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新政権3分の2の重み
(下)現実外交に活路あり
編集委員 秋田浩之
米国との同盟を立て直す――。こう訴える安倍晋三氏がもうすぐ首相に返り咲く。米側は歓迎しているが、「痛しかゆし」の表情でもある。
「尖閣諸島や靖国神社参拝で日中が対立し、アジアがもっと緊迫するのではないか。それは困る」。オバマ米政権は最近、さまざまなルートを通じ、日本側にこんな本音を伝えてきた。
米国にしても、日本との同盟を深めたい気持ちは切実だ。ますます強気になる中国に向き合うには、日本との協力が大前提になるからだ。
米にも余裕なく
とはいえ、中国と正面切って対立している余裕は、米国にはない。朝鮮半島や中東の情勢、世界経済の停滞。いずれも中国を敵に回したら、打開が難しいからだ。
「いざというときに備え、日本や他のアジア諸国と対中包囲網を築いておきたい。でも、中国を刺激したくはない」(元米政府高官)。これが米側の本音なのだ。
安倍氏は来年1月下旬にも訪米しようと意気込むが、ホワイトハウスの空気はやや違う。「環太平洋経済連携協定(TPP)で大きな成果を見込めるならともかく、顔見せなら急がなくてもいい」。ワシントンからはこんな声も聞かれる。
では日本はどうすればよいか。自衛隊の強化や対中戦略の調整などは静かに、着実に進める。一方、こちらからは中国を挑発せず、冷静な対応に徹する。これが上策だ。
安倍氏もそこは気づいているのではないか。17日の記者会見では靖国への参拝を明言せず、公約にあった「尖閣諸島への公務員常駐の検討」にもふれなかった。同氏の周辺も「まず参院選に勝つことだ。タカ派色を前面に出したら米国も引きかねない」と語る。
もっとも、米中の国力差が縮まるなか、日米同盟だけでアジアの安定を保つのは難しい。「東シナ海で中国との紛争が起きても(中国軍に阻まれ)空母を急派できないかもしれない」。米軍幹部は非公式の会合で、日本側にこう話した。
米国もそれが分かっているから、沖縄の米海兵隊をオーストラリアやグアム、フィリピンに分散。中国をにらんだ「網状」の安全保障体制をこしらえようとしている。日本もこれに加わり、アジアの国々と安保協力の輪を広げるべきだ。
日韓修復を優先
そこで大きな障害になるのが、日韓の対立だ。韓国政府の外交ブレーンは「対北朝鮮ならともかく、対中戦略で日本と組むのは難しい。過去の歴史から、韓国内ではなお、日本へのアレルギーが強い」と打ち明ける。
日米韓の結束を強めたい米国はそんな状況にいらだつ。逆に、中国は日韓にさらにくさびを打とうと、歴史問題での対日共闘を韓国に働きかけているという。
韓国をこちらに引きよせ、協力を深められれば、日本の外交力は増す。安倍氏は保守的な歴史認識で知られるが、その信条を腹におさめ、新政権に移る韓国との関係修復を優先するときだ。
こうした外交戦略の目標は他国と一緒に、中国に責任ある行動を促すことであり、対抗することではない。それが安定した日中関係にもつながる。中国が疑心暗鬼にならないよう、日本は首脳レベルでその本意を伝えていく必要がある。
2006年、初めて首相になった安倍氏は靖国参拝を封印し、日中関係を大きく改善させた。それが日米のきずなも太くした。この危機をどう脱するのか。その活路は現実的な外交にある。
[日経新聞12月21日朝刊P.1]
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