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「亡国」「改憲」潮流が跋扈する総選挙報道(2)――深刻な「危機」の時代に、支配力を強めようとする勢力に警戒を
http://www.asyura2.com/12/senkyo141/msg/162.html
投稿者 pochi 日時 2012 年 12 月 15 日 00:07:22: gS5.4Dk4S0rxA
 


日本ジャーナリスト会議 Daily JCJ
2012年12月14日

「亡国」「改憲」潮流が跋扈する総選挙報道(2)
――深刻な「危機」の時代に、支配力を強めようとする勢力に警戒を



 復興庁が12日に発表したところによると、12月6日現在の避難者等総数は約32万1千人で、全国47都道府県1200以上の市区町村に散らばっての生活を余儀なくされている。また、自県外に避難等している人の数は、福島県から5万7954人、宮城県から8079人、岩手県から1674人となっている、という。
 3・11から1年9か月、震災の爪痕は、全国各地に避難しているの人々のいまの生活の姿を、この数字から思い起こすだけでも、依然、圧倒的な被害状況を伝えてくる。なかでも、福島県から他県への避難が5万7954人、県内への避難者の数が9万8235という規模となっていることは、あらためて原発事故の過酷さ、惨たらしさを伝えて止まない。
(JCJふらっしゅ「Y記者のニュースの検証」=小鷲順造)

 報道によると政府は、原発事故による放射性物質がもたらす健康被害への対策などについて、ベラルーシとの間で情報共有する協定を、福島で締結することとなった。同様の協定を、政府は今年4月にウクライナと締結している。ベラルーシは、1986年の旧ソビエトのチェルノブイリ原発事故で、深刻な被害を受けた。原発の立地した現在のウクライナだけでなく、ベラルーシ(原発の北側に位置)にも大量の放射性物質が拡散、ベラルーシにとっては、いまも環境や住民の健康被害への対策が、大きな課題としてのしかかったままである。

 NHKによると政府は、今週の15日から福島県郡山市で開かれる原子力の安全性についての国際会議の場で、協定を締結するという。協定には、1)両国の原子力の専門家が相互に現地を訪問して調査を行うことや、2)放射性物質の拡散による健康被害や土壌汚染への対策について情報を共有することなどが盛り込まれる見通し、という。
 福島第一原発事故からすでに1年半を超え、2年間の経過を目前にする中で、ようやくチェルノブイリ原発事故の被害各国との関係が、政府レベルで構築されようとしていることに喜びを感じるが、このスピードはどうなのだろうか。早いのか遅いのか、適切なのか、いつもながらのお役所仕事で後手後手なのか。事故の実態を正しく伝えることを拒み、情報を小出し後出ししながら、のらりくらり役所の責任のがれを裏で周到にはかりながら、聞こえてきた「想定外」の言葉に唖然とさせられ続けた日々を、3・11以後はじめての総選挙を目前にしたいま、あらためて、思い出す必要があるように感じている。

 06年12月、共産党の吉井英勝衆院議員が、巨大地震の発生に伴う原発の安全性について、原発の電源が失われた場合の安全機能の喪失などにふれて質問したのに対し、安倍首相は答弁書で、電源喪失について「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」などと回答、そのまま約5年後の恐るべき事態を引き起こす少なくとも遠因、へたをすれば直接的原因ともいえるほどの無責任な対応をしていた。
 その安倍氏が、野党自民の総裁に返り咲き、選挙前の下馬評では「自民圧倒的優位」の報道を引き出している。それを思うと、事故後の対処の乱れ、遅れ、ウソ、隠蔽、そして「想定外」の言葉など、数々の「犯罪的」とも言える対処や答弁の根幹に、安倍氏の「必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」という言葉が鎮座しているのだ。そのまま、依然、根幹から見直されることなく、日本の国策・原発維持・推進勢力の「呪文」や「合言葉」のようにして、生きながらえている。

