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2013/1/7(月) 午前 9:48 「天木直人氏の視点ー(2013/01/07)」 :本音言いまっせー!
私は田母神元航空幕僚長と共著で「自立する国家へ!」(KKベスト
セラーズ)という本を出版する。1月19日に書店で発売される。
平和や外交・安保問題についての考え方は私と田母神氏とでは180度
異なる。
2008年4月に名古屋高裁があのイラク戦争は違憲だったという判決
を下したとき、「そんなの関係ねえ」と一蹴した田母神氏だ。
原告の一人だった私にとっては許せない相手だ。
そんな田母神氏となぜ共著を出す事にしたのか。
それは日米同盟から自立しなければ何をやっても日本の将来は危う
い、その事を日本国民は気づくべきだ、特に田母神氏のような愛国・保守
の者たちこそそれを言い出すべきだ、そう訴えたかったからだ。
そしてそれは取りも直さず愛国・保守の安倍首相に向けた
私のメッセージである。
日本を取り戻す事を掲げる安倍首相とそれを認めない米国。
その米国との日米同盟を強化するという安倍首相。
この最大の矛盾をつくことによって、安倍首相に、これまでの自民党
の指導者の誰もができなかった対米自立をやってみろと挑発するためだ。
その私の狙いが正しいかどうかはそれを読んだ読者が判断すればいい。
しかし私の狙いが奏功するかどうかを超えて、
もはや「日米同盟の強化」ばかりを唱えているだけでは通用しなくなる時
がやがてくる。
皮肉にも選挙で大勝した安倍自民党政権下でその矛盾が表面化する年
になるかもしれない。
その事を予言するかのような社説・論説がきょう1月7日の紙面に
並んだ。
たとえば朝日新聞の「激動期の日本外交」という社説だ。
日米同盟を深化させ、友好国との連携を深めて中国に向き合う、一言
で言えば安倍政権の外交戦略はこうだろう、その方向は間違っていない、
と書いた上で、しかしいまや世界は様変わりした、各国の利害が錯綜する
中でいま求められるのは針路を自ら切り開いていく外交力である、
と書いている。
たとえば毎日新聞の「2013年を展望する」という社説だ。
再三強調する日米同盟強化についても、なんのための同盟か常に
自問自答すべきであると書いている。
特に注目すべきところは吉田茂の次のような言葉を引用している
ところだ。
「(日米安保は)アメリカがただ日本が可愛くて結んだものではない
だろう。アメリカの太平洋の戦略的必要から、またアメリカの国策的な
見地から結んだものであろうと思う・・・この条約を実施していく上に、
もっと率直にいろいろ話し合っていいのではないか」(大磯随想)。
その上で毎日新聞の社説は次のように続けている。
「・・・日米が互いに必要だと考える限り日米同盟は強力であり、
どちらかが国益にプラスにならないと判断すればその命運は尽きる・・・」
国益に反するなら日米同盟はなくしてもいいといわんばかりだ。
同じ毎日新聞の文化面「経済への視点」というコラムで中野剛志氏が
「安倍新政権の課題」と題して書いている事はもっと直裁的だ。
いうまでもなく中野氏はTPP反対を唱える若手保守陣営の急先鋒の
一人である。
彼は言う。米国の覇権的地位の喪失や米中の軍事的バランスの変化に
より米中が接近するなら日本は大きな方向転換をしなければならない。
従来の対米依存路線を怠慢に続けるなら、日本は(ニクソンショックと
同様に)再びショックを受ける事になるだろう、と。
この三つの社説・論説はいずれも日米同盟には反対だとは言っていない。
そう言い切る勇気はない。
しかし言おうとしていることは日米同盟を見直す事を真剣に考える時
が来たということだ。
日米同盟を見直すべきだとはっきり明言する者がこの国の指導者層から
出てくるのだろうか。
それを明確に社説に掲げる大手新聞が出て来るのだろうか。
それともその前に米国の方から日米同盟を解消すると言い出してくる
のか。
日米同盟をめぐる問題が今年の日本外交の最大のテーマであることは
間違いない。
◇
激動期の日本外交―しなやかに、したたかに
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
2013年1月7日(月)付 朝日新聞社説
年明け早々、安倍首相が切った外交カードは韓国への首相特使派遣だった。
竹島問題をめぐって冷え込んだ日韓関係の改善は、安倍政権が引き継いだ重い宿題だ。2月に就任する朴槿恵(パククネ)次期大統領に親書を手渡し、大統領訪日に向けた調整に入ることになった。
