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「劇薬」にきしむ安倍官邸 竹中再登板の舞台裏
編集委員 清水真人
2013/1/1 7:00
正月返上で新経済対策作りを急ぐ第2次安倍内閣。慌ただしい始動の裏で、首相の安倍晋三が「再登板」させた経済学者に首相官邸はきしみ、霞が関は大揺れとなった。新設の産業競争力会議の委員に内定した慶大教授の竹中平蔵だ。この人事を検証すると、安倍が抱える幾つもの潜在的な火種が見えてくる。
■麻生・飯島氏らが「包囲網」
「竹中氏は日本維新の会の衆院選候補者選定委員長だった。登用すれば、消費税増税の3党合意を結んだ民主党を首相が切り捨て、維新と連携するというメッセージになりかねません」
政権発足から一夜明けた12月27日。安倍は元首相の小泉純一郎の腹心で、内閣参与としてやはり「再登板」させた飯島勲のこんな進言に耳を傾けた。竹中は小泉の下で経済財政諮問会議を切り回す担当相を務め、「首相の決断」を演出した。安倍はその諮問会議を再起動。議論をリードする民間議員として竹中に白羽の矢を立てたが、飯島は政治的リスクを指摘した。
副総理・財務・金融相の麻生太郎も、安倍の竹中起用の意向を知って驚がくした。話は2005年に遡る。小泉が推進した郵政民営化を巡り、小泉に忠実に仕えた竹中と、郵政事業を所管する総務相だった麻生は鋭く対立。小泉は「郵政解散」後の衆院選で圧勝すると、竹中を総務相に据えて民営化の完遂を命じた。麻生は外相に横滑りさせる形で事実上、更迭したのである。
積極財政論者の麻生と小さな政府論者の竹中は今も水と油。麻生は安倍を止めにかかった。新設の経済再生相で、諮問会議を担当する甘利明も麻生に加勢したが、安倍は説得を振り切ろうとした。最後に動いたのは、小泉政権でやはり竹中と反りが合わなかった飯島だった。思わぬ「反竹中包囲網」に安倍は渋々、マクロ政策を動かす諮問会議への登用だけはあきらめた。予算編成に竹中が口を出すのを危ぶんだ財務省も安堵した。
■政権中枢に亀裂の芽
「私は竹中氏はいいと思っている。発信力は抜群だし、国際的な人脈も相当なものだ。維新とのパイプだって大事ではないか。民間議員に迎えるだけのことでなぜ大騒ぎをするのか」
官邸内でこう安倍と竹中の擁護に回って見せたのは官房長官の菅義偉だけだ。政権中枢を形作る安倍―麻生―菅―甘利のカルテット。かつて第1次安倍内閣と麻生内閣でも屋台骨を支え合った盟友関係だ。9月の自民党総裁選から組閣までぴったり呼吸を合わせてきたが、権力を奪取した矢先に「竹中平蔵」というまさかの亀裂の芽を抱え込んだ。この含意は存外に深い。
「内閣の総力を挙げて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この三本の矢で経済政策を力強く進めて結果を出していく」
安倍は26日の記者会見で経済政策の「三本の矢」を強調して見せた。竹中が安倍に助言してきたのも三本柱だが、微妙に換骨奪胎されている。
■「成長戦略」か「構造改革」か
金融政策はインフレ目標2%の緩和路線で一致するが、財政政策で竹中は「短期的に出動するが、中長期的な財政の信認回復と一体で」と指摘。民間投資につながるのは「成長戦略」ではなく「構造改革」だと説いて一線を画す。
実は竹中は小泉の下で「成長戦略」を策定したことはない。「官から民へ」を旗印に郵政などの民営化路線を進め、規制改革や改革特区に力を注いで「構造改革」を名乗った。当時、竹中を支えた1人が菅だ。今の自民党で「構造改革」は死語に近い。政府が補助金や税の減免で特定分野の産業を戦略的に育てるターゲティングポリシー型の「成長戦略」が好まれがちだ。
竹中が参画するのは、内閣に新設した日本経済再生本部の中核になる産業競争力会議。元経済産業相の甘利が司令塔役だ。「新しいターゲティングポリシーで国家プロジェクトを次々に創る」と政府主導の「成長戦略」の旗を振る。同本部を発案したのが経産官僚なら、事務局の切り盛りを狙うのも経産省だ。
「安倍氏の頼みなら、受ければいい。有識者として会議で正論を述べればいいじゃないか。その正論を採り入れるかどうかは政治が判断することだから」
「再登板」の是非を相談に出向いた竹中に、小泉はこうお墨付きを与えた。「第2次安倍内閣はこのままでは『経産官僚内閣』と化すのではないか」と周辺に漏らす竹中。規制改革や法人税減税などの「構造改革」で論陣を張れば、「成長戦略」との路線対立が表面化しかねない。小泉政権で竹中諮問会議に経産省は冷ややかだった。攻守ところを入れ替えた「再戦」だ。
■危ういが魅力的な維新人脈
竹中は維新代表代行の橋下徹とホットラインを構築している。年の瀬にも大阪市に姿を見せた。衆院選で橋下とみんなの党代表の渡辺喜美は候補者調整や政策を巡って大同団結できそうでできなかった。両者に「第三極新党」へ合併せよと最後まで説き続けたのは竹中である。竹中と橋下維新、みんなの党は既得権打破につなげる「構造改革」の路線で通じあう面がある。
衆院は自民、公明両党の連立で3分の2を超えるが、参院で過半数に届かない。衆院で3分の2以上による再可決で法案は成立するが、日銀総裁などの国会同意人事は参院の可決も必須。民主党と協調するか、みんなの党や維新、新党改革などと連携するかの選択だ。菅が秋波を送り、飯島が警戒する竹中の人脈。安倍にとって危ういが引かれる「劇薬」なのだ。=敬称略
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2805E_Y2A221C1000000/?dg=1
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