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「“旧電力”9社で発電総量の96.5%シェア:その自由化が電力会社に対する“勝手気まま優遇政策”になると理解されぬ日本」(http://www.asyura2.com/12/senkyo141/msg/816.html)のコメント欄にいただいたコメントへの回答です。後ろにコメント欄の内容を転載しております。
まず、インターネットアクセス環境という私的な都合でレスポンスが遅くなり申し訳ありません。
今回は、「電力自由化」にまつわる問題を提示しつつ、それについて思うところを説明することで回答に代えさせていただきます。
■ 新規建設が困難な大規模火力発電所
電力を生産し供給する事業は、インスタントラーメンの製造販売や携帯電話事業とは条件が大きく異なり、資金力があるからといってスムーズに参入できるわけではありません。
また、膨大な一次エネルギーを消費し環境負荷も大きい主要発電事業が、無規制で行われていいはずもありません。
元スレッドで、旧電力会社の発電量シェアが96.5%(原発停止で現在は95%ほど)と書きましたが、「電力自由化」や「発送電分離」が実施されても、新規発電事業者が、旧電力会社とのあいだで競争力を発揮できる規模で発電できるようになり、旧電力会社の価格支配力を脅かす存在になることは、資本力以外の条件で極めて困難なのです。
ソーラー発電や風力発電は、発電能力が自然条件に強く影響されることからベース電源にならないのみならず、発電コストもまだ高いことから、旧電力会社に買い取ってもらわない限り、事業が継続できない状況にあります。これは、そのような発電方式で参入する発電事業者は「電力自由化」の一翼を担えないことを意味します。
日本で有望とされる地熱発電も、国立公園規制や温泉事業などとの兼ね合いがあり、発電適地に自由に施設をつくれるわけではありません。
このようなことから、現在のところ、新電力が「電力自由化」で成功する唯一の道は、大規模火力発電所による発電ということになります。
新電力会社が、旧電力会社と発電で互角に競争するためには、30万Kw超級の大規模火力発電所を建設しなければなりません。資金は1千億円超必要ですが、信用力のある企業が事業化の手を挙げれば融資を受けることは可能です。
しかし、自家発電レベルを超える大規模火力発電所を建設するためには、資金だけではなく、住民・地方自治体・環境省・経産省が絡む数段階の環境アセスを経なければなりません。
これまでの例でいえば、立地適格地を見つけ、実際に建設に着手できるまで5〜10年を要しています。逆に言えば、諸条件に合致する(文句をつけられにくい)場所は、既に旧電力会社やガス社が火力発電所を建設しているか工場地域になっているため、新たに見つけた立地であれば、CO2の排出など稼働条件をより厳しい施設にする条件で、なんとか許可を得られるというものでしょう。
このような状況を考えれば、最も発電コストが安い石炭火力発電所を新規に建設するのは困難であったり、建設費が大幅に増大しコスト面のメリットがなくなったりする可能性が高いと言えます。
新電力会社が旧電力会社とまともに競争したいと思っても、産業的に成熟した日本と規制の二つを考えると、建設可能な発電設備の絶対数が限られているのです。おそらく、再生可能エネルギーを除けば、隠れた「行政指導」がない限り、30年経っても新電力が20%を超えることは不可能です。
「電力自由化」というスローガンがもっともらしく見えるようにしたいと思ったら、行政が、旧電力の電源開発を抑制したり既存発電設備を売却させたり、旧電力の電力料金を引き上げるような“規制”が必要になります。
いうなら、高校で「ボランティア」を“必須科目”にするような倒錯的政策を行わない限り、多数の発電事業者が併存するという「電力自由化」の構図さえ生まれないのです。
