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田中大臣の不認可問題の影にあるもの(内田樹の研究室)
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投稿者 こーるてん 日時 2012 年 11 月 09 日 06:04:38: hndh7vd2.ZV/2
 

転写開始

http://blog.tatsuru.com/2012/11/07_1601.php
田中大臣の不認可問題の影にあるもの(内田樹の研究室)

田中真紀子文科相は秋田公立美術大など3大学の2013年度開校を不認可とした問題について6日に大学設置認可に関するあらたな検討委員会を発足させる意向を表明した。
文科相の諮問機関である大学設置・学校法人審議会の見直しをこの委員会で行い、改めて3大学の設置認可を判断することとして、来春の開学への可能性を残す考えである。
大臣は設置審議が「許可されてから工事をするならわかるが、ビルが建って、教員も確保してから、認可申請をするというのは筋違いだ」と批判した他、設置審議会の構成が委員29名中22名が大学関係者であることを咎めて、「多くのジャンルの方の意見を聞きたい」とした。
不認可という爆弾を放り投げてみたものの、世論の袋叩きに遭って、あわてて引っ込めたということである。
政治的にはそれだけの単なる失策に過ぎないが、この失策の背後には大学教育をめぐる本質的な問題点がいくつも透けて見える。
ひとつは文科相が「大学は多すぎる。もっと減らせ」という主張にはおそらく広範な世論の支持があるだろうと事前に予測していたということである。
この予測はある意味で間違っていない。
少なくとも文科相本人はそれを願っていたはずだし、彼女の周囲の政治家や財界人も同じ意見だったはずだからである。
「大学はこんなに要らない。大学生といえぬほどの低学力のものたちを4年間遊ばせておくのは資源の無駄だ」というようなことをビジネスマンはよく口にする。
これから彼らからすればごく当然の要請である。
この6月に、首相召集の国家戦略会議で、財界人代表のある委員が「大学が増えすぎて学生の質が下がった。専門知識はおろか一般教養も外国語も身についていない。大学への予算配分にメリハリをつけ、競争によって質を上げよ。校数が減って、大学進学率が下がってもいい」と主張した。
大学生の学力が低下しているのは事実である。
別にそれは大学が増えすぎたせいではなく、中等教育で基礎学力が担保されていないからである。
ほんとうに日本人の学力低下を懸念しているとしたら、「さらに教育機会を減らせ」ということを主張することは話の筋目が通らない。
知性的な成長のチャンスは、どう考えても、教育を受ける時間の長さと相関するからである。
どれほど学力が低いとはいえ、中卒、高卒で学業を終えるより、大学まで出た方がまだましである。
四年長く学校に通っているうちに、思いがけないきっかけで爆発的に知性的活動が活発化するということは少なくない。
それは大学教員として確言することができる。
大学が増えすぎて学生の質が下がったというのは事実であるが、それは「大学が増えすぎて日本の若者の知的な質が下がった」ということとは違う。
大学が増えたことによって、日本の若者たちの高等教育を受けるチャンスは明らかに増え、全体の学力は(わずかなりとはいえ)底上げされてきた。
たしかに大学を減らせば、淘汰を生き延びた少数の大学への入学は困難になり、入学者については「平均学力が前より上がった」という結果が見込めるだろう。
だが、それは「日本の若者たちの平均学力が上がった」ということを意味しない。
若者たち全体の平均学力は下がる。
必ず、下がる。
では、なぜ若者たちの平均学歴が低下し、平均学力が低下することを財界人は要求するのか?
もちろん、それが彼らに大きな利益をもたらす可能性があるからである。
中等教育の内容を理解していないものは大学に入学させないという縛りをかければ、おそらく現在の大学生の3分の2は高卒で教育機会を終えるだろう。
そうすれば毎年数十万の低学力・低学歴の若年労働者が労働市場に供給されることになる。
財界人たちはこれを待ち望んでいるのである。
この最下層労働者群は信じられないほどの時給で雇用できる可能性がある。
生産拠点の海外移転が進むのは、国内では人件費が高いからということが最大の理由であった。
人件費が大幅に下がってくれるなら、何も海外に出ることはない。
海外は、言葉は通じないし、インフラは不十分だし、政情も不安定である。
政情の不安定がどれほど巨大な損失をもたらすか。
そのことは中国に生産拠点を移した企業が今回の反日デモで骨身にしみたことである。
中国も人件費が高騰してきたので、目端の利く企業はすでに工場はインドネシアやマレーシアに移し始めている。
いずれインドネシアやマレーシアでも中産階級が形成されれば人件費が高騰する。
そうすると今度はミャンマーかスリランカか、あるいはアフリカか。さらに人件費の安い地域を求めて工場を移転させなければならない。
この「引っ越しコスト」はすでに侮れない額に達しつつある。
それなら、社会的インフラが整備され、政情が安定している日本国内に「超低賃金労働者」を組織的に生み出す方が企業の国際競争力は増す。
スマートな考え方である。
だから、この10年、財界人たちはずっと「日本の大学教育は国際競争力がない」ということを言い続けてきた。
そこにはもちろん「だからもっと教育研究のレベルを上げろ」という激励の気持ちがこめられていた。
だが、同時に「だから低学力の大学生は低学歴・無資格状態で労働市場に大量に放出しろ」という人件費の算盤も弾いていたのである。
誤解して欲しくないが、私はそれを責めているわけではない。
先方はビジネスをされているのである。
どうすれば儲かるかを考えるのは当然であり、その筋からすれば、「大学を減らせ」というのは「選択と集中」戦略からも、「低学力=低賃金労働者の大量供給」戦略からも一石二鳥のきわめてスマートな政策なのである。
