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次の参議院選で自民党が勝利すれば、自民党政権は長期政権になる可能性がある。自民党はなぜ圧勝したのか、安倍政権の誕生は何を意味するのか、我々国民はそのことをもう一度しっかりと考える必要があるだろう。
『月刊日本』1月号より
http://gekkan-nippon.com/?p=4608
アメリカが「日本を取り戻す」
―― この号が発売される頃には、安倍・自民中心の政権が発足していると目されています。少し気が早いですが、発足する第二次安倍政権の性格、そしてこの政権が抱える問題点をお伺いしたい。
<山崎> 相反するようなことを言うが、安倍政権下においては、「従米」派と「反米」派それぞれがその限界を露呈することになるだろう。そしてその原因は同じであって、それは思索の不在なのだ。日本人とは何者であって、何者になりゆこうとしているのか。根源的に日本人とは、日本国家とは何かと問いただすことがないために、ある者は従米に走り、ある者は安易な反米に走る。
―― 少し唐突に聞こえるご発言です。順を追ってご説明願いたい。まず、「従米」派の限界が露呈するとはどういうことですか。
<山崎> 安倍・自民党が政権に復帰するだろうが、金融緩和、TPP参加と、アメリカの要求するままに政策を進めていくことを選挙中にも公言している。実際、総理になる前に安倍氏は「総理になったらまっさきに訪米して首脳会談を行いたい」と打診したそうだ。民主党が壊した日米同盟を復旧するとのことだが、かつて安倍氏は総理だった時に「戦後レジームからの脱却」を掲げていた。「戦後レジーム」とは、GHQ占領下において、日本国憲法はじめ、日本の自主独立を封じるような体制であり、そこから脱却するということは、アメリカからの自立、同盟を維持するにしても対等な同盟関係構築のことのはずだ。
ところが、安倍総裁は「国防軍の創立」など威勢の良いことは言っているが、現在のような、自衛隊が米軍の指揮下に入っているような状況で国防軍としたところで、それはアメリカの指示のまま、自衛隊が世界各地に出かけていってアメリカの若者の代わりに、日本の若者に死んでいただきます、と言っているに等しい。
経済にしても、金融緩和を訴えているが、その内容を吟味すれば、要するに日本国民の財布に手を突っ込んで、それでもってアメリカ国債を買い支えます、と宣言しているようなものだ。当然アメリカからの覚えはめでたいだろうが、問題は、このような売国的政策を掲げているにもかかわらず、前の民主党が悪かったからというだけの理由で、また自民党に政権を与えてしまう世論であり、世論を善導すべき知識人の不在だ。
―― とはいえ、民主党はあまりに国民を裏切りすぎ、その怨嗟が民主党の壊滅的状況を招いた。自業自得といえばそれまでですが。
<山崎> 私は死人の墓の上で踊る趣味はないので、死んだ人たち、つまり、落選したり引退に追い込まれた人たちのことをここではあげつらわない。死屍累々で踊る場所はたくさんあろうが、そこで踊るのは上品ではない。民主党の死者たちは死者としてふさわしい礼儀をもって見送るべきだ。
大事なのは、民主党であろうが自民党であろうが、アメリカにとっては関係ないということだ。アメリカは日本の政権与党がどこだろうが、アメリカの国益を押し付けてくる。そして、歴代の政権はそれを呑んできた。その中には、臥薪嘗胆の思いを込めて苦渋を飲んだ政権もあろうし、自分が何をやっているのかわからずに飲み込んだ白痴的政権もあった。いずれにせよ、アメリカの意図に従い、逆らえずにいたという政治的現実、これこそが「戦後レジーム」だ。これはアメリカが特別に悪いのではなく、国家とは本質的に自らの国益を最大化するためにありとあらゆる手段を講じるものなのだ。
ところが、安倍氏の言う「戦後レジーム」はせいぜい「東京裁判史観」や「日教組批判」で、日本の自立自尊にまで思いが至る知的能力が欠けている。
「日本を取り戻す」、それが自民党の選挙公報だったが、ここには主語が抜けている。主語がなくても文脈の中から主語が察知されるというのは日本語の麗しい文化だが、同時にそれは、「政治的曖昧さ」の温床となる。確かに「自民党が日本を取り戻す」と言えば、「日本は自民党の所有物ではない」と反発を受けるだろう。おそらく、「日本が民主党のせいで本来の日本のあり方でなくなってしまったので、本来の日本の姿を取り戻す」というような印象を与えることを期待してこのキャッチコピーを作ったのだろうが、その実態は全く違う。
安倍氏が言っているのは、「アメリカが『日本を取り戻す』」という、対米屈従外交宣言なのだ。鳩山由紀夫氏のような、ちょっと頭のおかしい人が普天間基地の辺野古移設反対と言い出して日米関係がおかしくなる状態はこりごりだから、アメリカの言うとおりに日本政治を動かす「優等生」を日本の首相にしましょうということだ。(以下略)
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