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2013/1/23 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
強権すぎる安倍首相のやっていること
最近の世論調査の結果を見ていると、つくづく野田民主党政権の罪は重いと痛感する。
発足から、たった1カ月。まだ何もやっていないに等しい安倍政権の支持率が6割近くをキープしている。まあ、この高支持率はご祝儀の意味合いもあるとして、次のような調査結果を目の当たりにすると、ギョッとするのだ。
安倍首相の経済政策全般については「期待できる」49%、「期待できない」32%。参院選で自公両党の議席が参院全体の過半数を「占めた方がよい」46%、「占めない方がよい」34%――。
いずれも朝日新聞の調査結果だが、衆院で自公両党が勝ち過ぎたことへの「揺り戻し」があるかと思ったら全然ない。自公独裁政権を望む声の方が多いのである。
この結果は衝撃的だ。「のど元過ぎれば」が日本人の悪い特徴なので、自民悪政は遠い昔のことなのだろう。加えて、野田への憎悪、反感の反動だろう。
だからこそ、野田は許し難いのだ。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「民主党政権は経済無策で、デフレ対策はほったらかし。景気回復の道筋を見せず、消費税増税に大きくかじを切り、国民の先行き不安は頂点に達しました。そんな状況で安倍政権が誕生した。高支持率は円安・株高への期待もあるのでしょうが、国民生活をメチャクチャにした野田民主党に対する反動であるのは間違いないと思います」
こんな世論調査の結果が出ると、安倍政権はますます思い上がるのだろう。結果、強権・独裁化が大手を振って進んでいく。何度も言うが、野田は万死に値する。
◆中央銀行を恫喝して胸を張る異常な首相
安倍自民のやりたい放題、独裁化の萌芽はそこかしこに見える。
総選挙直後こそ、安倍は「今回の結果は3年間の政治混乱を招いた民主政権に対するノーだ。自民党への信頼が戻ったわけではない」と神妙な顔つきだったが、最近はこんな謙虚な姿勢をとんと忘れているのがいい例だ。
そして、ついにはきのう(22日)、日銀を力でねじ伏せ、とうとう政府との共同声明で2%の物価目標をのませてしまった。
安倍は「レジームチェンジ(体制転換)ともいえる画期的なものだ」と得意満面だったが、法改正をちらつかせて、日銀に言いなりにさせるのはハッキリ言って恫喝だ。得意顔で、意気揚々とやるべきことではない。
「毅然とした態度ではね返せない日銀の白川総裁もダラシないが、時の政府が中央銀行の独立性を脅かし、金融政策をゴリ押しするなんてムチャクチャです。やむにやまれぬ最終手段としても、いかに日銀の独立性を担保するのかをキチンと説明しなければいけません。説明責任を怠り、鼻高々の安倍首相には危うさを感じます」(経済評論家・吉見俊彦氏)
安倍の日銀への強圧姿勢について、ドイツ連邦銀のワイトマン総裁は「中央銀の独立性を脅かす深刻な干渉」「為替相場の政治化だ」と痛烈に批判。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏も「日銀は政権の圧力を受けており、一定の独立性を求められる中央銀への信頼性を損なうことにならないか」と疑問を投げかけた。
4月には安倍が選んだ次の日銀総裁が就任する。子飼いの総裁を操り、さらなる金融緩和を求める安倍の姿が今から目に浮かぶ。
中央銀行に脅しをかける安倍政権の下、この国の経済は一体どうなるのか。
◆懸命に働けど報われない絶望社会が到来する
安倍の日銀恫喝の問題点は、中央銀行の独立性うんぬんの話だけではない。そもそも、日銀が金融を大幅に緩和しカネをじゃぶじゃぶと供給したところで効果はあるのか。ここも疑問なのである。
大マスコミは一行も報じなかったが、同志社大の浜矩子氏(国際経済学)は15日、日本記者クラブ主催の講演で「アベノミクスは“デフレ下のバブル経済”というタチの悪い状況を招く」とこう喝破した。
「日銀を脅し一段と金融緩和を進めても実体経済が活気づくことはありません。それは過去10年も続けた金融緩和で証明済みなのに、規模を大きくすれば何とかなるなんて発想は極めて無謀です。カネ余り状態が高じるだけで、一段と余ったカネは株や不動産など投機対象の商品に資金が流れ、資産インフレ=バブルが進行する。ところが、実体経済は引き続きグローバル経済(によるデフレ化危機)にさらされています。依然デフレ圧力は強く、容易に(インフレに)火が付くとは考えにくい。資産インフレと実体デフレが同時に進めば、その解消は難しいのです」
日本経済をむしばむ「需要の伸び悩み」や「過剰設備」といった難題に手をつけず、金融緩和を大幅に進めても喜ぶのは投資家や資産家だけだ。
加えて、安倍政権の金融緩和政策を受けて、進んでいる円安も危険と隣り合わせなのだから、始末が悪い。
「円安によって輸入品が上がれば、まず庶民の台所を直撃します。資材・燃料の輸入価格が上がれば、ガソリン代や生活必需品の価格高騰を招くからです。これは企業にとってもコスト高要因になる。グローバル規模のデフレ経済の中で、どの企業もコスト上昇分の価格転嫁は難しい。その分を相殺するため、賃金が一段と抑え込まれかねません」(吉見俊彦氏=前出)
資産バブルでマイホームは高根の花。円安進行で給料も上がらない。金融緩和策の結果、潤うのは不動産をすでに持っていたり、投資にカネを回す余裕のあるホンの一握りの富裕層のみ。サラリーマンは懸命に働いても報われない。そんな時代が来ることになる。
◆これ以上、権力をツケ上がらせれば暴走する
それなのに日銀を脅す安倍がメディアなどで、一種の英雄視されているのは奇怪だ。こんな調子で、安倍をツケ上がらせるのは恐ろしい。単細胞首相が他の分野でも強権を発動するのは見えているからだ。
消費税増税の強行を皮切りに原発再稼働や生活保護費削減に始まる社会福祉の切り捨て。財務大臣が終末期医療の患者を「チューブ人間」と表現するくらいだ。高齢者医療や介護、年金だって容赦なく削減に走るだろう。
弱者切り捨てで捻出したカネは「成長戦略」とか言って、法人税減税などの大企業優遇・救済策に回る。庶民が塗炭の苦しみを味わう中、集団的自衛権の行使や憲法改正による日本の軍国化も進んでいく。すでに始まっている国民生活無視の絶対権力化の行く末はロクなもんじゃないのである。
「ただでさえ、自公両党は衆院で絶対多数を握っている。国民が株高や円安に一喜一憂して監視の目を緩めると、権力者のタガは外れる。とりわけ安倍政権は改憲・軍事化路線です。今はネコをかぶっていても、必ずタカ派色を前面に出してきます。国民はそのことを肝に銘じるべきです」(五十嵐仁氏=前出)
アベノミクスに浮かれて歓迎する風潮が続けば、どうなるか。国民は権力の暴走の怖さにもっと敏感になるべきだ。
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