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2012年12月31日 世相を斬る あいば達也
安倍自民党の政策を眺めていると、タイムマシーンに乗って、地球体を離れて行くような感覚に襲われる。おそらく安倍の心の中は、忸怩たる思いで首相を辞任した時から、時間が止まっているのだろう。つまり、名誉挽回やり直したい一心が強すぎて、当時の世界観のまま、今に至っていると考えて良さそうだ。“あれは、こうすればヨカッタ。アッチは、ああすればヨカッタ。”等々の反省の念が強過ぎる副作用が、彼に時代感覚から遊離した政策を選択させるに至ったと考えることが出来る。
依怙地なくらいに、民主党の政策の逆張りに奔走している感じだ。民主党の政策すべてが、時代に即応してなかったかどうか、さしたる検証もなしに、逆張りに血眼になるのも奇異である。無知蒙昧と党内権力闘争に明け暮れ、自らの方向性を失った民主党政権ではあるが、そのすべての政策が誤っていたかどうか、民意を反映していなかったかどうかは、別問題でもある。エネルギー政策では、原子力発電からの脱却は、やめるようにしたいと云うのが民意だろう。ただ、あまり頻繁に不具合の起きる電力供給システムや料金の過大な値上げは嫌だな、と云う総論賛成各論反対の鬩ぎ合いなわけであり、原発に依存するエネルギーシステム温存を希求しているわけではない。
原発の再稼働に止まらず、新たなスタイルの新型原発の新設に意欲を見せ、“原発神話”の改訂版に意欲を示している。ロシアとの協議を前に、ロシアの北方四島実効支配には、何ひとつ法的根拠もなく、ケシカランと云うのが交渉の原点のような発言をし、当面3.5島返還論でも仕方ないか等と言い出す始末。これでは外交交渉する特使たちも先が思いやられると云うものだ。ついつい、ネトウヨ的発言が格好いいと思う資質を身につけているのだろうが、とても老獪な政治を望む事は無理なようだ。
自分の気持ちを語ると云う事と、日本の首相として語ることの境界線が、時折混線するらしく、常に危うさと紙一重な日常を送ってしまいそうな人である。1月には、真っ先に訪米するようだが、TPP参加に前向きに対応するのは間違いがないだろう。最近のTPPの事実関係を総合して観察する限り、聖域なき関税撤廃と云うお題目とは、相当かけ離れた交渉が関係各国で行われている模様で、単なる米国の製造業や農産物産業、金融産業の日米構造協議に、幾つかの他国を紛れ込ませる事で、めくらまし式日本隷属強化戦略なのは自明だ。為替も、嫌に簡単に円安に振れ出しているが、TPP参加に向けた世界金融資本の誘い水である可能性は大いにある。
円安と株高を演出する事で、日本の企業ばかりではなく、国民にも一時の幻の元気を与え、獲物を前向きな気持ちに高揚させ、誘い込み、自らの選択でTPP参加を表明させると云う、結構気の長い罠を仕掛けている。その意味では、案外この円安株高基調は、参議院選まで続くのかもしれない。民主党の政権の米国への恭順の意は、本音かどうか定めにくい部分があったのだが、安倍自民党政権においては、根っ子から米国依存に傾斜しているので、見定める必要もないと米国は受けとめているだろう。
安倍自民政権は、霞が関との融和にも積極的で、国家公務員の削減などしない。逆に海上保安庁や自衛隊など増やす方向で検討すと言っている。事務次官会議も復活し、安倍首相は「行政のプロとしての誇りを胸に、政策立案にあたっては積極的に提案し、果敢に行動していただきたい」とエールを送っている。特に参議院選までは、霞が関との摩擦を避けたい姿勢は明確で、その後の事はその後の様子で考える、と云う道を選んだようである。民主党が決めた赤字国債44兆円以下の枠組みも簡単に壊し、赤字国債の枠は補正を含めると、60兆近くなるのかもしれない。名称は建設国債と云う名目をつけるとしても、借金には変わりない。
