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16日投開票の衆院解散総選挙の争点が分散し、有権者は投票先に迷っている。
結果として、一番のテーマは原発政策となりそうだが、原発推進・維持・廃止にせよ、現時点では各党ともメリットとデメリットを数字によって明示出来ない以上、時期尚早であり、キャッチフレーズ合戦に終わり生産的な議論とはならないだろう。
本来、今回の総選挙では、日本を取り巻く喫緊の課題として、消費税増税とTPP交渉参加を含む経済問題と外交防衛問題が問われなければならない。
外交防衛問題については、中国の領域拡張意志と米国の国力減退が明らかな中、自主防衛を高めると共に米国中心に諸外国と中国包囲網を作り牽制する以外の選択肢はない。
経済問題として、先ず消費税増税は、デフレ脱却して瞬間風速でなく安定した経済成長構造(最低名目GDP4%、実質2%の2年連続達成)を作り、もし必要なら足りない分を増税するようでないと、増税による経済失速により逆に減収に終わる。
金融政策については、現在の日本はガラパゴス化しており、諸外国並みに金融緩和拡大、インフレターゲット設定、日銀法改正を行い、異常な円高とデフレ傾向を終わらせなければならない。
◆公共事業の功罪◆
さて、以上は、常識的に真面目に考えて当然の結論を述べたに過ぎない。
しかし、以下の点は多少の熟考が必要かも知れない。
自民党、公明党等は、「国土強靭化」として防災・減災・補修に関わる公共事業を景気回復の起爆剤としようとしている。
これらについて、真に必要なものは何時かは行わなければ成らないのだから、精査した上で集中して進める事が、デフレ脱却にも資するだろう。
ただ、これらの防災系の公共工事は、工事完了後は経済効果を齎さないので、建設国債を発行しての工費支出後、税収(法人税・消費税・地方税)として国庫に返ってくるのは最大でも50%程度になり、持続的な経済成長のエンジンには成り得ない。
これに対して、高速道路や新幹線、リニア新幹線のうち真に利用価値のある交通・産業インフラ系の公共事業は、工事完了後も経済効果を齎し税収として工費支出額以上のリターンとなる可能性がある。(但し、本当に有効利用された場合。)
また、新エネルギー、バイオ、航空・宇宙、防衛、人工知能等の新産業分野への基盤整備投資についても、同様である。
◆構造改革の功罪◆
日本維新の会、みんなの党等は、いわゆる構造改革、規制緩和を経済政策の中心に打ち出している。
規制緩和によって、電力等の許認可事業の地域独占体質に風穴を開け、医療・福祉・農業・通信についても参入障壁を下げ、民間の活力を引き出す事は、必要不可欠である。
しかし、両党がモデルとする小泉・竹中構造改革を思い出してみると、色々な問題点があった。
例えば身近な例として、タクシー事業の規制緩和を行った結果、仙台駅等ではタクシーが溢れ運転手が食えない状況になった。
これに対しニューヨーク等では、タクシー1台毎の事業免許の総量を制限すると共に、市場での自由な売買が可能であり、競争と需給バランスの両立を図っている。
その意味で、小泉・竹中構造改革は、少なくともやり方が非常に拙かったと言える。
また、両党はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について、無条件で交渉参加し、情報収集後に交渉条件を考え、最後に国益に沿わなければ国会で批准しなければいいと主張している。
しかし、裸で交渉入りするのは非常に危険である。
食糧安保の確保や、企業が相手国家を国際機関に提訴し1発で決着させるISDS条項や、如何なる理由でも自由化を元に戻せないラチェット規定の取り扱いを、交渉参加前に概要だけでも国民に示さないのでは、米国の言い分をほぼ丸呑みするつもりと勘繰られても仕方あるまい。
◆総選挙の真テーマ◆
日本経済にとって、当面の公共事業も規制緩和も必要である。
その前提の下に、育成すべき新産業分野を精査する能力、「官民折半・双方自己責任」等の投資の仕組み作りのセンス、規制緩和・貿易自由化で開くべきものと守るべきものについての哲学、少子高齢化に対する持続的政策の有無が重要である。
今回の総選挙は混沌としているが、防衛、消費税、金融緩和に加え、上記の点が投票の判断基準と成るべきだろう。
各党及びマスコミに於いては、時期尚早な原発論争を抑え気味にし、選挙後半戦のテーマとしてこれらを深掘りして頂きたい。
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