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「使っちまったカネは返せない」 復興予算流用問題(福場ひとみと本誌取材班)
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11396855071.html
週刊ポスト2012/11/16号 :大友涼介です。
「二度あることは三度ある」が、いまほど痛烈に実感できる時はない。昨年度、本年度予算と復興予算をネコババしてきた霞が関官僚たちは、これだけ批判が高まる中でも、来年度予算でさらなる流用に手を染めようとしている。
◆官僚の狙いは来年度予算
民主党をはじめとする超党派の国会議員17人が10月24日、「復興予算奪還プロジェクト」を発足させた。復興予算流用問題について、被災者からの聞き取り調査を行ったうえで政府に見直して提言をするという。
当初から問題を追及してきた議員も参加しており、活動そのものは評価に値するが、「奪還」という名称は大きな欺瞞を孕んでいる。復興予算は官僚が勝手に流用したのではなく、政府の決定と国会の審議を経て執行された。政治家もまた、官僚と共に復興予算を奪い去った共犯者なのだ。
しかも、本誌(7月30日発売号)が報じてから既に3ヵ月も経っている。いまになって政治家たちは必死に復興予算の見直しを叫んでいるが、そこで俎上に載せられるのは、シーシェパード対策費用や霞が関合同庁舎の改修費用など、3ヵ月前に本誌が取り上げたものばかりである。
問題は、これらが既に執行された昨年度・今年度予算の事業であるということだ。政治家や大メディアが過去の復興予算流用に目を向ける間に、官僚たちの関心は未来に移っている。いま霞が関では、年末に向けた来年度の復興予算編成が着々と進んでいるのだ。
政治家と大メディアの大騒ぎが、皮肉にも来年度予算編成の目くらましになっている。事実、9月に公表された各省庁の予算概算要求について、個別名目への批判がほとんど出てこない。
これこそ官僚たちの思う壺なのだ。
「今年度の予算まではもう執行してしまったから、いくら突かれても実害はない。本当に怖いのは来年度予算に追及の手が及ぶこと。財務省はそれだけは避けたいと思っている」(財務省OB)
城島光力財務相は、10月16日の記者会見で、来年度の復興予算についてこう明言した。
「被災地の復旧・復興が最優先という考え方に立ち、緊急性などの観点から真に必要な事業に厳しく絞り込んでいく必要がある」
これを聞いた財務省幹部は、こうほくそ笑む。
「二度と流用が起きないようにすると言っているように聞こえるが、そうじゃない。大臣は『被災地を最優先』と言っているが、『限定する』とは言っていない。つまり、優先順位は下がっても、被災地以外でも予算が使えるスキームは残すということ。財務省の『霞が関用語』をそのまま述べているわけです」
まさに財務省の忠実なスピーカーである。
かくして、復興予算見直し論議に隠れた新たなネコババが進行している。9月に発表された来年度復興予算(復興特別会計)の概算要求は4兆円超。本来なら10年度から15年度までの5年間で19兆円だったはずの予算枠をあっさりオーバーし、このままではわずか3年間で22兆円もの血税が投入されることになる。
しかもその名目を調査すると、官僚たちは反省するどころか、より悪質な流用に手を染めようとしていた。
◆宇宙衛星と復興の関係
内閣府は来年5月にスイス・ジュネーブで開催される国際会議の旅費に、復興予算から557万円を要求した。防災に関する国際協力を話し合う国連国際防災戦略会議に、防災担当大臣(現職は下地幹郎衆院議員)以下、計5人で出席する予定で、大臣は145万円、官僚はビジネスクラスに乗る秘書官が137万円、エコノミーでも65万円の旅費が支給される。この出張は、2015年に予定される第3回国連防災世界会議を日本へ招致しようという計画の一環である。内閣府政策統括官の防災担当はこう説明する。
「東日本大震災の教訓を海外と共有するという意味や、諸外国が日本経済への出資を促す意味で、被災地に国際会議を招致したいと考えています。外交上、会議に出て、日本の立場を訴えていくのは最低限必要なこと。招致に有利というよりは、出席するのは招致するための活動の中で最低限必要なものになります」
