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週刊ポスト2012/12/21・28号 頁:50 政権交代の業界激変図 :大友涼介です。
子ども手当、高校無償化、公共事業の大幅見直しなどの民主党政権の政策は、結果の善悪は別として、「日本の仕組み」を一変させたことは間違いない。この3年間、その政策に賛同する組織は民主党に擦り寄り、反対する組織は民主党と距離を置いた。
そして、再び「政権交代」が目前に迫っている。民主党政権の存続の可能性は極めて低い。それを見越して、業界団体や企業はすでに選挙中から「新政権シフト」に向けて動いている。政権交代後に新たに構築される「日本の仕組み」を先取りする。
【ゼネコン】自民「200兆円公共事業」で迎える「10年目の春」に欣喜雀躍
東北地方のある自民党候補の街頭演説は活気に満ちていた。地場の建設会社が合同で結成した”応援部隊”から、候補者が一呼吸置く度に拍手と「頑張れよッ!」と歓声が上がる。
そうした建設業界の活気は全国に広がっている。岐阜県建設業協会の幹部はこう語る。
「自民党政権の誕生を楽しみにしています。民主党政権の3年間で公共事業は約35%も減りました。建設業界を守るためには公共事業が必要。大震災の経験から、防災・減災の必要性は国民の誰もが納得したと思う。200兆円が本当かどうかは別として、自民党は具体的な数字を出していることに意味がある」
自民党が国会に提出した国土強靭化法案では、「今後10年間で200兆円のインフラ投資」が謳われている。民主党政権が掲げた「コンクリートから人へ」で冷え込んだ公共事業の大復活だ。
とはいえ、ゼネコンは「単なる自民党政権の復活」を求めているわけではない。
3年前の政権交代直後、民主党政権は象徴的な「業界団体引き剥がし」を行った。自民党の有力支持団体・全国土地改良事業団体連合会(土改連 ※1)への農水省予算は小沢一郎・幹事長によって半減され、野中広務・土改連会長(元自民党幹事長)の陳情を小沢氏が門前払いする”事件”も起きた(肩書きはいずれも当時)。政権交代が業界団体の生殺与奪を左右する象徴的なシーンだ。
※1 全国及び都道府県段階で土地改良区、農業協同組合、市町村等の土地改良事業施行者の協同組織として設置された団体。土地改良事業施行者への運営や技術面での支援、指導を行うほか、土地改良事業に関する情報提供、調査、研究等を行っている。
だが、小沢氏が政治資金問題で権力を失った後に誕生した菅政権、野田政権下では、土改連への予算が復活する。
「現民主党執行部は八ッ場ダムの建設再開でもわかるように、公共事業の縮小には否定的。また、自民党内には公共事業を縮小した小泉政権の流れを支持する勢力がいる。その意味では自公政権を民主党が補完するような政権が望ましい」(大手ゼネコン幹部)
民自公3党は、復興予算のハコ物建設流用問題を解散・総選挙のどさくさに紛れて”不問”とし、20世紀の自民党政権時代以上の「公共事業天国」を築こうとしている。小泉政権以降約10年間の冬の時代を過ごしたゼネコンが「10年目の春」に沸くのも当然か。
【電力会社】東京電力・柏崎、関西電力・高浜原発は「再稼働準備」を始めている
「脱原発」が争点となった総選挙では、各党が「脱原発路線」を競い合っているように見えるが、その中で自民党は「原発は維持する」という姿勢を捨てていない。「比率は下げるが、30年代にゼロにする考え方は取らない」(安倍総裁)
「願望だけを述べるのが政治とは思わない」(石破茂・幹事長)
このように自民党執行部は”ゼロにはしない”と繰り返している。
その自民党の政権復帰を見越して、電力会社は原発再稼働準備を進めていた。たとえば東京電力の「総合特別事業計画」は、「柏崎刈羽原発派2013年4月に再稼働」を前提として策定され、関西電力も「高浜原発3、4号機を13年7月に再稼働」として原価計画を組んでいる。根拠について「計画策定のために仮定したものです」(東京電力広報部)と説明するが、要は「その頃には原発容認の政権ができている」という見通しに自信を持っているわけだ。
