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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130122-00000306-bjournal-soci
Business Journal 1月22日(火)17時25分配信
民主党への期待の裏返しと、自民党への長らくの不信感……離党するあまたの議員や、乱立する政党など、複雑すぎる昨今の日本の政治。国会新聞で編集次長を務める宇田川敬介氏が、マスコミ報道という観点から、異論・反論交えて解説するーー。
2012年12月16日、第46回衆議院総選挙の投開票が行われ、第二次安倍晋三内閣が誕生、年が明けた現在、その体制下で政策が進行している。
今回の選挙は、民主党が10年7月11日の参議院選挙で大敗し、「ねじれ国会」の運営に失敗。その挙げ句、マニフェストを守ることなく、同時に消費税増税などを行ったことから、国民には「民主党に裏切られた」という考えが大きく広まり、民主党が惨敗したのだ。その結果、民主党が前回の選挙で否定された自民党と公明党で3分の2に当たる320議席を超える議席となり、離党者が相次いだ民主党も改選時230議席から57議席となったのである。
さて、その選挙結果に対して、マスコミ報道はこぞって「自民党が勝ったわけではなく、民主党が負けた選挙」という報道を行ってきた。
16日午後8時から、NHKを含むすべてのテレビ局が選挙の開票速報を行った。しかし、日本テレビ系列だけ『TOYOTAプレゼンツ FIFAクラブワールドカップジャパン 2012』の決勝戦を放送した。他局がすべて選挙特番であったのに対して、これはなかなか面白かった。この文章を読む人の中でも、選挙特番に飽き飽きしていた人も少なくなかったのではないか?
実際に、今回の投票率が59%だったということは、選挙に興味がない人が40%いるということになる。『クラブワールドカップ』の視聴率が13.1%だったが、日本テレビ系列が、その40%のうちの多くの注目を集めたことは間違いない。もちろん日本テレビ系列も、視聴率を狙ったわけではなく、FIFAとの契約の関係もあったと思うし、反対に、開票速報をやるべきだという局内の圧力も大きくあったのであろう。そのために、サッカーの画面を少し小さくして、余白で開票速報の結果や文字情報を流していた。
ただ、日本国民のほとんどが、そうした報道体制のほうがよいと感じていたのであろう。実際に日本テレビは、結果が出た午後10時以降にしっかり選挙特番を組み、今後の政治の動きや政局に対する議論などが報道されていた。
コレを見て私は、報道とは本来こうあるべきであると思った。
まさに投票が締め切られたばかりの午後8時、開票も行っていないうちから、誰が当選した、誰が落選したという、選挙の結果だけを見て、何が面白いのか。まだ開票もおこなっていないのに、自民党の当選確実候補者が100議席を超えて出されるという報道は、「出口調査」といわれるマスコミ独自のインタビューによって行われるものであり、各局の出口調査の答え合わせのようなものだ。
それでも、当選の報に喜びの声をあげる候補者、または思わぬ敗戦で議席を失った議員の敗戦の弁、そして各政党党首の話を聞くというのは、マスコミにおいて「当事者の生の声を伝える」という意味で目的を果たしているかもしれない。
この一連の報道の中において、テレビ東京系の開票速報番組『TXN衆院選SP「池上彰の総選挙ライブ」』で、MCを務めた池上彰氏の質問が話題になった。
池上氏は、選挙や政治の素人のように振る舞いつつ、最も政治家の本音を引き出した質問を行ったと言われた。例えば、未来の党に「負けそうな候補者の駆け込み寺」という表現をしてみたり、あるいは勝った自民党に対しても「自民が勝ったんじゃなくて民主が負けただけ」と言い放つなど、ネット住民を中心に「歯に衣着せぬ発言がいい」「タブーに切り込みすぎ」と大いに評判となった。
本来は、このような質問をしてこそジャーナリズムであり、池上氏は、普段の国民の政治に対する「暗黙の了解」をすべて言葉にして質問し、政治家本人に回答させたという点では非常に高い評価があり、また、この日の選挙特番の中では最も評判となったのだ。
だが、本当にそれだけでいいのだろうか? 本来ならば、誰が落ちた/受かったという結果や彼らの弁を見ることなどは、今後の政治にはそれほど関係ないこと。重要なのは、こうした投票結果が出たことに対して、その選挙に対する講評がしっかりされるべきことだろう。
