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いよいよ総選挙の投票日が明日に迫ってきた。
今回の総選挙が、原発廃止と消費税廃止に向けた確実な第一歩になることを強く願っている。
福島原発第一事故から1年9ヶ月が経過した。
勝手に推測するに、一定割合のひとは、福島第一原発の事故が「一つのかたまり」として認識しているのではないだろうか。
未曾有の事故で数十万人が生活をずたずたにされ続けているという認識はあっても、事故そのものは、時間軸的な経過が記憶から薄らぎ、福島では、3つの原発が事故を起こし、2つが大きな爆発を起こし、点検中の4号機も、とばっちりで爆発を起こしたという程度になっているのではないだろうか。
4つの原発が一気に過酷な事故を起こしたような印象になっていると言い換えるとわかりやすいかもしれない。
東京電力が先行したが、政府と国会の事故調査委員会も、今年7月までには調査報告書をまとめ、事故の原因や事故への対応をめぐる議論は急速に下火になった。
事故の原因や事故対応の失敗などを語る人は、急速に減ってしまった。
投票日直前ということで、「こんなひどいウソやゴカマシを続けている政府や“原発業界”に、原発の存続を委ねることができますか?」という思いでこの投稿を書いた。
地震発生当日最初にメルトダウンを起こした1号機については、“ベント問題”と“海水注入阻止問題”が強い印象として残っているかもしれない。
しかし、その印象は、人々がそのように意識するよう、政府・主要メディアを含む“原発業界”が情報操作をしてきた結果のものである。
なぜなら、ベントはメルトダウンを防ぐ手段ではなく、海水注入問題も、翌3月12日夕方というメルトダウンもメルトスルーも既に終わった段階で発生した出来事だからである。
1号機で起きた過酷事故(メルトダウン・メルトスルー・ベント=放射性物質放出・水素爆発・地下水放射能汚染・継続的な放射能漏出など)の原因や対応の問題点は、地震が起きて原子炉が自動停止した後、夕方までの出来事について追求されなければ意味がない。
強い関心をもってウォッチしてきた人でなくても、「1号機のIC(非常用復水器)が自動起動したが、急激に温度が下がると原子炉が損傷する恐れがあるためおよそ10分後に運転員が手動で止めた処置は、事故時運転操作手順書に則った正しい対応」であるという説明は記憶に残っておられるだろう。
少し関心が強い人なら、「その後も手動で再起動と停止を繰り返して冷やそうとしたが、弁が少ししか開かなくなり、十分に冷却できる前に止まってしまった」という説明も覚えているかもしれない。
しかし、1号機の事故対応について、とりわけICに関する説明は、真っ赤なウソばかりなのである。
● 唯一の冷却材確保手段であったIC(非常用復水器)の停止は誤対応
東電は、自身の「事故調査報告書」のなかで、「停止操作を操作ミスと指摘する声があるが、運転員は手順書に記載された対応をしている」と抗弁している。
しかし、それはウソかゴマカシである。
事故調やメディアも、1号機ICの操作について、東電のこの主張を踏襲するかたちで分析や解説を行っている。
代替給水手段などがあるのなら、急激に温度が下がる(温度降下率55℃/h超)ことで原子炉が損傷する事態を回避するためにICを手動で停止することは認められているが、ICが唯一の冷却材確保手段である場合は、継続的に運転しなければならないのである。
これは、後智恵的に当然の理屈を語っているワケでなく、東京電力が公開した「事故時運転操作手順書」に書かれていることなのである。
「事故時運転操作手順書」の多くのページで、(温度降下率55℃/h以内)の注意喚起が記されているが、それを遵守しなければならないのは、冷却や減圧について他の手段があるときなのである。
東京電力の「事故時運転操作手順書」のなかの「1号機事故時運転操作手順書(徴候ベース)」の解説「B−15」に、「注意事項#15 原子炉冷却材の確保、PCV健全性維持のためには[55℃/h(最大RPV冷却率)]以上での冷却が必要となる場合がある」と、ちゃんと明記されている。
● ICが津波襲来の前に自動起動したこと自体が問題
そもそも、1号機のICが、地震直後(津波到来前)の14時52分頃に自動起動したことが“異常事態”なのである。
ICは、重力を利用した緊急冷却装置で、全交流電源を喪失したときに利用されるものである。
多重化されているはずの外部電源がなぜか地震の影響で使えなくなり、14:47に非常用ディーゼル発電機が自動起動している。そうであるなら、この時点では、高圧系も含めて、所内の交流電源が確保されているはずである。
きちんと交流電源が確保されていたのなら、ICではなく、交流電源で動作する様々な冷却装置が動いたはずなのである。
地震大国ゆえに、1号機も、3.11以前も何度か自動停止している。しかし、設備されていたICが使われることはこれまで一度もなかったのである。だからこそ、原子力安全保安院は、ICの機能を確認するため、唯一1回だけICの稼働実績がある敦賀原発に資料を提出させたのである。