 12日、原子力規制委員会は、日本原電敦賀原発(福井県)の2号機直下に活断層がある可能性が高いと判断し、田中委員長は同日、あらためて再稼働は困難との認識を示したが、そもそも国の規定は、活断層の真上に原子炉建屋などを建てることを認めていない。規制委の判断は、直下に活断層があると認められた2号機にとどまり、1号機については、「何も議論しておらず現時点ではフラット」(同委員長)というわけだ。
 原子力規制委員会は、依然、これまでのルールに則って動いているにすぎない。これまでのルールが、ただのお飾りであり、運用は明らかなルール軽視・無視でなされていたことが、ようやく白日の下にさらされ始めたというに過ぎない。それが現状である。
 ゆえに、安倍氏の「必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」も、役所からも事業者からも飛び出した「想定外」の言葉も、一直線でつながっているのである。それを、根本から変えることができるか、電力の原発依存から脱原発、原発ゼロへ、すべての原発廃炉にむけた体質への転換を実現できるか、それが問われる中で、いま、16日の衆院選を迎えようとしているのだ。
 これを、日本社会の「強運」「底力」として活かせるか、それとも日本社会「崩落」の始まりとして、後の世で振り返られることにしてしまうのか。大震災と原発事故という大きな課題を突きつけられた日本社会が、その重大な課題に正面から向き合い、解決の道へと歩みを進められるかどうか。原発ゼロの課題だけではない。消費増税やTPP、米軍基地問題・オスプレイなど「亡国的」課題についても、正しく選択・対処できず、弱体化のなかで「弱り目に祟り目」「泣きっ面に蜂」の状況を自ら招き寄せてしまうのか。

 自民党や維新が「公約」として打ち出した「改憲」路線のことも重大だ。
 両党とも、その内容を見てゆく限り、日本国憲法の「改憲」というより、日本国憲法を廃棄して、新憲法を制定、あるいは効果としてそれに匹敵する条項の停止や書き換えを含んでいる。16日の選挙は、明らかに重大な「政策選択」「政権選択」選挙であり、日本の近未来を大きく左右する選挙である。その点について、さらに掘り下げておく必要があろう。


■なりふりかまわぬ「選挙予測」合戦に突入した日本のメディア

 自民党は、原発の存廃について「10年後に判断」とするだけで、明確な態度を示していない。その他の重要なテーマについても、あくまで「あいまい」姿勢を採用、総選挙での勝利と政権奪還をだけに集中している。3年を超える野党生活で、一時は屋台骨の危機がささやかれていたが、民主党政権の「オウンゴール」の連発による敵失と、消費増税法案などに象徴される民主党による「自公政権時の失政・悪政」の肩代わり路線のおかげで、息を吹き返してきた。

 今回、マスメディアが無責任に垂れ流した「議席予想」は、ほとんどが「自民圧勝」「優勢」を報じたが、それらを詳細に見てゆくと、安倍氏にも自民党にも、圧倒的な求心力のほどはうかがえない。いずれも「基礎票」をベースとしたもので、半数近くが投票先「未定」のなかでの予測にすぎないようだ。それら「予測」のなかには、投票先「未定」とした回答の占める比率さえ示さず、調査は特定エリア〜半数程度のエリアにおける調査結果をもとに専任スタッフなどがそれを全選挙に敷衍するなどした「予測」もあるようで、いったい何のための、誰のための「予測」なのかさえ見えてこない。

 要するに、選挙当日の「出口調査」と同様、各紙・各局の「速報性」の競い合いだけが先行して、それがそのまま「投票率」さえ押し下げかねないほどの害悪をもらたしているようにしか思えない状況に陥っている。巨額の経費をつぎ込んで、メディアがメディア同士の「速報力」を競い合うだけで済むのなら、市民の側も、マスメディア存亡の危機をかかえる業界としては、そこまでやらねばならないほど、各社、生き残りがかかっているのだな、で済むのかもしれないが、残念ながらマスメディア各社はそれぞれ一企業でありながら、担っていることの社会性の重さから、自ずと各社には重大な社会的責任がのしかかっている。
 そのことを忘れたかのような、なりふりかまわぬ「選挙予測」合戦に突入した日本のメディアは、残念ながら、「総選挙」というマスメディア企業の存亡などよりもはるかに重大なテーマをかかえながらも、そのテーマを掘り下げ、読者・視聴者・市民とそれを共有し深めることをないがしろにしてきた側面は否めない。

