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2012年11月15日 世相を斬る あいば達也
筆者の年内解散はあっても総選挙はあり得ない説が、木っ端微塵に吹き飛ばされた11月14日である。見出しの通り“なんもいえねぇ”わけだ。「野田おろし」の機先を制すると云う行動なのだろうが、この理に適わぬ野田の暴挙「自爆テロ解散」にひと言も加えないわけにもいかない(笑)。野田と云う男が、人智の及ばぬ世界で生きていたとは露知らずである。野田は民主党の衆議院議員から首班指名を受けた内閣総理大臣のはずだが、野田と云う男は11月14日に、民主党衆議院議員の多くの同志を路頭に迷わす道を敢えて選択した。国家国民の為に政治を行う事が肝心であり、その意味で政党などは便宜的にあるに過ぎない、と言い放ったのも同然なのである。
つまり、民主党と云う政党が選挙後どのような姿になろうとも、国家国民の為の政治をするのが内閣総理大臣の責務である、とでも言いたいのだろう。己がどのような経過で内閣総理大臣の地位を得たか、まったく無視しているわけだが、それは内閣総理大臣の地位・権力の濫用に他ならない。自らの思い込み持論である“消費増税法案”を実現する為なら、自らの地位を保証してくれた政党の生死など知った事では、と言っているのと同様である。己の個人的評判、「嘘つき」ではないと証明する為に、意地を張った情緒的解散でもある。日本の憲政史上あり得ない、政党政治の原則無視の権利濫用である。悪しき前例を政治史に刻み込んだ愚挙である。
今回の野田の「自爆テロ解散」は、政党政治の原理を覆し、政党の「政権公約・マニュフェスト」などCMのキャッチコピーと云う程度のものに貶めた事になる。12月16日には衆議院総選挙が行われるわけだが、主権者国民は、何を根拠に“政党”を選んでいいのか、“道しるべなき選挙”に直面する事となった。与党民主党がマニュフェストのほとんどを破棄し、知らない内に異なる政策を行う内閣総理大臣を生みだした事になる。つまり、主権者国民が選んだ政党は“性別”が入れ替わるくらいのマジナイを行っても構わないのが、日本の民主主義だと世界に知らせた事になる。
野田佳彦と云う男が、日本の政党政治を根底から目茶苦茶にしたと言っても差し支えないことになる。悪しき前例は、今後も繰り返されるに違いない。主権者国民が政党を選択する自由を奪われたのだ。醜い男の行動美学によって、醜い日本の民主主義が、一段とその醜さに磨きをかけたことになる。霞が関文学までなら、官僚言葉に気をつけると云う範囲であったが、総理大臣の言う言葉も霞が関文学並になり、東大話法で国民すべてを裏切る政治が蔓延するに違いない。これでは、すべての政治家の言葉には、大嘘が含まれると云う証明のようにもなってしまった。
そもそも、何処の政党が政権を握り、誰が次期総理になるかも判らない段階で、さも野田と安倍が次期総理候補のような言い草で、政権たらい回しのような話は、白昼堂々公然における、いかがわしき行為を見ている思いだった。山手線の電車内で、さぁ安倍さん裸のおつき合いをしましょうよ!と言われたようなものだ。流石の安倍も、“こんな事で良いの?”半信半疑で“それじゃあ、お言葉に甘えて”と云った按配の二人のやり取りだった。あり得ないだろう、どの政党が政権与党になるかも判らず、誰が総理になるかも判らない時点で、来年の本会議において“賛成するか”“成立を約束するか”などと云うのは、国政選挙そのものを愚弄している。つまり、国民など、マスメディアの流れ通りにしか行動しない人間達だから、両党で上手いことやりましょうと、公然ワ**ツに誘い込んでいるのが野田佳彦の姿である。
おそらく、次回の総選挙で生き残る民主党衆議院議員は5,60名になるだろう。それも野田は織り込み済みなのだろうが、松下政経塾及び50代前後以下だけの衆議院議員が生き残れば良い、と踏んでいるきらいがある。その意味では、今までに輪を掛けて、米国依存を顕著にし、市場原理主義に傾注しようと云う腹なのだろう。民主党から離党者が出る事も織り込み済みとなると、TPP参加を次期選挙の旗幟として掲げる事は身軽ではなくなる。最大政党の可能性が強い自民党との連携に壁が出来、それは拙いことになる。そこで、到底選挙の争点になりえない、選挙制度改革、定数削減を選挙の争点にする“ダマシ絵”を開示した。野田のイニシアチブで、如何にも次期衆議院選の焦点が定数削減に限定されたような印象は、とてつもないマヤカシである。
次期総選挙の争点は、(一)に中央集権から地方分権、地方主権の確立である。(二)に消費税の扱いや景気浮揚策の政策である。(三)に原子力発電を含むエネルギー問題である。選挙制度改革が不要とは言わないが、上述重大な政策課題に比べれば、極めて瑣末な問題であり、国民の関心も高くない。定数削減連用性の是非など、必ずしも国政選挙で問うべき問題ではない。そのような課題は、オマケのような課題である。これこそがダマシ絵と云う事だ。
野田はじめ松下政経塾中心の連中の腹は相当に黒い。民主党内にいる、不穏分子は、全員離党しても構わないと云う前提で、すべてが決められているようだ。離党者が増えれば、衆議院選挙で使える一人当たりの選挙資金も増える。落選確実のような議員には金は配らない。100人立候補で、70人当選で、上手くいったと悦に入るつもりなのだろう。その上、政権のキャスティングボードを握る事で、出来得れば与党として生き残ろうと云う算段だとみえてくる。まして腹黒いのは、自民が勝っても、維新系が勝っても、どちらにでも転べる政権公約を編み出そうと検討しているのだろう。彼らが野党になるのは「国民連合・オリーブの木」が政権を握った時だけと云うシナリオを描いているようだ。おそらく落選確実な泡沫候補にも、党職員の職を与え、年収800万くらいの身分保障もチラつかせていると云う事のようだ。
それにしても、筆者は14日の党首討論を聞いていて、野田と安倍の討論内容は、同じ党内の派閥間の談合が、国会で繰り広げられているのでは?と云う錯覚に陥った。到底、与野党の党首討論ではなかった。身内の馴れあい談合である。料亭政治が、ソックリそのまま、白昼の国会で行われたと云う白昼夢のような出来事だった。まぁいずれにせよ、闘いの幕は開いた。小沢の国民の生活が第一を中心とする「国民連合・オリーブの木」の戦闘も開始だ。国会議員の殆どが、野田の専制君主的暴挙に唖然とし、立ち尽くした一日だったが、今日からは平常心を取り戻し、夫々がそれぞれの政治家として、イキザマが試される時を迎えたと云う事になる。それにしても、疲れる一日であった(笑)。
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