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自民総裁の日銀関連発言は政治介入=前原経財相
2012年 11月 20日 12:47 JST
[東京 20日 ロイター] 前原誠司経済財政相は20日午前の閣議後会見で、自民党の安倍晋三総裁が日銀法改正に言及していることに対し、金融政策に対する政治介入だと批判した上で、デフレ脱却の責務は日銀のみにあるのではないとの見解を示した。ただ同時に、日銀に強力な金融緩和を求める姿勢も重ねて強調した。
日銀に一段の金融緩和を求め続けている経財相は、安倍総裁と「金融緩和の必要性の認識は一致している」としながらも、安倍総裁の日銀法改正も視野に入れた発言には「政治が金融政策に介入しようとしている。私は日銀法改正には極めて慎重。日銀の独立性は担保されないといけない」と否定的な見解を示した。
同時に「デフレを放置している責任の一端は日銀にある」として、日銀が設定した事実上の物価目標の達成に向けて「しっかりと強力な金融緩和を行う中で、それ(達成)に向けて努力することは大事」だと重ねて述べたが、「日銀だけにデフレ脱却の責務を負わせることは考えていない」とも指摘。「企業や個人がしっかり資金を使い、新しい方向に日本の経済を転換するために使う前提でなければいけない。金融緩和自体は目的ではない。大きな目的は経済の体質改善だ」だとして、政府・民主党がまとめた日本再生戦略を進める必要性を説明した。
さらに「日銀がお札をたくさん刷って、金融緩和をすればすべてが解決するということではまったくない」とも言及。「民主党は金融緩和の必要性、政府との協調の必要性は認めながら、日銀の独立性維持と日本経済の体質改善が必要ということにおいて、自民党と一線を画している」と述べた。
安倍総裁の発言を手掛かりに、金融市場が変動していることにも懸念を表明した。「若干、私が危惧をしているのは、投機家の動きが発言によって(市場で)見え隠れしているといった情報も寄せられている。あくまでもマーケットは賭場の色彩があるので、そういうもので実体経済が歪むことのないよう願っている」とした。
批判は安倍総裁の建設国債引き受け論にも向かった。「国が国債を発行して、市場通さずに国が引き受けるのはあってはならない。直接引き受けはありえない」と述べた。市場からの購入は「金融緩和のひとつの手段として、日銀も努力してもらっている」としたが、続けて「円高是正、デフレ脱却に向けて強力な金融緩和を推進してほしいとの観点に立って、更なる日銀の努力を期待したい」とも表明した。
経財相はきょうの金融政策決定会合に出席する。「円高是正、デフレ脱却のために強力な金融緩和を求める姿勢に変わりない」という。
<補正予算編成は「相当先」、政治空白防ぐため経済対策必要>
経財相は今後の経済対策の策定にあたって必要となる補正予算編成について「16日に投票が行われ新たな内閣ができ、そして補正予算編成ということになるが、(法案を)まとめるのに数週間かかり、(法案書などの)印刷にまた3―4週間かかることになれば、相当先になる」との見通しを示した。
経済の現状を経財相は「世界情勢の変化などで、後から見れば景気後退になっているのではないかという、足元が極めて厳しい状況になりつつある」と指摘。「我々政権がなすべきことは、できる限りの景気対策、経済対策を行うこと。数(規模)さえ積めばいいとの考え方には汲みしないが、足元の景気下振れを何とか回避するため、しっかりした対応を取らせてほしい」と話した。
安倍氏の日銀めぐる発言、中塚金融相が「独裁政権」と批判
2012年 11月 20日 11:46 JST
[東京 20日 ロイター] 中塚一宏金融担当相は20日の閣議後会見で、自民党の安倍晋三総裁が最近の講演などで、日銀の金融政策に繰り返し言及していることに対し「制度の問題として、中央銀行の独立性がある」と指摘し「発展途上国の軍事独裁政権でもあるまいし、我々はちゃんと地に足のついた、未来に向けた経済対策を訴えていきたい」と述べた。
中塚金融相は「政府と日銀が連携した上で日銀が独自に判断するならまだしも、政府が目標を決めたり国債を買わせたりということ自体、公党の代表としてはもちろん、一国のリーダーとしてふさわしくない」と指摘し「200兆円の公共事業をばらまいて日銀につけ回すというのはいかがなものか」と批判した。
一方、民主党政権の3年間でGDPデフレーターが縮小し需給ギャップも縮小してきたとし「政策に誤りはなかった」と主張。財政と経済は一体と考える必要があるとし「これだけの赤字を抱える国だから(財政)健全化への道筋をしっかり示す必要がある」と述べた。
「経済は財政・金融だけでは語れない部分もある」として、財政資金によらず民間資金で需要を創出するなどの方策があると説明し「今まで中小企業金融円滑化を促してきた。毛細血管の部分から、しっかり経済の活性化を進めていきたい」と述べた。
(ロイターニュース 基太村真司 編集 宮崎大)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ01P20121120
安倍氏と橋下氏を結ぶ「リフレ人脈」 株価の行方は
日経QUICKニュース(NQN)編集委員 永井洋一
2012/11/20 11:44日本経済新聞 電子版
民主党の野田佳彦首相が衆院解散を宣言して以降、日本株高と円安の局面が続いている。「解散」をきっかけに、次期首相の有力候補である自民党の安倍晋三総裁が提唱するリフレーション(緩やかなインフレ促進)策に投資家の関心が向かったためだ。2%程度の物価上昇率(インフレ)目標設定や日銀法改正までも視野に入れる安倍氏のリフレ論。一歩間違えば、国内からの資本流出につながりかねない「劇薬」だけに、市場では、その実現性に懐疑的な見方は多い。一方で、「株高・円安の賞味期限は意外に長い」との声もある。その背景には、与野党通じて、リフレ待望論が少なくなく、安倍氏と第三極をつなぐリフレ人脈とも言うべき人物の存在がある。
日銀総裁人事を来年春に控え、「すぐに消える材料ではない」。今回のリフレ策に対し、野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは投資家にこう助言している。「抜本的に金融政策の枠組みが変わる可能性がある」。こうにらむ池田氏は、2013年度には1ドル=90円が視野に入ると話す。
安倍氏のリフレ策を理論的に支えているのは、元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授だ。自民党の小泉純一郎氏が首相の座を退き、安倍氏と交代した直後の2006年秋。小泉・竹中路線のブレーンだった高橋氏は「安倍さんに直接、首相補佐官補として官邸に残ってくれと言われた」。今では、安倍氏とはツーカーの仲だという。
大阪市の特別顧問を兼務する高橋氏は、橋下徹・大阪市長の維新政治塾で、経済・金融政策問題について講義してきた。日銀法改正では、みんなの党に加え、橋下氏も前向きとみられる。市場の一部では「自民と維新が連立を組めば、(金融・経済政策は)先鋭化する」(大手証券)といった見方があるが、その裏には、安倍氏と第三極をリフレで結ぶ人脈がある。