1号機のIC問題を語るのなら、まず、この“異常事態”をきちんと説明しなければならない。
推測だが、非常用ディーゼルが自動起動したのは事実としても、照明などに使う低圧系統には通電したが、冷却装置が動くための高圧系統には通電しなかったのではないかと疑っている。
運転員や責任者そして吉田所長は、津波が襲来して冠水などが起きる前に、ICが自動起動した事実をもって、より深刻な事態を想定しなければならなかったのである。
より疑えば、福島第一の現場は、ICについての基本的な認識も欠き、ICが起動した意味もICをどう扱えばいいのかもわかっていなかった可能性がある。
● 1号機のICは手動で停止させられていない可能性
運転員が保安規程に従って手動で停止したとされている1号機のICだが、それは、運転員に対する聞き取り調査のなかでしか出てこない話で、東電が公表している1号機の「当直長 引き継ぎ日誌」(「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所プラントデータ集」の「4.運転日誌等」)のP.16を見ると、15:16の項に、ICで圧力と水位が調整されていると書かれている。
これが事実だとすれば、15時03分頃にICが手動で停止されたというのはウソということになる。
東電の「福島第一原子力発電所 被災直後の対応状況について」でも、「原子炉圧力を6〜7MPa程度に制御するためには、ICは1系列で十分と判断、A系にて制御することとし、戻り配管隔離弁(MO-3A)を開閉することにより、原子炉圧力制御を開始」と説明している。
※ 奇妙なIC絡みの話が出てくるのは、ICが、1号機のメルトダウンを回避する生命線だったからこそであろう。
IC関連装置が地震で損傷していないことを前提に、きちんとICを使いこなしていれば、1号機のメルトダウンは回避できた可能性がある。
奇妙な話にしてしまう理由は、
1)IC装置や冷却のために連動している再循環ポンプの一部に地震で損傷が起き、正常に動かなかったことを隠すため
2)ICに関する知識もなく、まともに対応していればメルトダウンを回避できたことを隠すため
のいずれかではないかと思っている。
● ICに関するデタラメな説明
福島第一の現場及び東京電力本店などは、ICについてほとんど知識がなかったと思われる。
「ICが実際に作動したのはこの20年間で一度もなく、運転員はコンピューターでしか訓練していなかった」とする朝日新聞の記事もある。
福島第一の自衛消防隊が、消防ポンプの操作方法さえ知らず、下請けに頼み込んで動かし続けてもらったという事実も合わせて考えれば、日本の原発は、知らなかっただけでとてつもなく怖い条件下で運転されていたと言えるだろう。
1)IC作動の確認
東電は、手動停止したあとも、ICを断続的に動かしていたと主張している。
しかし、事故から半年ほど経過した10月18日に調査が行われ、IC(復水器)タンクの水量(通常80%)が、A系約65%、B系85%であるとされているので、A系がごく短い時間動作し、B系はほとんど動作していないと推定できる。
地震直後からすでにそうだが、津波襲来以降ははっきりと、1号機の冷却機能は、ICのみに依存する状態にあった。
ICがまともな動作を停止すれば、間違いなく、数時間のうちに核燃料棒が露出し、メルトダウンが始まる状態にあったのである。
であるなら、何をさておいても、1号機のICが動作しているかどうか確認を続けなければならないはずである。
しかし、経時的事故経緯の文書では、作動時にICの蒸気発生を確認と表記しているものもあるが、継続的に動作を確認した事実は、どこにも記載されていない。
原子力安全保安院は、1号機の「IC については、17 時頃、運転員が状況確認のため現場に向かったが、途中で線量上昇が確認されたため現場まで行くことなく引き返しており、IC の作動状態や胴側水位等の状態確認はできなかったとのことである」(資料A)と記している。
この文章は、ICの動作が確認されていなかった事実だけでなく、二つの重要な隠蔽ないしゴマカシが含まれていると言える。
1) ICの動作は、建屋内の現場に行かなくても外から確認できる。ICが動作していれば、音だけではなく、建屋の外に出ている排気口から大量の蒸気が出続けるからである。それは遠くからでも確認できるものだから、津波の危険を考えていたとしても対応ができる。
2) 17時頃に「線量上昇が確認された」というのは重要な情報である。配管などの損傷がない限り、その時点で放射能漏れはないからである。「線量上昇が確認された」と書きながら、その理由を検討していない保安院はある想定を隠蔽していると言える。
結局のところ、とんでもないことに、唯一のメルトダウン回避手段であるICが、きちんと動作しているかということさえ確認されていなかったのである。