ちなみに招致活動にはこの他、来年度だけで、米国(ワシントン)に2人で2泊4日82万円、ニュージーランド(クライストチャーチ)に2人で2泊4日71万円など、計6カ国訪問の想定で、官僚の外遊予算が要求されている。これも最低限必要なものだそうだ。
海外への旅費は他にも見受けられる。防衛省では、軍用輸送機C−130Rと戦闘機F−16の教育訓練演習費として、それぞれ2725万円、10億2972万円を来年度予算に計上。どちらも「米国委託教育」と付け加えられている。
「C−130Rについては、これまで使っていたYS−11という旅客機が、全国と被災地の往復で飛行時間が増えた結果、予定より早く用途廃止、つまり退役となったのです。そこで米国からPC−130Rを購入することになった。機体は昨年度の3次補正(復興予算)で購入しましたが、新しい飛行機を乗りこなすのには、パイロットなどを養成しなければならない。そこで米国に行って乗り方を教えてもらおうと、30〜40人程度の米国への渡航経費と滞在経費を計上しました。
F−16については、これまで自衛隊はF−2戦闘機の訓練を松島飛行場で行ってきたが、被災したため訓練ができなくなってしまった。そこでF−2とよく似たF−16で訓練している米空軍にパイロットの卵たちを派遣することになりました」(防衛省人材育成課・総括)
それにしても10億円とは高過ぎはしないか?そう記者が問うと、「まあ、授業料も含むわけですからね」(同前)という。自衛隊の震災時の活躍は誰もが知るところだが、それに乗じて復興予算が外遊や米国への貢ぎ金に使われるとすれば、自衛官の栄誉を汚すことにもなりかねない。
さらに驚くべき来年度予算の目玉が、「宇宙開発利用関係予算」である。
内閣府宇宙戦略室が9月に発表した来年度の宇宙関係予算に関する資料をみると、なぜかそこに復興予算から「22億円」と明記されている。震災と宇宙。何の関係があるのか。
「災害時に有効な衛星通信ネットワークの研究開発」に15億4800万円を計上した総務省・宇宙通信政策課に尋ねた。
「これは被災地向けに、衛星通信を受信するための小型衛星局を整備する費用です。衛星自体は、企業や自治体などが持っている既存のもので、予算は被災地に小型衛星地上局を置くための予算です」
取材班:被災地ということですが、何県ですか?
内閣府宇宙戦略室:全国防災です。
取材班:えっ、さきほど「被災地に置く」と言ったじゃないですか。
内閣府宇宙戦略室:いや、将来の被災地に置くということです。車で運べる可搬型なので、場所は特に決まっていません。大人2人でどこにでも持って行けます。ですから、大規模災害が起こった場合、すぐに持って行くことができます」
どう考えても苦し過ぎる言い訳である。
◆天下り先への隠れ補助金
これまでも復興予算として計上されてきた予算が、いつの間にか形を変えていた例は多い。
たとえば、30億2000万円をかけた内閣府の新規事業となっている「共生社会政策費」。概算要求の大枠には、「共生社会政策の企画立案に必要な経費」、としか書かれていない。
どんな内容か、内閣府の担当者に問い合せてみた。
「これは自殺対策関係のものなんですよ。基金事業として地域自殺対策緊急強化基金というのが以前からあったんですが、震災で全国的に自殺者が急増したということで緊急的に昨年度の3次補正(復興予算)で37億円を計上しました。引き続き自治体にも対策をして欲しいということで、来年度も概算要求しているということです」(内閣府自殺対策推進室)
この予算は、被災地に限らず全国都道府県の自殺対策施設の運営や対策強化に使われている。すでに国会でも震災復興との因果関係について疑問が呈されているものだが、昨年度は「地域自殺対策緊急強化事業」という名称だった。それがなぜ、「共生社会政策費」という、曖昧な名目に姿を変えたのか。
「名前を変えたわけではなく、単に項目別に整理する便宜上の理由です。震災の影響で困窮する人は全国に広がっているので、全国への対策も必要になる。これまで自殺対策の基盤整備がなかった都道府県もありますので、震災後の自殺者増加を契機に対策を促すということでもあります」(同前)