(旧電力は減価償却が終わった設備による発電割合が高いので、新規参入の発電事業者を潰す(阻止する)気になれば、安い料金を提示することが可能です。このような参入障壁を現実化しないためには、行政指導が必要という自由化のパラドックスがあるのです)
さらに、新電力の中心がガス会社であることからわかるように、燃料のスムーズな調達まで考えれば、ガス会社(LNG)か石油元売り(石油)か鉄鋼会社(石炭)でなければ、大規模火力発電所を効率よく運営していくことは難しいでしょう。
仮に新電力会社がシェアを30%握ったとしても、残り70%の需要は、旧電力会社から電力を買うしかありません。
「電力自由化」が実施されていれば、その供給において価格などの規制がないわけですから、旧電力会社は、今以上の利益を確保することができます。そうなるための行政指導(発電設備の増強抑制や一部売却)であれば、喜んで受け入れるでしょう。
■ 「発送電分離」と「電力自由化」で生まれる誤解
「電力自由化」とセットで語られるのが「発送電分離」です。
地域独占の旧電力会社が発電と送電のほぼすべてを握り、新電力などが売電する際にも、ほとんどの場合旧電力の送電線網を利用しなければならないことが競争条件を歪めているという主張です。競争相手が所有する設備を使わないと事業が成り立たないような条件は、新規事業者を不利な立場に置くことは事実です。
送電問題は、NTTの回線利用と似た問題ですが、通信に比べると、その弊害は少ないと言えます。なぜなら、電力供給事業においては、送電よりも発電のほうが事業の成否に占める度合いがずっと高いからです。
発電事業の新規参入を困難にする発電設備新設問題は、「発送電分離」をすれば解消されるというものではありません。
さらに、送電設備を分離し(国有化し)たとしても、新旧の電力会社が支払う送電料と電力需要家が支払う電力料金は直接の関係がないので、電力料金が安くなるわけではありません。
製造段階での自由な競争がある程度実現されているのなら、貨物の輸送費が安くなれば、製品の最終価格も安くなります。しかし、製造(発電)段階での自由な競争を実現することが困難な電力については、送電利用費が安くなったからと言っても、最終価格が安くなる保証はありません。
最大の誤解は、政府部門による規制よりも、自由化のほうが“電力の値段”が安くなるという考えです。
電力については、政府部門が他の産業を考慮したり癒着したりしていない限り、自由化よりも、規模のメリットを生かせる独占的事業体を規制するほうが価格は安くなります。
旧電力会社の電力料金が高いのは、官僚機構や政治家の利益そして原発立地絡みの補助金を別にすると、発電所建設や送電設備に絡む企業の利益やメディアの利益そして電力会社の従業員待遇の良さに起因するものです。
「総括原価方式」が“悪用”され、発電装置や土木建築工事が緩い見積もりでもOKになり、メディアへの広告出稿も思うがまま、従業員の待遇も群を抜くものになっています。
というのも、発電所などの資産は、料金算定で認められる利益額の分母ですから、建設段階のコストが少々高くても資産が増えることを意味し損にはならないからです。
広告出稿や従業員の福利厚生も、原価として認められてきたので、それで利益が減る心配をする必要はなかったのです。
許認可の主体である官僚機構や政治家は、電力会社をそのように優遇することで、天下り先を確保し、政治資金(電力会社のみならず周辺企業からも)をより多く得ることになります。メディアも、膨大な広告料金を払ってくれる電力会社を悪く言いません。
このようなことをもって、前回の投稿で、「「総括原価方式」の問題は、電力会社と癒着した官僚機構の運用上の誤りであり、制度自体ではない」と説明したのです。
■ 電力供給の特殊性と電力の安定供給
新規事業者の発電設備が自由に増強できるとしても、「電力自由化」が国家社会にとって得策かどうかは別問題です。
先ほど簡単に触れましたが、発電は一次エネルギーの膨大な消費を意味します。であるなら、過剰な発電量を生みかねない構造ではなく、安定供給を効率的に行える構造のほうが経済社会にとって好ましいと言えます。
