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「強い日本」の主張復活、右傾化を象徴
ペセック
11月13日(ブルームバーグ):日本 のリーダーは、どうしても19世紀の明治維新の頃を忘れることができないようだ。
今は2012年で人口が約1億2600万人のこの島国を取り囲む世界の情勢は猛烈な勢いで変化している。明治維新は「富国強兵」というスローガンを掲げた。この過激なナショナリズムはその後、第2次世界大戦と手痛い敗戦へとつながる。
現在有力な次期首相候補である自由民主党の安倍晋三総裁の「強い日本、豊かな日本をつくっていく」という言葉は富国強兵とそっくりだ。私は安倍氏や自民党の真意を分かっているとは言わないが、このような見解は日本の政治の右傾化の象徴だとみている。アジアや2期目を迎えるオバマ米政権に対する意味合いは極めて大きい。
安倍氏は日本で最も重要な3人の政治家の1人。野田佳彦首相は3人に入らず、残る2人は石原慎太郎前東京都知事(80)と日本維新の会代表の橋下徹大阪市長(43)だ。石原、橋下両氏は世代の隔たりが大きいにもかかわらず、国の重要政策でほぼ一致している。ただ、安倍氏と同様、この二人もダイナミックでチャンスに満ち満ちている世界情勢の下で日本を外ではなく内に向かせようとしているという点で誤っている。
安倍氏(58)は石原氏と橋下氏のちょうど中間の世代に当たる。3人とも、ナショナリズムという観点から日本と他のアジア諸国との間に譲れない一線を示そうと躍起になっている。日本が直面する全ての問題で一致しているわけではなく、共通するのは中国が日本の影を薄くしつつある中で日本は対決姿勢を強める必要があるという立場だ。
太平洋の世紀
こうした右傾化を支持する日本人は多い。中国は「太平洋の世紀」とも言われる今世紀に、主役としての地位をまだ確立していない。領海問題ではフィリピンや韓国、ベトナムと対立している。
日本は20年余り続く景気停滞で失った影響力を取り戻そうと必死だ。オバマ大統領やキャメロン英首相、ブラジルのルセフ大統領がアジア訪問の際、東京に立ち寄らないことで日本はいら立つ。さらに、「ジャパニゼーション(日本化現象)」という言葉が、物価下落や政治的手詰まり状態の悪弊を説くエコノミストのキャッチフレーズとなった。
日本がやるべきことを正しく行っているのがあまり注目されないのも事実だ。識字率は極めて高く、世界有数の長寿国だ。さらに途上国を十分に支援し、世界平和を誓っている。
安倍氏と構造改革
日本がやるべきことは、世界平和への誓いの放棄ではない。また軍事力増強でも、一段と強硬で一方的な外交政策でもない。そして安倍氏の首相返り咲きでもない。2001−06年に首相を務めた小泉純一郎氏が推し進めた構造改革がなぜ頓挫したかご存知だろうか。小泉氏は日本の経済と政治の活性化を図る構造改革の具体案を策定したが、06年9月に次の首相の安倍氏に託した後、挫折した。
安倍氏は構造改革案をお蔵入りさせ、「美しい国、日本」をつくる路線を選んだ。そして行われたのが、愛国心を育む教育制度改革や防衛庁から防衛省への昇格だった。さらに安倍氏の多くの発言や行動が、日本に侵攻された過去を持つ中国や韓国をいら立たせた。安倍氏は結局、その仕事をこなす器でないことが分かった。潰瘍性大腸炎などもあり、安倍氏は在職期間約1年で辞任した。安倍氏の総裁は本当に自民党にとって最善の選択だろうか。
石原氏が首相候補として支持されているのも同様の理由による。尖閣諸島の買い取りを主張し、アジア諸国の怒りを買った同氏はその後、東京都知事を辞任。同氏の決断により、クリントン国務長官やパネッタ国防長官らオバマ政権の閣僚も軍事的な対立を懸念することとなった。
石原氏は安倍氏よりも無分別かもしれない。失言が多い石原氏は、橋下氏と連携する可能性がある。橋下氏は教職員の国歌斉唱時の起立義務化などを唱える。
日本は長期の景気停滞やデフレ、東日本大震災からの復興など多くの難題に直面している。
次期首相が誰になろうが、これらの課題に緊急に取り組む必要がある。残念ながら、有力な政治家3人はいずれも筋肉をつけるよりも動かす方に興味があるようだ。19世紀の観念の復活では、日本を今世紀中に繁栄に向かわせることはできないことを理解すべきだ。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック 氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Right Wing Rising in a Replay of the 19th Century: WilliamPesek(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:東証 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Greiff jgreiff@bloomberg.net
更新日時: 2012/11/13 15:04 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MDERN16S972B01.html
「景気後退下」で政治空白 補正・予算編成綱渡り 底割れ回避、時間との戦い
2012/11/17 1:49
日本経済新聞 電子版