日銀による無制限の金融緩和や公共投資拡大のための建設国債の買い入れなど、安倍氏が「教科書」とする高橋氏のリフレ論。だが、高橋氏は、「無制限といっても、インフレ目標を達成するまでという条件付きだし、国債買い入れも、借換債はすでに日銀が毎年、引き受けている」と指摘。日本国債の暴落リスクを一蹴する。
こうしたリフレ期待は、民主党内にもくすぶっている。野田首相が衆院解散を表明した14日、民主党の金子洋一参院議員はツイッターで「他党(自民党)主体でも、リフレが実現できるのなら歓迎」と表明した。「脱デフレには手段を選んでいる暇はない」という意識が永田町に広がり、それが、株高・円安シナリオを補強している。
もちろん、リフレに対しては期待や支持ばかりではない。物価安定を目的とした中銀の独立性が侵害されることで、歯止めの利かないインフレを警戒する声は多い。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「市場で動いているのは目先の利益を狙った投機資金が大半」と指摘する。
戦時中の1942年、国防最優先の国家体制構築を目的に制定された日銀法が大幅に改正されたのは、自民党の橋本龍太郎氏が首相だった1997年だ。その目的は、国家統制色を薄め、意思決定過程の透明性と日銀の独立性の確保を図るという点にあったが、政治の介入でバブル退治に遅れた反省機運も法改正を後押しした。それから15年。今度は「脱デフレ」を掲げる政治勢力が日銀を取り囲み始めている。日本の事情に疎い海外ヘッジファンドが主導する株高・円安局面は、もうしばらく続く可能性はあるが、それを冷ややかにみている国内投資家は多い。
http://www.nikkei.com/markets/features/26.aspx?g=DGXNASFL200CJ_20112012000000
日銀が金融政策を維持、総裁は安倍発言に慎重な見解
2012年 11月 20日 20:34 JST
[東京 20日 ロイター] 日銀は20日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める一方、景気の当面の判断を「弱めに推移する」に下方修正した。会合後に会見した白川方明総裁は、景気の下振れリスクに引き続き警戒感を示すとともに、自民党の安倍晋三総裁が主張する国債引き受けなどの緩和手法に対して慎重な見解を表明した。
日銀が追加緩和を見送ったのは、9、10月と異例の2カ月連続で実施した追加金融緩和の効果を見極めるため。ただ、海外経済の減速長期化や日中関係の悪化による輸出や生産の減少、それに伴う内需への悪影響を背景に、先行きの景気は「当面弱めに推移する」とし、10月末公表の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で示した「当面横ばい圏内の動きにとどまる」から下方修正した。
白川総裁はその後の会見で景気判断について「展望リポートのシナリオを変えたわけではない」としたが、海外経済の減速長期化によって内需への悪影響が一段と強まらないか丹念な点検が必要などと述べ、景気の下振れリスクに警戒感を示した。
<国債の直接引き受けは副作用>
12月16日投開票の衆院選に向けて景気対策が争点化する中、総裁会見では大胆な金融政策を求める自民党の安倍総裁の発言について見解を求める質問が相次いだ。安倍総裁は物価上昇率3%など明確なインフレターゲットの導入を含めた日銀法改正や、建設国債の直接引き受けに言及しているが、白川総裁は一般論と前置きした上で、長期金利上昇で財政再建や実体経済に悪影響があるなどと副作用を指摘した。その上で、中央銀行の独立性は「内外の長い金融・経済の歴史の中で得られた教訓」によって国際的に確立されたものとし、「日本の経済・金融の基本法」である日銀法改正を議論する場合は「十分に時間をかけて慎重に検討することが必要」と語った。
これまでも白川総裁は同様の見解を繰り返し説明してきたが、市場では、政治圧力の高まりなどを背景に日銀が12月19、20日の会合で追加緩和を決めるとの見方が増えている。次回会合は衆院選直後となるが、会合前の12月11、12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年末のオペレーション・ツイストの終了に伴って追加緩和策が打ち出されるとの見方が支配的。野田政権が11月末にも2012年度補正予算を視野に入れた本格的な景気対策を決める見通しであることなども、日銀の12月緩和観測を強めやすい要因になっている。
衆院選は民主、自民の2大政党に日本維新の会など「第三極」が絡み、今後の政権の枠組みにも不透明感が強い。しかし、多くの政党が早期のデフレ脱却の重要性を訴え、2014年4月からの消費税率引き上げを控える中、強力な金融緩和を求める政治圧力が一段と強まることは避けられない情勢だ。20日の会合に出席した前原誠司経済財政担当相は、安倍総裁の発言について「建設国債の直接の引き受けや、日銀法改正で政治が直接介入することには、われわれは否定的」としながらも、政府の姿勢として「日銀が2月に表明した物価目標が達成できていないわけだから、達成のためにしっかりと強力な、結果を出すための金融緩和を引き続き行っていただきたい」と、あらためて強力な金融緩和を求めた。
(ロイターニュース 伊藤純夫、竹本能文;編集 久保信博)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ06M20121120
焦点:緩和見送った日銀、年末に動けば後追いの印象も
2012年 11月 20日 20:29 JST
[東京 20日 ロイター] 日銀は20日の金融政策決定会合で追加緩和を見送った。9、10月と立て続けに緩和に踏み切った効果を見極めるためとしているが、一方で景気の見通しは下方修正しており、論理的には3カ月連続で緩和に動く余地があった。
市場は12月会合での緩和を予想しているが、直前に米連邦準備理事会(FRB)が追加緩和に踏み切る公算が大きく、「後追い」とみられる可能性がある。12月には来春の総裁任期を控え新政権による日銀への圧力が極限まで高まる中、デフレ脱却に向けた日銀の積極的な姿勢を主張できる好機も逸したとの声も聞かれる。
日銀は10月に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2012年度の実質成長率を前年比プラス1.5%と見通していた。しかし内閣府が11月12日に公表した7─9月の実質成長率は前期比0.9%減、年率で3.5%と大幅なマイナスとなっており、年明けによほど景気が盛り返さなければ今年度の成長率は1%を切る公算が大きい。内閣府も「景気後退入りした可能性」があると指摘している。民間のあるエコノミストは、今回の会合について「日銀が見通しを外したのだから追加緩和が自然」と話す。
