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11月21日(水) 集団自衛権の容認と憲法改悪の潮流の強まり
〔以下の論攷は、日本科学者会議『東京支部つうしん』2012年11月10日付(第541号)に掲載されたものです。〕
集団的自衛権というのは、同盟国への攻撃を自国に対する攻撃と見なして反撃できる権利である。その行使は憲法上禁止されているというのが、これまでの日本政府の見解であった。この政府見解を変更しようとの動きは、以前から浮かんでは消えていたが、ここに来て、この集団的自衛権の容認論が急速に強まってきている。
その背景としては、国内外の環境変化がある。国外との関連では、尖閣諸島、竹島、北方4島の領有権をめぐる国際的な緊張の高まりである。領土問題を契機に、中国、韓国、ロシアとの関係は悪化し、武力衝突の可能性さえ危惧されるような状況が生じている。
国内では、政党や政治家の右傾化と改憲に向けての動きである。4月に、自民党、みんなの党、たちあがれ日本は、天皇の元首化、日の丸・君が代の義務化、国防軍や「緊急事態条項」の新設などを盛り込んだ改憲案を示し、日本共産党と社会民主党以外は全て改憲派といっても良いような状況が生じた。
このようななかで、武器輸出三原則の緩和、JAXA法の平和限定条項の削除、原子力基本法での安全保障条約の追加などを行ってきた野田佳彦首相は、7月9日の衆院予算委員会で、集団的自衛権について「政府内での議論も詰めていきたい」と述べ、見直しを検討する意向を表明した。
日本維新の会代表の橋下徹大阪市長も、集団的自衛権について「基本的には行使を認めるべきだ」とし、日本維新の会は次期衆院選で掲げる公約素案に集団的自衛権の行使を盛り込んだ。
9月の自民党総裁選挙では、どの候補も「集団自衛権容認、自衛隊の国軍化、憲法改悪」を競い合い、選出された安倍新総裁は10月15日、ウィリアム・バーンズ米国務副長官に、「政権をとったら集団的自衛権の行使の解釈を改めたい。日米同盟強化にもなるし、地域の安定にも寄与する」と語って、憲法解釈を見直す考えを示した。
しかも、実態はすでに先行している。8月から9月にかけて陸上自衛隊は、島しょ防衛の能力向上を図るとして、グアムとテニアン島で米第3海兵遠征軍と共同訓練を実施し、10月14日の観艦式には、米、豪、シンガポール各軍艦一隻も初めて参加した。
しかし、集団的自衛権を容認することによって、日本をめぐる国際的な対立を緩和し、安全を高めることができるのだろうか。かえって、周辺諸国の警戒感を高め、緊張状態を激化させ、国内の右傾化をさらに強めることになるだろう。日本が領土問題について軍事的な解決を考えているのではないかとの誤ったメッセージを周辺諸国に与え、問題の解決を難しくするにちがいない。
戦後70年近くにわたり、国際社会において「平和国家」としての声望を得てきた日本である。その実績を一瞬にして水泡に帰すような愚行は、厳に慎まれるべきであろう。
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