日本は、総人口が減少傾向にあり、産業活動も徐々に減少する傾向にあります。そのような日本で、発電設備の新設が必須となるような「電力自由化」が望ましいものかどうかじっくり考える必要があります。
電力の安定供給は、カリフォルニア大停電を持ち出すまでもなく、一元的に管理する態勢のほうが合理的です。電力会社に課されている「供給義務」は、世界一とも言われる日本の電力安定供給の要なのです。
昨今、“スマートメーター”を利用した電力供給管理が喧伝されていますが、供給側である電力会社が既に構築している電力供給管理システムのほうがずっと合理的な管理方式です。全域の需要変動を見ながら、需要地に近い火力発電の調整を行えば済むからです。
個々の需要家のメーターにデータ管理及び送信機能を付けて、送られてくる膨大なデータをリアルタイムで処理して、複数の電力供給事業者が個々の思惑で発電量を調整するとか、電力市場でセリにかけて増分電力の供給者を決めるといった方式が内包する不合理はすぐに理解できるはずです。5千万台を超えるスマートメーターで消費される電力のムダも不合理の一つです。
スマートメーターが、蓄電池や個別型ソーラー発電の活用に伴う地域の電力供給管理に有効であることは認めますが、電力会社にとってスマートメーターを設置するメリットは、検針員を雇用しなくても、個別契約者の消費電力を把握し料金の請求ができること程度です。これは、就業者の減少と刺し違えで、電力料金の低下をもたらす可能性はあります。
「電力自由化」で考えられるメリットは、電力市場という新しい金融シーンを生むことと一時的な設備投資の増大くらいなのです。
安定的な電力供給は、一定レベルのムダやバックアップによって支えられています。発電量は需要の1.05倍にするとか、送電網は、特定箇所の事故ができるだけ他の地域に影響を及ぼさないよう複線化するなどの態勢が、電力の安定供給を支えています。
送電網の維持管理は「送電会社」の責任だとしても、冗長な発電に要するコストは、自由化後の「発電会社」のどこも他の誰かに負担してもらって自分は負担したくないと思うでしょう。
「電力自由化」は、行政指導で無理やり生み出す擬制として可能だとは思いますが、電力の安定供給や国民生活及び産業活動を考慮すれば、その後も行政指導を隠れて継続するしかありません。建前が自由化であれば、そのような行政指導は、陰に隠れた歪なものになるでしょう。
■ ベストな電力供給形態
現代において、電気は、水道やガスと並ぶ基礎的な生活条件です。金持ちはより多く利用するとしても、貧乏人も利用するライフラインです。
「電力自由化」に意義や夢があるかどうかは、水道供給事業の自由化を考えればおのずとわかってくるはずです。
電力が生活や産業の基礎的な下支えであるならば、電力供給は、安定的で安価なほうが好ましいはずです。それを実現する事業形態は、利益を追求せず責任をもって供給を行う「国有民営」だと考えています。
「国有民営」とは、株主が政府で、経営は民間人の手で行われるというものです。経営者は、経営目標を与えられ、その達成度合いで評価され、評価次第で報酬も増減します。
東京電力は既に政府の所有といってもよく、東京電力を「国有民営」の貴重なサンプルとして活用すべきだとも考えています。
※ 追記
「ところであっしらさん、最近、消費税関係の投稿少ないですね。むしろそっちの方を少し楽しみにしてるんですが。」という問いかけをいただきました。消費税については、年明け1月中旬ころに、GDP(付加価値生産)の視点から説明したものを投稿したいと思っています。
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【コメント欄転載:12月30日12:15現在】
01. 2012年12月27日 12:39:35 : VbWAbFllIA
何かこの人勘違いしてないか?