だが異例の2カ月連続の緩和に踏み切った日銀としては、会合のたびに新たな政策を打ち出すとみられるのは避けたいところだ。記者会見した白川方明総裁は、「海外経済は8、9月と悪化してきたが、先般出席した11月の20か国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)会合でも、世界経済がさらに悪化してきている感じではなかった」、「今、リーマンショックの後の大きな落ち込みを想定しているわけではない」などと発言。景気の見通しは下方修正しながらも、下振れ程度は追加緩和が必要なほど大きくないことを示すため、言葉を丁寧に選びながら質問に答えた。
衆院選の争点に金融政策が浮上したことで、「野党圧力で動けば与党から、与党圧力で動けば新政権から反感を買う可能性があり、見送ったのかもしれない」(民間エコノミスト)との見方も浮上している。
市場関係者の間では、次回12月会合には追加緩和に踏み切るとの予想が大多数だ。クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏は「12月末は米FRBが短期国債を売って長期国債を買うオペレーション・ツイストが年末に終了するのに伴い金融緩和を強化する公算が大きく、日銀も動かざるをえない」と指摘。また、「10月末の景気見通し、特に12年度が楽観的すぎ、追加緩和の規模も不十分だったため小出しの追加緩和に今後迫られる」とみている。
12月16日の総選挙で強力な金融緩和論者の自民党・安倍晋三総裁を中心とした新政権が生まれれば、直後の次回会合で日銀が追加緩和に踏み切っても、米金融緩和や国内の政治圧力に押されて動いたとの印象を与える可能性がある。日銀は来春に正副総裁が任期満了を迎えるが、人事は新政権が握っている。今回の会合で先手を打ち、景気判断の引き下げとともに追加緩和に踏み切っていれば、「(日銀は)積極的に動くというイメージを出せてプラスだったかもしれない」と、ある民間エコノミストは指摘する。
(ロイターニュース 竹本能文;編集 久保信博)
トップニュース
米国務長官が中東歴訪、ガザ情勢で各指導者らと緊急会談へ
民主党マニフェスト最終案、14年度にデフレ脱却目指す方針明記
焦点:資金供給による円安誘導には限界、政治も政策総動員する必要
フランス、改革停滞なら一段の格下げ=ムーディーズ
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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ05T20121120
焦点:資金供給による円安誘導には限界、政治も政策総動員する必要
2012年 11月 20日 18:42 JST
[東京 20日 ロイター] 政治サイドから日銀への緩和圧力が強まっているが、ゼロ金利環境の下では、資金供給をどれほど増やそうと円相場への影響は限られるとの冷めた声も多い。世の中の資金ニーズが乏しければ、どれほどマネーの供給を増やしても日銀当座預金に積み上がるだけだからだ。
円高を是正し、インフレ期待を高めるためには、財政出動や規制緩和、税制改正など政治サイドも政策を総動員する必要がある。
<積み上がる「死に金」>
日本の10月のマネタリーベースは前年比10.8%増の128兆1344億円と、9月に続き過去最高を更新した。だが、この間のドル/円に目立った方向性は出なかった。日米マネタリーベース比率とドル/円相場との関係をあらわした「ソロス・チャート」は不安定で、「相場の説明力は低い」(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏)との見方がもっぱらだ。10月中旬には日銀当座預金残高は46兆円台と過去最高を更新したが、「日本経済が縮小する中で、行き場のない『死に金』が積み上がっているだけ」(同)との声も聞こえてくる。
政治サイドの日銀に対する圧力が強まっているが、市場では日銀がどんなに資金を供給しようと、ゼロ金利環境の下では為替相場への影響は限られるとの声も目立つ。JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部長、佐々木融氏は「ベースマネーの拡大が通貨安につながるのは、拡大によって金利が低下する時だ」とし、現在は既に極めて低い金利水準にあることから、影響は限定的と話す。
佐々木氏は、金融政策が為替相場に影響を与えるルートとして、1)名目金利の変化、2)実質金利の変化、3)資本フロー、4)短期筋の動向──を挙げるが、名目金利はすでに下げようがなく、実質金利についても「長くデフレが続いた日本では、金融政策を通じて人々のインフレ期待を高めるのは困難」として、金融政策だけで長期的な円安を促すのは難しいと指摘する。
<資本フローは期待薄>
このため現在は、資本フローの動きが円安進行のカギを握るが、日米金利差の拡大が見込めない中では、日本人による円売りは限られる可能性が高い。銀行や生命保険会社は為替リスクをとることには依然慎重だ。
今回、円売りを主導したのは「海外短期筋だった」(大手邦銀)との見方が多い。そうであれば、あくまで投機的な動きに過ぎず、回転が効けばある程度までドル高/円安は進むかもしれないが、借りてきた円を売るような投機的な円売りはいずれ買い戻されるため、長い目で見れば相場にとって中立だ。「息の長い円安」には、円資産を持つ日本人による円売りが不可欠との見方が根強い。
<安倍発言には批判も>
日銀は19─20日開催の決定会合で金融政策の現状維持を決めたが、市場では追加緩和期待が続いており、円ショートの巻き戻しはほとんどみられなかった。この背景には、政治サイドから今後も緩和圧力が続くとの見方がある。
自民党の安倍晋三総裁は15日講演で「ゼロかマイナス金利にするぐらいにして、貸し出しを高めてもらいたい」と述べ、市場関係者を驚かせたほか、週末には建設国債の日銀引き受けまで飛び出すなど、発言は日増しにヒートアップしている。
ただ、これについては批判も多くなってきており、経済界からは「財政規律についてもバランスよく言わないと、メッセージとして少し間違った捉えられ方をする可能性がある」(経済同友会の長谷川閑史代表幹事)と苦言を呈する声も出ている。
<外債購入は政治マター>
足元の円高については、欧州問題や米「財政の崖」懸念によるリスクオフの「円買い」の部分もあり、「原因を日銀だけに求めるのは筋違い」(外資系証券)との指摘もある。市場の一部では円高是正で日銀ができることとして、金融調節の手段としての「外債購入」を挙げる声もあるが、これは実質的に為替介入と同じで相手国があることから、「外交交渉問題、つまり、日本の政治の仕事だ」(東短リサーチ・チーフエコノミスト、加藤出氏)との声は多い。
政府と日銀が10月30日に共同発表した「デフレ脱却に向けた取り組みについて」と題した文書の中には「デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠」との記述がある。JPモルガン・チェース銀の佐々木氏は円高是正、インフレ期待を高めるためには、日銀に対する緩和要求だけでなく、「財政や構造改革、規制緩和、税制改正など、政治サイドも政策を総動員することが必要だ」と指摘している。
