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2012年11月09日 世相を斬る あいば達也
筆者はだいぶ前から、年内解散否定説で凝り固まっているのだが、11月22日までに解散、12月16日に都知事選とのW選挙と云う説がマスメディアを跋扈している。テレビはほとんど観ないので判らないが、時事通信と読売が積極的に財務省の意志を忖度した記事を垂れ流している。特に、時事通信は既成の事実であるような報道をしている。先ずは、以下の時事通信の記事を読んで貰おう。
≪ 特例公債法案成立へ=民自公、15日衆院通過で合意−首相、3条件整えば解散判断
民主、自民、公明3党は8日、国会内で国対委員長会談を開き、赤字国債発行に必要な特例公債法案について、15日に衆院通過させる日程で合意した。これにより、野田佳彦首相が自公両党に約束した「近いうち」の衆院解散を判断する条件の一つである同法案の今国会成立が確実となった。首相は、衆院選挙制度改革などの進展を見極めつつ、年内を含めて解散のタイミングを探る意向だ。
公債法案は8日の衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入り。自民党の竹本直一氏が解散時期の明示を迫ったのに対し、首相は同法案の成立と衆院選の「1票の格差」是正と定数削減、社会保障制度改革国民会議の設置の3課題の処理が前提との考えを強調。その上で「その時においてきちっと自分の判断をしていくことにいささかの変更もない」と述べた。
民自公は国対委員長会談で、野党が求めていた衆院予算委員会を12、13両 日に開き、14日に党首討論と公債法案の衆院財務金融委員会での採決を実施し、15日に参院送付する日程を決めた。自民党は法案への賛否は決めていないが、年内解散への環境を整える狙いから審議は妨げない方針。同党の脇雅史参院国対委員長は民主党の池口修次参院国対委員長に対し、19日の成立を容認する考えを伝えた。
一方、民主党は8日、政治改革推進本部(本部長・安住淳幹事長代行)の総会で、衆院選挙制度改革に関し、小選挙区の「0増 5減」と比例代表定数40削減の一体処理を確認した。
ただ、比例定数削減には野党各党が反発しており、民主党が固執した場合は関連法案の成立は絶望的となる。このため同党は、0増5減の法案と定数削減の法案を分離し、最高裁が「違憲状態」とした1票の格差是正を事実上先行処理する案を検討しているが、マニフェスト(政権公約)に反するとして反対論が強い。
選挙制度をめぐっては、民主党内の調整難航が予想され、首相の解散時期の判断にも 影響しそうだ。≫(時事通信)
≪特例公債法案成立へ=民自公、15日衆院通過で合意−首相、3条件整えば解散判断≫、と如何にも3条件が整えば、野田は必ず解散せざるを得ないような見出しだが、よく読んでみると、「その時においてきちっと自分の判断をしていくことにいささかの変更もない」と云う野田の発言を紹介しているが、3条件が整えば解散する、と野田は一度たりとも明言していない。当たり前だろう。解散時期を明言した時点で、民主党内は蜂の巣を突いたような“野田おろし”が始まるだけで、野田が年内解散して得るべきものはゼロなのだ。側近が首相は“嘘つき”と呼ばれる事を酷く気にしている等と作り話をでっちあげているが、今さら“嘘つき”呼ばわりから逃げられる野田佳彦ではない。心根は“毒を喰らわば皿までも”の心境。そのくらいの政治屋根性は持っているだろう(笑)。
しかし、それにしても財務省の幹部が、ここまで執拗に野田佳彦の年内解散に奔走する姿をみていると、単に25年度本予算編成の二度手間を避けたいと云う理由の説明だけでは不十分な感じになってきた。その辺を探って行くと、当たり前のことだが、財務省の最大関心事である“消費増税”の完全実施を確定したい狙いが見えてくる。マスメディアの論調では、「2014年8%、15年10%」は確定のような論調で報じられているが、実際は「消費税率の引き上げに当たっての措置:附則第十八条」(景気条項)は、まさに“喉に刺さった小骨”なのだな、と云う事になる。
≪ 〔消費税率の引上げに当たっての措置〕附則 第十八条
1 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度(注・2011年年度)から平成三十二年度(2020年度)までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長 率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を 踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。
3 この法律の公布後、消費税の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、 前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。≫ となっている。
つまり、13年の秋段階で半年後に消費税を上げても大丈夫かどうか、時の政権が判断するとなっている。その目安は名目経済成長率3%が目処なのだから、結構厳しい数字である。政府見通しでは、2012年、2013年と名目経済成長率は1.9%なのだ。政府見通し時点より、実態経済は十二分に悪化しており、1%が確保できるかどうかと云うレベルになっている。中国、欧州への輸出の減速は顕著で、状況を好転させる材料は皆無。悪化する材料には事欠かないのが現実だ。そうなると、放置していたら、名目3%の経済成長など夢のまた夢になる。幾ら、財務省の言いなりでも、13年秋が自公政権であっても、1%成長と云う数字を持って、“物価が持続的に下落する状況からの脱却と持続可能な経済成長が見込める”と強弁は出来ない。
そうなると、嘘でも良いから名目経済成長率に強く寄与する予算の“人からコンクリート”への公共投資シフトが強く求められる。つまり、財務省は13年秋には、付け焼刃でも名目経済成長を実現したいと云う魂胆である。13年の決定がずれ込み、14年の消費増税が消えた場合、根こそぎ法案が消えてしまう事を危惧しているのである。その為には、13年の予算編成時点で、どうしても公共投資利権に敏感に呼応する自民党に政権を握っておいて貰わないと困ると云う事情がある。自民党であれば、その辺の匙加減は馴れたもの、おこぼれに与れる公共投資(これが自民の国土強靭化基本法案)である。
国土強靭化の為の土木建築は良いことだ。震災に強い国土を創造していかなければならない。再びは箱モノ予算の復活だが、この手段を取る事で、土地株等のミニバブルを生じさせ、日銀の思惑を無視して2〜3%の人工的インフレを起こし、経済成長率を無理やり押し上げる算段がしたいと云うことなのだろう。その為には、“死に体”間違いなしの野田民主党よりも、自民を中心とする政権の方が八百長経済成長を出現させると読んでいる。その為には、どうしても、野田民主に年内で退場して貰い、安倍自民中心の政権の下予算を組みたいと云う必死の動きだと読みとれる。
あいかわらず、石原・橋下・渡辺らは、マスメディアが報道しやすい、会談やぶら下がりにご執心で、話題の持続が自分達の唯一の生命線のような振舞いに興じているが、彼らの政局狂想曲には“国民”の“コの字”も含まれていない点が秀逸だ。まさに彼等を新聞紙上やテレビで弄ぶマスメディアの姿は芸能レポーターそのものだ。この調子だと“自民公維新みんな”が同じ穴のムジナとして正体現す日も近そうだ。日程的にも、11月22日までに野田の解散に至る道筋はタイト過ぎて物理的に無理。輿石が仕切る民主党執行部が、スケジュールで無理をしようと云う雰囲気はゼロ。輿石の顔を見ていると、10日程度の会期延長まで視野にあるような気がする(笑)。
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