 貧すれば貪す、メディアの社会的役割・社会的責任よりも、目先の占拠関連広告収入に踊らされ、広告・宣伝媒体としてメディア同士が熾烈なたたかいを繰り広げたために、健全なジャーナリズム機能は発揮されず、市民はおきざり、ないがしろにされ、この百年以上に一度といえるほどの重大な選挙において、日本のマスメディアは「争点」の掘り下げも、「議題設定」の役割も放棄してしまったと、後の世に振り返られるような大失態を、おかしてしまった可能性がある。
 その点については、今回の総選挙の特徴のひとつである、いわゆる「多党乱立」の状況が影響した可能性も一概に否定はできないかもしれないが、それは言い訳にはできないだろう。メディアの怠慢でしかない。また、「自民優勢」「自民圧倒的」と打った予測は、どこまで現実となるのか。世論調査が大外れしたり、出口調査が大きく外れたりした例は、98年参院選や2000年の衆院選、2003年衆院選でみられたが、特に無党派層の動きを読み切れないことなどによる「教訓」は、どこまで現在の「世論調査」と「議席予想」に活かされてきたのか。そのことも今回の選挙は、あらためて問うことになろう。

 時事通信は13日、<議論不足の料金抑制策=「脱原発」訴えの陰で>の記事を出して、1)エネルギー政策における原発の位置付けが争点の一つとなっている、と指摘、2)各党が選挙公約に「原発ゼロ」や「脱原発」「卒原発」を掲げ、その達成時期を競うが、3)現実的で具体的な道筋は十分に示されていない、4)専門家からは、家計や企業経営を直撃する電気料金の上昇といった負の影響を和らげる政策の提示が不十分だとの指摘が出ている、などと報道した。
 また、<原発の稼働停止による火力発電用燃料費の増大から、電気料金を値上げする動きが全国に拡大>と前置きして、<経済界は「電力不足で無理を重ねている中だけに、地域の疲弊が加速する」(大阪商工会議所)と悲鳴を上げる、との「指摘」も加えた。この記事は、どうも「原発ゼロ」や「脱原発」「卒原発」には批判的立場から書かれたものようだが、記事には下記の12党の「衆院選での各党の原発に関する主張」の一覧が付されてもいる。

 この手のリストは、ネット上でも幾種類も出回り広く共有されたが、下記のようなシンプルなものでは、投票の意思決定に資するとは考えにくい。それも、上記のようにこの記事は、「脱原発」を掲げる勢力と、そうでない勢力とを見分けることに主眼をおいたものではなく、「脱原発」勢力の主張は具体的な道筋が十分ではなく、電気料金の上昇といった負の影響を和らげる政策が足りないとする点に主眼を置いたものだからなのであろうか。

 ◇衆院選での各党の原発に関する主張
  民主党    2030年代にゼロ
  自民党    10年以内に判断
  日本未来の党 22年に原発ゼロ
  公明党    可能な限り速やかに原発ゼロ
  日本維新の会 脱原発依存体制の構築
  共産党    即時原発ゼロ
  みんなの党  20年代に原発ゼロ
  社民党    直ちに原発ゼロ
  新党大地   ロシアと協力し原発ゼロに
  国民新党   将来の脱原発依存
  新党日本   公共事業として原発廃炉推進
  新党改革   原発に依存しない社会構築
  [時事通信社](13日)


 私なりに整理してみると、以下のようになる。

 ◇「脱原発」志向勢力=共産党 社民党 日本未来の党 新党日本 新党大地
            みんなの党 民主党

 ◇「脱原発」慎重勢力=公明党 日本維新の会 国民新党 新党改革 自民党



 公明党は「可能な限り速やかに原発ゼロ」としてはいるが、依然、自民党のパートナーでもあり、選挙戦でも「原発ゼロ」へむけた積極的な主張や取り組みは見えてこない。また、政府は国民の多数が「脱原発」を求めていることを認めているが、その「脱原発」について、はっきりと反対姿勢、つまり「反・脱原発」=「原発維持・推進」の立場を明らかにした政党もない。自民党の「10年以内に判断」と、新党改革の「原発に依存しない社会構築」が、いわば「脱原発」を明示しない立場といえよう。その姿勢は、いったい何を示しているのか。
 そうした選挙用のいわば「あいまい」姿勢が「言外」に含む本音のありかを、読み解く力を、今度の選挙は一人ひとりに問い、求めてやまない。

