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安倍総裁が狙う「2ステップ再編」
水面下で蠢く衆院選後の政権枠組み構想
2012年11月21日(水) 安藤 毅
党首討論での野田佳彦首相の衆院解散日明言という異例の展開で「12月4日公示―16日投開票」の選挙戦に突入した永田町。民主党議員の多くが慌て、第3極連携の動きも加速している。
党分裂の危機にも関わらず、野田首相がこのタイミングで“伝家の宝刀”を抜いた真意について関係者の見方をまとめると、おおむね以下の3点に集約できる。
「年内解散」にこだわったワケ
まずは、予算編成と消費増税への影響だ。政府は来年度予算案編成へ向けた作業を進めているが、仮に現在の臨時国会をなんとか乗り切ったとしても、来年1月召集の通常国会は与野党対立がさらに激化するのは必至だ。
民主の単独過半数割れが目前に迫る中、無事に来年度予算案の成立にこぎ着ける保証はない。消費増税法を成立させた民主、自民、公明3党の合意の枠組みが崩壊する恐れもある。
2014年4月からの消費増税の可否の主な判断材料は来春の景気動向だ。解散時期が遅れるほど、新政権による予算編成作業はずれ込む。その影響で景気が一段と冷え込めば、野田首相が政治生命を懸けて取り組んだ消費増税の実現に赤信号が灯りかねない。
財務省幹部は「人一倍消費税に思い入れが強い野田さんは、こうした事態を最も懸念していた」と指摘する。
また、野田首相の周辺によると、野田首相は「追い込まれる形での解散は避けたい」と漏らしていた。
だらだらと解散時期を延ばしても大幅な情勢の改善は見込めず、「嘘つき」呼ばわりされるだけ。今なら日本維新の会など第3極の候補者擁立や連携に向けた準備も整っていない。党内からの「野田降ろし」の動きや内閣不信任案の可決を封じるにはこのタイミングしかないと判断した模様だ。
そして、3点目が、「どうせ衆院選での敗北が避けられないのだから、来年夏の参院選まで一定期間を開けて党を立て直し、参院第1党を維持したいということ」(民主党の閣僚)。早期の解散を提唱する前原誠司・国家戦略相を始め、民主の参院議員の間でもこの立場に同調する議員が少なくない。
“サプライズ解散”で一気に選挙モードに突入した与野党各党。急遽維新と石原慎太郎・前東京都知事率いる太陽の党が合流を決め、ほかの第3極も離合集散を加速するなど、生き残りをかけた目まぐるしい動きが続く。水面下では、次期衆院選後の政権の枠組みを巡り、早くも様々な思惑が蠢いている。
そもそも、次期衆院選後の各党勢力の絵姿はどうなるのだろう。
民主、自民両党関係者の話などを総合すると、今すぐに衆院選が行われた場合、地方組織の自力を発揮する自民が200議席を超えて勝利し、民主は80〜100議席程度にとどまる可能性が高い。自民が選挙協力する公明党は30議席程度を獲得するとみられる。
次期政権枠組みは「自公プラスアルファ」?
維新など第3極が選挙区調整などの連携ができるかどうか次第の面も大きいが、自公で過半数に達するかどうかの攻防となるわけだ。
ただ、参院では自公合わせても過半数に達しない「ねじれ」状態が続く。このため、自民内では「自公プラスアルファ」の連立政権を組むべきとの声が出ている。
この自公の連立パートナー候補として考えられるのが、民主と第3極の各党だ。
自民内で民主との協調路線を推すのが、消費増税実現に協力した前執行部やベテラン議員。「ねじれ国会を乗り切り、安定的な政権運営には自公民体制の継続が不可欠」が表向きの理由だ。あるベテラン議員は「維新やみんなが政権に加わり、消費増税や予算編成作業などをかき回されるのは避けたい」と本音を漏らす。
これに対し、第3極との連立派はその後の大規模な政界再編を視野に入れる議員が多い。ただし、この場合は参院での多数派確保に不安が残る。
では、次期首相の座に最も近い位置にいる安倍晋三・自民党総裁はどんな立場なのか。
安倍氏が本誌2012年9月10日号のインタビューで語った内容や筆者が安倍氏自身から聞いた話を総合すると、目指すのは次のような展開だ。
まず大前提として、安倍氏は民主との連立には消極的だ。安倍氏の持論の教育改革や公務員制度改革などに取り組むに際し、官公労や日教組が支持基盤の民主と組めるはずがないというのが第1点。
成長力の底上げを通じて経済のパイを増やすことを重視する安倍氏に対し、民主は「パイを分配することに熱心」(安倍氏)。経済政策の面でも相容れないとの認識だ。
さらに、最近では、安倍氏ら保守勢力に対抗しようと「中道」路線を打ち出そうとする民主の姿勢を「しょせん選挙戦術。政治家としての理念でも哲学でもない」とこき下ろすなど、安倍氏は“反民主”の旗幟を鮮明にしている。少なくとも、今の民主と丸ごと連携するという選択肢は考えにくい。
では、どうするのか。
安倍氏は「多数派を形成するには、どこと組めばいいのかという従来の発想ではなく、取り組むべき政策課題をまず考え、その実現にはどんな勢力と組み、協力関係を構築していくのか、という順番であるべきだ」と語る。
当面は、自公との連立を土台にしたうえで、第3極と政策ごとに連携していく、いわゆる「部分連合」を目指す考えというわけだ。
「まず部分連合、参院選後に再編」
ねじれ国会対応についても、安倍氏は楽観的な見方を示す。
「衆院で大きな勢力が結集する方向が見えてくれば、参院でも化学変化が起こるはず」。来年7月の参院選を控え、「民主では戦えない」と離党者が出るなど、民主の結束が揺らぐ場面が訪れるとの見立てだ。
民主、自民、公明3党が来年度以降、2015年度まで予算案が成立すれば自動的に赤字国債を発行できるように合意したことも、政権運営の安定材料になる。自民幹部は「ねじれ国会に立ち往生する心配がかなり減った」と歓迎する。
安倍氏はその後第2段階として、来年7月の参院選で民主を第1党から引き摺り下ろし、晴れて第3極各党などとの再編に動くシナリオを思い描いている。安倍氏が狙う憲法改正の国会の発議要件を定めた憲法96条の改正などを実現するには、保守勢力の結集が欠かせないためだ。
「この段階になると、民主も確実に割れるはず」と安倍氏は読む。民主内でも前原氏が著書で保守の再編に意欲を示すなど、呼応する空気もある。
これを踏まえ、橋下徹・大阪市長の有力ブレーンは「安倍さん、前原さん、橋下さんをくっつける再編を実現したい」と言い切る。
関係者によると、野田首相は周辺に「民主は120〜130人ぐらいになるかもしれないが、党を立て直したい」と意気込んでいるという。だが、情勢次第では来夏にも政界の風景は一変しているかもしれない。
さらに、自民内などでは再編後の議席と政権の安定を狙い、政権奪還後に中選挙区制度の復活を視野に入れた選挙制度改革論議を主導する構想も浮上している。その実現は容易でないが、1990年代からの「政権交代可能な2大政党制の確立」という政治改革が目指した絵姿が大きく変容を迫られていることは間違いない。
「次期衆院選は政策実現のための政界再編の第一歩と位置付けたい」。安倍氏はこう強調する。
「一寸先は闇」が常の永田町で、“永遠の再編期待”に終止符を打つ時がやってくるのか。様々な思惑が交錯する中、国民の審判を受ける日が近づいている。
安藤 毅(あんどう・たけし)
日経ビジネス編集委員。
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121116/239533/?ST=print
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