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日本の衆院選はどの国の政権選択に似ているのか?
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 25 日 20:55:54: cT5Wxjlo3Xe3.
 

『from 911/USAレポート』第601回

    「日本の衆院選はどの国の政権選択に似ているのか?」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)


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 ■ 『from 911/USAレポート』               第601回
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 12月16日投開票の衆院選に関しては、この2012年という政権選択の年にお
いて、結局日本も大きな選択をすることになったわけです。それでは、これまでの各
国の主要な選挙結果を見てみることにしましょう。

台湾(1月)・・・・・・・・現状維持(親中方針維持)
フランス(4月)・・・・・・大きな政府論への変更
エジプト(5月)・・・・・・前政権崩壊を受けてイスラム的政権を選択
ロシア(5月)・・・・・・・現状維持(開発独裁的リーダー再登板への信任)
ギリシャ(5月、6月)・・・緊縮財政への消極的支持
アメリカ(11月)・・・・・現状維持(大きな政府論維持)
中国(11月)・・・・・・・保守派影響力拡大

 というような結果になっています。

 主要国の中では韓国の選挙はこれからです。こちらは野党側の候補一本化プロセス
が不透明に終わったために、与党の朴槿恵候補が有力のようですが、それを別として
も本当に色々な政権選択があった年だということができます。では、韓国同様にこれ
から行われる日本の衆院選は、いったいどの「パターン」に似ているのでしょうか?

 まず、開発独裁的なリーダーシップの定着している国では、やはりそうした「強い
リーダー」を改めて選択し、国内の反対意見を抑制するという選択が出てきています。
経済に不安があることから政治的には強い求心力を求めるという格好です。

 ロシアのプーチン信任にしても、中国の世代交代にしても、それぞれが完全な選挙
制度を持っておらず、中国の場合は政権選択の形式的な権利も全く人民には与えられ
ていないわけですが、上層部の互選であったり、圧力の中の選挙ということであって
も、ある種の「選択」として、保守派あるいは求心力維持ということがされたわけで
す。台湾の場合は完全な民主主義があるわけですが、経済や外交の不安の中での現状
維持、あるいはリーダーシップの強化という要素が見られます。

 もう一つのパターンは、「大きな政府」という志向です。リーマン・ショック、あ
るいは欧州金融危機の痛手からなかなか経済が立ち直らない中で、先進国として好況
時の民生を維持しようと、政府のカネに出動を期待するという心情は、この2012
年の選択の一つのパターンだと思われます。

 何と言ってもこのパターンの代表はフランスでしょう。ユーロ危機の中で「フラン
スという軸が財政規律を維持する」ことが危機沈静化の重要な要素と考えていたサル
コジ政権から、フランス自体の景気と雇用の拡大を、そのためには積極財政も、とい
うオランドへの「政変」というのは、一つの特筆すべき結果だと思われます。

 勿論、そんな選挙結果を出しても話はそうは簡単には行かないわけで、この11月
21日にはフランス国債の格付けが下げられる中で、フランスは独自の財政規律を志
向していくことになると思います。それはともかく、選挙による選択としては「大き
な政府志向」というカテゴリになるわけです。

 中国の場合も、政治的には引き締めという選択をしたようですが、経済的にはやが
て「人民元高」を容認する代わりに、再度の景気対策が発動されるという観測もあり、
仮にそうであればこのパターンに入って来るわけです。(勿論、民意が反映していな
いので選挙結果というカテゴリには入らないわけですが)

 アメリカのオバマ再選も、実際は「財政の崖」という極端な増税と歳出カットの
「自動発動」に対処する中で、必然的に政策は「中道現実主義」に行かざるを得ない
わけです。ですが、選挙結果そのものについて言えば、「大きな政府」への支持、少
なくとも「危機における小さな政府論への否定」という民意が働いたのは間違いない
でしょう。

 ギリシャの場合はその正反対です。選択可能な政策はこの国の場合は「緊縮」しか
ないわけです。ですが、勿論この政策は短期的・中期的には国民の民生に大きな負担
を強いるわけです。ですから、5月の一回目の総選挙では民意は割れて、この「緊縮
への覚悟」という合意形成はできませんでした。結果的に二回の選挙をするというプ
ロセスを経て、ようやく「緊縮への決意」が曲がりなりにもできたということです。

