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産経新聞 2013年01月06日22時08分
政党助成金に対して根本的な疑問を抱かざるを得ない。日本未来の党の分裂劇は、そうしたことを考えさせられる出来事だ。
日本未来の党は分党し、森裕子参院議員が代表を務める「生活の党」に党名変更した。メンバーは小沢一郎氏と同氏に近い議員の計15人。代表だった嘉田由紀子・滋賀県知事は離脱、新たな政治団体「日本未来の党」をいったん立ち上げた。会見には嘉田、森両氏の新旧代表と、小沢氏が出席。最後は3氏で握手するなど“円満離婚”をアピールした。
その後、嘉田氏は「日本未来の党」の代表を辞任し、知事の職を全うすると表明。代表には阿部知子衆院議員を充てることを明かした。
こうした動きは、各政党に支払われる政党交付金が決まる1月1日を目前にした「駆け込み」分党に他ならない。旧日本未来の党が受け取るはずだった平成25年分の約8億6000万円(産経新聞試算)の大半は生活の党が受け取ることになった。
つくづく今回の衆院選で驚かされたのは小沢氏についてであった。前から言われていたことではあるが、反原発だろうと、左翼だろうと自分が議員であり続けるのであれば、彼は何でもいいんじゃないか、と改めて感じた有権者は多かったはずだ。
もともと、日本未来の党の結成劇自体が唐突なものだったと思う。選挙公示日の直前になって突如、滋賀県庁で嘉田氏が会見し、衆院選への参戦を表明。乱立気味になっていた三極は整理され、「国民の生活が第一」なども加わり「卒原発」を掲げて戦うことになった。
ただ、この結成劇の裏で小沢氏が暗躍していたことが明らかになると、世論は急速に冷めていく。表看板は嘉田氏だが、実権は小沢氏が握って最前線には出てこないという実態が浮かんできたのだ。
小沢氏は民主党を離党して国民の生活が第一を結成したが、支持率は伸び悩んでいた。そこで党の顔、党の看板役として嘉田氏ら反原発グループを前面に出し、選挙戦突破を試みたのだろう。
本来、環境社会学者出身の嘉田氏と永田町で生きてきた小沢氏とは接点が乏しいはずだが、彼らもまた小沢氏を利用する形で選挙戦に臨んだのだった。
そういう両者の打算が有権者にも透けて見えたのではないか。結果は惨敗。反原発は(未来に限らず)国民の共感を生まずに終わった。選挙が終わると、嘉田氏と小沢氏の対立は共同代表人事をめぐって激化し、結党からわずか1カ月での分裂劇となったわけである。
こうしたやり方が詐欺的だという批判もある。厳密な違法性を問うとなると、難しい面はあるのかもしれないが、とにかく合点のいかない話だと思う。こういう離合集散について当事者達は「政党助成金ほしさでやっているのではない」と口を揃えるのだろうが、漫然と許していていいとは思えないのだ。
政党助成金というのは、議会制民主主義が成り立つ上で、政党の果たす役割が大きい、だから、健全な政党政治が根付くよう公的に助成しますよ、ということだ。選挙のさい、比例代表で有権者が政党名を記すことだって、政党を公的な機関として取り扱うことになった証しだ。
ところが政党の実態を見ると、こうした目指すところと隔たりが大きいのが現実だ。
例えば無党派層。選挙のたびに無党派層の動向がモノをいう流れが定着しつつある。既成の政党に対する不信感は根強い。政党はむしろ見放されつつある存在だ。
今回の衆院選では10を超える政党が次々と産声を上げた。設立するのも声を枯らして戦うのも結構だが、政党という存在がどんどん軽い存在になっていることは否めない。
わが国の命運を最後まで面倒みますよ、なんて固い決意が伝わってくる政党はどれだけあるか。大半はダメならまた作ればいいじゃん、てなノリだ。選挙互助会でも何でもいい。わずか3日で解党した党もあった。これまたおかしなことだ。
一度作ったら未来永劫、どんなことがあっても「崩してはならない!」などというつもりはない。「政治なんだから政党や政治家の離合集散はつきものだ」といわれれば、それも間違ってはいない。
政党に代わる国政運営を支える機関が今さし当たって存在しているわけではないことも確かだ。世界中見渡して、政党に代わるそのような担い手が存在する国があるわけでもない。
だが、今回のような出来事を見ると、政党が議会制民主主義を支えるという公的な役割を担える機関なのか、大変怪しく思えてくる。
「補助金の病」という言葉があるが、今の政党乱立劇を眺めていると、一度受け取ったが最後、補助金を受け取り続けなければ、成り立たなくなる病に陥っているのではないだろうか。助成金を受け取って何を為すか、ではなく、助成金を受け取るために政党の“スクラップアンドビルド”を繰り返しているにしか見えないのだ。
それは堕落である。政党の公的責任を忘れ「政党」「政党助成金」を食い物にしている、政治家の都合で政党を弄んでいるのではないか。こういう根本的疑念を抱かざるを得ないのだ。
嘉田氏にも同じ思いだ。彼女は今後、知事の職務を全うするのだそうだ。産経新聞が伝えたところによれば、嘉田氏は周辺に「政党助成金は(小沢氏との)手切れ金のようなもの」と漏らしたという。トンでもない発言である。二人の「手切れ金」なら、二人の間で精算してくれよ、といいたい。何で国民が税金で面倒見なくてはいけないんだよ、とウンザリするような発言だ。
政党という機関を作る以上、当然責任が伴うはずだ。そのことを政治家は忘れていないか。あまりにお粗末な光景が多すぎる。心ある政党関係者に問いたい。政党は議会制民主主義を支えるという公的な役割を担える機関なのか。政党助成金は制度として見直す必要はないのか。もはや過去の存在となった未来の党を通じて大いに考えてほしいものである。(社会部編集委員)
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