選挙の結果には、しっかりと政策などを吟味した投票結果、または、過去3年の民主党政権に対する評価などが如実に表れていたはずである。その内容の分析はまったく行われることなく、選挙後に当事者のインタビューをするだけ。見る側も結果を見て満足するだけで終わっているというのは、民主主義とは国会議員を選ぶだけでしかないというような考え方を持っていることになるのではないか、と感じられる。そして、そのような報道姿勢が、ワイドショー内閣のような状態を生み出し、各党は政策の運営よりも人気取りに集中してしまう。これが、日本の安定した政治、安定した発展を妨げることにつながっているとさえ言えよう。
本来であれば、選挙直後の政治報道は、国会議員や党の代表個人の意見や感想ではなく、政党や候補が掲げた政策をしっかりと挙げて議論することが重要で、このようなお祭り報道を行っていることそのものに大きな違和感を感じる。というわけで、池上氏は、単純な勝ち負けだけでなく、政策に関する質問や公約に関する質問などを行った点は評価できるが、その政策に関する質問から、今後日本がどのようになるのか、それを見据えた報道につながらなかったのは残念である。
●あらためて選挙結果と今後の政策を考える
それでは、今回の投票結果を考えると、どのようになるのであろうか? 私なりに解説を加えてみよう。
まずは投票率を見てみたい。
前回の09年8月30日の第45回衆議院議員総選挙(「政権交代選挙」)が空前の高投票率であった。投票率は約72%。それに対して今回は史上最悪の59%であった(端数四捨五入)。この差は13%である。この13%の投票行動が、実は今回の選挙結果に大きく影響したといえるのではないか。
前回のような高い投票率の選挙であったとしても、投票に行かなかった人は28%もいたのである。この人々は、そもそも政治に興味が全く無い人々であり、すでに政治に対してあきらめている、もしくは政治によって自分の生活が変わらないと考えている人々であるといえる。また今回、投票に行きながら無効票となったものが204万票もあったという報道もある。これは、まさに、投票に行ったが支持政党がなかったということにほかならない。
そこで、今回投票に行かなかった人は2種類いることがわかる。前回の選挙結果をふまえて、政治に興味がない、そもそも選挙に全く興味がないという人が約30%いると仮定する。そして残り72%から59%を引いた13%が、今回の選挙に対して、支持政党がない、または、投票したいと思う候補者がいないために「わざと行かなかった」という人々である。
●公明党支持者など「固定票」と無党派層の「浮動票」
さて、投票は「創価学会員だから公明党に入れる」のように、しっかりと支持政党が決まっている人々がいる。支持政党が決まっている人々のことを、政治の世界では「固定票」という。一方で、支持政党が決まっていない、そのときの報道内容や公約、政治的な雰囲気などによって支持政党が変わる人々のことを「無党派層」または「浮動票」という。
固定票は基本的に選挙に行く人であり、浮動票は、そのつど選挙に行ったり行かなかったり、あるいはそのつど支持政党を変えたりする人ということになる。
前回の選挙で投票に行きながら、今回投票に行かなかった人の多くは「投票する政党がない」というものであることは報道の通りであるし、私自身もそのような声をよく聞く。
例えば55年体制以降の自民党に非常に強い不満を持っている「反自民」層や、反自民政権の中心として期待した民主党が、予想以上にひどいものであったということから、基本的にこれ以上民主党に期待することもできない、「脱民主」層などがこれに当たる。彼らは、そうでありながら、第三極政党にも全く期待できないという感覚を持っている。もちろん日本未来の党などは「元民主」でしかないし、また、日本維新の会も、事前に政策が一致しないなど、不安定さが否めない。要するに、「反自民を基調とした、ほかの中心政党を選べない人々」ということができる。そして今回の選挙では、この人々が、最も大きな票となっているのである。
この層を有権者数で見てみると、全有権者数1億436万193人のうち、棄権が4400万票ということになる。そして各党の支持率と票数は、このようになるのだ。
比例得票率 当選議員数比率
1.棄権 40.8% ー
2.自民 15.9%(1662万票) 61.3%(294議席)
3.維新 11.7% 11.3%
4.民主 9.2% 11.9%
5.公明 6.8% 6.5%
