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米国版「決められない政治」  田中良紹の「国会探検」 
http://www.asyura2.com/12/senkyo138/msg/542.html
投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 11 月 10 日 00:35:01: igsppGRN/E9PQ
 

米国版「決められない政治」
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/11/post_323.html#more
2012年11月 9日 田中良紹の「国会探検」

 アメリカ大統領選挙は接戦を制してオバマ大統領が再選された。現職大統領の再選は通常の事だが、しかしオバマの場合には4年前の期待値が高すぎ、それに足を取られて再選が危ぶまれた。「チェンジ」に期待した国民が期待した分失望を味わったのである。


 それでもオバマが勝利できたのは共和党に大きな問題があったと私は思う。かつての共和党は予備選挙の段階までは宗教保守派の熱烈な選挙運動を取り込んで利用したが、一般の国民を相手にする本選挙ではイデオロギーを抑え中道に寄る姿勢を鮮明にした。

 ところが民主党のクリントン大統領が「ニュー・デモクラット」と称してリベラル色を抑え、共和党の主張である「小さな政府」を標榜した頃から、共和党はさらに右にシフトした。「伝統的価値観」に基いて中絶禁止や同性婚の反対を強調し、ティーパーティなど草の根運動を通してオバマの政策を「社会主義」と攻撃した。

しかし保守イデオロギーを出し過ぎれば一般の国民には受け入れられない。共和党の大統領候補に選ばれたのは穏健な中道派のロムニーであった。それでも共和党は宗教保守派にも一定の配慮をしなければ大統領選挙を戦えない。それが民主党支持者を固く結束させたオバマ陣営の戦術に敗れた。

 2000年のブッシュ対ゴアの選挙では、共和党のブッシュ陣営が「マイノリティに優しいブッシュ」という演出を凝らし、有権者人口の1割を占めるヒスパニックを取り込もうとした。しかし今回の選挙では右派の主張を取り入れたロムニーが移民に厳しい立場をとり、ヒスパニックはオバマを支持する事になった。白人人口が減少しマイノリティが増大するアメリカで、共和党は路線を検証し直す必要がある。

 2期目の大統領は再選がないので「レイムダック(死に体)」と言われる。しかし失うものもないので思い切った事をやれる一面もある。オバマは4年後に共和党に政権を奪還されないような政権運営を心がけるだろうが、その際カギとなるのは共和党が過半数を制した連邦議会下院との「ねじれ」である。

2年前の中間選挙で上院と下院に「ねじれ」が生まれて以来、議会で法案が成立したのは提出された法案のわずか2%だという。「決められない政治」がアメリカにも起きている。もっともアメリカ議会に提出される法案はほとんどが議員立法で、日本のように政府提出の法案を審議する国会と単純に比較は出来ない。しかし政治の機能不全は日本だけではないのである。

アメリカでは間もなく減税策が失効し、予算も強制削減される「財政の崖」が迫っている。オバマ大統領はまずこの問題に取り組まなければならない。「ねじれ」をどう打開するのかが大統領に求められ、一方の共和党も4年後の政権奪回を目指して「ねじれ」を利用する事が得策なのかどうかを問われる。

 アメリカ政治の「ねじれ」を巡る攻防は、同じ問題を抱える日本政治にとっても参考になる。ただそれを比較するためには、日本とアメリカの政治の仕組みの違いを若干知らなければならない。それを少し説明する。

 アメリカでは上院と下院の「ねじれ」と、上下両院はねじれなくとも、大統領と議会が「ねじれ」る場合とがある。国民のバランス感覚が選挙に現れ、一方だけが強くなり過ぎないようにするため「ねじれ」は起こる。そして「ねじれ」がない事の方が珍しい。しかし政治が機能しなくなれば国民生活に不利益が生じる。

 そこでアメリカでは大統領に「伝家の宝刀」とも言える「拒否権」が与えられる。議会の決定を大統領は拒否できるのである。ただし「拒否権」も目的と時期を間違えれば、国民からも議会からも批判を浴びる。またアメリカは議院内閣制でないため、議員に党議拘束は課せられない。そこで大統領は反対派の議員を口説いて賛成に回らせる事もできる。従ってアメリカは日本より「ねじれ」に風穴を開ける余地がある。