(ロイターニュース 志田義寧 編集:伊賀大記)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ05T20121120
BOJ Watching 日本銀行分析レポート
インフレは起こせる。しかし、健全な手法はない
〜マイナス金利は財政政策である〜
発表日:2012年11月16日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 熊野英生(пF03-5221-5223)
無制限緩和とマイナス金利 というテーマに共鳴して 、為替相場が円安に振れている。こ数か月の 日銀の緩和で これだけの円安効果が見込め なかっただけに皮肉結果である。 し か、インフレ政策の副作用について 十分に 語 られることは ない 。無理な信用拡張 をすれば 信用劣化が起こる。過剰消費・投資は、民間の不良債権もし 信用劣化が起こる。過剰消費・投資は、民間の不良債権もし 信用劣化が起こる。過剰消費・投資は、民間の不良債権もし くは政府債務にソブリンスクを生じさせる。人為的イフレ起こす方法健全なやり方はない
為替を動かす安倍総裁の発言
衆議院が11月16日に解散した。政権を賭けた選挙となるだけに、政治家の発言は大胆になる傾向がある。11月15日の為替相場は、自民党の安倍晋三総裁の発言によって、円安に振れた。ドル円レートは、野田首相の解散示唆までは1ドル=79円台前半だったのが、解散示唆で80円近辺まで円安になり、さらに安倍発言で80円台後半から81円まで進んだ。まるで為替相場が上げ潮に乗って動かされるようにみえる。ここ数か月の日銀の金融緩和が効かず、政治家の発言の方が為替を円安に動かす威力を持っていたことは、何とも皮肉なことである。
さて、15日午後に安倍総裁が講演(日本商工会議所との政策懇談会、読売国際経済懇話会)で話した発言内容を具体的に確認しておこう。
「政権を取ったら、日銀と政策議論、政策協調をして、大胆な金融緩和を行っていく。一番いいのはインフレ目標政策を持つことだろう。2%がいいのか、3%がいいのか、これは専門家に議論して判断してもらいたいと思うが、この目標達成のために、無制限に緩和をしていくということになって、初めて市場が反応していくと思う」
「国債の買いオペレーションについても、短期で買って売っていくというローリング型はやめてもらって、新しいお金を出していただかなければ、インフレ期待は起こらない。しかもそれを無制限にやって、続けていくことによって、インフレ期待が起こる」
金融政策を行っても、実際にインフレ期待が起こるには時差がある。時差を待っている暇はないので、時差を短くするために政府が公共投資を行って、引っ張っていく」
「銀行が政府にお金を預ければ0.1%の金利がつくのは高すぎる。最も安全な日銀に0.1%で預けられるのであれば、すぐにお金は日本銀行に帰ってくる。それよりはむしろ逆にゼロにするか、マイナスにするくらいのことをして貸出圧力を強めていただかなければならないだろう」
この発言でのポイントは、@インフレ目標を達成するまで無制限に緩和を行う、Aマイナス金利で貸出圧力を強める、という2点である。ただし、後者の意味が、補完当座預金制度で日銀当座預金の適用金利が0.10%になっているのをマイナス金利にすることだとすれば、それでは貸出圧力は強まらない。なぜならば、銀行が日銀に預けている預金の受取利子がマイナスになれば、銀行は逆に日銀に利子を支払わないといけないからだ。日銀当座預金の金利がマイナスになれば、銀行は一斉に短期国債に資金シフトを起こすだけだ。ここには誤解があるようなので、その理解について後段で再論する。
12月の決定会合で追加緩和の可能性
日銀は、政治家の発言を受けてどのように行動するのか。日銀の独立性を脅かすものとして、拒絶するのか、ある
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いは何らかの対応を求められたとして行動するのか。筆者は、12月16日に予定される衆議院選挙の結果がどうであれ、日銀は12月14日の日銀短観で企業の景況感が悪化するのを見極めて追加緩和を行う可能性が高いとみる。日銀は、資産買入基金残高を9月19日はプラス10兆円、10月30日はプラス11兆円と、物凄いペースで上積みしている。おそらく、12月も同じく資産買入基金の金額を増額することで、追加緩和の姿勢を演出するとみられる。
ただし、資産買入基金の増額では、日銀への風当たりはなくならないと考えられる。これは、国債購入の大幅な増額に踏み切っても、実体経済への刺激が乏しいからだ。政治が求めているのは、物価上昇や円安といった目に見える成果である。日銀の積極的な振る舞いだけでは納得を得られないだろう。
マネーを増やす方法
では、日銀が人為的にインフレを起こすことは可能なのだろうか。筆者は、技術的に人為的にインフレを起こすことは可能であると考える。その方法は、マネー=購買力を増やして、超過需要を生み出すことである。わかりやすく解説すると、次のような「頭の体操」になる。
(1) 日本経済が1つの世帯だったとする。世帯収入は100万円。今、個人消費を収入100万円よりも大きな金額にするために、借入を増やす(マネーが増える)。
(2) 日銀が世帯に対して、200万円の貸付を行う。このとき、世帯は、消費金額を300万円にできる。
(3) この理屈で、日銀が銀行を通じて、企業・家計にどんどん貸し付けを増やせば、消費・投資は膨らんで、名目成長率は上昇する。
これが単純化した理屈である。日銀が、政府にファイナンスをして、政府が給付金を配れば同じことができる。政府は、国債を発行して無制限に給付金を配ることもできるが、政府債務の持続性が不安視されるので、給付金を無制限に配ることはできなくなる。実は、日銀が政府にファイナンスをする方法も、国債発行残高を無制限に増やすことにつながり、政府債務の持続性を危うくする点で変わりはない。つまり、人為的にマネーを増やすことは、使途が生産性上昇に寄与するかどうかによって、場合によってはマネーの裏側にある負債の信用力を不安定化させる副作用を伴うのである。この理屈は、民間部門が自分の予算制約を超えて支出を増やすことを、公的資金を使って行っても限界があるということである。民間企業が予算制約を度外視して借入を増やせば、過剰投資・不良債権の山ができる。政府が過剰支出をすれば、政府債務にソブリン・リスクが生じる。それにも拘わらず、日銀の資金を使えば、政府債務の持続性問題を度外視できると考えることは、日銀資金が公的資金であると認識せず、別勘定の資金だと考えるところに問題がある。人為的に購買力を膨らませてインフレを起こすことは、民間・政府のいずれかの信用を劣化させる点で、副作用を免れられない運命にある。人為的にインフレを起こすことは技術的には可能なのだが、信用劣化をコントロールして、副作用を抑制することはできない。現在はそうした副作用には言及されていない。もしも、「無制限に」という言葉のニュアンスに、そうした副作用に目をつむって、という意図が込められているのならば、要注意である。
現実的な政策まで譲歩すると
