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TPP交渉が最終局面に入りつつあるなか、日本をどの段階で交渉に加えるかというターニングポイントを迎えたようだ。
早ければ年内、遅くとも年明け1月中には、日本の交渉参加を“阻んできた”米国・豪州・NZの3ヶ国がOKを出すことになるだろう。
それでも、日本政府が交渉に参加できるのは、4月もしくは6月からである。
TPP参加問題は、ここに至れば、内容を云々するまでもなく、まともに交渉にさえ参加できない協定に焦って加わることは国益に反するという一言で片が付くことである。
ここまで交渉から排除され続けたら、日本は、残りの国々の交渉を通じてまとまった結果をじっくり検討して、参加するしないを決めると言明しなければ主権国家とは言えないことになる。
日本がTPPに参加しないからといっても、政治的難題には直面するだろうが、経済的損失は被らない。
なぜなら、TPPの主役である米国が、日本抜きのTPPなぞ存在意義がないと考えているからである。
日本が参加しなければ、TPPそのものが昔のP4体制に戻ってしまう可能性さえある。
日経新聞もそうだったが、何人かの識者は、昨年秋の“TPP交渉参加騒動”のとき、TPPは日本にとって利益が大きい仕組みであり、米国は日本がTPPに入ることを望んでいないというウソまでついて世論を誤誘導しようとした。
日経新聞社が米国ブルッキングス研究所とともに開催した日経センター・米ブルッキングス研シンポジウムで、前米FRB副議長ドナルド・コーン氏は次のように言明したという。
「TPPに日本が参加しなければ米国は大きなダメージを受け、TPP全体の成功もおぼつかなくなる」
「日本の参加は、日米同盟にとって極めて重要だ」
この二つの文言を要約すれば、日本が加わらないTPPは、米国だけが魅力のある市場として自由化の標的になり、米国にとって得るものがないものとなると説明し、日本は、「日米同盟」の傘の下にいたいのなら、TPPから逃げることはできないと脅しているとも言えるだろう。
他にも、ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センターシニアフェローのミレヤ・ソリース氏が、同じシンポジウムで次のように語っている。
「環太平洋経済連携協定(TPP)は米国にとって必須の枠組みだ。世界で最もダイナミックな経済大国が集まるアジア太平洋地域にしっかりとイカリを下ろすということだ。日本にとっても、企業活動を助けるだけでなく、国内の構造改革を加速し、エネルギー調達の面でも有利に立つことができる利点がある」
これを約せば、TPPは米国にとって不可欠の仕組みだけど、日本にだって利益があるはずよというものになる。
ドナルド・コーン氏は、「日米同盟」という根源的な切り札を出して脅し、ソリース氏は、LNGの対日輸出を許可する可能性をちらつかせて日本を誘っているのだ。
二人がまっとうな日本国民の反発を招きかねないほどきわどい発言を行っている目的は、TPP交渉が最終的局面に至ったことで、日本がTPPから逃げることはできないことを、改めて公言して悟らせることだと思っている。
菅前首相時代から、政府に対しては、既に脅しすかしでTPP参加は避けられないことと言い聞かせているはずでる。
今回は、誰もが聞くことができる場で、最後通牒を放ったことになる。それを受けた親米派の各氏各メディアは、持てる力を最大限発揮して、日本がTPPに参加するよう働きかけを行うはずである。仮に、既に他の国々のあいだで合意が出来上がったあとでも、とにかくハンコを押すことが国益であるとまで平気で叫べる人士たちである。
自民党や民主党その他、長い間与党的立場で政治家稼業を続けて来た人に米国にスジを通し抜く胆力はないとも思うが、言葉では国家の尊厳や国家の主権を語っているのだから、理不尽にも交渉から排除されたTPPへの参加は断念すると宣言してもらいたい。
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TPP、日米同盟強化に必要 日経センター・米ブルッキングス研シンポ :
日本経済研究センターと米ブルッキングス研究所は28日、東京都内でシンポジウム「北東アジアの変革と国際経済、日米関係」を開いた。討論会では、米国などが進める環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の正式参加を求める意見が相次いだ。野田佳彦首相はビデオメッセージで「日米同盟が日本の外交の基軸であるというのが揺るぎない信念だ」と述べ、日米同盟を堅持する決意を重ねて強調した。
■政策の相乗効果を
首相は中国の軍事的な台頭や北朝鮮問題などを念頭に「東アジアにおける安全保障環境は厳しさを増していく」との認識を表明。「日米の政策が相乗効果をあげられるように協力する必要がある」と訴えた。
討論会では、衆院選の争点でもあるTPPに関し、日本の正式参加を求める声が相次いだ。
ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センターのミレヤ・ソリース氏は「TPPに日本が参加しなければ米国は大きなダメージを受け、TPP全体の成功もおぼつかなくなる」と指摘。「日本の参加は、日米同盟にとって極めて重要だ」と強調した。
谷内正太郎元外務次官は「アジアの成長の活力を取り込み、アジア回帰を進めるオバマ政権の(日本への)関心を確保するためにもTPPは必要だ」と表明。さらに「TPP推進では野田首相と自民党の安倍晋三総裁もそう違いはない」という認識を示した。