 日本はイギリスと同じ議院内閣制で二院制だが、イギリスに「ねじれ」はない。貴族院は世襲でしかも何らの決定権も持たないからである。選挙で選ばれた議員には党議拘束が課せられるため、選挙で多数を得た与党のマニフェストが議会で否定される事はない。ただ少数意見を尊重するのが民主主義であるため議会は修正のための議論を行う。

 悩ましいのは日本である。イギリスと違って参議院議員も選挙で選ばれ、しかも衆議院が決定した法案を参議院が否決すると、衆議院の三分の二の賛成がないと廃案になる。そのため衆議院と参議院で多数党が異なると政治は何も決められなくなる。衆議院の過半数によって選ばれた総理が衆議院の三分の二の賛成がないと自分の政策を実現できない仕組みはおそらく世界でも例がない。これが日本の悲劇的な「ねじれ」の実態である。

 「ねじれ」をなくすには日本国憲法を変えるしかない。しかしそれも衆参両院の三分の二の賛成がなければ出来ないのできわめて難しい。最も簡単な方法は衆議院選挙と参議院選挙を同時にやる事である。同時にやれば同じ政党が衆参共に多数を制し、バラバラにやれば異なる政党が多数になる可能性が高い。

 ところが政権奪還を狙う自民党は衆参ダブルではなく年内解散を求めている。衆議院選挙に勝っても参議院で過半数を持たない自民党は「ねじれ」に苦しむだけなのにである。ここはアメリカの共和党のように党派性を強めるのではなく、「ねじれ」からの脱却を真剣に考えないと、米国版「決められない政治」と違って日本版「決められない政治」は断末魔を迎えてしまう。


 

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コメント
 
01. 2012年11月10日 01:06:01 : Q6X8vVQBf2
別に「決められない政治」が悪いことばかりとは思わない。
メディアは決まって「決められない政治からの脱却」をほざくが、
メディアが”決めて”欲しいと望むことは、
TPPはじめ国家国民にとって有害なものばかり。
そんなものは寧ろ”決めない”のが得策だ。

02. 2012年11月10日 02:33:22 : esmsVHFkrM

2012年選挙の意義についてアメリカのメディアは興奮して報道している。それが日本に伝えられないのは不思議だ。2012年選挙は単なるオバマの辛勝ではなく、間違いなく「Critical Election」であり、今後のアメリカ政治を20年30年のレンジで既定していくことになる。

ABCとNBCの選挙速報番組をライブストリームで見た(CBSとFOXはネットで見つけられなかったがライブストリームをやらなかったのだと思う)。インターネットは便利だ。そしてアメリカのTVネットワークは太っ腹だ。それで改めてアメリカのジャーナリズムの力量に感服した。詳細なデータと深い洞察に基づく分析と議論は非常のエキサイティングだ。

それでよくわかったことは、2012年大統領選挙は1968年のニクソン南部戦略以来の「Critical Election」であったということだ。

アメリカ政治における民主党対共和党の勢力盛衰は簡単に言えばこうだ。南北戦争後の北部共和党の南部民主党に対する優越という構図は、フランクリン・ローズヴェルトの1936年再選選挙を境にローズヴェルト連合(南部民主党と北部都市インテリ、組織労働者、黒人、新移民の結合)によるリベラル民主党の北部ビジネス共和党に対する優越へと転換したが、それは南部戦略による1968年のニクソン当選によって保守主義共和党のリベラル民主党への優越へとその構図を再び転換した。

共和党の1968年南部戦略とは、ローズヴェルト連合における奇妙な結合であった北部リベラルと保守南部の連合に注目し共和党が保守主義に傾斜することで南部を奪うことであった(南部は南北戦争の強い怨念から反共和党であったがその怨念も100年を経て解消したわけだ)が、これ以降経済発展する南部を背景にビッグビジネスと南部の結合である保守主義共和党のリベラル民主党に対する優越が固定化する。1980年以降の新自由主義の隆盛(英国のサッチャー、米国のレーガン)は共和党の優越をさらに強固にした。