 エジプトの場合は、これとは少し違います。イスラム同胞団系のモルシ政権という
選択はムバラク政権を打倒した以上は、有権者が「自分たちのプライドを満足させる」
政権を選択したいという、いわば「自分探し」的な選択結果であるように見えます。
そうした要素に加えて、「ムバラク打倒」の民意の恐らくは中核にあった「より開か
れた近代的な政府」を作ろうという人材が出て来なかった問題もあったように思いま
す。

 また同胞団系の政権ができたものの、結果的にはIMFからの借入に頼らなくては
ならないとか、中国に援助を求めたり、アメリカとの関係改善を本当は願っていたり
という「理念と現実」の間での「分裂状況」にある、そうした政権になっているとい
うこともあるでしょう。

 では、今回の日本の総選挙は、こうした各国の「選択パターン」と比較してみると、
どんなポジションに位置づけられるのでしょうか?

 その前に、2009年の自民党から民主党への政権交代が起きて鳩山政権が誕生し
たというケースを考えてみましょう。この政権交代自体は、ここまで議論してきたど
の類型とも異なるように見えますが、要素に分解してみれば、決して日本だけのもの
ではない、21世紀の世界における世論のあり方の類型に入っている要素もあると思
います。

 例えば、鳩山政権の持っていた「消費者なり現役世代に経済的メリットを還元する」
という政策は、オランドやオバマを選んだ「大きな政府への期待」に類似しています。
その一方で、「仕分けをやって財源を」という行動は、一種の財政規律への志向であ
り、その実行に苦しんだということではギリシャの苦闘に似ているとも言えます。一
方で、沖縄の基地問題に取り組もうとしたのは、脱親米を模索しているようないない
ようなモルシ政権と相似形だとも言えます。

 では、今回、2012年の選挙についてはどうでしょう? 一つの大きなストーリ
ーは、民主党型の「大きな政府への期待」というのは破綻したということがあります。
仕分けに失敗した、つまり現在の官僚制や肥大化した政府の状況については、制度的
な破壊をやらない限りは歳出カットは容易ではないことが「分かった」というのが一
つ。また、外需期待の産業が国際競争力を失って税収不足になっているのと、震災へ
の復興費用がかさんだり、様々な理由からカネがなくなっているわけです。

 ですから、野田政権は何とか増税で財政の好転をさせようとしているわけです。で
すが、これに対する抵抗があるわけで、この「負担増への是非」という軸は、ギリシ
ャ型であると言えるでしょう。勿論、財政規律を巡って増税か歳出カットかという話
が争点になったということでは、アメリカにも似ていますが、アメリカの場合は民間
の経済はスローながら復調のトレンドがしっかりしており、連邦政府の負債だけが問
題になっている中で、選択への切迫感はない、つまり財政破綻とか国家的な衰退とい
うレベルの危機感ではないので、次元が違うように思います。

 ただ、日本の選挙戦全体を覆っているムードは、こうした「大きな政府への期待を
改めて諦めるのが正しいのか?」とか「増税という負担をしてまで財政規律を改善す
る必要があるのか?」といった対立軸ではありません。もっと漠然とした「第三極が
暴れる期待」とか「失政に至った民主党が崩壊するのが面白い」といった「破壊のカ
タルシスへの期待」です。

 例えば「第三極」のリーダー候補は、一見すると「強いリーダー」を志向している
ように見えます。ですが、石原氏にしても、橋下氏にしても「多少強権的でも任せて
おけば社会の発展や、民生のためには実務家的な力を発揮してくれそう」という期待
はあまりないのではと思われます。

 そうではなくて、既成の「権威」や「既得権者」を「やっつけてくれる」とか、
「孤立覚悟で周辺国とケンカしてくれそう」などという、「破壊のカタルシス」、良
く言えば「閉塞感の打破」的なものを期待しているだけであって、実務的な統治能力
を信じて任せるということとは違うように思います。

 では、どうして日本の場合は「実務型のリーダー」同士の切磋琢磨や、「大きな政
府論」対「小さな政府論」といったような「理念の軸による選択肢」が出てこないの
でしょう?

