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いきなり野田佳彦首相が「解散行進曲」のファンファーレを鳴らして、慌ただしくゲートが開いた衆議院総選挙のレースは、早くも第4コーナーを回り、最後の直線に入った。ゴールは、16日の日曜日だ。
多頭数ならぬ「多党数」で大混戦、と言ってみたいところだが、自民党が大きく抜け出して大差の1着は動きようがない形勢だ。騎手(安倍晋三総裁)が疝痛(腹痛)で下馬するようなアクシデントがないかぎり、大差の第一党だろう。
■自民党の勝ち具合と官僚集団の意向がカギ
注目は、優勝馬よりも「着差」と、「掲示板の順位」ということになった。
週末の朝日杯フューテュリティーステークス(以下「朝日杯FS」)もそうだし、典型的には、春の皐月賞がそうなのだが、今回の総選挙は、勝てなかった馬(政党)のレースぶりと、ゴール後の反応に注目したい。
俗に皐月賞については、「皐月賞のゴール板を過ぎた動きをよく見ると、ダービーの勝ち馬が分かる」というようなことがいわれている。
筆者の関心もそうなのだが、読者のご関心は、「安倍氏が言っているような、マクロ経済政策は、本当に実現するのか?」という点と、もう少し深く考える方は、「それは、どの程度効くのか?」ということの2点だろう。
自民党が政権を獲った場合、金融緩和は、少なくとも形の上で実現するだろう。問題はその「程度」だ。これまでそうであったように、「程度」が不十分であれば、デフレから脱却できないし、市場がそう思えば、株価も上がらない。
国民は、「期待外れの春」を迎えることになり、十年一日のごとく「貯蓄から、投資へ」と言い続けている証券マン(私自身も含む)やFP(ファイナンシャルプランナー)などは、相変わらず肩身の狭い思いをすることになる。
では、金融緩和の「程度」を決定するファクターは何か。
1つは、自民党の勝ち具合であり、次に、他党の勢力分布、そして、もっと大きいのが官僚集団の意向ということだろう。これらは、競馬でいうと、「1、2着の着差」、「2着以下の着順」、「JRAと競馬サークルの意向」といった感じになる。
順に考えてみよう。
まず、自民党が第二党以下に大差をつけて、単独過半数を大きく上回る議席を獲得した場合、選挙後に成立するであろう第二次安倍政権の権威が強まる。安倍氏にとっての「ポリティカル・キャピタル」(政治的資本)が増えると考えてもらうとわかりやすい。
思うに、本当に実現したい政策は、選挙勝利後の「勢い」があるときに法案を通してしまわないと、実行できない。民主党政権でいうと、「子ども手当」が時限的なものでお茶を濁されているうちになくなったように、あるいは「国家戦略局」の設置法案の提出を先延ばしされたように、正式決定に対して時間を稼がれてしまうと、政治家が掲げた斬新な政策は実現しないし、少なくとも骨抜きになる。
■選挙後は読売と朝日の「論説」に注目
今回、選挙前の時点で内容がはっきりしている政策は、安倍氏の「大胆な金融緩和」くらいのものだ。その実現には、1つには日銀総裁人事に絡めて日銀に約束させることができるか、もう1つは、日銀法を改正して、インフレ目標の設定に「政府が」責任を持つ形を作ることができるかが、問題となる。
自民党勝利の「着差」が「大差」であれば、これらを来年の前半に進めることができる可能性が高まる。
ちなみに、レースが始まってからの「展開」も、自民党には有利だった。「国土強靱化」は、旧来型の非効率的な公共投資だとの批判を浴びる可能性があったが、トンネルの天井崩落事故がこれを打ち消した。また、北朝鮮の「人工衛星」発射も、タカ派が売り物の安倍氏には有利に働く公算が大きい。さて、どのくらいの「着差」になるのだろうか。
また、「馬券人」にとって2着、3着が重要であるように、第二党以下の勢力分布も重要だ。みんなの党は明らかに金融緩和に積極的だし、日本維新の会もデフレ対策に関してはブレていないはずだ。
彼らが、3、4着でいいレースぶりを見せるなら、次のG1レース(来年の参議院選挙が重要だ)への思惑も影響して、金融緩和政策の実現に弾みがつく可能性がある。
ただし、筆者が、実は、「着差」と「掲示板(着順)」以上に重要だと思っているのは、おそらくメディアに表れるであろう「霞が関」の意向だ。
前回の総選挙では、結果が出た直後から、民主党政権に対して、「マニフェストを柔軟に修正せよ」、特に「子ども手当を見直せ」とのキャンペーンが、いくつかの大手メディアから発信された。
子ども手当は、民主党の「コンクリートから人へ」を反映した「公平なバラマキ(=再分配)」で、公共事業による「非効率的で不公平なバラマキ」よりも、よほどいい政策だが、官僚から見ると、自分たちの裁量が働く場所も天下りにつながるチャンスもほとんどなく、自分たちが使えたかもしれない財源を食う(当初の予定では年間5兆円だった)、おそらくは「憎くてたまらない、潰すべき政策」だった。
どの新聞に、いつ表れるか、は今の段階ではわからないが、「解説」「社説」などの欄で大新聞が書く論説は、官僚の情報やレクチャーの影響を大きく受けている。どこに強く出るかはまちまちだが、読売新聞と朝日新聞と両方に何も出ないということはないだろうから、投票後3日くらいは、両紙を注意深く読むべきだ。
「日銀の信認を大きく損なうような政策には慎重であるべきだ」あるいは「財政再建に逆行するようなことがあってはならない」といったニュアンスの論説が確信を持った論調で書かれている場合、「大胆な金融緩和」は中途半端に終わる公算が大きいと見るべきだ。
■金融政策の好き嫌いと相場の予測は別にしよう
安倍氏が、公務員制度改革に挑んで果たせなかった前回政権時の失敗を教訓に、強力な財務相を任命するなど、「政治主導」を強力に推進するなら話は変わる可能性があるが、彼にそれだけの能力があるなら、そもそも前の安倍政権は、あんなに簡単に潰れなかっただろう。
自民党大勝を受けて株式市場や為替市場が、それぞれ株高・円安に大きく反応したとしても、大手メディアが金融緩和政策の足を執拗に引っ張るなら、投資家は、半身に構えて、こまめに利食いするほうがいいだろう。
なお、インフレ目標を「2%」以上に掲げることは、ほぼゼロ金利の期待継続期間を長期化させる効果があるし、日銀によるリスク資産の買い増しやベースマネーの買い増しにもアナウンスメント効果があるが、確実にデフレから脱却するためには、拡張的な財政政策の併用が必要だ。
安倍政権が「国土強靱化」に支出しようとしていることと(注;筆者は、負の所得税や法人税減税のような「公平なバラマキ」のほうがいいと思うが)、消費税率を引き上げたい財務省が来年(特に4〜6月期)のGDPを持ち上げたいと思っていることから、財政は、政権交代後しばらく拡張的になる可能性が大きい。
政策に賛成であろうと反対であろうと、相場を見るうえでは、「金融緩和政策が案外進む」可能性を軽視しないほうがいい。好き嫌いと、相場の予測、ひいてはポジションの取り方は分けて考えるべきだ。
ただし、消費税率を引き上げて増税した場合に、景気も株価もデフレ脱却もすべてが頓挫する可能性があるし、日銀が財務省の勢力下に入った場合(次期日銀総裁は武藤敏郎氏だろうか)、安倍政権の「大胆な金融緩和」が期待外れの短命に終わる可能性を考えておかなければならない。
もっとも、このあたりの心配は、もう少し先でいい。(以下略/山崎 元)
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