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京都大学教授・佐伯啓思 大衆迎合の政治文化問う総選挙(産経新聞)
2012.11.22 03:27
野田佳彦首相の突然の衆議院解散によって、様々(さまざま)な政党が乱立しつつ12月の総選挙へ突入しようとしている。この乱立ぶりもあってか、今回の総選挙の争点が見えないという声がしばしば聞こえてくる。確かに、消費増税も環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)も脱原発も争点とはなりにくい。なぜなら、自民も民主もそして日本維新の会も、それぞれの内部に、これらの争点の賛成派も批判派も抱えているからである。
≪争点は民主党政権の評価に≫
では、一体、何が争点なのか。私には実ははっきりしていると思われる。それは、まずは表面的にいえば、この3年余りにわたる民主党政権への評価である。それは個々の政策如何(いかん)ではなく、民主党という政党の政権担当能力に対する評価である。
そして、現状でいえば、民主党の3年余は全くの失敗だったということになっている。とすれば、民主党の何が失敗だったのか。
この点についても現状での評価はおおよそ次のようなものだ。
第一に、民主党は経験不足の即席の政治集団であった。
第二に、民主党は選挙を目的として実効性のない大風呂敷をひろげた。
第三に、民主党は政治主導をうたい、官僚と敵対したために
有効性ある行政能力をもたなかった。
第四に、民主党はそもそも政策論の異なった烏合(うごう)の集まりだった。
これらが民主党の失敗の理由だとすれば、事態はただこの3年余りの民主党の失政ではすまない。なぜなら、この民主党の性格こそ、1993年の小沢一郎氏による自民党離脱からはじまる20年におよぶ政治改革の帰結だったからである。
政治改革は、ともかくも自民に代わる二大政党政治を唱え、そのことによって民意を反映するという政治の民主化を唱えた。そのさいに、最大の敵対者とみなされたのが、官僚組織と自民という既存勢力であった。
≪失政は政治改革の誤りの帰結≫
明らかに政治改革は進展した。各種世論調査やテレビ討論などで「民意」は反映され過ぎるぐらいに反映された。脱官僚化も進展した。二大政党政治による政権交代も民主党政権で成し遂げられた。マニフェスト(政権公約)の導入による政策論争も行われた。そしてその結果が民主党政権であり、このことごとくが失敗したのだ。
もちろん、これは民主党の失策だったともいいうる。もっと賢明で有能な「第二の民主党」が出現すればうまくいく、という意見もある。
しかし、私にはそれは信じられない。日本がうまくいかない中心的な理由は、グローバル競争への距離感覚がとれず、政治・軍事を含めて中国・韓国・北朝鮮・ロシアという近隣諸国への対応が定まらず、家庭や地域や社会規範の崩壊によって子どもたちを育てる広義の教育がうまく機能しないからである。さらにいえば、人口減少・高齢化のなかでの将来の社会像が描けないからである。
霞が関の中央官僚組織に問題があるのかもしれない。しかし、中央官僚をたたき、「統治機構改革」すなわち「政治改革」を続行しても、決して日本経済がデフレから脱却し、社会規範や教育が回復し、将来の社会像が安定するとは思われない。
民主党の失敗とは政治改革の失敗だったのである。政治改革がもたらしたものは、二大政党政治のポピュリズムへの転化であり、従来の派閥型政治の世論中心型政治への転化であった。政治は、マスメディアを通した大衆的気分と「人気主義」に大きく左右されることになった。すなわち、「国民世論」という名の大衆の気分こそが政治において決定的な要因になってしまったのだ。
≪民主失敗、維新に当てはまる≫
私には、今回の選挙の基本的な争点はまさにそこにある、と思われる。
「政治改革」および「経済構造改革」も含め、脱官僚化、民主化の進展、市場競争主義、成果主義の進展というこれまでの「改革主義」をいっそう展開するのか、それともそれに歯止めをかけるのか、という選択である。それはまた、あまりにポピュリズムや人気主義へと流れた今日の政治文化に決着をつけうるか否かでもある。まさに問われているのは「国民」自身にほかならないのだ。
ところで、今回の選挙における注目の一つは日本維新の会への支持がどれほど広がるかである。石原新党が合流した日本維新の会は、ただ「統治機構改革」すなわち中央官僚組織をぶっこわし、既成政党をぶっこわす、という一点で政権奪取をうたっている。
私は、橋下徹氏の唖然(あぜん)とするばかりの露骨なマキャベリアンぶりを特に難じようとは思わない。確かに、政権をとらなければ何もできないのである。しかし、先にあげた民主党の四つの失敗はそのまま維新の会にあてはまるだろう。それにもかかわらず維新の会への支持がわが国民のかなりの意思だとすれば、われわれは民主党の失敗から何を学んだことになるのだろうか。(さえき けいし)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121122/stt12112203280001-n1.htm
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