そんな中で電力会社が懸念するのが、日本維新の会の勢力伸長だという。
「維新は『原発ゼロ』を取り下げたが、発送電の分離を主張している。日本維新の会に比べれば、大飯原発の再稼働や大間原発建設を認めた民主党の方が歓迎だ。経営側は自民党、電力総連は民主党を支援するという方向になるだろう」(関西電力OB)
こちらもゼネコン同様、民自公の3党合意体制の存続に社運を委ねている。
【通信】自民党系「NTT]が民主党系「ソフトバンク」から覇権奪還か
業界の浮沈が懸かるゼネコンや電力とは違い、業界内の覇権争いが政権交代に連動するのが通信業界だ。電波行政に詳しいジャーナリストの町田徹氏が語る。
「通信業界内では、ソフトバンクが民主党、NTTグループが自民党という見方がされています。孫正義・ソフトバンク社長を支える社長室長を務めるのは、民主党の元代議士である嶋聡氏、安倍氏の側近として知られる世耕弘成・参院議員はNTT出身です」
ソフトバンクは菅政権下で、太陽光発電事業にも進出するなど”民主党系”の強気を発揮できたが、自民党政権となれば逆風に晒されかねない。
すでにその兆候がある。電波オークション制度の先送り論議だ。
「オークション導入は既に法案提出されているので、次回の電波帯(第4世代)割り当てから導入される見通しですが、自民党内には世耕氏らを中心に、『中国系企業の参入を拒否できない』という安全保障上の観点から反対する声が強い。オークション方式であれば入札金額で割り当てが決まるのでソフトバンクを少なくすることは不可能だが、従来の総務省による比較審査方式であれば可能になる。
特に今年10月のイー・モバイル買収問題(※2)では、結果的に電波帯の割り当てがソフトバンクに有利に働いた。その不公平を是正するという理由で、ソフトバンクが不利になる可能性があります」(前出・町田氏)
※2 今年6月、総務省による割り当てでイー・アクセスは700MHzの周波数帯(プラチナバンド)を獲得した。この割り当てには、すでに3月に900MHzを獲得しているソフトバンクは参加しなかったが、10月にイー・アクセスの買収を発表。これについて「ソフトバンクはイー・アクセスが割り当てられた電波を返上すべきだ」という指摘がなされている。
【航空】2000億円営業利益のJALに「優遇中止」「地方便飛ばせ」の大逆風
同じく今回の総選挙が「業界内代理戦争」の様相を呈しているのが航空業界。民主党政権下で、法人税減免をはじめとするバックアップを受けてきたJAL(日本航空)に対して自民党は厳しい視線を向けている。
JALが2000億円の営業利益(23年度)を発表した直後の今年7月、自民党の国土交通部会では、「減免された法人税の一部を返納せよ」との声が上がり、同様の国会質問の行われた。自民党議員秘書が明かす。
「JALの決算発表の直後から、ANA(全日本空輸)の幹部が資料を元に”JALの優遇は不公平だ”という説明を繰り返していた」
JALが免除された法人税は、国交省試算によれば9年間で3110億円。その返納を求められれば、経営は再び悪化するのは間違いない。JALは「納税者が自主的に返上できるものではないと理解している」(広報部)と答えるが、返納を免れたとしても、これからの経営には「新政権の圧力」がかかりそうだ。
加えてJALには「地方便の運行要求」も予想される。JALは経営破綻後、経営効率化のために不採算路線の撤退・縮小を次々に行ってきた。
「有力者に地方出身議員が多い自民党から、”利益が出ているなら、地方にもっと飛ばせ”という声が出てくるのは必至とみられている。そうなれば、JALの経営は昔に逆戻りしかねない」(航空業界関係者)
【経団連】”米ジイ”の暴走に困って水面下で「安倍と手打ち」?
