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2012年11月 6日 植草一秀の『知られざる真実』
「国民のレベル以上の政治は実現しない」と言われる。
「政治に失望した」とか、「政治に裏切られた」の言葉をよく聞くが、いまの政治制度においては、政治を作っているのが国民であるということも忘れてはならないと思う。
多くの市民は、いまの政治が市民目線に立ったものではないと感じる。
大多数の市民、国民のための政治ではなく、ごく少数の、いわゆる「強者」のための政治になってしまっていると感じている。
たしかに、少数の「強者」に有利な制度がいくつか存在していることは事実だが、しかし一方で、政治制度の根幹を定めている憲法、日本国憲法を読めば、そこには主権者である国民のための政治を実現するための手段が明確に記されていることも事実だ。
つまり、多くの市民、国民のための政治を実現する道は決して閉ざされているわけではないのだ。
このルートを生かして、主権者国民のための政治を実現できるかどうかは、主権者国民の行動にかかっているのである。
「政治に失望」、「政治に裏切られた」とぼやくよりも、自分たちのための政治を実現するための方策を考え、「思慮深く、積極的に」行動することが求められている。
少数の「強者」に有利な制度がいくつか存在していることは事実だと書いたが、大きな問題が三つある。
第一に、企業献金が認められていること。
第二に、情報空間の大半が「強者」の側に立つマスメディアに占拠されてしまっていること。NHKもこの範疇に入り、もっとも強い影響力を発揮している。
第三に、選挙の際に稼働する大きな組織の大半が「強者」の側についていること。
この三つの問題が存在するために、「主権者国民のための政治」を実現することが極めて難しくなっている。
大資本による企業献金が認められれば政治が大資本になびくのは当たり前だ。
資金力で一般個人を凌駕する大資本が巨額の資金を政治に注ぎ込む。政治は大資本の意向ばかりを尊重することになる。
これは、日本国憲法が定める「参政権」の規定に反するものだ。
「参政権」は自然人に1人1票で平等に付与されているものだ。
明治の時代の制限選挙と比較すれば問題点は明瞭になる。
明治時代は、納税額の多寡などで参政権が制限されていた。これを改めたのが現行憲法である。
現在の政治は、大資本がカネの力で政治を動かしているというものだ。これを打破するには企業献金を全面禁止する以外に道はない。
その際、個人献金を認めると企業献金が個人献金に姿を変えて維持されてしまう。政治献金そのものを全面禁止するべきだと私は思う。
第二に、日本の情報空間を占拠しているマスメディアの大半が大資本の支配下にある。民間メディアはスポンサー収入に依存して存立しているから、スポンサーの意向に逆らえない。
人々の思考はマスメディアの情報誘導によってコントロールされる。このために政治が歪められるのだ。
マスメディア情報空間の歪みを是正するうえで本来、最大の力を発揮するべきはNHKであるが、このNHKが現行制度では政治権力の支配下に置かれている。
NHKの人事権と運営資金が政治権力の支配下に置かれているからだ。
したがって、いまや、NHKが偏向報道の先頭を走っている。
NHKを政治権力から引き離し、日本の情報空間の歪みを是正することが日本の民主主義を確立するうえで喫緊の課題になっている。
政治の体制を決定する直接の決め手は国政選挙である。
国政選挙に主権者である国民が十分、その権力を行使しない。
投票率が低いということが第一の問題だ。
政治を決定する権限を持ちながらその権限を行使しない。権限を行使しないで結果としての政治に不平を述べても筋は通らない。
政治を望ましいものにしようという考えがあるなら、最大の権力行使の機会である選挙に参加することは必須の条件だ。
第二の問題は、選挙の際に影響力を発揮するエンジンが「強者」に偏っていることだ。
これにも「資金力」が絡む。「資金力」のある資本が資金を投下して選挙運動を行う。資金力に乏しい一般市民はこれに対抗することが難しい。
そして、かつては「労働組合」が市民、一般国民の立場に立った行動を示したが、様相を著しく異にし始めた。
最大の労働組合組織である「連合」傘下の組合の多数が、市民の側ではなく大資本の側に立つ行動を示し始めたことだ。
もっとも象徴的な例が「原発問題」だ。連合傘下の組合のなかに、原発産業に組み込まれている企業が多数存在する。これらの企業、業界の労働組合が市民の側ではなく、資本の側に立つ主張を示しているのだ。
これらの大きな障害があるから、企業献金を禁止する、政治活動資金に上限を設ける、労働組合の行動を糺す、などの措置が必要だが、まずは、すべての有権者が国政選挙に参加することを私たちが推進する必要があるだろう。
主権者国民が意識改革をして積極的に行動するなら、必ず政治状況を変えることができる。
「為せば成る 為さねば成らぬ なにごとも
成らぬは人の 為さぬなりけり」
の言葉をしっかり胸に刻みたい。
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