自殺者急増を契機とする、という言い方は、ともすると誤解を招く。自殺者対策が必要なのは当然だが、被災地以外もそれを復興予算で賄うことが必要なのか。こそこそ名前を変える前に、見直すべきはそのことだ。
また、本誌がスクープした原子力研究機関への予算も、あろうことか増額されている。文科省が本年度の復興予算から「国際熱核融合実験炉計画(イーター計画)」という核融合エネルギー研究で、文科省OBらの天下り先となっている独立行政法人・日本原子力研究開発機構に42億円を投じていた問題だが、来年度は49億円に増額されていた。
それだけではない。今回の取材で、「国際原子力人材育成イニシアティブ」という事業に本年度予算から2億4000万円、来年度はさらに増えて2億8700万円が要求されていることが発覚した。
いったい何のことか。文科省原子力課に聞いた。
「大学や高専で行う原子力に関する授業に講師などを派遣する、いわゆる出張授業のことで、学校側に補助金を出しています。たとえば函館工業高等専門学校では、『地域の食を守る意識をモティベーションとする放射線教育』を行っています。10年度からこの事業はありましたが、本年度から復興特別会計となりました。放射性物質などに関わる情報を説明できる人を育成し、地域の人に正しい情報を知ってもらおうという目的です」
講師はどのように派遣されるのか。
「それは学校側が決めることですが、原子力研究開発機構の下部機関には原子力人材育成センターがあり様々なカリキュラムを用意しています。ここから講師が派遣されたりすることは多いですね。ただし、あくまで補助金は学校に出しています」
もうカラクリがおわかりだろう。原子力に対する教育事業で機構の関連組織から講師を派遣する。国が補助金を払うのは学校側だが、これが機構側に支払われるため、実際には機構への隠れ補助金となっている。
これを補助金のロンダリング還流という。
◆北海道や鹿児島の大学施設を改修
問題視されたはずの事業が継続して計上されている例は枚挙に暇がない。
たとえば、北は北海道教育大学から、南は熊本大学の図書館まで、「全国防災」の名目で改修が進められている、と本誌が問題視した国立大学の施設整備費用は、来年度は北海道大学の動物実験施設から鹿児島大学の研究棟まで、さらに範囲を拡大している。
「すべて耐震性を満たしていない建物の改修です。被災地以外は執行を禁止にするという議論も出ていますからどうなるかわかりませんが、現状では15年度まで要求し続ける予定です」(文科省文教施設企画部計画課)
安住淳・前財務相は交代直前の9月24日記者会見(※9月19日ではないかと思います・ブログ主)で、「概算は青天井で要求は認めましたから。それが最終的にどういうふうに落ち着いていくかというのは別の話です」と言ってのけた。安住氏はまた、「来年にかけて19兆円の枠を超えざるを得ない」とも語っていた。
復興予算が青天井で流用されている現状をわかっていて、それでもなお要求を認めたのだ。そして後任の城島氏は「被災地の復旧・復興が最優先という考え方」という逃げ口上で、予算流用をまたしても黙認しようとしている。
ここでもうひとつの疑問が浮かぶ。7月末の本誌スクープから、なぜ2ヵ月も問題が放置されたのか。政府や官僚たちは、9月に「青天井」の概算要求が出されるまでは、この問題を追及されたくなかったのではないか。だからわざわざ反論ペーパーまで作って、本誌の後追い報道を抑えようとしたのだ(前号参照)。
名著『官僚たちの夏』(城山三郎著)のモデルとなった伝説の通産官僚、佐橋滋はかつて、後輩官僚にこう訓示した。
「君たちはエリートである。僕の考えではエリート、つまり選ばれた人というのは、自分のことよりも他人のことを、自分のことより全体のことを考える人ということである」
復興予算問題は、この国からエリートが消え、シロアリだらけになった現実を露わにしている。
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