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2012/12/11 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
やっぱり打ち上げ延期。なぜ「張り子の虎のミサイル」にまともに反応する振りをしているのか
テレビを見ている人は「何事か」と思っていたのではないか。北朝鮮のミサイル発射に備えて、政府が出した破壊措置命令のことだ。森本敏・防衛大臣は8日、斉藤治和・航空総隊司令官から迎撃態勢完了の報告を受けた。
この仰々しかったこと。わざわざテレビカメラを入れて、司令官に報告させると、森本はまるで台本を棒読みするように「高い緊張度を持って、いかなる状況にも適切に対応できるよう、その任務を完遂できるよう努めていただきたい」とか言って、自己PRしたのである。フツーの人が見たら、「戦争でも始まるのか!?」と思うが、森本がこんなパフォーマンスをした直後のきのう(10日)、北朝鮮は長距離弾道ミサイルの打ち上げを延期すると発表した。
当初は10〜22日に発射すると予告していたが、29日まで延長する。理由は技術的問題だ。
気温が低いため機器の動作異常や不具合が指摘されていたし、偏西風もマイナス要因。北は金正日の死去1年と金正恩の執権1年の節目での打ち上げを狙っていたが、できなかった。北のミサイルなんて威嚇にもならない「張り子の虎」だということが改めてわかった。
それなのに野田政権は首都圏と沖縄に7基のPAC3を配備し、3隻のイージス艦を日本海と尖閣諸島に展開して、森本にはクサーイ芝居までやらせた。野田首相はきのう、街頭演説で「選挙期間中だが、国民を守ることに空白があってはならない。自衛隊の最高司令官の私も緊張感を持って対応する」と言ってのけた。いくら選挙前とはいえ、ミエミエすぎるというものだ。
「日本政府は騒ぎすぎです」と苦笑するのは軍事ジャーナリストの神浦元彰氏だ。
「仮に打ち上げが成功してもロケットの2段目を切り離した段階で高度1000キロに達しているんです。ここで爆発しても摩擦熱で破片は溶けてしまう。沖縄の市民に破片がぶつかる確率は宝くじの1等賞に連続5回当たるよりも低いのです。PAC3もイージス艦も必要ないし、今回の配備は一種の演習みたいなものですよ」
ただし、日米韓の政権にとっては、ミサイル騒ぎは好都合だった。韓国では19日に大統領選の投開票が行われる。保守系与党セヌリ党の朴槿恵氏が、野党民主統合党の文在寅氏と接戦を繰り広げている。
「文在寅氏は北朝鮮に対して柔和政策を打ち出し、朴槿恵氏は強硬な姿勢を見せている。朴氏側は国民の危機感をあおって選挙戦を有利に進めるために、北のミサイル発射が危険だという情報を流しているのです。この韓国情報をうまく使っているのが野田政権です。PAC3やイージス艦をいち早く配備したことで“決断できる民主党”を印象付けることができた。もともと国民は恐怖に直面したら政権の安定を望むもの。野田首相は衆院選で勝つために北のミサイルを利用しているのです」(神浦元彰氏)
一方、米国のオバマ政権には日韓の国民に軍事同盟の重要性を認識させることができるというメリットがあった。ミサイルの陰に政治家の思惑あり。危機をあおられた国民はたまらない。
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