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今回の総選挙向けに「維新」が掲げた労働政策関連の公約は、
●労働市場を流動化
●非正規・正規の公平性、解雇規制の緩和、最低賃金制の廃止(給付付き税額控除などで一定の所得を保障)
●同一労働同一条件
と、まとめることができる。
引用する記事にあるように、「維新」は、これらのなかの「最低賃金制の廃止」を、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」という表現に改めたという。
様々な批判や非難を浴びた結果と思われるが、橋下「維新」は、原発政策もそうだが、イメージとしてはわかるが、内実がわからないという政策表現が多い。
「最低賃金制の廃止」は、是非は別として、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」とは違って、すっきりよくわかる政策(表現)である。
「維新」の代弁を勝手にさせてもらえば、最低賃金制があることで、ギリギリの採算性で事業を営んでいる企業はなかなかひとを採用することができず、失業者も減らず、生活保護受給者も減らない。グローバル企業も、最低賃金制によってコスト低減が阻まれ、国際的な価格競争力の強化が妨げられている。
最低賃金制をなくしたとしても、どのような賃金水準なら就業するのかという判断は、個人の選択の自由である。その賃金ではイヤなら、親か政府のすねをかじり、就業しなければいい。ある賃金水準で就業してくれるひとがいなければ(少なければ)、自ずと賃金水準は上昇するであろう。
低賃金で低収入という人に対する国家の義務である健康で文化的な生活の保障は、給付付き税額控除などを通じて一定レベルの所得を保障することで実現する。
この部分だけをわかりやすく表現すれば、企業の負担を減らし、政府部門(税金)の負担を増やせばいいという考えである。
橋下「維新」がこのように考えていると前提して、このような政策は、好悪はともかく、日本経済の成長に貢献するものであろうか?
端的に言えば、好意的に解釈したとしても、古典派的な自由主義経済理論が現在の日本でも通用すると錯覚した政策でしかない。
同じ質と量の商品やサービスを供給するための活動力がより少ない金額で手に入れられるようにする政策であり、供給量の増加以上に総需要が減少する(需給ギャップをさらに拡大させる)ため、デフレをより深化させてしまうからである。
給付付き税額控除で国内需要の減少はある程度カバーするとしても、その結果が生活保護レベルであれば、従来と同等規模のはずだから、供給量増加の影響でデフレは進行する。
「維新」の政策が有効になるとしたら、国際的価格競争力の向上で輸出の増加を実現したときだが、デフレの進行が円高傾向を強めることになり、ほどなく価格競争力は消滅して元の木阿弥になる。
なにより、生産性を高めつつある(日本の産業力に追いつこうとしている)中国と価格競争をするということになれば、徐々に、日本の賃金水準を中国レベルまで下げなければならなくなる。それは、日本国民の平均的生活レベルを70年代まで引き下げることを意味する。
いちばんの問題は、そのような過酷な社会状況が、若年層を中心に、人々の心をどれほど傷みつけるかということである。
公的扶助はあるとしても、働いてもまともに暮らせない日々を苦悩を背負いながら生きていく人が増大すれば、経済的損得だけには還元できない大損失を日本にもたらすことになる。
企業の負担を減らす見返りに、政府部門(税金)の負担を増やすという話なら、それこそ、それほど高いわけではない最低賃金でさえ事業を続けられないような企業は、ゾンビなのだから、市場から退出して貰ったほうがいいと断言する。
最低賃金制度は、それを支払っても採算が合うだけの生産性を達成した企業のみが現在の日本で存続できるという基準でもある。
これからの日本は、韓国や中国を活用しなければならないが、同等同種の製品で韓国や中国とタイマンを張るような愚を犯してはならない。それは、韓国や中国と同じレベルまで、日本の生活水準を引き下げてしまう道に通じる。
日本企業は、韓国や中国にはとうてい勝ち目がない製品群で勝負し、韓国や中国と正面戦を挑むことになるような製品は、国内市場を守りつつ、新興国や開発途上国で生産して勝ち抜いていくしかないのである。国内製造拠点は、徐々に、そのような国外製造拠点に製造装置や部品・素材を供給するかたちに変えていくことになる。
このような政策を官民あげて追求していかなければならないのが、日本が現在立たされている歴史的ポジションである。
建前は別として、現実的には、最低賃金未満でひとを使っている企業は数多く存在する。
零細企業だけでなく、有名な大企業もその一翼を占めている。なぜなら、よほどの高額給与を支払っていない限り、月間100時間超(最低賃金で8万円ほどに相当)といったサービス残業を強いていれば、基準内を含む労働1時間当たりの賃金は法定最低賃金を下回ってしまうからである。
(基準内が1日8時間で月間労働日が22日であれれば、基準内月間労働時間は176時間になる。給与額面が20万円だとして、サービス残業100時間を加算すると、20万円/276時間=724円)
古典派的自由主義経済理論は、諸外国に対し産業が高い生産性を誇るとともに、大きな需要がある国外市場を支配していた19世紀後半までの英国や、資本力と生産力で他を圧倒した20世紀前半から中盤にかけての米国においてのみ、国民経済が成長するための経済政策としてそれなりに有効だったというものである。
(当時の英国や米国でさえ、他の経済政策のほうが、多数派の国民にとってよりよい成長形態であった)