 たとえば私は、自民党は選挙時にはひれ伏さんばかりにして、選挙民の「一票」を請い求めるが、いったん当選してしまえば、ごろりと態度を「先生」面に変えるのだな、と思った経験が何度もある。すべての自民党の候補がそうだというわけではなかったが、ああ、これはこの党の体質なのだな、と長い間、何度も思わされた記憶がある。
 そうした記憶は、畳に額を擦り付けていた候補者が、当選後は、そんなことはすっかり忘れ去ったか、いや、そんなことはまったくなかったかのように尊大な、役人か代官か支配者か、あるいは救い主でもあるかのような態度に豹変して、庶民の陳情の類を受けつける側にまわる。私はそうした豹変ぶりに出会うたびに、「ああこの人たちは、こんなふうに態度を変えない限り、きっと我慢できないのだな」と理解した。

 土下座までして「一票」請わなければ当選できない。そのストレスが、こうまで人を変えるのかとも思った記憶がしっかりと刷り込まれているし、それは次第に、いや、これはゲームのようなもので、この人たちはいわば土下座や泣き落としを、当選するために必要な演技として共有している――それが政治というものだ、と理解して行動している。だから当選さえしてしまえば、大名か国王にでもなったかのように変わり、そして、こんどは頭を下げて自分をたずねてくる「(票をたばねてくれた)民・百姓」のために、見返りをくれてやるのか、と思いなおしたこともある。
 その一方で、同じ自民党でも、土下座しないひとがいて、徹頭徹尾、国の危機を訴え、煽り、地域(選挙区)の危機を訴え、煽りながら、バラ色の未来を約束してみせたりする者もいる。なかには土下座も、バラ色の未来も提供しないで、ただただ国を憂いてみせるだけで、当選前も当選後も態度を基本的には変えず、選挙中だけ、多少白い歯などをのぞかせてみせる人間たちもいることも知った。
 バラ色の未来を語る人々は、当選さえすれば、大規模公共事業などを選挙区に与える算段があるか、もしくは「公約」そのものにその約束を含ませてあり、その「公約」を掲げて勝利したのだから、国としてその「工事」を行うのは当たり前という仕組みを前提にして、「票」をたばねる。政治を業とする者と、票を取りまとめることで「(膨大な予算のつく)仕事」を手に入れて、地域で顔をきかす者との「阿吽(あうん)」の呼吸。その、彼ら独特の、あるいは「特殊」と呼もよぶべき「民主主義」が慣習として形成され、あたかもそれ自体「ムラ」社会であるかのような「カネ」の共有と流れを生み出している。

 そうした「体質」は、高度経済成長や新たな税収などを前提として温存され、踏襲されてきた。ゆえに、その独特の「利権の構造」は、経済成長が鈍化し、新たな税収など見込めない段階に入ると、「失政・悪政」として表面化する。ムダな公共投資、ムリな公的サービス、ずさんな維持・管理システムの赤裸々な姿が、そのときになってようやく明らかになる。そしてその、政治を「利権」化したいびつな姿は、罰せられたり見直されたり抜本的に改善されたりせずに、一部のたとえば「贈収賄」などに特化して事件化され、一部の、たがいにもたれあってきた政治家と事業者だけが「いけにえ」として摘発され、体質そのものは温存される。