政界では「80歳の暴走老人」こと石原慎太郎・維新代表が暴れ回っているが、財界にも「75歳の暴走老人」と呼ばれる人物がいる。経団連の米倉弘昌・会長だ。
それを象徴するのが、安倍氏の金融政策に噛み付いた場面だ。
「大胆というより無鉄砲」
「禁じ手だ」
自信満々で”次期総理”の政策を一刀両断してみせたが、経団連内では「米ジイ(米倉氏の愛称)は喋り過ぎだ」という批判が起きている。
安倍氏自身、米倉氏から批判された翌日に開かれたシンポジウムで、「経団連の副会長の方から、”会長の間違った発言でご迷惑をお掛けしました”という電話をもらった」と、経団連から”謝罪”があったことを暴露しており、その後は米倉氏も「アベノミクス批判」を表立って口にしていない。
かつて経団連は年間20億〜30億円を自民党政権に献金してきたが、民主党政権発足後は政権との距離を置き、10年には傘下企業への企業献金の目標設定を中止した。
「経団連内には、”自民政権が復活したら、献金と引き換えに政策に積極的に関与していくべきだ”という路線と、”政権と距離を置いたままにした方がいい”という路線がある」(経済ジャーナリスト)
新政権と経団連の接近を左右する要因には中国問題も絡んでくる。
「安倍氏の対中強硬姿勢を、財界の大半が危惧している。安倍政権が中国との関係を改善する気があるのか注視している段階。また、経団連が強く求めるTPP交渉参加についても、自民党は態度を決めかねている。その結論が見えないうちは、自民党政権を全面的に支援するという結論にはならない」(経団連企業役員)
米ジイの”暴走”は、新政権発足後に新たなステージを迎える公算が高い。
【連合・医師会他】民主支持団体「何としても与党に残る」のしがみつき戦略
負け確実の民主党では、最大支持母体・連合(日本労働組合総連合会。約680万票)が、「とにかく与党に残る」という執念を燃やしている。もちろん、過半数を取って政権維持、という意味ではない。
「古賀伸明・会長は、民主党が政権党から転落しても、自公政権との協調路線を取ることを求めている」(連合幹部)
とはいえ、自民党は「労組主体の民主党は倒さないといけない」(安倍氏)と連合を敵視している。それでも自民党との連立も辞さない理由は何なのか。
「古賀会長をはじめ、現在の連合は電力総連や電機連合などの同盟系(民間企業労組)出身が主流のため、原発再稼働やTPPは推進の立場。だから、自民党との連携も、むしろ望んでいるくらい。”実業”ではない自治労や日教組などのような旧総評系は反発しているが、いざとなれば彼らと袂を分かってもいいと考えている」(前出の連合幹部)
前回総選挙や10年の参院選で民主党支持に回った日本医師会(約17万票)では、「自民回帰」が広がっている。福岡、佐賀などの医師会はすでに自民候補の支持を表明し、「国民皆保険の維持」などを盛り込んだ政策協定書を取り交わした。
「09年は、小泉政権がカットした診療報酬の復活を求めて民主党を支援したが、結局、期待したような結果にはならなかった。そうした失望感から、今回は自民党支持に回った」(関東地方の県医師会)
まさにコウモリ団体というほかない。
民主党と連立を組む国民新党を支える全国特定郵便局長会(約2万票)でも異変が起きているようだ。
「今年4月に郵政民営化見直し法案が成立した今、国民新党の存在意義は終わったとみている。国民新党の候補だけでなく、郵政民営化に反対する議員を各地で支援する。もちろん自民党候補も含まれます」(幹部)
与党生活で味わった蜜の味は、簡単には忘れられないということか。
【メディア】「我々に楯突く第3極は潰してしまえ」が合言葉
安倍第2次政権が現実味を帯びるや、朝日新聞の”宗旨替え”は素早かった。5年前は安倍政権批判の急先鋒だった朝日だが、9月の総裁選で安倍氏が勝利するや、いの一番でインタビューを掲載した。
「木村伊量・社長は財界人を交えて安倍さんと会談したり、政治部長も面会しているようです。以前のような険悪な関係ではない」(安倍側近)
産経新聞は以前からの”安倍応援団”。毎日新聞も現在の安倍氏の政策秘書が毎日新聞出身のため、関係は良好といわれる。意外なことに、「憲法改正」が社論の読売新聞、「財界第一」の日経新聞との関係が微妙だという。
「読売は財務省と近く、丹呉泰健・元事務次官を本社監査役に迎えている。財務省としては安倍氏の金融政策に難色を示しているし、財団連は安倍氏の評価を決めかねている。そうした勢力が安倍政権を危険視しているところがある。もしかしたら、安倍政権批判の口火を切るのは朝日ではなく、読売か日経かもしれません」(財務省中堅)
だが、そうした「安倍氏との距離感」以上に大メディアが注力する至上命令がある。第3極潰しだ。
参院解散後、維新やみんなの党、減税日本、生活などの合従連衡を報じる記事が典型的だ。大メディアは連携が失敗すると「維新・みんな 冷えた共闘」(11月24日付産経新聞朝刊)、成立すると、「野合か大同団結か」(11月18日付日本経済新聞朝刊)という論調で報じる。要は「どちらに転んでも批判する」というスタンスだ。
上智大学文学部新聞学科教授の田島泰彦氏は第3極批判の背景をこう読み解く。
「自民党も民主党も記者クラブ制度を温存する方針。それに対して、第3極政党の主な政治家に共通しているのは、小沢氏や亀井氏のように取材をオープンにしたり、石原氏や橋下氏のように大メディアの報道姿勢を怯むことなく苦言を呈するなど、どちらかというと既存の枠組みを壊しそうなタイプ。そういった自分たちの立場を脅かしそうな政党にはさまざまな手段を駆使して批判しているのでしょう」
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どんな政権になろうとも既得権は確保したい、そうした焦りに駆られた既得権集団の右往左往は、国民の目には限りなく醜く映る。
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