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2012年11月10日 世相を斬る あいば達也
筆者にも本業と云うものがあるので、毎日馬鹿な政治屋とマスメディアが繰り広げる政局コラムを書くのも大変である。しばらくは、書くべきテーマが見えた時に、シコシコと書かせて貰う事にする。“あいば”嫌いにとっては朗報だろう(笑)。今回の“週の終りに考える”も、そのような状況から考えついたシリーズものと思っていただきたい。
さて9日金曜日になって、野田佳彦の「近いうち解散」が差し迫ってきたと云う論調がマスメディアに蔓延している。昨日の拙コラム「財務省の年内解散総選挙誘導ご説明の暗躍 何故そこまで必死なのか」で言及したように、財務省は消費増税を確実に実行できる道を探って、野党自公の解散追求を煽り立てているのは間違いのない事実。マスメディアも負けずに財務省追随に血道を上げ、時事・読売などは12月16日都知事選とのW選が決定したような報道に終始している。今や誤報の権化・読売新聞のことだ、再び誤報と云うことになるのだろう。朝日新聞は以下のように、自公が太陽政策で野田の「近いうち解散」の履行を迫っているが、民主党内が纏まるか疑義も挟んだ論調の報道をしている。
≪ TPP交渉、参加の意向 首相、年内解散も視野
野田佳彦首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加する意向を固めた。オバマ米大統領の再選を受け、日米関係を強める狙い。TPP参加に慎重な自民党との対立軸が鮮明になるとして衆院選での争点化を求める声も閣内にあり、首相は参加を表明したうえで、年内も含め解散時期を探る。ただ民主党内には反対論が根強く、離党者が続出する可能性もある。 野田首相は昨年11月、TPPの交渉参加に向けて関係国との協議入りを表明したが、農業など国内産業への悪影響を心配する党内の反発が強く、正式な参加表明は先送りした。だが尖閣諸島をめぐって中国との対立が深刻化するなかで、首相は米国との同盟を深化させるにはTPP交渉への参加を表明し、連携を強める必要があると判断した。
枝野幸男経済産業相は9日の記者会見で、TPPについて「次の選挙までに結論を出すべきだ」と述べ、解散前に参加を表明すべきだと主張。前原誠司国家戦略相も同日の会見で「TPPの交渉にも参加すべきだ。民主党が高らかにマニフェストに掲げて、選挙後の連携の一つの大きな軸にもなり得る」と述べた。
首相は衆院解散に向け、(1)赤字国債を発行する特例公債法案(2)「一票の格差」是正のための衆院選挙制度改革法案(3)社会保障国民会議の設置―― の三つを判断材料にすると表明。自民、公明両党は特例公債法案を15日に衆院本会議で採決する日程に応じるなど、協力姿勢に傾いている。藤村修官房長官は9日の会見で、特例公債法案の成立を「(解散の)環境整備の一つであることは確かだ」と明言。首相はこれらの課題の進捗(しんちょく)状況を見極めながら、TPP交渉への参加表明に踏み切りたい考えだ。
20日の東アジアサミットの際に日米首脳会談を調整しているが、政権内には「協議をまとめていく一定の時間は必要」(玄葉光一郎外相)との声があり、参加表明を踏まえた解散は年末か年明けを想定する。
一方、民主党幹部は「参加表明なら選挙の前に党が割れる」としており、首相が参加を表明すれば離党者が続いて内閣不信任決議案の可決も現実味を帯びてくる。党内にくすぶる首相の退陣論に拍車がかかる可能性もあり、党執行部の一人は9日、「TPPで解散なんてあるわけない」と語った。輿石東幹事長も年内解散について「日程的にも物理的にも難しい」と否定的な姿勢を見せており、首相が思惑通り参加表明に踏み切れるかは不透明だ。≫(朝日新聞デジタル)
≪「年内解散」勢いづく自公 首相に協力で環境整備後押し
野田佳彦首相が衆院解散を判断する環境が整いだしたことで、年内解散を求めてきた自民、公明両党は勢いづいている。 「解散への流れというものが不可逆的になりつつある、との印象だ」 自民党の石破茂幹事長は9日の記者会見で、早期解散の実現に自信を見せた。一方、首相が環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加の意向を固めたことについては「交渉がかなり進捗(しんちょく)した段階で表明することは、国益にかなうのか」とさっそく批判した。
自公両党は8日に特例公債法案の15日衆院通過を容認。国政選挙の一票の格差是正や社会保障国民会議の設置といった解散の判断条件にも協力することで、 首相が解散できる環境を整えようという狙いだ。公明党の山口那津男代表は8日夜のBS11の番組で「野田首相が国民と約束した『近いうちに』が歩み出した」と手応えを示す。ただ、自民党内には「民主党の輿石東幹事長が、首相の解散をなんとしても阻止しようとしている」(閣僚経験者)という見方も出ている。
