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2013/1/9 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
ダブル選のドサクサに紛れて「東京の顔」を射止めた猪瀬都知事が、五輪招致レースを本格化させている。きのう(8日)、国際プロモーション活動が解禁となり、「本当の正念場を迎える」と強調。
10日にはロンドンでも会見を開くというが、はたして何のため、誰のための「東京五輪」なのか。
「たかだか十数日間のお祭り騒ぎです。福祉、医療、教育、防災と重要課題が山積する中、巨額の税金を投じるのはナンセンス」
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が、こう憤った。招致委員会がIOCに提出した「立候補ファイル」によると、開催日程は7月24日から8月9日までの17日間で、運営費は3000億円。国立競技場の改修に、1300億円もの巨費を投じるという。
こんな酔狂な計画を実現するため、東京都は37億円の招致費用も投じる。招致できなければ全てパー。仮に招致がかなっても、3000億円が必要になる。なんともバブリーな話だが、「子どもたちに夢と感動を」とか言って、莫大な都税の浪費を正当化するのだから悪質だ。
「東京都は五輪のために4000億円を積み立てています。ただしこれは大震災以前の計画に基づいたもの。3・11を経た今、東京で生活する人たちのことを考えれば、『五輪貯金』を取り崩してでもやらなければならないことが多いはずです。だいたい感動だ何だと言っても、メディアが派手に演出し装飾している。例えば、原発事故で外出が制限された福島の子どもたちが、久しぶりに校庭に飛び出して思い切り体を動かしたときの感動に比べれば、なんと安っぽいことか。選手たちも安易に夢だ感動だと口にしているが、果たしてどこまで理解して言っているのか疑問ですね」(谷口氏)
もし仮に五輪に感動があったとしても、世界のどこで開催しようが同じ。東京招致の理由にはならない。
結局、東京での五輪開催を待ちわびているのは、甘い汁に群がる土建屋やイベント屋、スポーツ関連会社に、一旗揚げたいアマチュア選手ぐらいのものだ。中でも選手は、「東京五輪で活躍した」となれば、一生メシが食えるだろう。指導者になったり、全国を講演で回ったり、企業の広告塔になったりと可能性は広がる。五輪でのメダルを足がかりにタレントや政治家に転身した元選手も少なくない。五輪で活躍すれば、老後まで安泰である。
むろん、才能と努力は必要だ。だれもが目指せる道ではないが、彼らの強化にも税金は使われている。今年度の国のスポーツ関連予算は238億円で、メダル有望競技には30億円近くを計上。JOCにも25億円以上の補助金が支払われているのだ。
被災地の復興は遅々として進まず、社会保障費は年々膨張し、財政はアップアップになっている。そんな中、招致だ強化だと税金を使うのは、あるべき姿なのか。
一昨年の6月、「スポーツ立国の実現を目指す」としたスポーツ基本法が制定された。その規定に基づいたスポーツ基本計画は、「夏季五輪の金メダル獲得数で世界5位以上」などと具体的目標を設定。これによって「五輪命」のアマ選手に大っぴらに税金が渡るようになった。その上、「東京開催」となれば、さらに血税が使われるのは明らかだ。看過はできない。
「世界と比べると、日本の五輪選手への強化費は少ないとされています。しかし、彼らにカネが流れれば流れるほど、大衆のスポーツ振興は置き去りにされる。一般レベルのスポーツ振興にヒト、モノ、カネが注ぎ込まれなくなるのです。選手は望んでスポーツエンターテインメントの“商品”となった。メシを食うためにスポーツの道を選んだのです。もしスポーツ関連で税金を使うのであれば、そんな相手ではなく、普通に暮らしている人たちの幸せにつながるスポーツの環境づくりの方が大事だと思います」(谷口氏)
そもそもスポーツ選手になったのは自己責任だ。銀行や商社、メーカーに就職したサラリーマンと同じである。それなのに彼らは税金を受け取り、税金で東京五輪という舞台が整うことも望む。地道に生活している庶民からすれば、納得できない話である。
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