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自民政権公約の副作用に不安、民主は成長戦略で力不足
2012年 11月 28日 18:12 JST
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[東京 28日 ロイター] 民主党・自民党の政権公約が出そろった。経済専門家からは、自民党の公約にある金融政策への強い緩和圧力や巨額の公共投資などは、その副作用の大きさに不安の声が強い。
一方民主党は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に必要な成長戦略が力不足となっているほか、脱原発に必要なエネルギー施策の明示がないなど、不安を誘う内容と評価されている。
自民党の政策の中で副作用が懸念されたのが、日銀法改正や外債購入など金融政策への依存度の高さと、費用対効果も問わないと明記した道路整備などの大型インフラ投資だ。実現すれば一時的にせよ成長への寄与は大きくなる可能性もあるが、一方で「失われた20年」の過去の歴史が証明するように、長期にわたる過度の金融緩和や大型公共投資が構造改革の遅れや成長率低下をもたらし、長期経済低迷に陥る危険性は高いとの指摘も浮上している。当然、財政規律への取り組みは後退し、消費税10%どころでは済まされない事態を迎えることとなる。
一方で、こうした劇薬は控え、おとなしい印象の民主党マニフェストは日本経済の再生には力不足といった印象が指摘されている。グリーン、医療・福祉、観光といった新産業に経済全体への波及効果は期待しづらいといった声や、TPP参加の際に日本の競争力を生かす分野としてのけん引役として力不足といった課題があるほか、脱原発と電力コスト上昇への対応がセットで語られてないなどの矛盾があるためだ。
こうした点を踏まえて、第一生命経済研究所の熊野英生・主席エコノミストは「民主党にはこれで経済成長が実現できるのか、自民党にはこれで財政再建が実現できるのか」と問う。
強力なリーダーシップの存在しない政治状況や国民の価値観が割れている状況に加えて、経済成長の回復と財政再建という2つの大きな課題の両立が難しいことなど、実現の壁は高い。「どちらの公約も綿飴のように選挙後は萎んで国民の手から失われる可能性が高い」──伊藤忠経済研究所の丸山義正・主任研究員が指摘するように冷めた見方もある。
各専門家の政策ごとの見方は以下の通り。
<自民の金融政策への依存、発想の転換必要ながらリスクも>
*ニッセイ基礎研・櫨浩一専務理事
程度の差はあっても金融政策に強く依存することになるのは自民党も民主党も変わりがないが、自民党の公約の方がより直接的な金融市場への介入に言及しており、効果も副作用も大きい。政府・日銀が参加する外債ファンドなどは対外的な問題を引き起こす可能性があり、実現性に疑問のある政策も多い。
*日本総研・山田久・調査部長兼チーフエコノミスト
日銀が実際にやれることはすでに限られている中で、自民党が挙げている日銀法改正や外債購入は実効性や実現性が不透明。歴史的な経緯を踏み外すことになればややリスクがあると感じるし、きちんと(弊害を)担保する形が必要。金融政策はあくまで「時間を買う」だけで、本当の意味での経済再生にはならない。
*伊藤忠経済研究所・丸山義正・主任研究員
デフレ状態を打破するという観点で、自民党が積極的な態度を示した点は、前向きに評価できる。但し、公約に内容の不明な「外債ファンド」が盛り込まれた点や、安倍総裁による日銀の独立性を軽視した発言などを踏まえると、金融政策への過度の責任押し付けに至る可能性は否定できない。
*野村総研・井上哲也・金融ITイノベーション部長
自民党の方が日銀に対する金融緩和要求が強いように見えるが、自民党も成長戦略の中で種々の具体策を提示している点を考えると、政府と日銀が連携して経済成長の底上げを図るという考え方自体は両党で共有されていると理解することもできる。安倍総裁による様々な提案に市場がポジティブに反応したことは、何とかして経済の停滞感を払拭したいという切望の表れとも言え、根強いデフレ期待を止めるための契機になるような「発想の転換」を求めているのかもしれない。
<自民の公共工事依存に説明必要、民主の脱原発にはコスト対策明記を>
*櫨氏
自民党は旧来型の公共事業依存政策に回帰。大規模な事業の実施は短期的には景気浮揚効果があるが持続性はなく、政府債務のさらなる累積を招く恐れが大きい。エネルギー政策については、最終的に原発ゼロを目指すかどうかという理念の差はあっても、当面ゼロにはできないことも、国民の反発が強くて再稼働できないことも両党ともに共通。再生エネルギーに対する態度が民主党の方が積極的という程度の差であって、現実の政策にはたいした差が出てこないだろう。
*山田氏
自民党が大型公共工事を盛り込んできたが、小泉改革以前の姿に戻ったような印象。公共事業の有効性について90年代の教訓をどのように考えているのか説明が必要だ。原発政策については、民主党はゼロを目指すと明記したが、経済が縮小する中ではコストの問題や、原発依存を抑制していく方法などをエネルギー政策として明記する必要。
*熊野氏
自民党の公共事業の大規模な拡大は、財政再建と相容れないのではないかとマーケットは総じて懐疑的である。財政拡張が景気拡大をもたらし、そして財政再建が得られるという論理構成だが、防災対策の中身が本当に景気刺激に資するのか、疑問がある。一方、民主党は、財政再建で歳出も抑制されるが、エコ・エネルギー、医療、観光が新産業になり、経済成長になるという筋立てだが、エネルギー政策では電気料金の際限ない上昇により産業空洞化に拍車をかけはしないか、という疑問がある。
*丸山氏