効果が乏しく副作用が大きい政策であるならば、常識的にはそれを選択せずに、別の方法を探すというのが賢明だ。金融政策以外に、デフレ対策を手厚くすることが好ましい。筆者はあくまで穏健な政策運営を望む。
しかし、日銀の立場からすれば、金融政策で可能な範囲内で何か有効な策を考案しなくてはいけないという課題があるのだろう。そこで、金融政策の範囲内で何が可能なのかを思考実験してみた。
まず、前提としてマネーが増えない理由として、銀行が、無制限に企業・家計に融資を増そうとはしない事情を考える。安倍総裁は、貸出圧力を高めていかないといけないと述べている点は、購買力を増やすための手法として正
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しい認識である。もっとも、銀行は融資を自由に増やせないところには、事業の貸し倒れリスクが大きいと判断して、企業に融資を手控えている。銀行が融資活動を積極化しないのは、「しない」のではなく「できない」からだ。貸し倒れによって損失が生じると、銀行は収益基盤を脅かされる。
そこを敢えて、マネーを増やそうとすれば、銀行はファイナンスに際して、ある程度の損失発生を容認しなくてはいけない。その場合、政府が税金を使って、銀行の損失の肩代わりをするしかない。
さて、日銀の金融政策が、そうした限界に挑戦することは可能なのだろうか。ひとつの工夫としては、10月30日の決定会合で示された「貸出増加を支援するための資金供給」を見直すことで実行可能である。「貸出増加を支援するための資金供給」では、金融機関の貸出増加額(基準時点からのネット貸出増加額)について、金融機関からの希望に応じて資金供給するとしている。日銀が念頭に置いているのは、0.1%の貸付金利である。貸付期間は、各取引先の希望に応じて、1〜3年とし、最長4年までロールオーバー可能とするとある。
この0.1%の貸付金利を見直して、マイナス金利にすれば、金融機関にとっては著しく魅力を増す。例えば、100億円のネット貸出増加額を達成した金融機関に▲1%のマイナス金利で応じたとする。このとき、日銀は金融機関に1億円の利子を支払う。これは、金融機関のリスクテイクに対して、1億円の補助金が支払われたのと同じである。間接的には、金融機関の貸し倒れリスクを日銀が肩代わりして、事業リスクの高い事業者にファイナンスが実施される効果が及ぶ。仮に、予備費4,000億円のすべてが、日銀のマイナス金利のための利子補給に使われたならば、潜在的に拡張可能な民間貸出は、▲1%のマイナス金利として40兆円の貸出純増ということになる。40兆円は国内銀行貸出の約10%に相当する。
ここで注意しなくてはいけないのは、日銀がマイナス金利で資金供給を行うと、利子相当の金額が補助金と同じようになって、日銀の収益を減らす作用を持つことである。実は、これは、財政負担にほかならない。日銀は剰余金の一部を毎年国庫納付しており、過去5年間で年間400〜6,000億円の納付金を納めている。もしも、政策委員会がマイナス金利で資金供給を認めることは、日銀が財政政策の肩代わりをすることになる。日銀が、政府の許可を得ずに、補助金を金融機関に提供してよいかどうかは、慎重に臨むべきだろう。最低限、国会の議決を経て、公共事業を行う代わりに、政府は日銀に利子補給の財源として認める手続きが必要である。
また、こうした政策を日銀が始めたとき、財政資金が膨らみ、民間企業・金融機関の規律が低下する可能性も十分に配慮しなくてはいけなくなる。運用期間として1、2年で止めるような縛りをかけることも必要である。
議論できない金融政策は限界
日銀は、政権運営が揺れ動く中で、隘路を進んでいかざるを得ない。政治家が選挙前に大胆にアピールしたことを額面どおりに受け取って、日銀が冷静さを失うことはいかがなものかと思う。選挙前に掲げられた野党のマニフェストが、政権政党に入れ替わったときに、実現可能性の乏しいものに変わることも多々ある。2009年の政権交代以降、民主党の政策運営で障害になったことは、選挙前に公約したマニフェストが財源の手当てに失敗して、かえって歴代政権の重荷になったことだ。政権政党になってから、選挙前の政策綱領を再度吟味して、実現可能性を検証するくらいの慎重さが求められる。
日銀の姿勢として、政治家から提示された政策に対して歯切れよく議論しないことがある。日銀は、柔軟に政策を考えられるように独立性が与えられているはずである。政策論を舞台の表で論じることをしなければ、金融市場は日銀の味方にはならない。成熟した市場と日銀の関係を築く上でも、フェアな政策論を交換することが望まれる。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma/pdf/k_1211d.pdf
日銀が金融政策据え置き決定、景気判断「当面弱め」に下方修正
2012年 11月 20日 13:03
トップニュース
日経平均小幅続伸、円安一服や短期急騰の反動で伸び悩み
日銀は追加緩和見送り、景気判断を引き下げ:識者はこうみる
米ITC、アップル・サムソンの特許紛争で仮決定見直しへ
豪中銀、今後追加緩和が適切になる可能性を認識=議事録
[東京 20日 ロイター] 日銀は19、20日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0─0.1%程度に据え置くとともに、基金による資産買い入れによる金融緩和策について現状維持とすることを、全員一致で決定した。一方、先行きの景気判断を「当面弱めに推移する」と下方修正した。
<先行き景気回復シナリオは維持>
金融政策は現状維持とし、景気の落ち込みを背景に9、10月と異例の2カ月連続で実施した追加緩和の効果を見極める。
景気認識については、足もとを「弱含み」に据え置いたものの、先行きを「当面弱めに推移する」とし、10月末公表の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で示した「当面横ばい圏内の動きにとどまる」から下方修正した。ただ、その後は「国内需要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく」とし、景気回復シナリオは維持した。
また、足元の輸出や鉱工業生産は「減少している」としたほか、設備投資は「緩やかな増加基調」にあるが、「海外経済減速の影響などから製造業に弱めの動きがみられている」と指摘。個人消費も「底堅さを維持している」ものの、「乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減がみられている」とし、エコカー補助金終了による消費への影響に言及した。
<日中関係の影響広がりなどリスク>
一方、リスク要因として、前回に続いて、1)欧州債務問題の今後の展開、2)米国経済の回復力、3)新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行、4)日中関係の影響の広がり──をあげた。これらを背景に「日本経済をめぐる不確実性は引き続き大きい」とし、金融・為替市場動向の景気・物価への影響にも注意が必要との認識を示した。
<デフレ脱却へ、強力な金融緩和「間断なく推進」>