2)ICへの水の補給
ICは、東電の説明によれば、6時間ほど動作を続けることになっている。
しかし、これもウソである。
ICがきちんと動作するためには、原子炉から送られてくる蒸気が通る細管が全部水に浸っている状態を維持しなければならない。常に、タンク(胴側)の高さの半分を超える水量が必要なのである。
水の補給がなければ、復水のために蒸発して、90分ほどで機能を果たさなくなる。
東電が6時間といっているのは、タンクのそばに設置されている水補給タンクが動けばという条件付だと思われる。しかし、この補給タンクが機能するためには交流電源が必要なのである。
東電は、「福島第一原子力発電所 被災直後の対応状況について」のなかで、
「○ 20時50分頃、消火系による原子炉注水ラインの構成が完了し、ディーゼル駆動の消火ポンプを起動した。これにより、ICへの胴側へ冷却水を補給出来る見通しを得た。その後、運転員がICの運転状態を確認したところ、ICの戻り配管隔離弁(MO−3A)の閉状態表示灯が不安定で、消えかかっていることを確認した。」
と説明している。
これは、交流電源を失っているため、通常の手段ではICに水の補給ができないことを認めたものである。
そのために、消火ポンプでICに水を補給しようとしたのである。しかし、20時50分頃の話だから、ICがそれまでに90分以上動作していれば、すでに機能を失っている。東電のこの説明は、でっち上げだと思われる。
それがでっち上げであること示唆する資料もある。
原子力安全保安院の資料に、「なお、事故直後には消火系によりIC 胴側への注水を行ったとの情報もあったが、東電に確認したところ、IC 胴側への注水についてライン構成はしていないとのことであった。」(資料A)と書かれている。
※ 資料A
「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について(中間とりまとめ)」
平成24年2月原子力安全・保安院
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/10th/10-32-1.pdf
このように、1号機のICというたった一つの機器を取り上げるだけでも、突っ込みどころが満載のデタラメな事故総括のまま、政府や“原発業界”は、再稼働に踏み切ろうとしているのである。
“拡声器”と“信頼度”で質量ともに私を凌駕している主要メディアの意図的な情報工作に抗することは困難で、蜂の一刺しにさえならないと自覚しているが、原発廃止と消費税廃止を志向する票と議席が一つでも増えればという思いで投稿を続けてきた。
福島第一原発事故の原因や事故対応などについて、それまでも自身の推論をいろいろ投稿してきたが、いくつかの事故調査委員会からの報告書が出揃ったお盆の頃、それらの「事故調査報告書」、「防災基本計画」(中央防災会議)、東京電力の「事故時運転操作手順書」の三つをベースに系統的に検討しようとした。
その結果、原発に関わっている人々や事故調査を担当している人々のあまりにひどさに愕然とさせられてしまった。
私一人が限られた資料を読み考えるだけでわかるウソヤデタラメなのだから、旧保安院をはじめとする政府機関や優れた考察力があると評価され選ばれた委員が指揮し多くのスタッフを抱える事故調査委員会、そして、大学に所属する研究者や主要メディアの原発担当セクションが、ここで書いたウソやゴマカシを知らないはずがないであろう。
事故発生以降の様々な書き込みで、政府・東電・学者が、事故後も(この期に及んでも)ウソ・ゴマカシ・隠蔽を続けていると非難し続けたが、推測を遙かに超えるデタラメぶりを知り、“ここまで腐っていたら私ごときが叫んでもムダ”と落ち込んでしまった。
事故原因や事故対応問題について、政府や東電の説明では納得できないと思い自分であれこれ考えようとした人ならおわかりだと思うが、原発の構造・非常停止時の正しい運転手順・事故発生後に政府や自治体がとるべき対応などが事故後も体系的に公表(説明)されておらず、それらの資料を探し出すだけで膨大な時間を費やさなければならない現実がある。
言ってしまえば、政府・主要メディア・“原発業界”は、あれだけの事故を起こしていながら、一般国民が、原発を知り、事故原因を知り、事故対応の問題点を知ることを忌避してるのである。
今回の総選挙でも脱原発を掲げている菅前首相は、在任中もすべての情報を公開すると豪語していたが、当時の政府も肝心な情報をまったくと言っていいほど公にしていないのである。
ただでさえ地震列島であり、使用済み核燃料の保管場所もなく、火力系とはいえ代替発電能力も十分にありながら、こんなにひどいウソやゴカマシを続けている政府や“原発業界”に、原発の再稼働や存続を委ねることができますか?と、みなに問いたい。
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