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2013年01月08日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆安倍晋三首相は、政府の日本経済再生本部(本部長・安倍晋三首相)の傘下に「産業競争力会議」(メンバー10人程度)を設け、1月中に議論を始め、産業競争力会議は規制改革、資金供給策を柱とする成長戦略を6月ごろに策定するという。
6月というと、7月21日の参院議員選挙直前である。つまり、この成長戦略を打ち上げて、国民有権者の支持を得て、大勝を果たしたいという強い願望が、込められている。実に巧妙な選挙戦術である。
安倍晋三首相の景気政策は、金融出動と財政出動のオーソドックスな方法を柱にしているけれど、景気押し上げには、「人とカネ」を動かすことが基本だが、それだけでは、産業そのものの競争力を強化することはできない。
大事なのは、産業社会全体を牽引する機関車となる産業を定めて、これを中心に金融出動と財政出動を組み合わせて、双方の力をいかんなく発揮させることが必要である。だが、この選択を誤ると、大変な時間的ロスと、根本的なミスをおかすことになるからである。
◆この典型的な実例が、「IT革命」だった。小渕恵三首相は1999年8月、産業競争力会議でソフトバンクの孫正義社長から意見を聞いた。このとき、孫正義社長に与えられた時間は、わずか10分。孫正義社長は、ペーパー3枚にグラフで構成したデータをまとめて、説明した。内容は、日本国内でのパソコンの普及率、とくに小中高校での普及率を示し、米国と比べると10年遅れていることを力説した。また、韓国と比べても5年遅れていることも説明した。
すなわち、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツが開発したパソコン・ソフト「ウインドウズ95」が、世界で「IT革命」を起こして、1995年が「IT革命元年」と言われていたのに、日本政府は、このことに鈍感で、遅れを取っていた。
実は、このことの意味と重要性について気づき、敏感に反応したのが、小渕恵三首相だった。首相官邸に「IT推進本部」を設置して、本格的な「IT革命」に乗り出そうとした。小渕恵三首相は、田中角栄首相の下で、郵政省に深くかかわり、日本の将来をリードする産業について研究していた。田中角栄首相が、特定郵便局長を押さえて、選挙の集票マシンにしていたのに対して、小渕恵三首相は、電波に目をつけて、「ドコモ」設立にかかわっていた。日本が「高度情報社会」に変貌していくことを見通していた。この実績があって、小渕恵三首相は、「IT化」に敏感に反応したのである。
ところが、2000年4月2日、小渕恵三首相は突然、脳梗塞で倒れてしまう。4月5日、政権は、森喜朗首相に引き継がれた。だが、この文教族のドンと言われた森喜朗首相は、「IT革命」の意義を理解できなかった。このため、本格的に「IT革命化」に取り掛かるのは、2001年4月26日に就任した小泉純一郎首相の登場を待つしかなかった。ここから大急ぎで、「IT化」が始まり、米国と韓国を追い越していくことになる。
◆こうした前例を踏まえて、安倍晋三首相が最も意を用いなければならないのは、これからの新しい社会全体を産業面から牽引するものは、何かということである。
それは、既存の原発に代わる「トリウム原発」なのか、「iPS細胞」なのか、「ロボット」(介護、お掃除、料理・・・)「水耕栽培工場付全天候型ドーム」なのか。
この選定には、6月までのんびりと議論している暇はない。6月に成長戦略を策定して、これを政府予算に反映させるとすると、2014年度政府予算ということになり、消費税増税率を6%から8%に引き上げるための「景気条項」を満たすのには役立たない。
従って、「IT化」への着手が遅れた二の舞にならなくするには、2013年度政府予算に大きな方向だけは、示しておくべきである。
【参考引用】産経新聞社msn産経ニュースは1月.6日午前11時20分、「長谷川・竹中氏ら起用へ 産業競争力会議メンバー」という見出しをつけて、以下のように配信した。
「政府は5日、日本経済再生本部(本部長・安倍晋三首相)の傘下に設ける「産業競争力会議」のメンバーに、経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事(武田薬品工業社長)を充てる方針を固めた。元経済財政担当相の竹中平蔵慶応大教授も起用する方針だ。 金融界ではみずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長に就任を要請している。経済界では楽天の三木谷浩史社長らも選ぶ方向だ。再生本部が初会合を開く8日に競争力会議のメンバー10人程度を決定し、月内にも議論を始める。産業競争力会議は規制改革、資金供給策を柱とする成長戦略を6月ごろに策定する。長谷川氏は幅広い国際経験が、竹中氏は小泉内閣で経済財政諮問会議を取り仕切った手腕が評価された」
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