田中文科相の「大学を減らせ」はこの財界の意向を承けて述べられた。
だから、彼女は世論の圧倒的な支持が得られるだろうと思ったのである。
だが、世間の人たちは一般論としては「大学は多すぎる」という主張に賛同はしても、各論的に「じゃあ、お前勉強できないんだから、大学行かずに働け」と言われたら、「それは嫌」なのである。
大学を出ても正規雇用にありつけるかどうかはわからない。
でも、大学を出ないと正規雇用にありつけるチャンスはさらに減る。
だったら、どんなにレベルの低い大学でもいいから、数が多い方が「オレ的」には助かる。
そういう各論的な「切ない事情」があるせいで、「大学を減らせ」という一般論が財界人たちの朝食会の話題以上には拡がらないのである。
理論的には、大学を減らして、学生の学力を上げることは簡単である。
中卒者・高卒者に正規雇用と高い賃金を約束すれば、「大学行くより働きたい」という若者はいくらでも出てくるだろう。
企業の方々が高卒者に厚遇を約束すれば、お望み通りに、大学生の学力は急カーブで上昇し、不要な大学はばたばたと淘汰されて消えるであろう。
なぜ、国家戦略会議の委員たちの誰一人それを思いつかないのか?
彼らが全員致命的に愚鈍であるという可能性を除外すると、理由は一つしかない。
「人件費コストが上がる」という選択肢はいついかなる場合でも彼らにとっては「論外」だからである。
そういう雇用環境だからこそ、現に若者たちは大学に「逃げて」いるのである。
それが現実との直面を4年間先送りにしているだけのモラトリアムだとわかっていても、ひとりひとりにとっては4年間は貴重な時間である。
雇用環境が劣化すればするほど、若者たちは就業機会を先延ばしにする。
現に大学院への進学者は過去20年で6・8%から13・4%に増えた。
これを「日本の若者たちの研究志向が高まった」と解釈する人はいないだろう。
みんな「逃げて」いるのである。
劣悪な雇用環境との直面を先送りしているのである。
田中大臣は財界人と飯を食う機会はあるが、就活している学生の愚痴を聞く機会はなかったので、同じ問題に二つの面があるということを知らずにかかる放言をなしたのである。
これが問題の第一。
もう一つは、設置審のメンバーに大学人以外の「多くのジャンルの人」をという発言である。
「多くのジャンルの人」と言ったときに大臣の頭の中に、武道家とか能楽師とか小説家とか精神科医とかは浮かんでいないと私は思う。
彼女が設置審に入れたいのはビジネスマンである。
ワタミの社長とかユニクロの社長とかローソンの社長とかを呼んできて旧弊な教育観にしがみついている大学人に「がつん」と活を入れてやらねばと思ったのである。
いや、言い訳はよろしい。
それくらいのことはわかる。
どの大学が生き残りどこが退場するかは市場が決定するのだという理屈を大学人たちにたたき込んでやってくれ、と。
大臣はたぶんそう願ったのだ。
彼女が忘れているのは、どうしてこんなに大学が増えたのか、その理由である。
91年の設置基準大綱化以来の設置基準の緩和の流れが何を意味していたの、もう一度思い出して欲しい。
そのとき文科省はそれまでの「護送船団方式・親方日の丸」の教育行政から舵を切って、大学設置基準を緩和した。
大学を始めたい人はどんどん始めてよろしい。教育プログラムも好きに編制していい。教員数や図書数や校地面積についても設置基準を引き下げる。
うるさいことはもう言わない。
その代わり、潰れても自己責任だ。
そういうロジックである。
設置の門戸を広く開放すれば、ビジネスマインデッドな人々が大学経営に参入してきて、旧弊な教育観にしがみついている時代遅れの大学を市場から叩き出して、さっぱり淘汰してくれるだろうと考えたのである。
大学を減らすために、競争原理を導入したのである。
その結果、91年の510校から2012年の780校にまで大学が52%増えた。
教育機関には強い惰性がある。
学校というはある種「プリミティブな生き物」である。
一度命を吹き込まれると、必死で生き延びようとする。
大学数が増えた結果、淘汰が激化すると思いきや、各大学は進学率を上げたり、社会人入学枠を拡げたり、市民講座を開いたり、リカレント教育をしたりして、生き延びようと必死になった。
生物は生き延びる道を自分で探し出す。
『ジュラシック・パーク』でイアン・マルコム博士もそう言っていたではないか。
でも、潰れた大学もある。
ビジネスマンが作った大学である。
2004年に小泉内閣時代に構造改革・規制緩和路線の中で「株式会社立大学」が構造改革特区に認可された。
その後についてご存じだろうか。
LECリーガルマインド大学は2004年に開学、全国14キャンパスを大々的に展開したが、まったく学生が集まらず、2009年に定員160名のところに18名しか志願者が来ないで募集停止となった。
2006年開学のLCA学院大学も志願者が集まらず2009年に募集停止した。
TAC学院大学は2006年に開学申請したが、記載不備で却下されて消えた。
実務に通じたビジネスマンたちが旧弊な大学を叩き潰すために登場したビジネスマインデッドな大学はどこもたちまちのうちに市場から叩き出されてしまった。
その理由について、私は誰からも説得力のある説明を聞いたことがない。
たぶん株式会社立大学のことは関係者全員がもう忘れたいのだろう。
その気持ちはわからないでもない。
だが、「ビジネスマインドで大学経営をする人々が次々と出てくれば、要らない大学は淘汰されるだろう」という命題は「ビジネスマインドで経営をする人々の大学は要らない大学だったので次々淘汰された」という皮肉なかたちでしか証明されていないということは繰り返しアナウンスすべきだろう。
もし大臣が大学教育にかかわる教育行政にビジネスマンを関与させようと望んでいるのであれば、その前にまず「株式会社立大学はなぜ失敗したのか?」についての説明責任があると私は思う。
以上二点、田中大臣の「失敗」の背後にある「市場と大学」の利益相反について思うところを記した。


