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石原慎太郎氏が、10月下旬に東京都知事を辞職し新党を結成する事を表明した。
来るべき次期総選挙では、自民党が比較第一党となり民主党が大敗するだろう事はほぼ既定路線だが、石原新党の参入により、乱立する小党間でどう第3極が形成され、どんな枠組みの連立政権(自民党大勝が無い限り)が出来上がるか一層混沌の度合いを増してきた。
内政、外交で重要課題は山積しているが、来るべき総選挙で争点となるのは、差別化の容易さ等の点で、消費税増税、原発政策、TPP参加問題の3点となり、これらを巡って総選挙前、総選挙後の合従連衡が行われると思われる。
このため、政党間でより明確で深く激しい議論が行われる必要があり、その一助となるべく、以下に筆者の考えを記す。
◆消費税増税◆
消費税増税は、デフレ脱却と無駄削減を果たすまでは行うべきではない。
GDP名目4%、実質2%成長を最低2年以上の連続達成し、成長構造を造り日本経済を軌道に乗せると共に、行政改革により冗費を削り、それでも足りない分の増税について、国民に信を問うべきである。
会社経営に例えれば、赤字続きの時に経営者が先ず行うべきは、営業努力と新規製品開発等で付加価値を高め売上数量増を図ると共に、冗費を削る事である。
この事無しに値上げを行えば、客離れによって売上高は更に落ち込むし、もし営業努力や新規製品開発と並行して行っても、安易な値上げは企業内の努力を妨げ目標の未達に終わるだろう。
これを国家経営に当て嵌めれば、経済政策によって経済成長を果たすと共に、冗費を削り、それでもし足りない分が有れば、初めて増税を国民に問うべきである。
よく、国家経営と会社経営は違うと言われるが、GDP(国内総生産)は民間会社の利益や個人の収入、その他を集計したものなのだから、基本は同じである。
経団連会長である住友化学の米倉会長はじめ海外展開する大企業経営者は消費税増税に賛成だが、これは輸出戻し税によって消費税が実質免除となっているため、法人税増税の回避とバーターでそうしているし、マスコミが賛成するのは、記者クラブ制度と放送電波割り当て等で官僚と一蓮托生の既得権側だからである。
政府・日銀が行うべき事は、特別会計見直し等の行政改革により冗費を削ると共に、国民と国際社会に向かってデフレ脱却の説得力ある具体的なシナリオを示し実行する事である。
国民に嘘をついてマニフェストに無い消費増税法案を通した民主党は論外として、自民党も、増税論者の石破茂氏を破った安倍晋三氏が総裁選で「デフレ脱却しない限り消費増税はしない」と明言しその方向は天晴れだが、デフレ脱却を増税の必要条件としない消費増税法案には賛成しているのだから、その担保と覚悟は薄弱である。
また、日本維新の会の橋下徹代表は、消費税を地方税化した上での11%への増税という曲球を打ち出したが、政府民主党の打ち出した消費増税に賛成する石原慎太郎氏との連携を考えたものであり、消費増税分に見合う法人税・所得税の減税を謳っていない事から見ても、基本的にトータルな増税論者であり実質的に地方税化する前の増税も妥協して容認すると見てよいだろう。
官僚組織の餌と天下りの原資に化ける安易な消費増税に結果的に賛成するのなら、既に彼らは官僚組織の掌の上にあり、幾ら勇ましく「官僚支配からの脱却」を謳っても、単なるお題目に帰する。
◆原発政策◆
信無くば立たず、原発政策もまた然り。
少なくとも即時原発全廃が現実的でない以上、先ず福島第一原発事故の徹底した反省に基づき具体的な安全運営体制を確立する事が不可欠である。
また、今回の事故で明らかになったように電力会社は過酷事故時の当事者能力と賠償能力が無いのだから、原発は全て国営化すべきだろう。
その上で、今後の原発政策は、脱原発にせよ、原発維持にせよ、それぞれのメリット・デメリットを可能な限り数値化し、比較考量出来るシナリオを各党が掲げ、国民投票的な総選挙(もしくは国民投票そのもの)で、決めるべきである。
そのためには、現時点で原発政策の方向を決定するには時期尚早であり、数年掛けてでも民間を含めて国を挙げて様々な試算を行い、議論を煮詰めるべきである。
福島第一原発事故は、地震・津波の天災に、橋本政権での省庁改編による検査監督部門と推進部門の経産省傘下への同居、津波規模の想定の甘さ、発電機設置位置の設計ミス、形式的で不十分な防災訓練、指揮命令系統の混乱等が加わった人災である。
原子力規制委員会が新設され、新安全基準の制定が来夏に予定されており、一応の対策は為されようとしているが、原子力村の体質自体が革まなければ事故は繰り返される。
このためには、政治家、原子力委員会、旧原子力安全委員会、経済産業省、資源エネルギー庁、旧原子力安全・保安院、東電の関係者の処罰が必要である。
「想定外」であったと言う詭弁と責任体制が分散し曖昧であった事を持って誰も処罰されないのであれば、絶対に事故再発は防げまい。