金融政策運営では、日本経済の早期のデフレ脱却が「極めて重要」との認識をあらためて示し、課題克服に向けて実質的なゼロ金利政策の継続と基金による資産買い入れを通じ、「強力な金融緩和を間断なく推進していく」と強調。日銀として「引き続き適切な金融政策運営に努める」方針だ。
ロイターニュース 伊藤純夫 竹本能文;編集 宮崎亜巳)
関連ニュース
日銀は追加緩和見送り、景気判断を引き下げ:識者はこうみる 2012年11月20日
景気下振れ・先行きリスク高まれば適切な措置必要─ある委員=日銀議事要旨 2012年11月2日
日銀が基金11兆円増額、14年以降も物価1%まで資産購入 2012年10月30日
日銀追加緩和へ、基金10兆円以上増額の公算 2012年10月25日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ01E20121120?sp=true
日銀は追加緩和見送り、景気判断を引き下げ:識者はこうみる
2012年 11月 20日 13:48 JST
[東京 20日 ロイター] 日銀は19、20日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0─0.1%程度に据え置くとともに、基金による資産買い入れによる金融緩和策について現状維持とすることを、全員一致で決定した。
景気の先行きについて「当面弱めに推移する」とし、10月末に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示された「当面横ばい圏内の動きにとどまる」から判断を引き下げた。
日銀会合に関する識者の見方は以下の通り。
●政治からの緩和アプローチが株価に追い風
<松井証券 シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏>
緩和見送りに驚きはなく、株式市場にもニュートラルだ。足元では安倍自民党総裁の発言が注目されているが、日銀法改正などがそのまま通ると考えている市場関係者は少なく、リップサービスとの見方が大勢だろう。ただ、今後は政治界から金融緩和へのアプローチが強まることは必至で、株式市場には上昇バイアスがかかりやすい。足元の国内景気は良くないが、株価はすでに新政策による景気回復シナリオを織り込み始めている。
●12月に10兆円程度の追加緩和を予想
<マネックス証券 チーフ・エコノミスト 村上 尚己氏>
今回の政策据え置きに違和感はない。12月の決定会合では10兆円程度の資産買い取り基金の増額を予想している。国内景気が悪化しているためで、総選挙を迎えるなか政治から金融緩和圧力が強まっているが、それとは関係なく、景気悪化に対応した追加緩和が実施されるとみている。
名目金利がゼロ近辺まで低下する中、金融緩和が実体経済に影響を与えるルートとしては、市場を通じてということになろう。日銀がプラスのインフレ率と雇用に責任を持つようにきちんと枠組みを整えれば、マーケットも好感するとみている。
●現状維持は織り込み済み、会見で市場の期待に水差せば円買いも
<シティバンク銀行 個人金融部門 シニアFXマーケットアナリスト 尾河真樹氏>
ドル/円は底堅い値動きになっているが、政策の現状維持は予想されていたことで織り込み済み。これ自体でドル/円が下がるというよりは、白川方明日銀総裁の会見でマーケットの期待に水を差すような発言があれば、円が買い戻される局面も出てくるかもしれない。先日来、自民党からアグレッシブな緩和を日銀に求める声が上がっているが、白川総裁がけん制球を投げてくるかどうかに注目している。
●自然体での政策判断
<みずほインベスターズ証券 チーフマーケットエコノミスト 落合昂二氏>
自民党サイドからは強い緩和要請が来ているが、自然体での政策判断になったと受け止めている。9月、10月と異例の2カ月連続で追加緩和に踏み切った効果を見守りたい姿勢だったと思われる。
金融政策の現状維持を全員一致で決定した点に関しては、緩和を主張して「反対票」を投じる審議委員も出てくる可能性があったので、意外な面はあった。
12月の会合は選挙後になるので、緩和への圧力がかかってくることが予想されるが、日銀として、余りに無茶な緩和要請については、コンセンサスは得られないとみている。
会合内容はほぼ予想通りなので、相場への影響はほとんどないと思うが、追加緩和を多少期待していた向きにとっては、失望する面があるかもしれない。ただ、それは少数派だろう。
●驚きなし、政治圧力への対応に注目
<みずほ証券・シニア債券ストラテジスト 早乙女輝美氏>
9月、10月と2カ月連続して追加緩和に踏み切ったこともあり、今回の金融政策決定会合で現行の金融政策維持は織り込み済み。声明文では、内需の弱さを強調しているが、10月末に公表した展望リポートで物価見通しや成長率を引き下げことから、想定されていたことであり、驚きはない。
市場には、12月の追加緩和期待がある。日銀が動くとすれば、米連邦準備理事会(FRB)の動きを見極めてからだろう。自民党の安倍総裁が日銀による建設国債の直接買入に言及するなど、政治サイドからの大胆な緩和圧力が強まっている。円安・株高が進行する市場の期待を残しながら、日銀が政治圧力にどう対応するのか、この後の白川日銀総裁の会見で見極めたい。
●近々、緩和圧力がかかってくる可能性
<三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>
10月に追加緩和をしたばかりなので、今回は予想通り現状維持となった。日銀がこの先、どこまで政府の要求を受けて動くかについては、新政権の枠組みを見ないと判断できないが、きのうの報道をみると、自公は緩和を進めていくというスタンスを結構出している。日銀総裁が代わるまで何もしないということはなさそうで、何らかの緩和圧力が近々かかってくる可能性がある。
12月米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加策が打ち出されれば、12月会合で日銀も資産買入等基金を増額してくる可能性がある。FOMCが緩和してドル安になれば、せっかくここまで円安に戻ってきたのに逆戻りだ。対抗措置として緩和することはあり得る。ただ、FOMCが12月11─12日、総選挙が16日、そして日銀会合が19─20日なので、スケジュール的には1月緩和の可能性もある。
●景気見通し過度に楽観的、12月にも追加緩和の公算
<クレディ・スイス証券 チーフエコノミスト 白川浩道氏>
野党などからの政治圧力が高まっており、次回12月会合では動かざるを得ないとみて様子見を決めた可能性がある。10月末に「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示した2012年度の実質成長率はプラス1.5%と極端に楽観的で、いずれ下方修正と追加緩和が必要。12月末は米連邦準備理事会(FRB)が短期国債を売って長期国債を買うオペレーション・ツイストが年末に終了するのに伴い金融緩和を強化する公算が大きく、日銀も動かざるをえないとみているだろう。
