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憲法改定についての論説を書きました。ご笑納下さい。転載自由です。
笠井一朗20130107自公民維の改憲策動に抗う
http://homepage1.nifty.com/KASAI-CHAPPUIS/pdf/KASAIIchiro20130107.pdf
護憲派が「憲法9条世界の宝」など情緒的かつ非論理なキャッチで思考停止している隙に、2005年次に新憲法草案(第1次)を提出した自民党は、第2次草案を昨年4月に提出した。護憲派勢力は自民党草案に対抗する議論を展開しなければいけなかったというのが私の主張だが、やったことと云えば草案を批判することに終始したきらいがあり保身に徹してしまった感が否めない。
「GHQに押しつけられた」「日本固有の歴史や風土に立脚していない」といった自民党勢に対し、「たとえ押しつけられたものであったとしても良いものであるならば、、、」という展開では論駁したことにはならない。社会に影響力のある権力的性向を持った法学者が立法するのは洋の東西を問わず普遍的なことで、それが為「法による支配」「法治国家」と云われても私のような農民や労働者の合点がゆかないのは自然だと思うが、それでも尚、ジョンロック(1632-1704)らの社会契約論に端を発したであろう立憲主義を柱とすべきなのが、いわゆる最高法規としての「憲法」の存在意義であり、そうした法体系を整備しない国は主権国家としての体を成していない野蛮な国であり、教育するという名目での武力侵略が正当化(ノブレス・オブリージュ(仏)noblesse oblige=高貴な者の義務)された時代もあった。黒船4杯で開国せざるを得なかった日本がワイマール憲法を参考に国家としての法体系を整備したのは、東南アジアにおける西欧列強の植民地主義政策を知っていたからだ。ちなみに2003年、米軍のイラクに対する軍事侵略は大量破壊兵器を口実に開戦したが、後に、自由と民主主義を贈呈することが大義となっている。
自公連立政権は2007年に国民投票法を通しており、有権者の過半数ではなく有効投票数の過半数があれが草案を通過させることが出来る。仮に投票率が60%だとして有権者30%の賛成票で可決してしまうので、自公民維大連立が自民党憲法改正草案を通過させるための隘路は来年の参院選議席3分の2確保というハードルでしかない。参議院242議席中、自公民維合計で実に193議席もあり約8割を占める。もちろん193議席が全員改憲派というわけでもないだろうが、政党助成金の分け前をソロバンに含めているのが政治家だとすれば、党議拘束に縛られ、刺客を送ると脅されては歯止めも効かないだろう。
権力者の都合で立法するのだから、どのような法治国家もいかなる「憲法」も有権者の代表であるはずの先生方が官僚のレクチャーを受け、利権構造の枠組みに嵌められ、しっかりと権力志向を内在させるのにそれほどの暇はかからないはずだ。実はそういった性向を誰しもが持っていると考えれば、法治国家が人治国家の一形態に過ぎないことに気付く。と、哲学的な思索にふける余裕は余り残されていないので、タイトルの「改憲策動に抗う」に話しを戻す。立憲主義を総崩しにするのが自民党案なので、まず現行の日本国憲法の問題点も、その辺を重点的に挙げてみたい。自民党が現行憲法と改正草案とを対照させた文書をpdfファイルにしてアップしているので、そちらを参照してほしい。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
ご丁寧な「日本国憲法改正草案Q&A」も検証する上で重要な資料だ。
http://www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/kenpou_qa.pdf
「徹底した平和主義」と護憲派が自画自賛する9条だが、現行憲法9条1項にある「・・・国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」のフレーズは1928年パリ不戦条約の「締約国ハ国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ・・・」のもじりであり、以来、自衛のための戦争はこの限りではないという国際通念が定着した歴史上の事実がある。9条1項は自衛の為の武力行使は違憲ではなく、2項の戦力不保持も自衛のための戦力は担保されるとする自民党解釈は突拍子もない訳ではない。国家は為政者(権力者)が運営しているのが現実であり、為政者が権力の座に就き続けるために差別意識に働きかけ排外主義に拍車をかけ民衆の矛先をかわすのは、歴史を鑑みれば枚挙に暇がない。また自国経済が疲弊している折、求心力を保持するために戦争という有事に持ち込めば、国家権力が警察力や法的拘束力また時には武力を使ってでも自国民の人権を剥奪出来ることは、その可能性を自民党草案の「第9章 緊急事態」が示している。現法憲法を改正するならば、そういった可能性の芽を摘むことだ。「戦争」が差別や憎しみから生まれるのではなく、為政者の都合によって端緒付けられること、いざ開戦すれば当の為政者でさえもその終結点を設定出来ないこと、徹底した富の再配分が行われ貧富の格差は極致に達することなど、戦争の基本原理を前文と第9章に含め、不戦条約以来の解釈が挟み込まれるような余地を残さないものとすべきである。