民主党が2030年代の原発ゼロを掲げる一方、自民党はエネルギー政策策定に10年間の検討期間が必要としている。企業の投資行動の観点からは、早いタイミングでの方針明確化が重要であり、民主党がゴールを示したことは評価できる。しかし、コスト増加に関する記載はなく、選挙対策との誹りは免れない。
<自民の成長戦略に期待感、民主のTPP前向き姿勢に高い評価>
*櫨氏
どちらも従来の政策の延長線上の成長戦略であり、TPPを除けば大きな違いはない。民主党の方がTPPにより積極的な姿勢を見せているが、党内に反対論も根強く、実際にはどちらが主導権を握っても急速な進展は望めない。
*山田氏
自民党は「貿易立国」だけでなく「産業投資立国」として位置づけ、今後も製造業を目玉産業して具体的かつ正面から政策を挙げている。一方で民主党の成長戦略は寄せ集め的でロジカルでないため、どれがどの程度経済を引っ張っていく力になれるのか、わからないものとなっている。ただし、自民党はTPPには後ろ向きで、せっかくの産業投資立国という構造転換政策と整合性がとれていない。TPPに問題点があるなら、交渉参加してから解決していく方法があるはずだ。
*丸山氏
TPPに関する態度が異なる。自民党は、交渉入りに否定的だが、民主党は実現を慎重に判断と相対的には前向きと言える。解散後に多数の離党者が出たことがTPPに関しては民主党の純化を進んだ副産物と言える。但し、その民主党でさえ、記載には曖昧さが残る。
*熊野氏
自民党が掲げる規制改革として、合理的に説明できない制度障害は3年以内に撤廃するとした「国際先端テスト」は大賛成。既得権を打破して、成長フロンティアが拓かれることを期待したい。自民党は、産業競争力強化を通じて成長率を高めるアプローチを採ろうとしている。ただしそれで雇用者の賃金上昇が起こるのかと問いたい。TPPへの慎重論は、FTA・EPAの推進と両論併記されていて、スタンスが読みにくい。民主党の方がすっきりしている。
民主党は、成長率を高めることについて、雇用を増やすアプローチで考える。既存のビジネスを支援するよりも、グリーン、ライフ、農業などに新天地があるかのような姿勢だ。
<財政再建、いずれもばら撒き的>
*櫨氏
自民党は公共事業、民主党は社会保障という差はあるが、どちらも選挙を目前にバラ撒き的な政策が目につく。自民党は2─3年は弾力的な経済財政運営を行うことをうたっており、財政再建が先送りされる可能性が高い。
*山田氏
どちらの公約をみても、消費税10%では到底足りないほどの歳出拡大策が目立つ。名目成長率3%という目標は実現のハードルは相当高く、税収が期待できない以上は社会保障の給付にメスを入れるしかないが、触れられていない。
*井上氏
消費税引上げにに尽力した民主党よりも自民党の方が予定通り実施を明確に打ち出しているように見えることが興味深く感じた。また、自民党による歳出削減策は、生活保護給付金削減や公務員人件費カットなど一見厳しい内容に見えるが、選挙前にこうした考え方を敢えて明示する姿勢は望ましく感じる。
*丸山氏
両党ともプライマリーバランス赤字の15年度半減、20年度の黒字化を掲げている。しかし、民主党は社会保障充実との関係が、自民党は国土強靭化との関係が不明であり、絵に描いた餅の域を出ない。
*熊野氏
民主党は、せっかく引き上げることを決めた消費税を大切に守り、財政再建に前進しようとしている。自民党は、拡張的な財政政策の色彩を一段と強めて、消費税増税で得られた財源の余裕を債務返済ではなく、新しいプランに投じかねない姿勢。無理な歳出拡大を約束するとあとから財政再建に苦しむというのが09年の民主党マニフェストの教訓だ。
(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)
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[東京 28日 ロイター] 大手生命保険会社が28日午後、そろって2012年度中間決算を発表した。自民党の安倍晋三総裁が大胆な金融緩和や財政出動を示唆していることについて、出席した幹部からは「(自民党の政権公約を含め)評価は難しい」との声が目立った。
安倍総裁が2、3%の物価目標導入や無制限の金融緩和に言及し、金融市場が円安・株高に振れたことについて、明治安田生命の殿岡裕章副社長は、「市場は(安倍氏の発言に)一時的に反応した」と述べた。
一方で、殿岡副社長は「(民主、自民の)どちらになっても安定的なマーケット、中長期的な債務(削減の)ビジョンが必要」と強調。「今後もリスク抑制の運用方針に変わりはない。リスク性資産の削減と、公社債のデュレーションの長期化を続ける」と話した。
日本生命の松山保臣専務執行役員は「安倍総裁の発言と、自民党の政策をどう評価するかは難しい」との認識を示した。自民党が公表した政策と、発表される前の安倍氏の発言には、目指す物価上昇率の度合いや建設国債の買い取りの手法を巡って、微妙なズレが生じたためだ。
松山専務は「基本的には、経済のファンダメンタルズはあまり変わっていない。衆院選後はちょっと不透明だし、(株価が)一本調子で上がっていくという状況は見通しにくい」と言及した。そのうえで、「(日本国債や株、外貨建て資産などの)各資産とも、大きな変更はしない」と語った。
多くの生保は自社の財務状況を健全化するのにALM(資産・負債の総合管理)を進めている。住友生命の橋本雅博専務執行役員は「政権交代しても下期以降の運用が大きく変わることはない。今後もALMを推進し、着実に円金利収入を積み上げていく」と話した。
(ロイターニュース 山口貴也 編集 宮崎大)
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