そもそも10月末時点での景気判断が過度に楽観的で追加緩和の規模も不十分だったため、小出しに景気判断の引き下げと追加緩和に迫られている格好だ。
自民総裁の日銀関連発言は政治介入=前原経財相 2012年11月20日
金融政策の現状維持を全員一致で決定=日銀 2012年11月20日
円が対ドルで7カ月ぶり安値、自民党総裁発言で=NY市場 2012年11月16日
ドル/円が急上昇、自民総裁発言で6カ月半ぶり高値 2012年11月15日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AJ01S20121120?sp=true
日銀:金融政策の現状維持を決定−次回会合で追加緩和の見方 (1)
11月20日(ブルームバーグ):日本銀行は20日、金融政策決定会合を開き、全員一致で政策の現状維持を決定した。当面既に表明している資産買い入れ等基金の買い入れを着実に進め、効果を見極める構えだ。
政策金利は0−0.1%に維持。資産買い入れ等基金のうち、金融資産買い入れを66兆円、固定金利方式の共通担保オペを25兆円の計91兆円に据え置いた。日銀は前月30日の決定会合で、「景気は弱含みとなっている」として情勢判断を下方修正。資産買い入れ等基金を80兆円から91兆円に拡大し、2カ月連続の金融緩和に踏み切った。
ブルームバーグ・ニュースが日銀ウオッチャー13人を対象に行った事前調査で、全員が今会合での現状維持を予想していた。もっとも、海外経済の減速で景気後退の可能性が高まっていることに加え、日銀に対する政治圧力が強まっていることを受けて、12月19、20日に開かれる次回会合で日銀が追加緩和に踏み切るとの見方が根強い。来月16日には衆院総選挙も予定される。
日銀は声明で「景気は弱含み」との判断を維持。輸出や鉱工業生産は「減少している」、設備投資は「緩やかな増加基調にあるものの、海外経済減速の影響などから製造業に弱めの動きがみられている」、個人消費は「底堅さを維持しているが、足元では乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う反動減がみられている」としている。
日中関係など「不確実性大きい」
先行きについては「当面弱めに推移するとみられるが、国内需要が全体としては底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく」と指摘。リスク要因として「日中関係の影響の広がりなど、日本経済をめぐる不確実性は引き続き大きい」としている。
共同通信によると、自民党の安倍晋三総裁は17日の講演で「やるべき公共投資をやり、建設国債を日銀に買ってもらうことで強制的にマネーが市場に出ていく」と主張。次期日銀総裁の人事については「インフレターゲットに賛成してくれる人を選んでいきたい」として、安倍氏が主張する2−3%の物価上昇率を目指すインフレ目標の導入で、協調できることが条件との見方を示した。
バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは19日のリポートで「中央銀行の購入を前提とした上で、政府が財政需要を明確に拡大させてゆくスタンスを持つということになると、これは定義上、マネタイゼーションの第一歩と言わざるを得ない」と指摘。今回の発言は「総選挙を控えたリップサービスの面は大きいと見られるものの、さすがに常識を超える内容である」という。
12月会合で高まる緩和観測
森田氏はその上で「市場としては、実際にこのような政策が実行に移されることを信じることはないかもしれないが、日銀の金融緩和、特に国債購入政策の拡大を一段と期待することにはなるだろう」という。メリルリンチ証券の吉川雅幸チーフエコノミストは19日のリポートで「さらなる金融緩和の必要性がさらに高まっており、12月19、20日の会合で追加緩和策が打ち出される可能性が高い」としている。
吉川氏は「7−9月の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比年率マイナス3.5%となり、日本経済が景気後退局面に入っている可能性が高まった」と指摘。日銀が10月30日の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した2012年度の成長見通し(委員の中央値、前年比プラス1.5%)は「早くも実現困難になったと判断される」とした上で、「景気が直近の日銀の想定と比較しても下振れていることは、政策委員にとって追加緩和を検討する材料となろう」という。
12月11、12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年末で期限が切れるツイストオペに代わる追加的な緩和策が打ち出されるとの見方が強い。SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジストは「日本の下振れリスクが顕在化する状況にあるならば、日銀は副作用を意識しつつも、時間を買う緩和政策を続けるべきだろう。後手に回るよりは、早めの対応が必要な局面だ」としている。
白川方明総裁が午後3時半に定例記者会見を行う。議事要旨は12月26日に公表される。
金融政策決定会合、金融経済月報等の予定は以下の通り。
会合開催 総裁会見 金融経済月報 議事要旨
12月19、20日 12月20日 12月21日 1月25日
1月21、22日 1月22日 1月23日 2月19日
2月13、14日 2月14日 2月15日 3月12日
3月6、7日 3月7日 3月8日 4月9日
4月3、4日 4月4日 4月5日 5月2日
4月26日 4月26日 − 5月27日
5月21、22日 5月22日 5月23日 6月14日
6月10、11日 6月11日 6月12日 未定
総裁会見は午後3時半。金融経済月報は午後2時、経済・物価情勢の展望(展望リポート)は4月26日。議事要旨は午前8時50分。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/11/20 12:42 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MDPQYA6JTSEC01.html
2012年11月20日
日本銀行
当面の金融政策運営について
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定
会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう
促す。
2.海外経済は、減速した状態が続いている。国際金融資本市場では、欧州債務問題
を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今
後の市場の展開には十分注意していく必要がある。
3.わが国の景気は、弱含みとなっている。輸出や鉱工業生産は、上述の海外経済の
状況などから、減少している。設備投資は、緩やかな増加基調にあるものの、海外
経済減速の影響などから製造業に弱めの動きがみられている。個人消費は、底堅さ