転写終了

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コメント
 
01. 2012年11月09日 10:11:31 : 9pp7TuoIt2
先ず第一に
経済界が日本国民の学力の低下を望むのは、経済的な理由ではない
政治的な理由だ
B層を如何に増やすかということが、彼らの至上命題だ

日本に高卒があふれても、中国リスクを怖がり撤退しても、次はインドだ

官僚、経済界、政治家は
肉体労働者が増えても困るはずだし、農業に力を入れるつもりも更々ない

今回は、内田氏の基本認識が間違っているので、議論できない

ただ
設置審のメンバーに誰が選ばれるかは、注意はしておかねばならないだろう


02. 2012年11月09日 10:23:12 : aY9YinykHo
麻原オウム教祖との関係が噂される怪しげなカルトヨガ行者の成瀬雅春を尊師のように尊敬しているという内田樹氏は、成瀬氏との対談で
「わたしは空中浮遊や壁抜けができる」というオカルト趣味を開陳している。
精神的な深度でもって物理的な問題を解決できるという信仰をもっている内田樹氏は、怪しげな精神構造をもっているといわざるをえない。
その内田樹の発言なのだが、頭から田中真紀子の行動を否定してとらえるばかりでなく、背後に財界がついているという「妄想」には根拠がなく
とてもついていけない。
そう。まるで内田樹の愛好するカルトヨガのように奇矯すぎる論理だ。
内田は、安い労働力市場を生み出したい財界の意図を受けて田中真紀子が大学の新設にまったをかけたという。
おかしな理屈だ。
もしそうなら財界の飼い犬であるマスゴミがどうして田中真紀子を支援しないのだ?
ばかばかしくてハナシにならない妄想であるが、カルト趣味の内田の脳内構造ではマスゴミは正義の味方で、財界の密謀に抗っているらしい。
笑い話にもならない現状認識の甘さは、オカルト趣味ゆえの現実認識のなさから出ているとしかおもえない。

ばかばかしいかぎりの記事だ。
この御仁は田中真紀子への妄想を開陳するまえに己のゆがんだカルト思考をなんとかすべきではないか?