 その自民党的な民主主義、自民党的な政治と利権の構造は、政治を「事業」とみなした「世襲型」あるいは「家元型」とでも呼ぶべき独自のコミュニティを形成し、そこに地域住民を組み込んで存続される。存続が至上命題だから、必要とあらば、カネで人心を買いとり、そのコミュニティの一員でなしには生きてゆけない地域社会を生み出しても平然としている。
 09年の「政権交代」で、自民党は長い野党生活に入ったわけだが、そうした「体質」から抜け出すことはできたのか。たとえば典型的な地域独占事業を君臨させて温存してきた「原発」をめぐる「利権」と「もたれあい」の構造について、自民党は今回の重大な事故で、根本から見直したのか、心の底から反省したのか、それとも民主党政権の時代に起きた「事故」なので、自分たちの責任は一部に限られるとほおかむりを決め込んだだけなのか。その点も、はっきりと見極めねばならないだろう。

 自民党政調会長の甘利氏(07年、中越沖地震で柏崎刈羽原発でトラブルが起きた時には経産相)は、「原発」の再稼働について、つい最近も「安全を確認した原発は動かした方が、国民利益にかなう」とする立場を明言するなどしている。
 自民党幹事長の石破氏も「原発をなくすということは核の潜在的抑止力を放棄することになる」という考えを表明してやまない。
 また、石破氏の「原発と核の潜在的抑止力」という見方でいけば、自民党は大っぴらに「核兵器」と「原子力発電」の関係を認めているようだ。だとすると、自民党総裁の安倍氏が、「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」と安倍内閣当時に答弁書を出すような核武装論者であることも、「原発」の存廃と深くかかわっていておかしくない。

 ついでにふれておけば、維新の石原氏や橋下が核武装論者であることも広く知られている。そして維新は、原発の再稼働には一時期反対の姿勢を示していたが、大飯原発をめぐるなかで、再稼働やむなしへと判断を変え、消費増税についても「反対」から「賛成」へと姿勢をひるがえした。また、イタリアで2011年6月、国民投票で「原発反対票」が95%を占め、原発再開を考えていたベルルスコーニ首相(当時)はその考えを放棄し、同国の「脱原発」が決まったが、それを「集団ヒステリー」と呼んで物議をかもした自民党幹事長がいたことも忘れるわけにはゆくまい。

 原発の問題、消費増税の問題、TPPの問題、そしてオスプレイや米軍基地問題、さらには生活保護を巡る議論に象徴される「貧困」の問題や「社会福祉」の問題。いずれも、政権交代した民主党の失政・悪政として片付けることはできないし、ましてや、いずれの課題においても、政権交代前の自民党の責任が消えてなくなるわけでもない。「原発」の問題を例にとれば、3・11がもし、自民党が政権についているときに起きていたら、どうなっていたか。私は何度も肝を冷やす思いをしたことを忘れていない。

 政権交代した民主党から首相が出ているにも関わらず、事故に関する情報の小出し後出し、言い逃れ、隠蔽の数々。政権を担う民主党が受けるべき批判は相当なものだが、自民党だったら事故に関する情報の小出し後出し、言い逃れ、隠蔽の数々はなかったといえるのか。そして、少なくとも事故前につくられた「原発」の稼働ルールに則って、再稼働可否の判断がなされようとしているいま、ここで自民党に政権をゆだねた場合、「原発」そのものと「原発」関連行政の全体は、いったいどのようになるのか。明確な答えを、自民党は表明していない。

 「10年以内に判断」すると、あいまいな姿勢を示して、そこに閉じこもるだけで、総選挙をやりすごそうというしているとしか、私には思えない。「このまま民主党にまかせておくわけにはいかない」という思いや判断が、選挙民に蔓延していて少しも不思議ではない状況だが、だからもう一度自民党に政権を委ねるという安易な判断を、日本の選挙民がするだろうか。百点満点を自民党に与えて、これからの日本の近未来を自民党に白紙委任するような投票行動をする理由は、とうてい見あたらない。せいぜい、消費増税やTPPをめぐる路線対立による民主党の自滅で、「ようやく自民党の政権返り咲きの芽が出てきた」という程度にすぎないのだから、「調査」が探り当てた「固さ」は、大幅に縮小してきたとはいえ依然強固な自民党の固定票の岩盤だろう。