これに関連して韓国の李淑鍾・東アジア研究院長は「韓国は日本が参加すれば(協議入りの是非を)考えるという立場で、中国との自由貿易協定(FTA)を優先している」と説明した。
■内需主導の成長が課題
世界経済の先行きを巡る議論では、米中経済に関心が集まった。米連邦準備理事会(FRB)のドナルド・コーン前副議長は「これから米国の資金は消費から投資に向かう。もはや米国の消費者はグローバル経済のけん引役ではない」と指摘。「黒字国の内需が重要になる。新興国の経済成長を従来の輸出主導から内需主導に移すことが必要だ」と語った。
香港城市大の葉健民教授は中国経済について「消費は増えているが、中国国民は将来への不安から所得の半分以上を貯蓄に回している」と説明。内需拡大には社会保障の強化が不可欠とした。野村資本市場研究所の関志雄シニアフェローは「生産年齢人口の減少が中国の潜在成長率の低下要因になる」と指摘した。
■円高対策では温度差
日本の金融政策や円高についても議論が交わされた。日本経済研究センターの岩田一政理事長は円高是正に向けて「政府・日銀が共同で行動すると宣言することが極めて重要だ」と主張。政府・日銀による50兆円規模の外債購入基金の設置などを提案した。これについてコーン前副議長は「(基金は)形を変えた為替介入と言える。一方的な介入の多くは失敗しており、他国の反発も招く」と慎重な考えを示した。
[日経新聞11月29日朝刊P.6]
<世界経済の動きは> 米経済に不確実性/TPP、日本にも利点
司会 米国や中国、そして世界経済の動きをどう見ていますか。
コーン氏 米経済は、消費や住宅市況、労働指標の緩やかな回復といった明るい要因もあるが、所得低迷などの課題も多い。とくに問題なのが企業による投資の減速だ。欧州債務問題や、減税失効や歳出削減が重なる「財政の崖」問題に伴う不確実性が背景にある。
不確実性を取り除くには、世界経済の不均衡を再調整しなければならない。米国の過剰な消費に頼るのをやめ、経常収支の黒字国が内需を拡大する必要がある。新興国の経済成長をこれまでの輸出主導から内需主導に移すべきだろう。米経済の調整には、金融政策が役立つが、財政や規制緩和からのサポートも必要になると考える。
関氏 中国景気は8月に底を打ち、緩やかに回復に向かっている。第4四半期は8%台の成長率を達成できるとみている。ただリーマン・ショック後のようなV字型の回復は難しいだろう。一人っ子政策で農村部の労働力が枯渇しており、工場への労働者の供給が止まる転換点に中国がさしかかっているからだ。その証拠に中国では成長は減速しているが、有効求人倍率は下がっていない。
これからは労働力投入がマイナスになり、資本蓄積を支えてきた高い貯蓄率にも期待できなくなる。政府は「自主イノベーション」という言葉で独自技術による生産性の向上に力を入れようとしている。その意味では国有企業の改革の遅れが成長のマイナス要因として懸念される。
司会 アジアでは複数の自由貿易圏づくりが進んでいます。
ソリース氏 自由貿易協定(FTA)の隆盛は、多数の加盟国を抱える世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドが10年にわたる交渉を経ても妥結に至らないことの反動でもある。
環太平洋経済連携協定(TPP)は米国にとって必須の枠組みだ。世界で最もダイナミックな経済大国が集まるアジア太平洋地域にしっかりとイカリを下ろすということだ。日本にとっても、企業活動を助けるだけでなく、国内の構造改革を加速し、エネルギー調達の面でも有利に立つことができる利点がある。
司会 日本は長引くデフレと円高に苦しんでいます。
岩田氏 エコノミストの間では、インフレ率を調整した後の実質実効為替レートでみれば現在の円高はたいしたことがないという議論があるが、他国との比較を踏まえた方がいい。1970年を100とすると日本の実質実効為替レートは2倍になったが、ドイツはほとんど変化していない。韓国は4割安だ。日本は交易条件も大幅に悪化しており、輸出シェアを落としている。
現在の不安定な国際金融環境下で、どのようにして円高を是正し、デフレを克服するか。私の提案は日銀と財務省が一体となって50兆円規模の新たな基金をつくることだ。日銀が資金を拠出し、財務省がユーロ圏が発行する債券を購入する。ユーロの急落を防ぐことで金融市場の安定に貢献しながら、円高を是正することができる。
コーン氏 50兆円の基金は、名前を変えた介入ということになる。不況のユーロ圏がユーロ高を歓迎するだろうか。ドルに関しても同じことだ。協調介入に比べて、単独の一方的な介入は多くの場合は失敗し、しかも他国の反発を招く。大規模な介入が(円高の)問題を解決するかどうかには疑問がある。
ドナルド・コーン氏 前米連邦準備理事会(FRB)副議長。ブルッキングス研究所シニアフェロー。専門は金融政策・規制、マクロ経済学
関志雄氏 野村資本市場研究所シニアフェロー。経済産業研究所などを経て現職。著書に「チャイナ・アズ・ナンバーワン」
ミレヤ・ソリース氏 ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センターシニアフェロー。専門は日本の政治経済、外交政策など
岩田一政氏 日本経済研究センター理事長。元日本銀行副総裁。著書に「デフレとの闘い」「新興国からの挑戦」など
[日経新聞12月4日朝刊P.37]
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