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週刊ポスト 2103年1月1・11日号
言葉だけは同じ「政権交代」であっても、日本が変わるかもしれないという3年前の期待感や高揚感は全く感じられない。今回の“政変”が残したのは、やはりこの国は変われないのかという脱力感だった。
20年以上にわたる日本研究で知られ、『日本/権力構造の謎』の著者であるK.V.ウォルフレン氏は、この選挙結果に「日本というシステム」の完成を見たと指摘する。復活した官僚独裁主義についてウォルフレン氏が解説する。
* * *
自民党勝利の前から、「政権交代」は起きていた──それが私の実感である。野田佳彦・首相時代に、すでに「官僚独裁主義」は完全復活を遂げていたからだ。彼は財務省の言いなりとなって消費増税を断行し、各省庁の希望通りに公共事業を復活し、民主党がマニフェストに掲げた「脱官僚」や「コンクリートから人へ」といった改革への期待を裏切った。
今回勝利した安倍自民党は、単にその流れを引き継いだにすぎない。官僚にとっては、野田政権よりさらに扱いやすいだろう。民主党は、官僚とどう付き合っていけばいいかという経験則がなく、それを作り上げる時間もなかったが、自民党は様々な方法やレベルでそれを熟知している。つまり、より官僚と馴れ合いの関係になるということだ。
フランスには、「物事は変われば変わるほど、同じであり続ける」ということわざがある。これこそ日本に当てはまる言葉だと、かねて大勢の友人がいっていたが、私は今回の選挙結果を受けて、改めてそのことを確信した。
日本の権力システムが、多くの人々に自分は不幸だという意識を抱かせている──そのことに着目し、私が『人間を幸福にしない日本というシステム』を書いたのは1994年のことだ。それから約20年が経って画期的な政権交代が起き、私自身、一度はこのことわざは間違いだったのかと思ったこともあった。
しかし、その思いは残念ながら裏切られた。このたび私は、前著を大幅改稿し、『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』を上梓した。つまり、そうした社会的変化があったにもかかわらず、「日本というシステム」の根幹は全く変わることがなかったのである。それどころか、今回の自民党の勝利によって、このシステムはさらに強固になった。
システムとは、国家や法律とは別に、日本人の生き方を、またこの国の支配構造を決定する仕組みのことをいう。日本にはシステムを構成する権力者たちが多数いるが、この国は彼らによって押されたり、引き戻されたり、漂わされることはあっても、率いられることはない。権力の中心が不在であること、それが「日本というシステム」の本質である。
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