 そうした問題提起を、日本のメディアは、ジャーナリズムは、どれだけしているだろうか。いたずらに「選挙予測」合戦を繰り広げ、それぞれの「メディア力」の誇示にいそしんだところで、それを誇示する相手は国民でも、選挙民でもない。念頭においている相手は広告会社や広告スポンサーではないのか。公示前に行われた「調査」の数値が、いっせいに垂れ流され、公示後もそのままそれを基礎に、矛盾が出ないように調整され、社内処理されて出されてきたのではないのかという疑念を、私は拭い去れないでいる。
 また、広告収入の劇的な縮小にあえいでいるメディアにとって、「総選挙」関連広告による収入がこれまでにないほど貴重になっていて、そのためテレビや大手紙に派手に広告を打ってくれる政党に過剰に反応したということはないのか、という心配もまだ消え去っていない。

 09年の衆院選で敗北し、政権を民主党に明け渡した後の参院選で自民党は勝利し、国会にねじれ状態を発生させたのだから、岩盤は衆院選敗北前後と比較して当然固くなっていておかしくはない。まして、消費増税をめぐる三党合意に象徴されるように、野党生活が長引き、存亡の危機をむかえつつあった自民党は、三党合意によって政権の一角に食い込むだけでも、一息つけるようなジリ貧の状態にあったわけだが、三党合意で舞い上がった自民党は「国土強靭化計画」を打つなどして、ふたたび「カネと政治」の体質へ戻るのかという批判をうけるリスクをおかしてまで、自民党「共同体」の存続に力を注いだのである。

 そうした途上にあった自民党にとって、選挙戦序盤から相次いだ「自民大勝」予測する世論調査結果に、自民の側がおどろき、「自民を油断させようとするマスコミの陰謀なのではないか」として報道を疑い、石破幹事長が引き締めにやっきという情報なども乱れ飛んでいるほどである。


■日本の世直しの力、日本の再生の力

 さて、今度の国会が、いかなる者たちを収める「容器」となるか。今度の選挙で決められる顔ぶれによって、日本の衆議院、国会はその性格は決まってしまう。もちろん、だれをその中に収めるかを決めるのは、私たち選挙民である。国会の顔ぶれを決め、性格づけを行い、何をなさしめるかは、政治家が決めるのでもなく、メディアが決めるのでもなく、私たち国民が決めるのだ。
 これほど重要な分岐点に立つ日本社会を、活かすも殺すも、今度の選挙にかかっている。私たちの手にかかっている、ということだ。いかなる下馬評にも微塵もまどわされることなく、私たちは私たちの結果を引き出してゆくだけである。
 希望への第一歩とするも、さらなる絶望への第一歩とするも、大枠のを決定してしまうのが16日の総選挙だ。同日には東京都知事選挙もある。この選挙も非常に重要だ。

 自民党はこの選挙で、公約として「改憲」案を出している。
 その改憲案は、前にも幾度かふれてきたように、日本国憲法の三本柱である民主主義、平和主義、人権をないがしろにする内容である。そのこと自体が、日本国憲法の「改憲」ではなく、日本国憲法を廃棄して新憲法を制定しなそうとする内容を示しており、これは日本国憲法からの逸脱を意味しているにもかかわらず、それを総選挙の「公約」として掲げていることに、明白な「ルール違反」があることを指摘しておかねばならないだろう。
 また、すべての人は人権を有し、それを基礎に国家を成立させ、憲法は為政者に対し、専制や国民の支配を許容しないこと、権力は人間の尊厳を自らかかげ、国民一人ひとりの生命と自由と人生の謳歌を尊重することを自ら宣言し、憲法を遵守する義務を負うことを宣言させるものである。いわば憲法は、権力の暴走を許さないために、国民が権力を付託する者に対して「これだけは約束しなさい」と、遵守を要求する性格のものであるが、自民党の改憲案は、その憲法の社会的役割を根本から書き替え、国民に対して国家に忠誠を誓わせる内容となっている。