「維新」は、数多い反発に恐れをなしたのか、「最低賃金制の廃止(給付付き税額控除などで一定の所得を保障)」を「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」という表現に変えたというが、私に言わせれば最悪の改変である。
市場メカニズムにすり寄らない(重視しない)政策が、最低賃金制である。
この15年間続いている賃金水準の切り下げを考えれば、「維新」の「市場メカニズムを重視した最低賃金制度」とは、最低賃金額を徐々に引き下げていくことを暗に示している。
そのうえ、記事を読む限り、(給付付き税額控除などで一定の所得を保障)という注記が消えたようである。
「市場メカニズムを重視した最低賃金制度」とは、政府が市場に跪き、政府自らが働く人たちの生活条件を切り詰める決定をするという政策を意味する。
このような表現変更で有権者を納得させることができると考えているとしたら、「維新」は、人々をあまりにバカにしていると言わざるをえない。
ついでと言えばなんだが、「維新」が掲げている政策について少し考えてみたい。
「みんな」にも、ある意味「未来」にも一部言えることだが、“自由主義経済”を強烈に標榜する橋下「維新」は、近代国民経済の時間軸に対する認識が間違っている。
「同一労働同一条件」は別として、「労働市場を流動化」・「解雇規制の緩和」・「最低賃金制の廃止(給付付き税額控除などで一定の所得を保障)」(「市場メカニズムを重視した最低賃金制度」)といった政策は、高度成長期の日本ならそれなりに有効だったとも言えるが、成熟期に入りしかもデフレ不況が続いている日本ではまったく無効なのである。
「労働市場を流動化」というが、現実の日本の労働市場は、とっくに、流動どころか、漂流しており、わざわざ流動化という政策を持ち出す「維新」は、現実認識力もなく、経済論理も理解していないことを自ら証明しているようなものだ。
労働市場の流動化は、失業率が2%前後という準完全雇用状態で、人手不足に悩んでいる企業が人材を手に入れられない経済状況が続いているときには意味がある。
そのような経済状況で、政府部門が有為な人材を公務員として数多く採用し抱えていたり、伝統的大企業が、保護政策のもとで、同じように有用な人材を囲い込んでいれば、近い将来に大きな花を咲かせる可能性がある産業や企業が必要な人材を手に入れられなくなるからである。
現在、全体の失業率こそ4.2%と、先進諸国のなかで低いほうだが、30歳までの若年層の失業率は8%前後に達している。
就業できたとしても非正規で、同一労働の正規労働者よりも賃金水準が低いうえに、年金や健康保険をすべて自前で賄わなければならない労働者が全体の1/3にも達している。
さらに、正規として入社しても、はじめから辞めてしまうことを承知でこき使ったり、サービス残業を強いるようないわゆる“ブラック企業”も数多く存在する。
このような“ブラック企業”的処遇は、必要な人材がなかなか採用できないようなタイトな状況ではあまり発生せず、労働市場が流動化しているからこそ頻発する悪行なのである。
若年層や非正規労働者で、就業機会やよりよい条件の就業を求めるひとはゴマンといる。これこそが「労働市場の流動化」ということである。
そうでありながら、ことさら「労働市場を流動化」なる政策を掲げるのは、今以上に失業者を生み出し、今以上に過酷な就業条件を生み出してもかまわないと宣言するようなものである。
それは、デフレ状況のなかであえぐ日本経済をさらにデフレの深みに誘い、多くの国民の心身をぼろぼろにしてしまう悪政の極みと言わざるをえない。
政府は、最低賃金でも十二分に利益を上げられることができる産業及び企業でほとんど人が雇用されるような日本を民間とともに作り上げ、最低賃金未満でなければ採算がとれない事業者にはお引き取りを願わなければならないのである。
悲しいかな、総選挙の結果、自民党第1党・民主党第2党という構図が生まれそうだが、彼らが考える政権構想や国策の流れに抗するためには、脱原発・消費税増税凍結勢力がなんとしても第3党のポジションを占めなければならない。
非力すぎる話で辛いが、脱原発・消費税増税凍結勢力は、自民党も民主党もイヤだという有権者の受け皿に「維新」がならないよう、「維新」を徹底的に叩かなければならない。
本来なら、漁夫の利を得ようとしている自民党こそ叩かなければならないのだが、脱原発・消費税増税凍結勢力にそれだけの力はないのでやむをえない。
(民主党はことさら叩かなくても自然に負ける)
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<維新の会>最低賃金廃止を修正 衆院選公約
毎日新聞 12月4日(火)20時32分配信
日本維新の会が衆院選公約の付属文書・政策実例に掲げた「最低賃金制の廃止」を、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」に改めていたことが分かった。野田佳彦首相が「格差拡大の政策」と指摘するなど各党から批判が相次いだことから修正したという。
維新が先月29日、公約「骨太2013−2016」とともに発表した政策実例で、最低賃金制度の廃止を明記する一方、最低限の生活を保障するために一定の現金給付を設けることを掲げていた。浅田均政調会長(大阪府議会議長)は4日、記者団に「誤解を生まないように文言を変えた」と説明した。【平野光芳】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121204-00000092-mai-pol
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