関係修復への第一歩がしるされたことを歓迎したい。
首相は、早い時期の訪米にも意欲を示す。
民主党政権下で傷ついた日米同盟の修復などの懸案について、2期目に入るオバマ大統領とじっくり話しあうことは時宜を得ている。
世界も東アジアも大きく動いている。その現実を見据え、日本外交の針路をしっかりと定めなければならない。
日米同盟を深化させ、友好国との連携を深めて中国に向き合う――。安倍政権の外交戦略を一言でいえばこうだろう。その方向は間違っていない。
■多極化する国際社会
ただし、国際政治を国家間のパワーゲームと見る従来の視点だけでは、いま世界で起きていることの意味を十分にとらえることはできない。
国際政治の世界に、歴史的ともいえる新しい潮流が渦巻いているからだ。
その第一は、「多極化」の流れである。
昨年12月に米政府機関である国家情報会議がまとめた未来予測が波紋を広げている。
「2030年の世界は、今日とは一変した世界であろう。そのときまでに、米国も中国も、その他のいかなる大国も、覇権的な国家ではなくなっている」
米国が圧倒的な力を誇った時代が終わるだけでなく、中国の成長も減速する。
20年以内に、世界を単独で牛耳る力を持った国はなくなるというのだ。
報告は、パワーは国家間で拡散するだけでなく「非公式のネットワーク」にも広がるとも予測する。国家と並び、NGOや多国籍企業も国際政治に大きな影響力を持つようになる。
多極化し、利害関係が複雑に絡まり合う不安定な世界を生き抜くには、柔軟でしたたかな外交戦略が必要だ。
■硬軟両様の構えで
たとえば、いまの米中関係は、冷戦時代の米ソのような単純な敵対関係ではない。軍事面では競いながらも、経済面ではわかちがたく結びつく。
だからこそ、米国の中国政策は、もしものときの軍事的備えと、中国を国際秩序に積極的に取り込もうという関与政策のふたつの面をもっている。
日本の対中外交も、こわもてだけではなく、硬軟両様の構えが不可欠だ。
日中間で緊張が続く尖閣問題については、長期化を覚悟せねばなるまい。それを前提に、不測の事態が起きた場合の危機管理体制を両国で早急に築く。
同時に必要なことは、この対立とは切り離して、経済関係や人的交流を拡大することだ。
安倍首相が「世界地図を俯瞰(ふかん)するような視点で戦略を考えていくことが必要だ」と言うように、多角的な外交がこれまで以上に重要になる。
「極東重視」を打ち出しているロシア、経済成長著しい東南アジアやインド。そうした国々や地域と連携を深めるなど、新しい発想で外交のネットワークをどう築いていくのかも問われている。
■針路を自ら切り開く
国際政治のもう一つの潮流も忘れてはならない。世界各地で吹き荒れているナショナリズムの高まりである。
経済と情報のグローバル化は、少数の人の手に膨大な富を集積する一方、格差を生み、社会を不安定にした。
欧州で排外主義的な政治勢力が勢いを増しているのは、緊縮財政に苦しむ人々が、ナショナリズムに不満のはけ口を見いだしているからにほかならない。
東アジアには、これに加えて歴史問題がある。
日本と中韓が対立する領土問題は、過去の植民地支配や戦争の記憶が絡む、きわめて複雑な問題だ。昨年の中国の反日デモを見ても分かるように、扱いを誤れば可燃性の高いナショナリズムに容易に火がつく。
国境を超えた様々なレベルでの対話によって、和解の努力を重ねていくしかない。
振り返れば、戦後日本はじつに恵まれた国際環境を享受してきた。
米ソ冷戦時代には、米国の庇護(ひご)の下、復興と経済発展に励むことができた。外交の基本も沖縄返還や、近隣との国交正常化など、敗戦で失ったマイナスを取り戻す道のりだった。
いまや世界は様変わりした。
相互依存の高まりは各国が繁栄を共有できる可能性をもたらしたが、同時にそれぞれの利害が錯綜(さくそう)する。
いま求められるのは、そんな世界で針路を切り開いていく外交力である。
◇
社説:2013年を展望する 「外交の勘」を磨きたい
http://mainichi.jp/opinion/news/20130107k0000m070097000c.html
毎日新聞 2013年01月07日 02時30分
新しい年の外交が始動する。それを担う首相・安倍晋三氏は岸信介元首相の孫、安倍氏を支える麻生太郎副総理兼財務相兼金融担当相は吉田茂元首相の孫だ。戦後日本の発展と安定の基盤をなしてきた日米安保条約は吉田元首相が結び、岸元首相が改定して現在の形にした。外交危機が叫ばれる今、2人の血を受け継ぐ孫がコンビを組んで難局打開にあたることになったわけである。