 つまり、選挙とも密接に関連したテーマとして、「思想良心の自由」などがあるが、その自由を、「公益及び公の秩序」に照らして制限し、国がそれをコントロールすることを国民が許容するよう求める「改憲」内容に象徴的に現れているように、各個に天賦に与えられた人権を否定し制限して、国民が国に対して果たす義務とセットにしようとしている。簡単に言えば、国民は「お国のため」に生きよ、国への義務に忠誠を誓い、それを果たせ、そうすれば許容できる範囲で、自由を国が「保障する」、というわけだから、これは近代立憲主義を否定し、日本社会を封建社会へ逆戻りさせようとする中身である。人類社会の歩みそのものに挑戦し、否定する内容であり、それを断じて許すわけにはいかないのは当然であろう。
 これをみれば、自民党が原発についても、消費増税についても、TPPについても、「あいまい」姿勢をとっているのは、この選挙で大勝し政権に返り咲くことを最優先していることも、およそわかってくる。まるで同じ会社が競合するブランドを社内に複数立てて、市場の占有率の拡大をはかるように、維新という別働隊を立てて、自民と維新の「合従連衡」のドラマを演出することで、メディアの関心をひきつけようとする「戦術」をとっているらしきことも、仄見えてくる。
 この「改憲」志向に関係する動きは、自民党や維新に必ずしも留まらない。各候補者をしっかりと見定めて、投票先を判断していくことが肝要となろう。

 共同通信が13日、12、13両日に実施した衆院選に関する全国電話世論調査(第5回トレンド調査)の結果を発表した。比例代表の投票先は自民党が前回調査(8、9両日)から1・8ポイント増の22・9%で首位を維持した。民主党は1ポイント増の11・3%、日本維新の会は0・5ポイント減の10・1%で、両党の順位が入れ替わった。「野田首相と安倍自民党総裁のどちらが首相にふさわしいか」では安倍氏がリードを保った――。

 今回の選挙でマスメディア各社が、我先にと繰り広げたこうした「議席予想」の背景や意味については、早晩、判明することだろう。また、ネットの普及で多様化するメディアは、メディアの側から働きかけるプッシュ型調査ではなく、アクセス者の参加を促すプル型による「調査」も並行して実施している。
 たとえばロイター通信は、その日本サイトに「ロイターオンライン調査」のコーナーを設けて、「総選挙で誕生する新政権の中心となるべき政党」をたずねている。
 13日22時の段階では、以下のようになっていた。

◇ロイターオンライン調査 総選挙で誕生する新政権の中心となるべき政党は
民主党     4286票 (5%)
自民党    38601票 (43%)
日本未来の党 31791票 (35%)
公明党      966票 (1%)
共産党     3397票 (4%)
社民党      542票 (1%)
みんなの党   2689票 (3%)
日本維新の会  7244票 (8%)
その他      893票 (1%)


また、Yahoo!みんなの政治では、「あなたが望む次の政権の枠組み」をきいている。「2012年12月10日〜」では、次のようになっていた。

計 6224 票
民主単独           1%   66 票
民主中心の連立政権      4%  220 票
自民単独          25% 1557 票
自民中心の連立政権     17% 1080 票
自民と民主などの大連立    3%  162 票
第三極勢力中心の政権    26% 1631 票
政界再編による新たな枠組み 21% 1330 票
その他            3%  178 票


「12月16日に衆議院選挙が行われます。あなたは投票に行きますか?」(2012年12月9日〜)の項目では、以下のようになっていた、

計 6170 票
必ず行く         82% 5057 票
多分行く          5%  295 票
もう期日前投票へ行った  11%  682 票
行かない          1%   85 票
その他           1%  51 票

回答者の支持する政党の割合
 民主 (3%)
 自民 (22%)
 未来 (36%)
 公明 (2%)
 維新 (4%)
 共産 (2%)
 みんな(4%)
 社民 (1%)
 大地 (0%)
 国民 (0%)
 日本 (1%)
 改革 (0%)
 その他(1%)
 なし (24%)


 上記の「Yahoo!みんなの政治」にみられるように、支持する政党をもつ人の場合、投票には積極的と考えてよいものと判断できる材料が提示されている。「回答者の支持する政党の割合」は、政党支持者の多さ少なさというより、このページのアンケートに参加した人の数を%表示したものと考えられるため、各党がどれだけこうした「ネット投票」に関心をもっているか、各党の支持者がどれだけネットを重視しているかを一定把握する上で役立つ。