6.みんな 5.0% 3.8%
7.共産 3.5% 1.7%
8.未来 3.3% 1.9%
9.社民 1.4% 0.4%
10.大地 0.4% 0.2%
棄権票は自民得票の約2.6倍という数字になる。そしてこの中から全体の3割となる「投票に行かない人々」を引くと「反自民を基調とした、ほかの中心政党を選べない人々」が約1300万票ということになる。
反自民層という基調だけを見ると、彼らの多くは「塊の世代」ということがよく言われるが、その団塊の世代、昭和22年から昭和24年の3年間に生まれたのは806万人。その影響下にある世代(安保闘争世代)で、昭和26年までの生まれを含めても1082万人ということになるのである 。この数が、大体今回の票数と近似値になるところが数字のアヤなのかもしれない。もちろん、この数字が完全にイコールではない。団塊の世代であっても投票に行った人もたくさんいることは間違いがないし、また、ほかの世代でも、今回投票に行かなかった人は少なくないだろう。しかし、このように数字を見てみると、近似値が出てくるというのが面白いところなのである。
●第三極を詳細に分析してみる
さて、最後に第三極について解説を伝えておく。
第三極とは、「与党民主党でもなく野党自民党でもない層」という意味である。逆に言うと、それ以上の意味が存在しない。日本の場合、55年体制のときは「保守(右)」「革新(左)」という2つのイデオロギーがあり、その間に「中道」を標榜する政党があった。民社党などがその代表格とされていたのである。しかし、小選挙区制になって、ひとつの選挙区で1人しか当選できなくなったことから、実質的に二大政党制になり、イデオロギーにかかわらず、与党か野党か、に政党が分けられる政治体制になったのである
だが実際には、政治家が政策を出している以上、政党には何らかのイデオロギーが反映されている。そこで、図のような政党の配置とそれに対する支持層が出来上がり、政党がそのイデオロギーによって確立していることから、政党支持者(固定票)という人々が存在するのである。
さらに上表を見ると、その各第三極政党を支持する層の横には、常に無党派層が存在している。特に、民主党から離れてできた各政党は、第三極と名乗りながらも、常に民主党の支持層の近くにいることがよくわかる。一方、自民党から派生した第三極である「旧太陽の党」と「旧大阪維新の会」は、まさに自民党の左右の思想の端にいるのがわかるだろう。
今回の選挙では、その三極政党でも明暗が分かれた。日本未来の党は元民主党出身者が多く、新鮮味がなかったことが有権者に嫌われたといわれている。しかしそれだけではなく、その主張している政策が、共産党や民主党などほかの政党と重なってしまったことによって、第三極でありながら独自性がなくなったということが挙げられるのである。
一方、日本維新の会は、石原慎太郎代表と橋下徹代表代行が順次出演し、イデオロギー的に保守の人も革新の人も両方取り込めるような主張を行っていた。丁度、民主党政権において、旧民主党と小沢一郎氏が率いる自由党が連合した「民自合併」のような状態になっているのだ。民主党が前回の政権交代選挙で圧勝したのもまた、今回の日本維新の会が大躍進したのと同じ「明確なイデオロギーを見せずにおいて、無党派層への対応をしたこと」がその要因であるということになる。あとは、選挙後に意見の統一が図られればよいが、実は、双方が「自分の対応が有権者に受け入れられた」と考えることから、お互いに主張を譲ることがないので、結局、民主党のように分裂する可能性が大きいことを記しておく。
さて、今回は、あえて政治家や政党の個別の内容や固有名詞をなるべく使わずに、政治と政治報道について記載した。本来であれば、主権在民であり、その政治は国民が決めるものであるのにかかわらず、政治そのものが政治家の特権であるかのごとき報道をしてしまい、そのために国民と政治が乖離してしまっている現代日本。そのような演出をマスコミの報道そのものが行ってしまっており、同時に、国民が、政治に対して無責任に語り、そして自分で選んだ政権に対して無責任な態度をとったり、あるいは投票を棄権しているのにもかかわらず政治に不満を言うということが横行しているのである。そのような風潮を作り出したことそのものが、マスコミの問題であり、同時に、それが衆愚政治の入り口である。
(文=宇田川敬介/国会新聞)
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