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[風見鶏]選挙は空中戦か地上戦か
編集委員 大石格
「握手した数しか票は出ない」。自民党の石破茂幹事長が衆院選の公認候補にこう説いている。
民主党政権への幻滅から次の選挙は自民楽勝との下馬評だが、有権者の既成政党全般への失望感を指摘する声もある。もっと地道に選挙区を回れ、と言いたくなる気持ちはよく分かる。
ちなみに冒頭の言葉は石破氏の専売特許ではない。同氏の父も師事した田中角栄元首相の口癖だ。
現場はどうなっているのか。10月に衆院補欠選挙があった鹿児島3区。投票日の1週間前の日曜、自民公認の宮路和明氏は薩摩川内市の商店街にいた。「よろしく、よろしく」。15分ほどでおよそ500人の手を握った。
この様子をみて、やはり勝敗を決するのは地上戦だよ、と書けば選挙通らしくみえるだろうが、事情はそう単純ではない。
同市の経済は原発頼み。再稼働のめどが立たず、商店街は空き店舗が目立つ。「定期点検のたびに技術者がたくさん来てホテルは満室、飲み屋は繁盛。原発さえ動けば、年に8カ月働いてあとは遊んで暮らせるんだが」。商店主が嘆いた。
そんな寂れた通りが押すな押すなの人出になったのはひとえに人寄せパンダの力だ。その名は小泉進次郎青年局長。県内4カ所でマイクを握ったが、「そこの薩摩おごじょ」と呼び掛ける軽妙な語り口に、どこの会場も黄色いというよりかなり野太い女性たちの歓声がわき上がった。
選対幹部に聞くと「街宣はにぎやかし。本番はミニ集会」という。ただ、高齢化が進み、都市部以外でも人集めは昔ほど簡単ではないそうだ。人気者の集客力なしには握手しようにも相手がいない。
結局、宮路氏の得票は約7万票だった。投票率が低かったとはいえ、2回続けて10万票を超えていたころの面影はない。民主推薦候補に惜敗率91%まで追い上げられた。
分かったのは、民主党はダメだが、自民党への追い風もない、ということだ。
国が広く、テレビやラジオでの広告の質と量で優劣が決まるとされる米国はどうだろうか。大統領選直前の週末、オハイオ州を訪ねた。オバマ陣営が選対費の2割をこの1州に注ぎ込んだ激戦地だ。
ラジオではオバマ大統領を推すパウエル元国務長官の応援の弁が1時間に3回くらいの頻度で放送されていた。やはり空中戦か、と思ったそのとき、アクロンの街角でにぎやかにジャズ演奏を流しながら通りがかりの人を呼び込むイベントを見つけた。
入るとサンドイッチもハンバーガーも取り放題。そして行列の最後に看板があり、そこにこう書かれていた。「投票所はこの先」。飲み食いで釣って隣の期日前投票所に送り込む。主催は民主党だった。
運動員のジェームズさんによると、州内に同じような拠点を約120カ所設けたそうだ。駐車場では黒人青年が携帯電話に怒鳴っている。「だから通りの先にあと3人待ってるから」。聞くと友人の車でスラム街から住民をピストン輸送しているのだった。
ユダヤ人からヒスパニック(中南米系)、黒人、アジア系まで少数派の連合体である民主党が重視するのはゲット・アウト・ザ・ボートと称する投票率引き上げ運動。こうした人々を投票所まで来させることができれば必ず自陣営の1票になるからだ。
寒空の飲食接待が効いて同州で民主党は共和党を得票率1ポイント差で振り切った。
日本も「近いうち」に選挙がある。さすがという選挙戦をみたいものだ。
[日経新聞11月11日朝刊P.2]
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