 「行かない」は1%、85票にとどまっている。実際の選挙でも積極的な投票行動がみられるかどうか。非常に大事な点だろう。かつて自民党が「無党派層」の動きに苦しめられる経験をつんでいたとき、同党の森氏は、「投票先を決めていない人は、(投票に行かずに)寝ていてくれるといいが…」などと口走り、さらに厳しい視線にさらされた。
 いま「絶好調」のように伝えられている自民党だが、選挙はふたをあけるまでわからない。当日まで投票先を決めない人もいれば、当日、投票先をかえる人もいる。それが選挙だ。
 私たちはもう一度、全国各地に避難を余儀なくされている人々のことを想起し、もう一度大震災と原発事故が日本社会にもたらした爪痕について、考えをめぐらせたい。そして、原発、消費税、貧困・社会福祉、TPP、基地問題など重要な争点のほか、まるで争点かくしか争点そらしのように自民党が打ち出してきた「改憲」「壊憲」公約についても、しっかりとむきあっておきたい。

 そしてとりもなおさず、小泉内閣以降、自公政権がもたらしてきた「負のスパイラル」、それを引き継ぎ、さらに「復古改憲」路線で日本社会の硬直化を進めた安倍政権のこと、さらには国民のうけて誕生した民主党政権のなかで自公両党同様「新自由主義」に毒され、独自の路線を確立できないまま勢力を分散させるに至った野田政権のことなど、これまでの流れを思い返して、近未来の日本社会を決定付けることになる16日の選挙への姿勢を、固めたい。
 そして、こうした深刻な「危機」の時代に、そこへつけ支配力を強めようとする勢力が、「亡国」「改憲」の策動にかぎらず、国内外のさまざまな立場から現れかねないことも、頭の隅においておきたいところである。

 もしも、まわりに09年の選挙で自民党にお灸をすえたのだから、今回は民主党の番で、民主党政権を引き摺り下ろすためには、投票先は自民党だろうと維新だろうといいのではないか、と考えているような人がいれば、やはり総選挙の意味をもういちどともに考え直すような取り組みを広げたい。その点におけるメディアの大切な役割も、まだ残されている。
 その際、マスメディアが垂れ流した「議席予想」に毒され、「どうせ変らない」と投票そのものを軽視したり、投票行動から逃避したりする人が満ち溢れることなどないように、投票への参加を呼びかけたいところである。その意味でも私には、今回の選挙ほど、一人ひとりが問われ、一人ひとりが求められ、一人ひとりが生き、活かしあうことが期待されているときはない、と思えてならないのである。

 12月14日。この夜を境に、日本の世直しの力、日本の再生の力が大きく結集し、これまで秘めていた力を大いに噴出させ、16日をむかえたいものである。

(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)


◇「亡国」「改憲」潮流が跋扈する総選挙報道(1)=日本の選択肢はこの二つだけではない


http://jcj-daily.seesaa.net/article/307452551.html  

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コメント
 
01. 2012年12月15日 01:27:54 : YxpFguEt7k
國分功一郎氏
「今日、戦前の雰囲気を伝えるDMをとある方からいただき、新聞の一面に〔日本の南方のとある島付近での〕「武力衝突」という文字が載る場面を想像できてしまった。武力衝突で人が一人でも死ねば、兵士になりたいという日本人が殺到するだろう。そしてその世論の力を利用して憲法でも何でも変えられる。
 過激なことを言っていた連中は事態を最悪の方向に向けるとともに泡沫化して消えつつある。そして漁夫の利を得るようにして、うしろでこそこそと計画を立てていた連中がその事態を利用し、巨大な支持を得ようとしている。真の脅威は過激な連中ではなかった。」
https://twitter.com/lethal_notion/status/279617839890055169
https://twitter.com/lethal_notion/status/279618600019562498

もはや戦前。くい止められるかどうかが知識人・言論人の腕の見せどころです。


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