を維持しているが、足もとでは、乗用車購入において需要刺激策の一部終了に伴う
反動減がみられている。この間、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直
し傾向にある。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物
価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。
4.先行きのわが国経済についてみると、当面弱めに推移するとみられるが、国内需
要が全体としてみれば底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱して
いくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比
は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。
5.リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・
資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響の広がりな
ど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。金融・為替市場動向の景気・物価
への影響にも、引き続き注意が必要である。
6.日本銀行は、日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成
長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、
幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現さ
れていくものである。こうした認識のもとで、日本銀行は、金融機関による成長基
2
盤強化の取り組みおよび貸出の増加を支援するとともに、実質的なゼロ金利政策と
資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて、強力な金融緩和を間断なく推進して
いく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金
融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期して
いく方針である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k121120a.pdf
2012年11月20日
第37回 相場を牽引した主役プレーヤーを探る〜ドル円相場の今後は?【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】
野田首相の解散宣言を受け日本市場が動き始めました。財政の崖問題を懸念し米株が下落を続ける中で日経平均は大幅上昇、ドル円相場もあれほど頭が重かった80円の大台をあっさり突破、81円台へと円安ドル高が進行しました。市場はすでに次の政権がどのような政策を採るのかを模索しており、次期首相就任が濃厚とされる安倍・自民党総裁が「日銀と協調しての無制限の金融緩和実施」「日銀はゼロかマイナス金利にするぐらいにして貸出を高めてもらいたい」などと発言したことで株高、円安が加速したものと思われます。 動き出した日本市場、選挙が行われる12月16日までこの流れは継続するでしょうか。
79円台をウロウロしていたドル円相場が81円台に乗せるまでの上昇となったこの相場の買いの主役が誰(何処)だったのかを考えてみるのも今後を紐解くひとつのアプローチです。例えば本邦輸入企業が物を購入する際に円をドルに替えるドル買いが積極的に起こっていたのであれば、これは買い切りの玉で反対売買によるドル売りは起こりません。つまり、今後の下落圧力が極めて低い相場であると言えます。例えばヘッジファンドなどの短期筋が今回の主役であった場合、これは短期であり投機ですからそう遠くない先で反対売買による手仕舞いが起こります。つまり手仕舞いが起こる時にドル円相場には大きな下落圧力が生じます。大きな相場となった際に、その相場の主役を探ることで今後の反落の可能性を探ることもできるのです。 となると、短期筋の買いはどの程度あったのか気になりますがヘッジファンドなどの投機筋のポジション動向が確認できる最新のIMM通貨先物ポジションは11/16 に公表されていますが、これは11/13時点におけるポジション動向です。解散発言が飛び出したのは14日、安倍首相の発言が15日ということを考えると、現在確認できるIMMポジションにはまだ日本発の政局絡みのドル買い円売りポジションは反映されていません。短期筋がこの相場でどのようなポジションを取ったか(ドル円を買ったのか、売ったのか)を確認できるのは今週金曜以降ということになります。しかし、各取引所は日々の売買データを毎日公表しており、売買高や総取組高の推移は誰でも見ることができます。直近の投機筋によるドル円相場の総取組高推移を見てみると、11/06 時点では16.1 万枚だったものが11/12 には15.5 万枚へと減少(この時は80.20円近辺から79.30円近辺まで円高が進行)していたのですが、11/14から増加に転じており、最新の11/15 時点では16.8 万枚まで急増しています。日本政局絡みのニュースが出たところから総取組高が増加し、実際の相場も円安ドル高が進行していることから見て、短期筋がこの局面で円売りを仕掛けていることが推測できます。となると、短期筋がいつこのポジションを解消するのか、ということが焦点となってくるでしょう。ポジションを解消するということは、円を買い戻すということで、再び円が高くなるということです。もし、短期筋主導で円安が進行していただけであるならば、こうしたファンド勢の決算期に当たる11月末が近づくにつれて円買い戻しの動きが強まる可能性が高いと考えることもできますね。ただし、こうした短期筋以外のプレーヤーが参画して相場を形成しているのだとすれば、彼らが手仕舞に動いてもそれほど大きな円高圧力は生じません。まずは今週末に出るIMM通貨先物ポジションでドル円相場における短期筋のポジションがどの程度膨らんだかを確認したいところです。
12月16日までこの「安倍トレード」が継続するという見方も広がっていますが、19日(月)、アジア中銀などは外貨準備におけるドルを粛々と円に替えていたようです。米国においては減税措置の終了と強制歳出削減が重なる「財政の崖」問題に年内決着のメドが立っておらず、ドル売りとなるリスクを回避しようとする動きが出ているものと考えられます。日本の政局だけがこの相場の材料ではないこともお忘れなく!
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2012/11/20.html
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