「第1章 天皇」では、7条解散など為政者が特例として利用出来る一切の政治的可能性を排除すべきである。また人権条項に包括するかたちがよい。つまり自然人としての一切の権利を排除されず、同時にいかなる特権も有しないという条文を追加する。その際、大日本帝国憲法下で主権や統帥権を掌握していた歴史的事実を記述するのが良い。「徹底した富の再配分」が天皇家にもたらされたことや軍の最高司令官であったにもかかわらず戦犯の容疑を免れた経緯なども記述したいところだが、天皇家卑属の人権を侵害する結果をもたらす事にも繋がるので遠慮しておこう。
「卵が先か鶏が先か」の議論の余地がないのが国家と人民の関係だ。人民のいないところに国家は生まれない。人民の余剰生産力が国家を形作る素地を与える。その為政者が法律で人民を縛るのは皮肉な話しだが、公序を守るのは行政の必要な仕事ではある。人民に国籍条項を盛り込むと「国民」となる。国家主権とは主権在民の代理人である為政者が国を形作ったときの集合的な権力のことだが、その権力の庇護下で暮らす人民が国民であり、庇護下の民を縛るのは法律である。さて立憲主義における憲法とは主権在民であるはずの人民が便宜的に行政サービスを為政者に委任する際の契約書なので、「憲法」の中に「国民」という言葉が文の主語で存在してはいけないということになる。ところが現行の日本国憲法には、前文からして「国民」を連発している。4つのパラグラフのうち3つまでが「日本国民は」で始まっている。最後はご丁寧に「日本国民は、国家の名誉にかけ・・・」となっている。立憲主義に基づく最高法規(憲法)に人民が崇高な理想と目的を達成するにあたって「国家の名誉(国の誉れ)」をナニユエ意識しなくてはいけないのか。前文を無批判にありがたがる護憲派の方に問いたい、国家主義が丸見えではないかと。
GHQが提案した草案は(people=人民)だったのが、日本側で「国民」というワードにすり替えたという経緯がある。GHQにしてみれば天皇条項も「国民」も占領行政が円滑に行われるなればさして問題とはならない箇所だったことだろう。そもそも英語には国民にあたるワードが存在しない。(citizens of the state)と訳せないこともないが、日本語の「市民」が英語でいう(citizen)に当たるかというとそうでもないからややこしい。現行憲法「第3章 国民の権利及び義務」では「すべて国民は」で始まる条文が目に付くが,これは不適切で「何人も」が望ましい。
憲法が最高法規であると規定する「第10章 最高法規」が最後の方に現れることは大問題だ。これこそ真っ先に持ってくる必要があり、そうすることで「卵が先か鶏が先か」を、立憲主義に基づく契約書であることを明文化する効力がある。トカゲの尻尾のように最後の方に申し訳なく出てくるのでは甚だ心許ない。現行憲法の99条に「・・・この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」とあるが、これも「遵守義務」という縛りのキツイ言葉に替えた方が良い。草案の「第102条 全て国民はこの憲法を尊重しなければならない」は、お話しにならない。立憲主義を放棄した野蛮な国というレッテル付けをされかねない。
なお最高法規であるとするなら、条文に出現するワードの定義を下位法に委ねるような法律文は自己矛盾を内包することになる。例えば「第10条 日本国民たる要件は法律でこれを定める」は甚だ見苦しい。「法律で定める」というフレーズは数カ所で散見するが、憲法の基本理念にかかわるワードを下位法で規定してはならない。もちろん数を幾つにするとか細かなことを下位法で定めるのは構わないが、基本理念を左右する概念の定義については下位法に丸投げしてはならず、これを峻別すべきである。
