02. 2013年1月24日 00:26:27
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再燃する通貨戦争:日本が火蓋を切ったゲーム 2013年01月24日(Thu) The Economist (英エコノミスト誌 2013年1月19日号)通貨安を達成するための戦いがまた始まった。 「通貨戦争」という言葉が再び使われるようになってきた〔AFPBB News〕
英国の多くのサッカー場は、観戦する上で問題がある。最近は健康と安全上の理由から、スタジアムは全員が席に座って観戦するようになっているが、座ることを拒むファンがいる。 こうしたファンは試合中に立ってしまうため、後ろの観客もそれに倣うしかなく、最終的には、グラウンドのその部分では全員が立ち上がることになる。誰の視界も良くならないが、全員が快適でなくなる。 外国為替市場も今、同様の問題に直面している。何しろ今、ほぼすべての国が、自国の輸出業者が価格優位性を持ち、市場シェアを獲得できるよう、自国通貨を弱くしたがっている。 だが、ある通貨が下落すると、その他の通貨が上昇しなければならない。通貨高に見舞われた国々は、再び自国通貨を下落させる対応を取り、最後には世界が振り出しに戻るのだ。 各地で高まる通貨高への懸念 ブラジル財務相のギド・マンテガ氏は2010年9月にこのプロセスを「通貨戦争」と表現し、この1月半ばにはロシア中央銀行の第1副総裁、アレクセイ・ウリュカエフ氏が通貨切り下げ競争の再発について警告するために、再びこの表現を持ち出した。 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長、ジャン・クロード・ユンケル氏は先日、単一通貨の為替レートは「危険なほど高い」と言った。ノルウェーの中央銀行は、自国が住宅ブームの真っただ中にあるにもかかわらず、通貨クローネの強さのせいで中銀が利上げに慎重になっていることをほのめかした。 今回の小競合いの発端は、安倍晋三氏が昨年12月に日本の首相に選ばれたことと、経済政策を改めるという同氏の公約だった。特に安倍氏は、日銀がインフレ目標を今の2倍の2%に引き上げ、目標が達成されるまで国債を買うことを望んでいる*1。 安倍氏の目的が達成されれば、日本の金利はようやく実質ベース(インフレ調整後)でマイナスになるだろう。デフレのために、過去10年間の大半は、景気が低迷していたにもかかわらず実質金利がプラスだった。これが円を高止まりさせ、輸出業者の暮らしを困難にしてきた。 *1=日銀は1月21〜22日に開いた金融政策決定会合で、2%の物価安定目標を採用することを正式に決めた 当の日本人も面食らう急激な円安 安倍晋三首相の発言をきっかけとした円安は、歴史的にも急激だった〔AFPBB News〕
安倍氏の発言は為替市場に大きな影響を及ぼし、昨年10月には1ドル=78円だった円相場を89円まで押し下げた。ドイツ銀行のアラン・ラスキン氏によれば、これは1971年のブレトンウッズ体制崩壊以来、過去5番目に急激な円安だったという。 日本人ですら、この円安には少し面喰っているように見える。 日本は海外からのエネルギー供給に大きく依存しており、1月15日には経済再生担当相の甘利明氏が、過度の円安は輸入価格を上昇させると警鐘を鳴らした。もしかしたら甘利氏はここへ来てようやく、日本がより高いインフレ率を望むなら、一部の物価が上昇しなければならないということに気付き始めたのかもしれない。 最近の円安は、他国経済に対する圧力を高めている。2013年に入って以降、最も強い通貨の1つはユーロだ。ユーロは単一通貨崩壊の可能性が薄れたという感覚によって支えられてきた。こうした心理の変化の副作用には有益なものもある。例えば、スペインやイタリアの国債利回り低下などだ。 だが、大陸欧州の製造業者の生活をより困難にするため、ユーロの上昇は有益な副作用の1つとは言えない。 スイス中銀の成功が物語ること ユーロはスイスフランに対してさえ上昇している。2011年と2012年はスイスフランが非常に強かったため、スイスは世界中のどの国よりも多くの外貨準備を積み上げた。 スイス国立銀行(SNB)は、フランを無制限に増刷して外貨を購入することによってフラン相場が1ユーロ=1.20フランを超えないようにするという公約の一環として、こうした外貨準備を手に入れた。 SNBの戦術の成功は、自国通貨の上昇を望む中央銀行と、自国通貨を安値誘導したいと思っている中央銀行が直面する問題が異なることを浮き彫りにした。 自国通貨を支える中央銀行は、限りある外貨準備と、金利を上昇させる意思に依存する。国内経済に大きなダメージをもたらすやり方だ。それとは対照的に、決意を固めた中央銀行は、十分な通貨を創造するのを厭わず、インフレを心配しなければ、いつでも自国通貨を安値に誘導することができるのだ。 QEの副作用 現在の状況が極めて異例なのは、先進国の間で量的緩和(QE)が非常に広範囲に広がっていることだ。QEは、通貨を下落させるために特別に設計されたものではなかったかもしれないが、政策立案者は為替レートの下落を有益な副作用と見なしてきた。 ロシアのような発展途上国は、こうしたプロセス全体について皮肉な見方をしているかもしれない。だが、経済の歴史が示唆しているのは、こうした国が先進国に追いつくにつれ、新興国の通貨は上昇し、より豊かな国の通貨が下落するはずだということだ。 新興国はこうした自然な流れに抵抗してきたため、不自然な形でそれが起こらざるを得なくなっているのだ。 |