 エジプトの場合は分からないでもないのです。堅固と思われたムバラク政権が倒れ
た空白を埋めるために、とりあえず「反作用」としてモルシ政権を選んでいるのです。
もしかしたらこれは単なる試行錯誤に過ぎず、仮にIMFとの交渉が上手く行かない
か、上手く行っても厳しい要求に対して世論が動揺するということがあれば、再び政
争となって実務的でオープンな政権ができるかもしれません。ある意味では、苦しい
けれども必要なプロセスなのかもしれません。

 ですが、日本の場合は「リーダー」の資質を厳しい目で選ぶことも、理念と政策の
軸で選ぶことも難しくなっているわけです。どの選択肢も、一種の乱暴さを抱えてい
ます。維新だけでなく、安倍自民党も無茶な金融緩和論や、国防軍設置など「カタル
シス」的な変化を主張しているのが気がかりです。

 小党が乱立している中で合従連衡へ向けて様々な駆け引きが行われていることなど、
大変に分かりにくい選挙になっています。そうした表層の問題だけでなく、とにかく
「この政権にとりあえず任せてみよう」とか「この理念、そしてそれに従った政策を
選択しよう」という選択肢自体が見えない、その一方で「破壊のカタルシス」的なも
のが売り物になっているのです。

 どうしてこんな事態に立ち至っているのでしょうか?

 二つ指摘できると思います。一つには、「このまま無策が続けば日本は先進国、つ
まり一人あたりGDP3万ドルのグループから脱落する」という危機感が、まだ共有
されていないということがあります。今起きているのは「失政によるデフレ不況」な
どではないのです。ただ20年を超える期間にわたって衰退の兆候がどんどん濃くな
っている、その危機意識が足りません。

 もう一つは、こうした危機を打開するためには、「地域」「世代」「職種」などと
いった属性に細分化して損得を考える段階は過ぎたということです。日本という国の
全体が繁栄への方向性を回復しなければ全体的な崩壊が加速し、その影響は全ての個
人に及ぶという危機感がまだ足りないのだと思います。

 残念ながら、小党分立の中で出てきた「破壊的キャラクター」のドラマを楽しむ余
裕はないのです。では、どうしたいいのでしょうか? 非常に基本的なことですが、
今回の解散総選挙の原点に戻るのが第一歩だと思います。

 今回の解散総選挙の主旨は、野田首相が「約束を守って男らしい姿を見せるため」
でも、安倍総裁が「約束を守らせて解散に追い込んだため」でもありません。その約
束、つまり「税と社会保障の一体改革」についての三党合意に対して民意を問うとい
うのが原点であるはずです。

 いやいや、自民党は「三党合意を理由に首相問責をやったのだから、あの時点で三
党合意は解体した」という向きもあるかもしれません。ですが、その問題は「そうし
た論理矛盾を起こした谷垣前総裁が辞めた」ことで帳消しになっているはずです。

 とにかくこの原点に戻り、「一体改革」に賛成したはずの「民主残留組+自民+公
明」で、何らかの選挙前の緩やかな連携を示すことが必要です。そのケジメがつかず、
まるで「民主と自民の一騎打ち」だと思っていることがそもそもの間違いで、それが
「破壊衝動的」な第三極の「付け入るスキ」を与えているのだと思います。

<お知らせ>
筆者の冷泉彰彦によるオバマ政権2期目の課題を展望する『チェンジはどこへ消えた
か〜オーラをなくしたオバマの試練』(ニューズウィーク日本版ぺーパーバックス)
が、昨日(23日)に発売されました。一期目のオバマ政権に対して辛口な評価を下
しながらも、アメリカの民意はどうして「続投」を承認したのか、またオバマ二期目
のアメリカはどこへ向かうのかをまとめた内容です。書店でご覧いただければば幸い
です。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』。訳書に『チャター』
がある。 またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。

◆"from 911/USAレポート"『10周年メモリアル特別編集版』◆
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詳しくはこちら ≫ http://itunes.apple.com/jp/app/id460233679?mt=8
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●編集部より 引用する場合は出典の明記をお願いします。
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JMM [Japan Mail Media]                No.715 Saturday Edition
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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】101,417部
【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )  

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コメント
 
01. 2012年11月25日 22:15:25 : SEzNbQqVr6
MRはところ構わず阿修羅に張り付くカスw

02. 日高見連邦共和国 2012年11月26日 15:54:35 : ZtjAE5Qu8buIw : mFuG9qQlTk

『MR』=『真相の道』=『Vaka』

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