更にいくつかの問題点を指摘できる。第12・13・21条で「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」となっている。「公益」とは国益を念頭に置いているだろうし、「公の秩序」とは国家の都合が優先されると解すことが出来る。「第19条 思想及び良心の自由はこれを侵してはならない」が草案では「・・・保障する」とあり、国家の都合次第で内心の自由は国家による裁量の余地があると解釈出来る。第3条2項で「日本国民は国旗及び国歌を尊重しなければならない」とあり、国家主義に対し内心の自由は認めないとなる。18世紀にルソーらの提唱した「すべて人間は生まれながら自由・平等で幸福を追求する権利をもつ」という思想(天賦人権説)が人権の根底にある考え方だが、自民党案では人権は国家が介在するもの(国賦人権説)となっている。そのことを憲法に盛り込むのであれば憲法とは名ばかりで、公序良俗を規定する一般下位法と全く変わらない。立憲主義に基づかない証だ。
現行の憲法で「第66条 ・・・文民でなければならない」とあるのが、草案では「・・・現役の軍人であってはならない」となっている。文民統制(武官が政治に参与してはならない)のことだが直截的表現が気になる。「第9章 緊急事態」が有事を想定したものであるのは「第9条 安全保障」の変更や「第71条3項 内閣総理大臣は最高指揮官として国防軍を統括する」と相まって疑問の余地はない。昨今の経済情勢を顧みれば「希望は戦争」と自暴自棄になる気持ちも分かるが、何でもありありの有事に際し自分は前線に赴くことはないはずだと高をくくっているだけでは済まされないのが平時と違うところだ。自公民維の大連立で憲法が変えられ、我々は「声なき声」の一人となるのか知らん。
自民党が第1次草案を提出して間もなく、私はサイトに以下のように記した。
・・・憲法9条を、その平和主義を「日米同盟に立脚した平和主義」へすり替え、ついでといってはあまりに無謀な「立憲主義の破棄」をその前文に盛り込むという挙に出てきた。なお、この前文はアイコラの極地で文章になっていないのは一目瞭然、とても新憲法起草委員会が言うような「平易でありながら一定の格調を持った文章」とはほど遠いのだが、より現代調に直すというのも「前文作成の指針」のひとつなのだから笑えない。現行憲法で「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」とあり、これに反するから「憲法改正」ではなく「新憲法制定」なのである。大げさに言えば、現行権力者によるクーデターと捉えても良い。・・・
http://homepage1.nifty.com/KASAI-CHAPPUIS/LiteraryMedley2006.htm#Ichiro20060717
第2次草案は、より明確に立憲主義を放棄し国家による人権介入を明記している。このような(憲法改定ではなく)新憲法制定は憲法違反であり許してはならない。さもなくばわれらは「国際社会において名誉ある地位」を失い、世界人民と連帯する術を失い、「自国のことのみに専念」する「専制と隷従、圧迫と偏狭」の中で生きることになる。第1次(2005年)憲法草案の表題は「新憲法草案」だったが、第2次(2012年)の表題は「憲法改正草案」となっている。立憲主義をより明確に切り捨てる中身となったにもかかわらずである。その意図は自ずと知れる。
昨年末、12月30日、22歳でGHQ憲法草案制定会議のメンバーとして日本国憲法の起草にかかわったベアテ・シロタ・ゴードンさんが89歳で逝去した。起草委員最後の人だった。すべて人間は生まれながら自由・平等で幸福を追求する権利(自然人としての権利)をもつ」という思想(天賦人権説)を日本国憲法に盛り込んだ中心人物だ。「われら」に「崇高な」というワードは似つかわしくないかも知れない。権力を付託したお偉いさんには頭が上がらないかも知れない。それでも云いたい、「われら」と代理人、主客転倒・本末転倒するなかれと。思い起こしたらよい。2007年2月13日、第1次安倍内閣の衆議院予算委員会の席、質問者亀井静香議員に対する答弁で「権力の頂点にいる私」というフレーズを使った。すぐさま「行政の長」と言い換えたが、衆議院TVでご確認いただきたい。頭の中身が知れる発言であるが内心の自由は確保して差し上げよう。
追補:念のため久しぶりに衆議院TVを覗いてみたら、なんと2010年より前のビデオは閲覧出来なくなっている!!! こりゃぶったまげた、NHKなどのマスメディアが流すニュースは数日でリンク切れとなるのが日本のジャーナリズムの有様だと諦めていたが国会機関もひどいモンだ。海外のマスメディアでは、いまだに2003年3月20日、米軍のイラク軍事侵攻の場面を閲覧出来る状態にあるというのに。先の大戦の極悪非道を日本政府が「謝罪」しないのは道理だ。仕方がないので音声だけでもアップしておく。問題発言は49分あたり。Audio50分32秒5920kB
http://kasai-chappuis.la.coocan.jp/NuclearPowerPlant/mp3/KAMEIShizuka20070213ABEShinzo.mp3
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