03. 2012年11月09日 10:28:40 : V1WDGNFKLc
私大の半分が定員割れしている現状を無視した大学設置審の審査の在り方に
強烈、劇的な警鐘を鳴らすことになった田中眞紀子大臣の暴挙とも言える型破りな判断は
実に痛快であった。
このような審議会の在り方を是認し、自民党文教族の利権を影で貪ってきた自民党は
いち早く反応し、田中大臣の行動を非難した。
専門学校や短大を申請のままに大学に認可し、Fランクの大学を多数新設してきたのは、
他ならぬ自民党政権であり、その責を負わねばならないのは自民党である。
その自民党が自分らの責任を棚にあげて、
田中大臣の罷免を要求するなど言語道断である。
自民党文教族こそ全員議員辞職せよ。

04. 2012年11月09日 12:17:03 : GGLhU3h2lQ
内田樹氏のロジックは煎じ詰めるとこうだ。

1.「日本の大企業は社会的インフラが整備され、政情が安定している日本国内に「超低賃金労働者」を組織的に生み出す方が企業の国際競争力は増すと考えている。」

2.では「超低賃金労働者」を組織的に生み出すにはどうすればいいか。
「中等教育の内容を理解していないものは大学に入学させないという縛りをかければ、おそらく現在の大学生の3分の2は高卒で教育機会を終えるだろう。
そうすれば毎年数十万の低学力・低学歴の若年労働者が労働市場に供給されることになる。
財界人たちはこれを待ち望んでいるのである。
この最下層労働者群は信じられないほどの時給で雇用できる可能性がある。」

3.では「大学生の3分の2」を高卒で終えさせるにはどうすればいいか。
田中真紀子を使って、これまでの大学設置基準を変えさせ、審議会の委員を大企業の経営者に変える。たとえば「ワタミの社長とかユニクロの社長とかローソンの社長とかを呼んできて旧弊な教育観にしがみついている大学人に「がつん」と活を入れてや」る。

さて、内田氏の以上の論理がどれほど現実離れしているかは論をまたないだろう。
1.でいえば「超低賃金労働者」なんて最低賃金法が確立されているこの国でありえない。中国の日系企業労働者の平均賃金(月給5万円くらい)がかなり改善されているといってもそれに比べればいくら高卒、中卒とはいえ月給5万円で使えるはずがなかろう。

2.にいたっては迂遠な妄想でしかない。
超低賃金労働者を生み出したいから大学新設をやめるなどという関連付けは「風が吹けば桶屋が儲かる」式の強引な論理であって、
大企業がそんな迂遠な手段をとるとは思えないし、大卒者が減ったからって現状の低賃金状況が変わってこれ以上超低賃金になるなどとはとうていおもえない。
そもそも内田氏はラーメン屋の店員がどれほどの高給をとっているかわかっているの? 中卒でもちゃんと家族を養っているよ?
中卒、高卒は「超低賃金」でいいという発想自体が異常だとしかおもえない。

3.
で、内田氏にいわせればその「超低賃金」を生み出すために中、高卒を増やすという大企業の戦略を担ったのが田中真紀子だと。
いやはやすごい論理だね、これ。w
そもそも田中真紀子なんか使わないでマスゴミを総動員して大学不要論をアピールさせれば済むはなしでしょ?
田中真紀子が従来の審議会基準を変えるために新しい委員を選ぶにさいして大企業経営者を選ぶという断定にもなんの根拠もない。

要するにこれ、田中真紀子を貶めるための妄想的な論理でしかない。
内田樹はどうやら田中真紀子がお嫌いなようだ。w



05. 2012年11月09日 12:27:43 : Rs44oVRYNE
>>02
>>04
まあ、単純に大学関係者として、防衛本能が働いただけと見たほうが良いし
だからといって内田氏を、ことさら非難すべきとは思わない
人間とはそういうものだ

何より真紀子も、それほど信用に足る人物ではない

この評論の問題点は>>01に書いたとおりだ


06. 2012年11月09日 12:54:54 : GGLhU3h2lQ
05. 2012年11月09日 12:27:43 : Rs44oVRYNE
>人間とはそういうものだ

おまえなあ。w
人間とはそういうものだ、で済むなら
裁判所も警察もいらねえよ。あほう。


07. 2012年11月10日 01:30:37 : jUv6fVNn8g
内田も低レベル大学がなければ失業者かよくて「評論家」だったわけだから

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