オバマはそろそろTPPによる米国利益誘導に飽きている感じがする。自民党が政権に就くのなら、日米構造協議的テーブルを用意するだけで良いわけで、なにも大掛かりなマジックをする必要はなくなっている。その意味では、1月訪米の手土産がTPP参加表明はもう役不足の感が否めない。沖縄オスプレイ導入に次ぐ自衛隊オスプレイ導入やF35第五世代ステルス戦闘機の導入。また、米軍グアム移転費の隠れた部分も含む日本負担金など、表と裏において様々な土産をオバマ政権に献上しなければならないだろう。
それに気を好くして、尖閣問題などで、安倍自民がオバマのお墨付きを背に、国境問題で強気になれるかと云えば、そう簡単ではない。米国にとって、日本は隷属が既成事実化している国家であり、儲けの一部をみかじめ料として受け取るのは、彼らにすると当然の権利になる。しかし、中国は米国の隷属国どころか、米国を凌ぐ経済大国になり得る地位にいる。と同時に、その経済力の成長以上の速度で軍事を背景とする覇権の動きが顕著である。中国が覇権的かどうか、微妙な判断が必要なので、国内の民主化問題と民族問題が複雑にナショナリズムを形成しているので、覇権的国家が自明とは言えない。しかし、市場原理主義とグローバリズムで、対中依存が米国経済の一部となり、米国債の引き受け手となっている事実を蔑にする事も出来ない。つまり、安倍自民に対し、アナタ方の努力は評価する。だから議会でも尖閣が安保の適用範囲と議決した。しかし、だからといって、中国をこれ以上刺激するような行為まで容認するつもりはない、と云うのが米国の現段階のメッセージだ。
安倍自民が、参議院選で勝利した暁には、タカ派路線まっしぐらだと云う論調もあるが、筆者はそうは思っていない。米国の中国への配慮は相当なもので、日本の側に立つ事で失うものは大き過ぎる。つまり、対米依存路線を選択した瞬間から、対中外交防衛は弱腰にならざるを得ない。米国が、これ以上の刺激的行動にイエスを発しないからである。おそらく安倍自民は経済政策が中々思うに任せず、苦しむ期間が長いのではないかと思われる。また、財政規律と経済成長の二足のわらじを履いているわけだから、双方が相乗的に働くか、或いは足の引っ張り合いをするか、やってみないと判らない。
いずれにせよ、グローバル化した世界中の経済が青息吐息状態なわけで、後進国に購買マーケットでも出来ない限り、先進国経済が上向く理由は見当たらない。金融緩和は日米欧が行ってきているわけで、欧米などは緩和出来るスケールが殆どない。日本には、未だ幾分の緩和の糊代は残っているが、メッセージ効果だけで、何時までも円安株高が続くわけもない。投機筋のオモチャにされている可能性の方が高い。
しかし、安倍首相が右傾化した政策に、いつまでも手を着けないとなると、右翼系保守派の突き上げが厳しさを増してくるだろう。早目にその辺のエクスキューズをバラ撒いておいた方がベターな気がする(笑)。右傾化傾向のあらゆる政策は、そうそう簡単に手の出せないものばかりだ。今回の選挙分析でも判るように、民主党を下野させる為の総選挙であり、自民党を勝たせる選挙ではなかった事は、自民党自体が良く理解している。今回の選挙ほど、自民党に追い風が吹いた選挙はなかった。しかし、実際の得票数を調べる限り、あいかわらず自民党の衰退傾向に歯止めはかかっていないのだ。
ただ、安倍晋三という人は、中々の好人物で憎めないところがある点は、菅直人や野田佳彦と違う。ただ、好人物であるにも関わらず、慎太郎同様に、タカ派、否右翼的言辞が好きな人である。故にネトウヨから愛されるのだろうが、発言する言葉の強さと、首相としての政策選択の間に、論理矛盾を与えてしまう致命的欠陥が備わっている。米国に恭順の意を表す事と憲法改正など、相対立する政治マターだ。自主憲法、自国軍隊の方向性を出しながら、米国依存体質を平気で晒してしまう無頓着さがある。特に彼はテレビカメラに興奮するタイプらしく、話せば話すほど、矛盾を露呈させる気の良い政治家である。ただ、或る日突然、その資質は引っ込みがつかない事態を招く人でもある。
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