一方、同じ野党でも思惑には差がある。みんなの党の渡辺喜美代表は9日の記者会見で、「解散の前に補正予算をやるべきだ。きちんと国益を考えた国家経営をやれ」と述べ、早期解散論を牽制(けんせい)。第三極結集のため時間を稼ぎたい考えだ。
選挙基盤の弱い当選1回議員を多く抱える国民の生活が第一の東祥三幹事長も9日のBS日テレの番組収録で「こういう厳しい経済状況、年末年始を迎える時になぜそんなに急ぐのか。大義がない」と語った。≫(朝日新聞デジタル)
この二本の記事で気づいた事だが、経産省は財務省の尻馬にチャッカリ乗っかり、TPPを持ちだしてきた。オバマが再選されたからTPPだと云う論法のようだが、米国の大統領が永遠にオバマであるわけでもなく、理屈など殆どないに等しい屁理屈だ。TPPが如何に衰退の兆しが明確な米国の救済協定であるかは歴然、死に体政権が許諾する根拠などゼロである。まぁ、徹底的隷米依存に立脚する前原が維新の橋下・竹中ラインに呼応する発言をするのは考えられることであり、彼らは米国への貢物に熨斗をつけようと必死にもがいているだけだろう。
橋下にせよ、石原にせよ、右翼のような顔をした米国依存売国奴であることは、全体の脈絡を観察していれば、自ずと見えてくる解答である。野田にしても米国依存症の患者であり、最後の最後まで米国の望むべき日本と云う国造りに邁進しようと云うのだから売国奴だ。米国及び国際金融資本が望むところの、独立国としての最後の砦、関税撤廃と云う、国の原風景を根本から破壊する行為に加担しようと云うのだか、売国行為と言わず何と言えば良いのかである。サブプライムローンで、あれだけの悲劇を蒙ったにも関わらず、再び地獄の釜を開けようと云うのだから狂気である。丁度、福島原発事故の悲劇が治まらない内から、原発再稼働に邁進する世界の笑いモノの連鎖である。今さら、市場原理主義など笑止の沙汰である。
ところで、民主党は年内に解散総選挙をして、何か得るものがあるのだろうか?問題はこの一点で、解散が年内かどうかを判断するのが、冷静に考えようとする場合の原点である。色々と考えてみるのだが、得になるものが見当たらない。TPP交渉参加を解散総選挙の争点とする為に、オバマに野田が表明するのは勝手だろう。TPPが選挙の争点になると、参加表明が現民主党に有利に働くか、不利に働くか、五分五分であり、わざわざ争点として引っ張り出すテーマとは思えない。徹底した隷米首相であったと歴史に刻まれたいのなら、野田が行うことはあり得るだろうが、ただそれだけのことで、民主党に有利な条件が増えるわけでもない。
脱原発とか、消費増税法案凍結とか、間違いなく票に繋がる課題ではないのである。TPPは相打ちの議題になるに過ぎない。維新との選挙協力にはお誂え向きだが、いやしくも過半数を未だ保っている与党民主党が、そんな野蛮な賭けに出る理由は皆無だ。勿論、野田が内閣総理大臣のままで、民主党への支持率が増えることはないだろうが、10%台に落ちた支持率がこれ以上急激に下がる事も考えにくい。野田が個人的に「嘘つき」でない事を証明するつもりで解散を打つと云う話など、馬鹿げて論評に値しない。「嘘つき」ならシロアリ退治演説で証明済み、定説なのだから、いまさら何をか況やだ。民主党が支持率を一瞬でも上昇させる可能性があるとすれば、野田の辞任である。ロシアとの北方領土交渉前進のサプライズは、体調不良のプーチンとの会談が来年になって時点で、あまり期待は出来なくなった。やはり手立ては、野田の辞任だろう。
解散をすると云う事は、250人近い民主党衆議院議員の首を切ることであり、代議士を無職に追いやることである。ことは軽々に言うほど簡単な話ではない。まして、総選挙の結果、永田町に戻り議員バッチをつけられるのが50人程度と云うのだから、200人近くの議員を無職にする選択なのである。故永田議員を見捨てた野田のことだから、200人を無職に追いやるのも平気かもしれないが、選挙に弱い本人だって、200人の一人になる可能性がある。政治家を辞めて、米国にでも移住する気なら、そう云う選択もあるだろうが、ケイマン諸島にクスネタ金を隠すような芸当もしていないから、それもなさそうだ(笑)。
現在の「嘘つき」の汚名挽回が解散の根拠であるなら、来週から民主党内で起きる出来事は想像がつく。本当にマスメディアが騒ぎ立てるほどに、野田にそのような動きがあるのであれば、一斉に「野田おろし」の機運が生まれるだろう。臨時国会運営どころの話ではなく、如何に、どの時点で、民主党代表を解任するかと云う動きが生まれるだろう。反TPPの議員団、反消費税の議員団、脱原発の議員団。総合計すれば民主党衆参議員の過半数に達する。プノンペンで行われるASEAN首脳会議出席が11月17〜20日、野田首相の不在は17、18、19、20日だが、その前後が「野田解任Xデー」なんて事も皆無ではない。そんな動きが、チョッとでも表沙汰になれば、野田はASEAN出席を見合わせ、政権死守に必死こくのかもしれない(笑)。
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