきたのかなと思う。学歴なんて関係なく、「儲ける奴が偉い」という社会のほうが健全です。
B まあ、日本はそんな国には絶対ならないけどね。
「週刊現代」2012年9月22・29日号より
http://gendai.ismedia.jp/articles/print/33568
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