減速を続ける日本経済は、実効性のある経済対策を欠いたまま衆院解散という政治空白に直面することになった。足元が景気後退局面ならば、戦後で初めて景気後退期の12月衆院選となる。海外経済の減速を受けた企業業績の悪化は、雇用・消費など内需の弱さに波及しつつある。景気の底割れリスクを回避できるかは時間との戦いになってきた。
省庁「ゼロ回答」
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「どのような政権になろうと、やはり来年の本予算編成までに補正予算が必要だ」。前原誠司経済財政相は16日午前の記者会見で、現政権が11月30日にまとめる経済対策では景気を支えきれない悔しさをにじませた。使える財源は最大でも9400億円超の予備費のみ。しかも各省庁は次期政権をにらみ、与党が実施した経済対策のヒアリングに軒並みゼロ回答を並べた。
景気はすでに後退局面入りが濃厚だ。政府が16日公表した11月の月例経済報告は景気の基調判断を「弱い動きとなっている」と4カ月連続で引き下げた。個別項目で下方修正したのは、個人消費や雇用、設備投資など、これまで底堅かった内需関連だ。政府は先行きの景気の下押しリスクにも新たに雇用を加えた。
中国の減速や反日デモ、エコカー補助金の終了と悪条件が重なった自動車産業を中心に、製造業は急速に勢いを失っている。企業の弱体化はじわりと雇用に波及し、有効求人倍率は9月に3年2カ月ぶりに悪化した。厳しい雇用環境が続けば、個人消費の減退を通じて企業業績が一段と下振れしかねない。
来年度に影響も
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民主、自民の二大政党はいずれも年明けに補正予算を組む姿勢を打ち出している。ただ、衆院選後も連立協議などで組閣がもたつけば、年明けの通常国会で補正予算をすぐに通せるかも予断を許さない。12月の衆院選により、例年は年末になる来年度の予算編成も、細川政権当時の1994年度予算以来19年ぶりの越年がほぼ確定した。成立が4月の予算執行に間に合わなければ、暫定予算でのスタートになる。
野村証券の尾畑秀一シニアエコノミストは、経済対策が公共投資などに反映されるには3〜6カ月かかると分析。野村証券は来年3月末までに真水(国・地方の実際の財政支出)で7000億円規模の補正予算を想定するが、これが実現しないと「来年4〜6月期の公共投資がガクンと落ちる」と指摘する。
経済の不調が来年度以降も続けば、2014年4月に予定する消費増税の実施判断にも影響しかねない。「底割れを防ぐための景気対策がなによりも重要」(SMBC日興証券の牧野潤一氏)との声が出ている。
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政府は景気の先行きについて「当面弱い動きが続いた後、再び景気回復へ向かう」との見通しを保っている。エコノミストの予想も来年1〜3月期から弱い基調ながらも回復に向かうとの見方が多い。ただ、このシナリオは米国や中国など外需の持ち直しが前提で、不確実性が高い。赤字国債発行法の成立でひとまず「財政の崖」を越えた日本経済だが、当面は財政対応の機動性を欠いたままでの綱渡りが続くことになる。
自民党、物価目標2% 経済再生本部の中間報告 主なポイント
自民党は16日、党本部で「日本経済再生本部」を開き、次期衆院選に向けて2%の物価上昇目標の設定や、円高是正のための「官民協調外債ファンド」創設などを盛り込んだ中間報告を取りまとめた。一日も早いデフレや円高からの脱却を目指す。中間報告の主なポイントは以下の通り。
▽基本方針:「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換
・「日本経済再生本部」を司令塔に「失われた国民所得50兆円奪還プロジェクト」を展開
・新しい成長戦略の立案・実施、金融緩和、規制改革、有効需要の創出など、あらゆる政策手段を導入して名目3%以上の経済成長を目指す
・「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指し、海外投資収益の国内還元を成長に結びつける新たな国際戦略を進める
・一日も早いデフレ・円高からの脱却に最優先で取り組む。明確な「物価目標(2%)」を設定し、達成に向け、日銀法の改正も含め政府・日銀の連携強化の仕組みを作る
・「官民協調外債ファンド」を創設し、基金が外債を購入するなど様々な方策を検討する
・今後2〜3年は景気の落ち込みと今後のリスクに対応できる弾力的な経済財政運営を準備する。新政権発足後、速やかに補正予算を編成し、来年度予算とあわせて切れ目のない経済対策を実行する
・全国レベルで生活インフラ、ライフラインを見直す。危機タイプ別の緊急時対応計画を策定する
▽「成長戦略の推進」と「ニッポン産業再興プラン」の実行
・健康寿命世界一やクリーンかつ経済的なエネルギー需給など世界に展開可能な戦略目標の設定
・介護事業の人員配置の柔軟化など即効性のある規制緩和策の早期導入
・「戦略製造業復活プラン」として先端設備投資を促す「産業競争力強化法(仮称)」の制定
・電力・エネルギー制約の克服
・税率20%台など世界水準の法人税の引き下げ
▽「国際経済戦略会議」の創設
・アジア経済の取り込みに向けて、日本の企業活動を金融、情報、制度面で支援
・戦略的な海外投資と経済連携協定
・世界企業の日本立地
〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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