電力自由化は電話の自由化と同じで供給を複数化する。
旧電電公社時代は東京ー九州は3分で1000円だった。
今は3分で50円。IP電話でやれば無料。
自由化というのは9電力の独占を許した自由化ではなく
地域に複数の発電会社を作る事。
そうすれば安い電力会社から買うのは当たり前。
送電会社は準国営にするしかないだろう。
独占のままでは何のメリットも無いだろう。
まあその証拠がJRであるわけだが。。。。
02. 2012年12月27日 13:01:34 : lzOcTKsnP6
地域独占を認めるのか認めないのか。これを明確にすれば結論ははっきりする。
態度表明を避けるようであれば、議論の対象外。
03. xyzxyz 2012年12月27日 13:14:01 : hVWJEmY6Wpyl6 : hMsRcRvT0w
>>1
自分はこの話詳しくないままで聞くけど、アメリカで似た(同じ?)制度をやって
料金は以前に比べて上がったと聞いている。制度として違うのかな。
スレ主さんに聞きたいのは下記の2点
>「電力自由化」は、旧電力会社を規制の網から解き放ち、利益追求の営業を保障する“勝手気まま優遇政策”でしかないのです。
>「電力自由化」が実施されれば、産業用電力の値上げは抑制される一方で、家庭用電力の料金はより値上げされる方向に進むことになります。
電力自由化をして競争相手が乱立すれば一見安くなりそうだけど、利益追求にどうやって走れるのか
産業用電力は大口なので、営業段階で値引き合戦に入り安くなりそうだけど、家庭用電力に対しても
それに特化した電力会社が現れて、家庭用電力を安く卸すとこが現れないんだろうか。
04. 乃依 2012年12月27日 13:30:25 : YTmYN2QYOSlOI : npVaDQnHh2
まずは、既存の枠組みのなかの別枠で新規事業者を育成していくべき。
自由化はそれらにある程度の地盤ができた後に行おう。
平行して、原子力施設の国有化を行っていく。
05. 2012年12月27日 13:55:49 : bKFh0sRbXs
確かに、競合する電力供給会社がほとんどない中で自由化すれば、実質的に既存の電力会社の市場独占となるから、むしろ電力料金は上がる方向になるでしょうね。
投稿者の言うことはその意味で、もっともです。
ですが、現状での電力自由化が時期尚早だとするなら、ではどうしたらいいのか、その辺までは言ってもらわないと、あまりにもつまらない。
例えば「総括原価方式」。(要するに、「こんだけ何でも原価に入れて優遇してやってんだから、勝手に料金上げるなよ」方式。)
なんでもかんでも、御用学者に原発維持・推進発言をさせるための献金やマスコミ対策費まで「原価」に含めることのできる現状のやり方を、まさかいいとは言いませんよね?
電力会社側に、コストを下げようという意識を全くもたらさない現状のやり方を、まさかいいとは言いませんよね?
その現状って、本当に
> 「総括原価方式」の問題は、電力会社と癒着した官僚機構の運用上の誤りであり、制度自体ではないのです。
だからなんですか?
「何を原価として認めるか」、その制度で規定されている内容の問題なのでは?
おっしゃる通り、官僚機構の運用上の問題なら、自民党政権下で改善の見込みはないでしょうね。
愚察の通り、内容の問題であれば、それを変更することも、やはり自民党政権はやらないでしょうね。
ところであっしらさん、最近、消費税関係の投稿少ないですね。
むしろそっちの方を少し楽しみにしてるんですが。
06. 2012年12月27日 18:53:50 : Ddt6oxisbY
役人、電力会社の裁量しだいということだ。
電力自由化という言葉は同じでもその意味する内容はどうでもなる。
07. 福島県人の一人 2012年12月28日 12:00:18 : hsZ1NXyMMhWzA : cqW6KmB48M
04様 に対して
考えることです。
東京都は奥多摩に水力発電所を持っているし、
新規発電所建設の検討も進んでいるようだ。
大阪市では前市長が立ち上げた発電所建設計画が頓挫している。
家庭用電力に関しては、各地方自治体が乗り出してもいと思う。
雇用創出にもなる。
地熱発電 小水力発電 液化ガス等
それぞれの地域に合った発電方式でよいと思う。
そうすれば 税金と思って喜んで料金を払う。
ちなみに 自宅の敷地には東電の電柱が建っている。
先日、下請け会社が借地の契約更新に来た。
現状では撤去してとは言えないので更新した。
電柱が私有地だけに建っているとは思えない。
どれだけの電柱が電力会社の土地にあるのだろうか。
このことを利用して、私では力不足だが、
発送電分離への動きを作れないかと思う。
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