しかし今回2012年の大統領選挙はこの構図がまたまた大きく転換したことを示した。

アメリカのメディアにおいてもオバマの勝利を、オバマ陣営による選挙戦初期におけるロムニーのイメージ固定(大金持ちでビッグビジネスの味方というのはそのとおりで別に嘘ではないと思うが)とかオバマ陣営による支持者の投票への巧みな動員(Ground Work)とかの選挙戦術や、ハリケーン・サンディーのような偶然(これを2012年選挙の「November Surprize」とする)に求める議論が散見される(特に例の共和党偏向メディアFox TV)。しかしこれらの戦術的または偶然的要因のみで今回のオバマの勝利を説明しようとするのは現在進行中のアメリカ政治における大転換と2012年選挙の意義を見失うものだ。

アメリカのジャーナリズムが注目し民主党が興奮し共和党が驚愕しているのは、共和党の保守主義支持層が「Too old, too white, too male」になってしまったということだ。これは、オバマ民主党の支持層が、リベラル(都市インテリ層)や組織労働者に加えて黒人、ヒスパニック、アジア人等の非白人と独身女性(これは増大する母子家庭を含む)や若年層へと拡大していることを示す。いわばローズヴェルト連合のような雑多な社会層を結合する「オバマ連合」が成立しているということだ。

NBCの出口調査によれば、黒人票の93%、ヒスパニック票の71%、アジア系票の73%、未婚女性票の67%、18歳から29歳の若年層票の60%をオバマが獲得したという。このうちヒスパニックは今回ついに投票総数の10%(前回2008年においては7%)を占めるに至り依然急激に増加している。ジェンダーギャップについても、男性票はオバマ45%、ロムニー52%に対し女性票はオバマ55%、ロムニー44%であったという。このような背景があって初めてオバマ陣営のGround Work(投票動員)が意味を持ったのである。

ヒスパニックの増加による選挙結果への影響はすでにフロリダ、ヴァージニア、ノース・キャロライナのような接戦州において観察されており(それゆえにフロリダ(非公式)とヴァージニアでオバマが勝った)、この傾向は次にジョージアやテキサスのような共和党の安全州において露わになるものと予測されている。

実際ロムニーは善戦している。選挙人獲得数はともかく層獲得投票数における差はわずかだ。

そもそも、このような経済状況で再選を果たす大統領はまれである。客観的に言ってロムニーは決して悪い候補者ではない(予備選に参加した候補者の中で唯一まともで勝てる候補者であった)。オバマ陣営は第1回公開討論で大失態を犯しそれまでの優位を一気に失っている。選挙直前においてはロムニーの集会の熱気がオバマの集会のそれを上回っていたことを多くの報道記者が指摘している。

またカール・ローブ(ジョージ・ブッシュの再選選挙参謀として有名)が主導したAmerican Crossroads等のスーパーPAC(2010年最高裁判決により候補者に直接関係しない団体(特別政治行動委員会)に対してであれば企業献金や個人献金が無制限に認められた)は総額3億9.000万ドルもの巨額な資金を共和党支持者の大金持ちたちから集め(Sheldon Adelsoinは個人でなんと5.370万ドルも寄付している)オバマをはじめとする民主党候補者へのネガティブキャンペーンを大々的に展開した。

さらに、接戦州では州や郡レベルでの選挙管理を共和党が抑えているために黒人やヒスパニックの居住地区において投票所を不備にしておくことで長い投票待ち(今回フロリダでは7時間待ちまで生じている)等を引き起こしそれらオバマ支持のマイノリティーが投票することを妨害までした(それにもかかわらずカール・ローブはロムニー敗戦の理由として民主党が投票妨害を行ったと主張して嘲笑をかっている)。

だから、ロムニーは勝利を確信していたし(勝利演説しか用意していなかったというがそれはまんざら嘘ではないだろう)、地すべり的勝利を予想した保守評論家もまれではなく、カール・ローブはFOX TVの選挙速報番組でFOX TVでさえオハイオ州をオバマ獲得確実と報じてオバマ勝利を認めた後までまだわからないと言い張って出演者たちを困惑させる醜態を演じたのである。

つまり、共和党がこれでも勝てなかったのならもう民主党の大統領候補に勝てないしそれは今後ますます確実になる(白人で男性という支持層の比重は確実に減少していく)ということが明らかになったのだ。

