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<b>2012.12.23 自民圧勝の影の功労者、その名は?
暴論珍説メモ(121)
田畑光永</b> (ジャーナリスト)
あらためて今度の選挙の党派別当選者数の一覧表を眺める。12党もが参戦した中で自民党が480議席のうちの294を取ったのだから恐れ入る。しかも、自民党自身が「さほど風が吹いているとは感じなかった」にも拘わらず、である。
勿論、前回の惨敗の逆バネが強く働いたことは明らかである。当選者の顔ぶれを追ってゆくと、「ああ、この人も落ちていたんだっけ」という自民党有名人がつぎつぎと現れる。その選挙区の落選前職はほとんどが無名の民主党候補だから、3年前の民主党風の強さを今さらながら思い知らされる。
それに多党化による票の分散が、相対的に強い政党に大きく有利に働くことも今回あらためて立証された。300選挙区の有効投票総数のうち、自民党は43%の票で79%にあたる237議席を獲得し、22.8%の票を得た民主党は9%の27議席しか得られなかった。「2大政党による安定した政権交代の実現」を目指して導入された現行の小選挙区制が、かえって「与論のブレの拡大効果」を生み、ひいては政治の不安定をもたらしていることは、今回の選挙でますますはっきりした。
そんなことを考えながら、東京都の小選挙区開票結果を眺めていた。先刻ご承知のように、東京は25選挙区で自民党勝利が21選挙区、あとは民主党2、公明、「みんな」各1である。自民対民主でみれば21対2の大差である。
このうち大変な接戦の末に自民党が勝った選挙区が3つある。1区、3区、18区である。1区では海江田万里氏が山田美樹氏に敗れ、3区では松原仁氏が石原宏高氏に敗れ、18区では菅直人前首相が土屋正忠氏に敗れた。
そこで、もしもの話になるが、この3つの選挙区に「未来」の候補者がいなかったとして、そしてその票が民主党に向かったとすれば、この3区は民主党の勝利であった。そうなれば自民対民主は18対5となる。21対2とはだいぶ感じが違う。もっとも海江田、松原、菅の3氏は比例で復活したが、もし小選挙区で勝っていればその分はほかの候補者に行くわけだし、自民党の比例復活者がその分減る。
今回の選挙では自民党への逆バネが強く働くことは自明のことであったにもかかわらず、民主党とそこから分かれた旧「生活」の「未来」は激しい刺客合戦を演じた。勿論、未来は「卒原発」を旗印に、原発NOの声を吸収しようとしたのであろうが、あの公示直前の旗揚げでは、結局、スポンサーである小沢一郎氏の旧「生活」の予定候補者をそのまま未来の候補者にせざるをえなかった。そのドタバタぶりは届け出当日の同党の比例名簿提出の際に明らかになった。
結局、未来は東京だけで16人もの候補者を立てたが、当選者は比例復活の1名だけ。その代償に自民党圧勝に力を貸したことになる。
以前の中選挙区では1選挙区に同じ政党から複数の候補者が出ることになり、それが政党内部の派閥争いを激しいものとするということで、小選挙区制が導入された。しかし、民主党が政権を獲得してからの3年余を振り返ってみると、内紛が収まっていたのは当初の半年余りに過ぎなかった。最初の鳩山首相が退陣する時から、小沢対反小沢の対立が表面化し、その後の菅、野田の両首相は絶えず党内からの退陣要求に悩まされ続けた。
その挙句に党は分裂したが、怨念はなお消えず、結果として自民党圧勝に力を貸した。そして小沢氏の勢力は亀井静香、阿部知子という外様を加えても全部で9人となり、民主党も57人の中政党に成り下がった。最早、その教訓を生かそうにも、はたしてその舞台があるのだろうか。
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