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2030年、「中国の覇権」で機能しない日米同盟
2012/12/20 7:00
(2012年12月13日 Forbes.com)
筆者は前回の記事で、日米安保体制は時代遅れだと指摘した。言わんとしたのは、圧倒的支配力を持つ中国を軸とする日本以外のアジア地域は、急速に強大かつ豊かになりつつあり、今後もその傾向は続くだろうということだ。これは米国や欧州、そして日本との相対関係でも同じである。アジア、そして特に中国はすでに、日本にとって最大の輸出先であり、日本企業の最大の投資先だ。
こうした傾向が続くのであれば、アジア諸国が日本の安全保障戦略に影響を与える、というよりそれを決定づける可能性がある、もしくは当然そうなると見るべきではないか。また冷戦の産物であり、対中国でも冷戦の論理を必要とする日米同盟はどう見ても、日本はもちろん、米国にとってすら無意味になるのは明白ではないか。
この問題と関連するのが、国家情報長官の承認のもとに米国家情報会議(NIC)が取りまとめ、12月10日に発表した報告書「2030年の世界展望:変貌する世界」である。同報告書は中国経済が米国を抜くと予測したことから、様々なメディアで大きく報道された。
以下は報告書からの引用である。
「大きな構造変化の結果、国内総生産(GDP)、人口、軍事費、技術への投資規模で見た2030年時点のアジアの影響力は、米国と欧州の合計を上回っているだろう。おそらく中国はその数年前に米国を抜き、世界最大の経済大国となるだろう」
「一方、欧州、日本、ロシアの経済は、今後も相対的にゆるやかな衰退が続く可能性が高い」
次の段落にはこうある。
「米国は国力を構成する幅広い側面で優位性を持ち、また長年世界で主導的地位にあったことから、2030年においても超大国の中で“同輩中の首席”の立場を維持するだろう。その経済力もさることながら、国際政治における米国の支配的地位は、軍事や経済のハードパワー、ソフトパワーの双方において幅広い優位性を維持したがために生じた。だが他国の急激な台頭により、“米国の一極体制”は終わり、1945年に始まった国際政治におけるアメリカ優位の時代“パックス・アメリカーナ”は急速に終焉に向かいつつある」
ここではっきりと指摘しておこう。報告書の言うとおり、米国はこれから20年というわずかな間は、世界の中で“同輩の中の首席”にとどまれるかもしれないが、世界のあらゆる場所でというわけではない。特に最も変化が激しく、成長力の高いアジア地域では、そうならないだろう。この地域の支配的勢力は中国になるはずだ。
米国を含めた域内のあらゆる国に必要とされるのは、この急速に姿を現しつつある新たな現実に対して、自らの国益を最大化する戦略を受け入れ、実行することだ。
現状は維持できる、変わらないという希望的観測にしがみつき、冷戦時代の精神や考え方を復活させようとする試み(ウォール・ストリート・ジャーナル紙までがこのような論調を取っている)は、現実離れしており、非生産的だ。
アジア地域に必要なのは、それぞれの国が国益が何かを改めて検討し、それに即した行動をとることだ。それぞれの国が中国との「当面のつき合い方」を模索し、中国との関係を軸に他国との関係を構築していくことを迫られる。日本も、そして米国も例外ではない。われわれが今後目の当たりにするのは、「パックス・シニカ(中国の覇権)」とも呼ぶべき新たな地域秩序の台頭である。日米安保体制をこの新秩序に当てはめることはできないし、そうはならないだろう。日本と米国の重要な国益に照らしても、その必要性はない。
by Stephen Harner (Contributor)
(c) 2012 Forbes.com LLC All rights reserved
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1803R_Y2A211C1000000/
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