岸元首相は国家を運営する基礎を安全保障に置いた。吉田元首相は自著「大磯随想」で「外交の『勘』のない国民は亡(ほろ)びる」とのウィルソン元米大統領側近エドワード・ハウス大佐の言葉を紹介している。
◇対症療法外交は限界だ
賢明な外交は単に国家の生存にとどまらず、経済再生や社会保障、教育などの内政課題に政権が全力を注ぐためにも不可欠な条件であろう。また、外国との摩擦が激しくなれば国民の不安感が強まり排他的なナショナリズムが勢いを増しかねない。そうした状況を作り出さないためにも、外交が国の安定を支える根幹であることをまず確認したい。
そのうえでここ数年を振り返るなら、領土で係争を抱えた近隣諸国すべてと緊張が高まり、国難とも言うべき外交危機が続いてきた。今年はその局面転換に国の知恵を総結集する年にしなければならない。
尖閣諸島や竹島、北方四島の領土摩擦や普天間飛行場移設をめぐる日米同盟の迷走などを安倍首相は「外交敗北」と厳しく批判し、政権を奪還した。確かに「外交の勘」のない民主党政権の不手際がこうした混乱を招いた面は否定できない。
だが、自民党なら外交敗北はなかったと言い切れるだろうか。
今日の外交危機は、長年の自民党政権のあいまいな外交がもたらしたものでもあろう。中国が92年に領海法を制定して尖閣諸島を自国の領海に組み込み、今に至る挑発行為の先触れとしたのは自民党政権の時代だった。沖縄の問題も、経済支援を組み合わせて重い米軍基地負担を事実上固定化する懐柔策のツケがここにきて噴出しているのである。
世界の動きは速い。今の国際情勢は自民党が政権を担ってきた数年前までと同じではない。米国の国力が相対的に落ち、日本を抜いて世界第2の経済大国となった中国が軍事面でも野心を隠さず、韓国はかつてほど日本を必要としなくなっている。地域の新しいプレーヤーとしてロシア、インドの存在感も大きくなってきた。周囲の変化や米国の意向に合わせた対症療法的な外交では、もはや日本は立ち行かないのだ。
よって安倍首相は自民党時代の焼き直しではなく、新しい時代に合わせた発想と行動で外交の立て直しと安定に取り組む必要がある。再三強調する日米同盟強化についても、何のための同盟かを常に自問自答することから始めるべきである。
吉田元首相は日米安保を「アメリカがただ日本が可愛くて結んだものではないだろう。アメリカの太平洋の戦略的必要から、またアメリカの国策的な見地から結んだものであろうと思う」として、「日本も、日本自身の防衛と、国策的な考え方から結んだものである」「この条約を実施して行く上に、もっと率直にいろいろ話し合っていいのではないか」と書いた(「大磯随想」)。
◇歴史問題でつまずくな
日米が互いに必要だと考える限り日米同盟は強力であり、どちらかが国益にプラスにならないと判断すればその命運は尽きる。尖閣諸島への対処も沖縄の基地移設も、まずは日本側の方針を明確に示し、率直な話し合いを通じて日米双方の国益と地域全体の平和と安定にプラスとなるような道を探るべきだ。米国の言いなりでも、日本が一方的に頼るのでもない同盟のあり方を、改めて作り上げることが求められよう。
同時に、国際社会との連帯をいっそう深めたい。尖閣諸島の問題では中国の乱暴な振る舞いに世界のメディアが「中国が差し控えるべきことは武力で現状を変えることだ」(米紙)、「日本は外交解決を追求し続けているが中国は軍事力の行使を好む」(イタリアの通信社)などとして懸念と批判を強めている。
日本の立場と主張は国際社会に支持されている。その背景にあるのは日本が外国との係争を平和的に話し合いで処理する国であり、偏狭なナショナリズムより、相手と共存を図るナショナリズムを大事にする国だという世界の理解であろう。
こうした国際世論を大事にしなければならない。軍事力を国力のバロメーターにしない日本の強みは国際社会との絆の深さである。敵を減らし、味方を増やしながら、付き合いの難しい国家との関係をいかにうまく管理するかが肝心である。
一国の政治指導者がどのような国際イメージを浸透させるかは、その国の国益を左右するほど重要だ。衆院選を受け日本の右傾化を指摘する声もあるだけに、歴史認識問題では慎重さが大切である。閣僚の軽率な言動が結果として国益を損なってきた歴代自民党政権の失敗は繰り返してはならない。注意深く賢い振る舞いで「外交の勘」を働かせ、局面を打開する一年にしてほしい。
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