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2013/1/18 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
見えない実体経済のエンジン役
4月に任期切れとなる日本銀行総裁の後任選びが始まったそうだ。安倍首相は今週火曜日に経済の専門家や閣僚を首相官邸に呼び、次期総裁について意見を聴取。候補者の絞り込みに着手したらしい。
日銀に対し、大胆な金融緩和を求めているとされる。意中の人は、それに応えられなければならないようで、新聞各紙は財務省や経企庁OB、大学教授の名前を挙げ、人物像を紹介していた。
英中央銀行のイングランド銀行は昨年、次期総裁を公募し、カナダ中央銀行総裁のカナダ人、カーニー氏を選んでいる。それを受けて日銀にも外国人招聘を求める声があり、英フィナンシャル・タイムズ紙は「イングランド銀行のタッカー副総裁を」と書いた。
安倍首相のハラの内は分からない。すでに決めているのかもしれないし、最終的には衆参両院の同意も必要だ。それを占うつもりはないが、少なくとも学者は、持説の立証をモチベーションにして金融政策を決める恐れがある。異質な文化や意見の人を引っ張り込むのは、ひとつの手ではあると思うが、臨機応変に対応できるか疑問だ。
もっとも最大の問題は、「総裁の条件」の前提となる経済政策がピンボケということだ。安倍首相が言う「大胆な金融緩和」とは、「物価上昇率が2%になるまで輪転機をぐるぐる回して紙幣を刷る」こと。むろん、市場をジャブジャブにしても、実体経済のエンジンがかからなければ意味がない。そのために規制緩和を進め、公共事業のカンフル剤もどんどん打つ。大震災やトンネルの天井崩落事故を目の当たりにした国民は、防災や復興目的のインフラ整備に反対しない。ただ、それで実体経済が上向くかというと期待薄だ。
日本企業の多くは、グローバル時代を生き残るため、海外進出を加速させた。大企業は、国内の生産拠点を減らし、海外に移転している。いくらカネを借りやすくなっても、設備投資は動きにくい状況だ。それでも構わず緩和すれば、カネは相場に向かうしかない。結局、実体が伴わないバブルを生むだけである。
日銀は、1985年のプラザ合意のあと、行き過ぎたドル安を止めるため、金融緩和に乗り出す。しかし、実体経済は動かず、土地や株価は狂ったように跳ね上がり、最後ははじけた。後遺症は今も続いている。その二の舞いになりかねない。
重要なのは、金融緩和を実需につなげ、日本経済のエンジンを動かすシナリオだ。
それを第一に考えれば、総裁選びの基準も変わってくるのではないか。
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