これを象徴的に表していたのが、投票終了後のロムニーのボストン集会とオバマのシカゴ集会の様子だ。ロムニーの集会に集まった人々はみなきれいな身なりの白人ばかりだ(貧乏人はいない)。それに対してオバマの集会に参加した人々は、もちろんきれいな身なりの白人もいるが、黒人やアジア系やヒスパニックなど人種も雑多でその服装もまちまちだ(明らかに貧乏人がたくさん来ている)。どちらが現在の実際のアメリカを集約しているかは明らかだ。これを見て恐怖しない共和党幹部はいないだろう。

すでに今後共和党はどうすれば生き残れるのかが議論の焦点となっており、単にヒスパニックの候補者を立てろから共和党の綱領そのものを改めろまで多用な議論が共和党関係者の間で起こっている。

というわけで、アメリカにおいては今回の2012年選挙の意義がこのように注目されている。2012年をわたしが「Critical Election」であると考える所以である。

この「オバマ連合」はすでに2008年選挙において形成されていたのでありそれが2012年選挙において強固に確立した。ローズヴェルト連合が恐慌の中で形成されたように「オバマ連合」も現代の恐慌(わたしは現在の「不況」は本質的には資本主義恐慌であると考える)の中で形成され今後20年から30年のアメリカ政治を規定していくことになるだろう。

オバマ再選、上院の民主党多数の維持、下院の共和党支配の継続という現状維持の選挙結果とは裏腹にその背後で進行したアメリカ政治の変化はこのように甚大だ。すでに上院レベルにおいてはそのようなオバマ連合を背景とした民主党の強さが際立っている(民主党は予想に反して改選21議席をすべて維持したほかにマサチュウーセッツとインディアナで共和党から議席を奪還した(共和党は改選わずか10議席のうち2議席を落とした)。また今回の下院における共和党の勝利はは選挙区割りにおけるゲリマンダーに依存しており、2014年の選挙でそのゲリマンダーにもかかわらず民主党が下院における多数に復帰することもありえる状況だ。すでに今回選挙では、ティーパーティーの新人候補者はすべて敗退した。現職議員についてもかつて共和党予備選の台風の目であったあのミシェル・バックマンがあやうく落選しかけている。

このような変化はすでに民主党、共和党に共通に認識されており、いわゆるアメリカ政治におけるねじれ(共和党の下院支配)についてもその影響は免れ得ない。同じくNBCの出口調査によれば実際、オバマ民主党の主張する年収25万ドル以上の層のみへのブッシュ減税の廃止は投票者の47%の支持を得ている(すべての層への減税廃止を含めれば60%を超える)。ブッシュ減税の廃止は本年末に迫った自動的な期限切れだ。オバマの勝利演説における「財政の崖」を巡っての共和党との対話への言及はそのような「余裕」の表現であり、その表面的な融和のトーンとは裏腹にオバマと民主党の財政の崖(Fiscal Cliff)に関する対共和党姿勢は自信に裏付けられた強硬なものとなるだろう。

1980年代以来猛威を振るったアメリカの右翼保守主義はこうして終焉を迎えつつある。

感慨を禁じえない。


03. 2012年11月10日 20:15:07 : eS5CPZpets
>>2
妙にアメリカを持ち上げるが、しょせん「共和党が勝ったら戦争で金持ちが儲け、
民主党が勝ったら規制撤廃で金持ちが儲ける」国でしかない。

「AでダメならB、BでダメならC…」であるべきなのに、英米など二大政党の国の
国民は「AでダメならB、BでダメならA」とリス車のように同じところを
ぐるぐる回っている。これで「自分達に選挙権が与えられているんだから
民主主義の国だ」と思っているから病膏肓に入る。

それに騙されるのも、金持ちに雇われたマスコミが「世論を作っている」から。


04. 2012年11月11日 10:12:27 : ywlUh2tU2c
01氏の言う通り。アメリカでは、米国版「決められない政治」があるみたいだが、日本では、米国版「決められた政治」の押し付けしかない。

日本で、日本版「決める政治」を行ってアメリカ暗部の指図により、失脚の憂き目にあった政治家の例はたくさんある。

日本の「決められない政治」というのが横行している背景の1つとして、米国版「決められた政治」と日本版「決める政治」のどちらを取るかということで、選択に慎重になるためだと思う。(今の民主党みたいに、我利を取るか体裁を取るかで「決められない政治」は論外。)

どちらにしろアメリカ隷属の鎖を断ち切らなければ、庶民側に立った日本版「決める政治」を行うのは困難だろう。


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