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[FT]尖閣は序の口か 日米中が踏み込む危険域
2012/11/14 7:00
(2012年11月13日付英フィナンシャル・タイムズ紙)
この1週間は世界の2大大国の政治を比較できる、めったにない機会だった。中国で開催中の共産党大会の不透明な堅苦しさと、米大統領選挙のテレビ向けの大騒ぎの落差は、ほとんど喜劇だ。
■尖閣問題を背景に高まる緊張
ワシントンと北京の政治風土は全くの別物だ。しかし、両国の運命はますます絡み合いつつあり、オバマ大統領の2期目は興味深いだけでなく物騒なものになりそうだ。
オバマ大統領が2期目を終えてから2〜3年もすると、米国は世界最大の経済大国の座を中国に譲るだろう。米中の力の差は縮小に向かっており、既に両国間に緊張を生みつつある。中国は自己主張を強め、米国は反発している。誤算と衝突の危険は次第に高まっている。
両国で進む政治の変化の背景には、東シナ海に浮かぶ無人島の帰属を巡る日中の激しい対立がある。中国も日本もけんか腰で、国家主義者の声援を追い風に近海に艦船を派遣している。
米国は日本への安全保障を通じて、この対立に巻き込まれている。米政府は、日米安全保障条約が問題の島々にも適用されると明言しているからだ。先日も元政府高官4人を北京に派遣し、このメッセージを強調した。先週は日米合同の軍事演習に約4万4000人が参加した。
■「海洋強国」目指す中国
世界の3大経済大国を巻き込んだ領土問題は、それだけで十分に危険だ。中国と他の隣国の間で高まる緊張とパターンが同じとなれば、なおさら心配になる。かつてトウ小平氏は、経済発展に専念して紛争を回避するよう祖国に助言した。この優れた戦略のおかげで、中国はほぼ30年間、外国の大きな妨害を受けずに急速な経済成長を謳歌できた。
しかし、状況はここ2〜3年で変わったようだ。中国は長年の領土問題で以前より強硬になり、日本だけでなくインド、ベトナム、フィリピンなどが警戒を強めている。
背景には、中国政府内で軍部の発言力が増し、その分、経済官僚や外交官の影響力が薄れたという説がある。共産党総書記の座を近々降りる胡錦濤氏は党大会で、中国は海洋強国になるべきだと明言した。その動きは、すでに始まっている。中国は同国初の空母を配備し、第2、第3の空母導入も目指している。太平洋における米国の軍事力を脅かすミサイル攻撃や人工衛星攻撃の設備も整えつつある。
■過ちを犯しかねない各国
問題は、習近平氏が率いる新世代の指導部が、強気の方針をさらに推し進めるかどうかだ。実際にそうなる可能性は高い。新世代の指導者は、中国に急激な経済発展以外の経験がない時代に、政治家として成熟した。イラクとアフガニスタンにおける米国の問題や、2008年の米金融危機などからも強い印象を受けている。彼らが中国の力を過大評価し、かつ米国の力を過小評価するリスクがあることは明らかだ。
新たな最高指導部の背後には、度を超した国家主義という「刺激物」で育った、さらに若い世代がいる。中国政府は天安門事件の後、愛国心の復活と、日本をはじめ諸外国から受けた屈辱への報復に力点を置く新たな国家像――学校で徹底的に教え込まれる――に自らの正当性を託してきた。
残念なことに、過ちを犯しかねないのは中国だけではない。米国と日本もミスをする恐れがある。1930〜1940年代に帝国陸軍が犯した罪への日本の態度は、今も腹が立つほど曖昧だ。中国との論争で火遊びを楽しむ国家主義者もいる。
米国は、大々的に打ち出したオバマ大統領の「アジアへの旋回」は、中国の台頭を阻止する動きを体よく言い換えただけという印象をぬぐう努力を惜しんできた。明らかに米政権は、中国の隣国が抱く不安を利用してアジアで同盟国のネットワークを強化しようとしている。緊縮財政の時代に、この戦略の魅力は明らかだ。しかしその結果、米国はアジアの同盟国が抱える領有権問題の人質にされる恐れがある。
■誤算が引き起こす悲劇
悲観的な理論家の間では、中国の台頭を1914年以前のドイツと重ねる見立てが、ずいぶん前から流行していた。その根拠は、台頭する強国の大半は既存の大国と衝突することだ。アジアにおける現在の危機には、より明確な類似点がある。第1次世界大戦前の数年間、英国とドイツは念入りに同盟国のネットワークを築いて互いを抑止しようとした。だが1914年8月の危機では、それまでの意図や想定に反して、両国は条約の義務に従わざるを得なかった。
我々が知る限り、米中の新たな首脳陣が共に衝突を避ける決意を固めているのは良い知らせだ。悪い知らせは、誤算のリスクと危険性が高まりつつあることだ。
By Gideon Rachman
(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM13065_T11C12A1000000/?dg=1
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