原発は、どんなに安全策を講じても事故の確率はゼロとはならない。
その意味で、事故の確率、被害規模を原発維持のデメリットとして見積もって置かなければならない。
また、核燃料廃棄物の処理方法の確立も不可欠である。
一方、原発をゼロとすると、エネルギーコスト、エネルギー安全保障、原発輸出、潜在的核抑止力等の面で日本社会に大きな負荷となる。
太陽光、風力、地熱、潮力、波力、生物油脂等の新エネルギー及びメタンハイドレード、シェールガス等による代替効果と、その開発・輸出による経済効果のプラス面も含め、脱原発のメリットとデメリットを総体で数値化する必要がある。
国民の生活が第一の小沢一郎代表は、ドイツの例を参考に10年後の原発全廃を謳っているが、日本はフランス等の隣国から電力購入をしているドイツと事情が違い過ぎる。
(仮に日本海を挟んで送電用の海底ケーブルを通しても、韓国、中国から電力購入する事になり、ある程度は備蓄が出来る化石燃料と比べても安全保障上極めて危うい。)
日本維新の会の「脱原発政策」は、原発維持の石原新党との連携も手伝って、曖昧度を更に増している。
結果として、原発政策を「今すぐ決めない」自民党が一番現実的だが、ただ放って置いて単なるこれまでの継続に終わる可能性も高いので国民の監視が必要だ。
◆TPP参加問題◆
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加は、基礎的食糧生産の適用除外の明記と、一方の意向だけでいきなり国際機関に提訴・決着させるISDS(投資家対国家の紛争解決)条項の削除を前提条件とすべきである。
TPPは、国務・国防総省の考える中国包囲網としての目的と、商務省・経済界の考える本来の自由貿易推進の目的、及び日本収奪目的の3つの顔を持つ。
現下の中国に尖閣諸島、進んでは沖縄が狙われている状況に於いて、中国を牽制する包囲網の構築は日本にとって不可欠である。
一方、自由貿易を促進するのは基本的には国際社会のあるべき方向ながら、基礎的食糧は特に有事の戦略物資であり、食糧安保の観点から、国際的に「食糧自給権」の対象としてこれを定義し、自由貿易の枠外とすべきである。
また、TPPが謳う、いわゆる「非関税障壁」撤廃は、文化や社会構造に根差したものもあるため、時間を掛けて交渉すべきものであり、ISDS条項で一方の意向だけでいきなり国際機関に提訴・決着させるのは乱暴過ぎる。
以上を総合し、TPP参加問題は、米国務省・国防総省系に舞台裏で働きかけ、前掲の前提条件付きで交渉すべきである。
なお、海外からファイナンスしなければならない米国の財政状況は日本以上に深刻であり、2期目のオバマ政権が兵力をヨーロッパ・中東から太平洋・アジアにシフトした上で総量ベースで削減に入る事は、ほぼ規定路線だ。
どの国、国家間でも経済・財政と軍事・防衛は地下茎で繋がっており、日本が自主防衛を高めて米国の防衛負担を軽くする事が、元より日本の自立を促すと共に、TPP交渉でも有利に働くだろう。
「バトルシップ」という今春公開されたハリウッド映画があった。
米海軍と日本の海上自衛隊が共同して、宇宙からの侵略者に立ち向かうという娯楽アクションものだが、「日本も海軍力を増強して共に中国の拡張主義に立ち向かおう」と言う隠れたメッセージは明白で、辿って行けば恐らく国防総省筋から制作費が入っていたのだろう。
竹中平蔵氏が軍師として経済政策の全てを仕切る日本維新の会とみんなの党は、ほぼ無条件でのTPP参加まっしぐらであり、その面では外国との交渉能力が無い民主党と並んで、国益を損なうだろう。
以上、消費税増税、原発政策、TPP参加問題だけ見ても、各党の主張は捩れており、総選挙後すんなり連立政権が組めるか、また組んだ後に回るのか甚だ不明な状況下、拙文が参考になれば幸いである。
なお、以下に各党の現状での主要な政策についてのスタンスを、筆者なりに纏めたものを附す。(文書で表明しているもの以外に、幹部の言動等からの推測を含む)
◆政党・主要政策関連図(仮)◆
自 民 公 石 維 生 社
消費税増税 △ ○ ○ ○ △ × ×
TPP推進 △ ○ △ × ○ × ×
脱原発 × △ × × ○ ○ ○
憲法改正 ○ △ △ ○ ○ ○ ×
自主防衛推進 ○ × × ○ ○ ○ ×
地方分権 ○ △ △ ○ ○ ○ △
成長重視 ○ × △ ? ○ ○ ×
公共事業 ○ △ △ ○ △ ○ ×
行政改革 △ × △ ○ ○ ○ ×
規制緩和 △ × × ○ ○ ○ ×
年金積立制 △ × × ? ○ △ ×
日銀法改正 ○ × △ ? ○ ○ ?
道州制 ○ △ △ ○ ○ △ ×
首相公選制 × × × ○ ○ × ×
※自民、民主、公明、石原新党、維新みんな、生活、社民共産の順
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